6月11、12日に第9回ツール・ド・宮古島が開催された。ロードレース最長クラスの184kmの部男子では2人逃げを決めた中尾峻(Team SHIDO)が5時間0分22秒で初優勝を飾った。



東平安名崎灯台へと続く道を走る114kmの選手たち東平安名崎灯台へと続く道を走る114kmの選手たち photo:Akihiko.HARIMOTO
シクロワイアードでも初取材となるツール・ド・宮古島は、今年ですでに9回目の開催であり、公道レース好きのホビーレーサーたちにはすでに定着した人気を誇る大会だ。初日の土曜はサイクリング部門、日曜がレース部門の2日間。主催は宮古島市とSDA(セルフディスカバリーアドベンチャー)王滝などの開催でも知られるパワースポーツだ。

宮古島市長の下地敏彦氏が選手たちを激励する宮古島市長の下地敏彦氏が選手たちを激励する photo:Akihiko.HARIMOTO「ワイドー(頑張れ)」を三唱して気合を入れる選手たち「ワイドー(頑張れ)」を三唱して気合を入れる選手たち photo:Akihiko.HARIMOTO


東京から約2,000km、沖縄本島から南西に300kmの位置にある宮古島。平均気温で東京より7℃高い亜熱帯に属する。5月上旬に梅雨入りして、6月下旬に梅雨明けすると本格的な夏がやって来る。大会はちょうど真夏入り直前の時期にあたる。昨年は大会日に梅雨明け宣言の快晴だったが、今回は両日とも雨や曇り予報で、すぐれない。前日の土曜のサイクリングの部の夕方は大雨となり、レースの開催が心配されたほどの荒天となった。

日曜のロードレースの部は114kmと184kmがある。宮古島市は言うまでもなく「トライアスロンの島」として有名で、ストロングマンは4月中旬に開催されたばかり。ツール・ド・宮古島はそのトライアスロンと同じバイクルートをコースとして使うのだ。

昨年完成したばかりの伊良部大橋を渡る184kmのメイン集団昨年完成したばかりの伊良部大橋を渡る184kmのメイン集団 photo:Akihiko.HARIMOTO海をバックに東平安名崎を走る選手たち海をバックに東平安名崎を走る選手たち photo:Akihiko.HARIMOTO


平良のトゥリバー地区を発着点とし、おおざっぱに言って114kmコースでほぼ島を一周。184kmは島を2周するコースだ(2周目は1周目の一部を省略する)。高い山が無い宮古島だけにコースは概ね平坦だが、海岸部は適度なアップダウンがある。またコース上に伊良部大橋、池間大橋、来間大橋の海を渡る3つの大きな橋を通る。そして観光名所でもある名勝・東平安名崎(ひがしへんなざき)もコースとなる。山が無い代わりに海上の風の影響を受けやすいが、天候が良ければエメラルドグリーンの海と青い空のコントラストを楽しみながら走ることができる。

184kmクラスと114kmクラスが橋の上ですれ違う184kmクラスと114kmクラスが橋の上ですれ違う photo:Akihiko.HARIMOTO


184kmレース男子は2人逃げを決めた中尾峻(Team SHIDO)が優勝

レース当日の天気予報は降水確率80%の雨予報、かつ風速9mの予報で荒れ模様となるはずだった。前日よりも悪い予報だったが、朝から雨は降らず、結局はレース終了まで持ちこたえることに。

ツール・ド・宮古島184kmの部がスタートしていくツール・ド・宮古島184kmの部がスタートしていく photo:Akihiko.HARIMOTO根津匠太朗(TeamSHIDO)と奥西直彦(ベルエキップしびれ隊)が逃げる根津匠太朗(TeamSHIDO)と奥西直彦(ベルエキップしびれ隊)が逃げる photo:Akihiko.HARIMOTO


184kmレースには111人がエントリー。女子は人数が少ないため184kmと114kmともに男子と混走でのスタートとなる。

根津匠太朗(TeamSHIDO)と奥西直彦(ベルエキップしびれ隊)が序盤20kmから逃げてペースを上げる。入れ替わりに80km地点の東平安名崎灯台では佐藤秀和 (サイクルフリーダム)が単独アタックを決めた。メイン集団が牽制しているうちに、TTに強い佐藤は差を2分に開く。

落ち着いたメイン集団。先頭にいるのは昨年覇者の杉本雄隆(CYCLISM)落ち着いたメイン集団。先頭にいるのは昨年覇者の杉本雄隆(CYCLISM) photo:Akihiko.HARIMOTO佐藤秀和 (サイクルフリーダム)と中尾峻(Team SHIDO)が逃げる佐藤秀和 (サイクルフリーダム)と中尾峻(Team SHIDO)が逃げる photo:Akihiko.HARIMOTO


南海岸のアップダウン部で中鶴友樹(おきなわ)がアタック。続いて中尾峻(Team SHIDO)、大村寛(アクアタマ)、杉本雄隆(CYCLISM)の3人が追走。追走グループの4人からさらに抜けだした中尾がひとりで前を行く佐藤に追いつき、2人はそのままゴールまで逃げ切ることになった。

そして昨年の覇者である杉本雄隆(CYCLISM)を含む追走グループ3人が途中ミスコースをしてしまい、2人の逃げは確実なものとなってしまう。

184kmで圧倒的な逃げ勝利を飾った中尾 峻(Team SHIDO)184kmで圧倒的な逃げ勝利を飾った中尾 峻(Team SHIDO) photo:Makoto.AYANO
2位には逃げた佐藤秀和 (サイクルフリーダム)が入った2位には逃げた佐藤秀和 (サイクルフリーダム)が入った photo:Makoto.AYANO184kmのメイン集団のゴールスプリント184kmのメイン集団のゴールスプリント photo:Makoto.AYANO


2分以上の差を持って逃げ切った2人。ゴール前では地脚に勝る中尾が佐藤を振りきり、9秒差でフィニッシュ。昨年に続き2度めの挑戦で初優勝を飾った。

中尾峻(Team SHIDO)のコメント
「昨年、初出場したときは勝手が分からずに6位に終わり、悔しい思いをしたので、今年は余裕をもって走って、動くところを決めていたんです。最高の展開に持ち込めました。追走グループのローテーションがキツそうに感じたので向かい風だったときにあえてアタックしました。10分踏んで佐藤さんに追いついてからは協調して逃げることができました。追走にはスプリントが強い選手がいたので、その前に逃げておきたかったんです。

184kmに優勝した中尾 峻とTeam SHIDOの仲間たち184kmに優勝した中尾 峻とTeam SHIDOの仲間たち photo:Makoto.AYANO184kmに優勝した中尾 峻(Team SHIDO)とスペシャライズドTarmac184kmに優勝した中尾 峻(Team SHIDO)とスペシャライズドTarmac photo:Makoto.AYANO


昨年はアタックに反応しすぎてダメになったんですが、今年は冷静に走れたのが良かった。今回は決めるべき時に全開で行ってパーフェクトなレースでした。ツール・ド・おきなわはレベルが高すぎるので勝てる気がしないんですが、ツール・ド・宮古島はちゃんとしたロードレースができるのに雰囲気がいいので気に入っています。これから人気が出るレースだと思います。登りが厳しすぎないし、地脚の差があったとしても展開で勝負に持ち込めるのがいいですね」。



110kmレースは無名の酒井駿が60kmの独走優勝

観光名所の東平安名崎灯台を折り返す選手たち観光名所の東平安名崎灯台を折り返す選手たち photo:Akihiko.HARIMOTO
実に402人がエントリーした114kmクラス。集団も大きく、ある意味レースの内容では184km部門を凌ぐものがある激戦区だ。レースは大集団で進むが、レースがまだ半分を残した約60km地点で2人の逃げの後、酒井 駿の独走が始まる。

114kmクラスで独走する酒井駿114kmクラスで独走する酒井駿 photo:Akihiko.HARIMOTO
114kmクラスで独走優勝した19歳の酒井駿114kmクラスで独走優勝した19歳の酒井駿 photo:Akihiko.HARIMOTO酒井選手と60人以上を残すメイン集団とのタイム差は1分30秒ほどだが、集団のペースアップの動きはまとまらない。しびれを切らした遠藤優(bicicletta SHIDO)がラスト20kmを切った時点で飛び出し、酒井に追いつくが、2人になってすぐパンクに見舞われて遅れてしまう。終盤メイン集団も36人に人数を絞りながらペースアップするも、結局酒井選手との差は詰め切らないままフィニッシュを迎えた。ゴールラインでのタイム差は3秒だが、長い長い独走での逃げ切り勝利だ。

114kmで優勝した酒井 駿と愛車のキャノンデールSuperSIX EVO114kmで優勝した酒井 駿と愛車のキャノンデールSuperSIX EVO photo:Makoto.AYANO酒井駿のコメント
酒井は沖縄の大謝名で生まれ、神奈川で育った19歳。今までに目立ったリザルトはとくに無い選手だ。
酒井のコメント「今日は楽しもうと思って走っていたんです。友達がアタックしたのを見て、僕も行こうと思いました。そこから友達がキツくなって一人になってしまった。遠藤さんが追いつくまで50km以上ずっと独り。でも追いついた途端に遠藤さんはすぐパンクしてしまったんです。

集団とのタイム差を聞きながら、登りはインナーギアで、平坦路はエアロポジションでと、いっぱいっぱいで走っていました。補給は10、20kmごとにパワージェルなどを摂り、脚が攣らないように水もたくさん飲むように心がけました。市販のジャージを着ていたので、皆が油断したんだと思います。昨年優勝した杉本雄隆さんが憧れの存在なので、来年は184kmに出たいですね」。



女子は仲村陽子(竹芝レーシング)が連覇

女子184kmは仲村陽子(竹芝レーシング)が連覇を達成した女子184kmは仲村陽子(竹芝レーシング)が連覇を達成した photo:Akihiko.HARIMOTO
参加人数が少ないため男子と混走レースとなった女子184kmは、仲村陽子と三浦智穂の一騎打ちスプリントで争われた末、昨年の覇者・仲村が競り勝った。竹芝レーシングのジャージを着るが仲村は沖縄県浦添市出身の43歳。ちなみに男子と混走の184kmクラスで仲村が27位、三浦が28位に相当する。

優勝した仲村陽子(竹芝レーシング)と2位の三浦智穂優勝した仲村陽子(竹芝レーシング)と2位の三浦智穂 photo:Makoto.AYANO優勝した仲村陽子(竹芝レーシング)と愛車のスペシャライズドAmira優勝した仲村陽子(竹芝レーシング)と愛車のスペシャライズドAmira photo:Makoto.AYANO


仲村のコメント「向かい風で集団がバラけてしまって、同じ集団にいた三浦智穂さんと終始一緒に走ることになりました。5、6回アタックして千切ろうとしたけれど、切ることができなかったんです。スプリントに持ち込むしかないと思い、お名前も知らない存在だったのですが、勝てるという自信を持って一騎打ちに臨みました。最終コーナーを曲がって残り500mで三浦さんがロングスパート。様子を見ながら並走し、ラスト200mで『ここだ』と思いアタックしました。連覇を狙って走りましたし、冷静に勝負出来たのが勝因です」。



「ツール・ド・おきなわのような市民レースの祭典に成長していきたい」

パワースポーツの滝川次郎代表パワースポーツの滝川次郎代表 photo:Makoto.AYANO日曜日のレース部門の参加者数は466人で、186kmにエントリーしているのは119人(うち女子11人)。114kmは401人(うち女子は29人)だ。人気が114kmクラスに集中していることと、女子クラスがまだ参加人数不足のため単独開催ができず男子と混走になるなどの難点があるのは確かだ。しかし何より数少ない100kmオーバーの公道レースとしては基調な存在で、コースとロケーションの良さもあり参加者のリピート率は高く、人気は高まっているようだ。

トライアスロンの陽気な風土と、エイジグループ(年代別)表彰も多いのが嬉しい点で「ツール・ド・おきなわのマイルド版」と言って良さそうだ。ツール・ド・おきなわが近年のレベルアップによってロードレース入門者にやや敷居が高くなっている傾向がある今、おきなわの入門版ロードレースとしても勧められそうだ。

レース企画者であり主催者パワースポーツ代表の滝川次郎氏は言う。「一般サイクリストのレースのために一般公道を開放してくれ、全部の信号を止めるなど手厚く協力してもらっています。トライアスロンのストロングマンとロードレースのツール・ド・宮古島は、島にとっても重要なイベントで、アスリートを心から暖かく歓迎してくれます。イベント参加者のみなさんにはマナーを守りながら走ってもらって、ツール・ド・おきなわに負けないような、市民レースの祭典と呼べるイベントに成長していきたいと思っています」。

184kmの表彰184kmの表彰 photo:Makoto.AYANO114kmの表彰式114kmの表彰式 photo:Makoto.AYANO


女子総合の表彰女子総合の表彰 photo:Makoto.AYANOツール・ド・宮古島2016 TOP10リザルト

184kmの部
1位 中尾 峻 5:00:22
2位 佐藤 秀和 5:00:31
3位 友杉 大樹 5:03:18
4位 石塚 将人 5:03:20
5位 山口 史明
6位 大永 剛志 5:03:21
7位 中屋 昌平
8位 比嘉 宏人 5:03:23
9位 長妻 暁 5:03:25
10位 五嶋 賢太郎 5:03:30

27位(女子1位)仲村 陽子  5:46:51
28位(女子2位)三浦 智穂  5:46:52

114kmの部
1位 酒井 駿 3:07:42
2位 新城 直明 3:07:45
3位 福島 雄二 3:07:47
4位 高良 和郎
5位 戸田 慎吾 3:07:48
6位 岡 正二郎
7位 富名腰 聡智
8位 藤原 哲
9位 笹谷 勝巳
10位 坂本 伸吾 3:07:49

※詳細リザルトは下部リンクの公式サイトよりご確認ください。

photo:Akihiko.HARIMOTO(PowerSports)
photo&text:Makoto.AYANO