ツアー・オブ・ジャパンに新たに登場した京都ステージ。50,000人が観戦し盛況に終わったけいはんな地区を走るレースの舞台裏について、様々な角度から大会関係者へインタビューした。

ちなみにここまでの各ステージの観客動員数は、堺が76,000人、京都が50,000人、美濃が26,000人となる。



ホ-ムチームのNIPPOヴィーニファンティーニを先頭にスタートホ-ムチームのNIPPOヴィーニファンティーニを先頭にスタート
スタート地点では地元の子供たちが大声援を送ったスタート地点では地元の子供たちが大声援を送った 多くの観客が集まったヘアピンの登りを行く集団多くの観客が集まったヘアピンの登りを行く集団 photo:Satoru.Kato


地域振興を目的とした大会の生い立ち
栗村修さん(ツアー・オブ・ジャパン大会ディレクター)


栗村修さん(ツアー・オブ・ジャパン大会ディレクター)栗村修さん(ツアー・オブ・ジャパン大会ディレクター) 今回は京都府が京都府南部の地域振興を目的として立候補しました。ロードレースの国際大会であるTOJに高い関心を持ち、TOJ主催者側と気持ちがひとつになって開催が実現しました。

今年から8日間連続のステージレースにすることで、日本最大のステージレースをさらに進化させられるのは大いに意味があること。例年富士山ステージの個人TTで海外勢と大差がついてしまい、総合優勝争いがそのステージと次の修善寺ステージだけでほぼ決まってしまっていた。しかし難易度の高い京都ステージを第2ステージに開催することで、例年と展開が変わってくるのではないかと期待できます。

美山ロードと続いた大レース開催が経験に
坂井田米治さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 実行委員長)


坂井田米治さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 実行委員長)坂井田米治さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 実行委員長) 京都府の地域振興の一助としてロードレースが採用されたことを大変嬉しく思います。このような大きな国際レースの開催が実現することで、京都近郊のロードレースファンだけでなく、今まで本物のロードレースを見たこともない地元の方々が実際にレースを見ていただくことは大きな意味があります。

実際に運営をする京都府自転車競技連盟にとってはこれまでの最大規模だった美山ロードレースの翌週のタイミングに、もっと大きなUCI国際レースが続くことになり、運営が大変なのだが、これだけ多くの方々が見に来ていただけたので苦労して開催した甲斐がありました。今回の観戦者数は公式発表で5万人。当初の目標は3万人でしたから。

地元で文化として根付くことを願って
今西尚志さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 大会アンバサダー)


今西尚志さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 大会アンバサダー)今西尚志さん(ツアー・オブ・ジャパン京都ステージ 大会アンバサダー) 私は地元が京都で、会場近くの同志社大学自転車競技部OBなので、大変光栄にも大会のアンバサダー(親善大使)に選ばれました。
大学時代はプロを目指してこのコースを走っていたし、当時インカレロード3位の実績からシマノレーシングへ入りプロとして活躍できたんです。
(引退後はシマノレーシング監督を務め、ヨーロッパでスキル・シマノ<=現ジャイアント・アルペシンの前身>誕生に尽力した)

こうして沢山の地元の人たちにロードレースに関心を持っていただけること、特に子供たちに見てもらうことは非常に大切だ。大会の実況解説をさせてもらったが、コースやレース内容も面白く観客の皆さんにとっても見応えのある大会になったと思う。

来年以降も京都ステージで開催が続いていくことが大事。本当の意味でロードレース文化が発展していき、選手・関係者たちが名実ともに評価されると嬉しいですね。

よしもと自転車部と一緒に大会をPR
辻善光選手(京都出身 元プロロード選手)


辻善光(京都出身 元プロロード選手)辻善光(京都出身 元プロロード選手) 私は地元が京都府南部で、この大会に対する思いは人一倍強いので、初開催ということで大会をPRするためにどうしたら良いか色々と悩みました。今回はよしもと自転車部とともに大会のステージを盛り上げるのに貢献できました。来場者も多くて、観客の反応も良かったのでとても嬉しい。

レースに関しては、地元選手としてコースを良く知っているが、コースの難易度は高く、強い選手が勝つステージだと思う。このステージを皮切りに富士山TTの前に日本人選手たちが海外勢に対してタイム差をつけてくれるのではないかと期待している。(開催前日のコメント)

ホームチームとしてステージ優勝を目指して戦った
大門宏 NIPPOヴィーニファンティーニ代表兼監督


NIPPOヴィーニファンティーニの大門宏監督NIPPOヴィーニファンティーニの大門宏監督 ダミアーノ・クネゴ選手が山岳賞を争ったジロ・デ・イタリアから帰国直後のTOJだが、チームは日本企業のNIPPOやENEOS、IRCをはじめとする日本のスポンサーに支えられています。今年もステージ優勝が命題、だから本来であればジロに出場しているレベルの選手たちを揃えて臨んでいる。

京都ステージに関してはスプリンターのマリーニ以外は全員が狙えるNIPPO向きのコース。地元の小石がうまく序盤から逃げてくれたのは大きかった。後半までメイン集団で温存していたデネグリと窪木で勝負ができ、ステージ優勝が狙えた。

ランプレ・メリダのチモライにステージ優勝をさらわれたが、デネグリはステージ2位と総合リーダージャージを獲得。窪木はステージ3位に入る活躍を見せました。総合リーダーを守ることよりも、明日の美濃ステージ以降に1つでも多くステージ優勝することに集中していきます。

小石はホームコースでよく頑張った。結果的には落車で大きく遅れたが、序盤から積極的に逃げてローテーションに加わる走りを見せた。ロードレースでは前で走る経験を積むことが選手の成長のためには大事だ。

出身地で凱旋レースを走る喜び
小石祐馬選手(NIPPOヴィーニファンティーニ)


小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ) 京都ステージに限らず、すべて狙っていくつもりで大会に臨んでいた。今日は序盤であっさり4人の逃げが決まったが、なかなかペースが上がらなかったので苦しかった。地元の声援はとても大きくて、嬉しかったし力になった。

下りコーナーの落車による怪我(病院で12針を縫った)はあるが、骨は折れていないから大丈夫。こういうのも含めて、それがレース(明るく前向きにピース!)。山岳賞は登りに強いイランのマレキ(タブリーズ)に次ぐ2位になっているので、明日以降も攻めの走りをしていきたい。

ホームチームとして走り、ステージ2位で総合リーダージャージを獲得
ピエールパオロ・デネグリ選手(NIPPOヴィーニファンティーニ)


ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ)ピエールパオロ・デネグリ(NIPPOヴィーニファンティーニ) コースの印象としては道幅が狭くテクニカルでコーナーが多いので、今朝のようにウェットコンディションでは難しかった。でも京都の子供たちやファンたちが熱心に応援してくれていたから走っていて嬉しい。ステージ優勝にあと一歩及ばなかったが、昨日苦手なTTで頑張ってプッシュしたおかげで1秒差の総合リーダージャージを獲得できた。

チームメイトの窪木(トラック競技のリオ五輪代表)はステージ3位、総合で1秒差の3位となっているので、チームのムードは良い。小石も序盤で逃げに乗って良い動きをしたのでNIPPOヴィーニファンティーニのチームプレーによる結果だ。
過去にステージ優勝している南信州大会では再び勝利を狙う。

京都車連で大会役員ボランティアをしていた冨田夫妻

京都車連で大会役員ボランティアをしていた冨田夫妻京都車連で大会役員ボランティアをしていた冨田夫妻 (夫の真史さんはかつて実業団チームNOCSで走っていた元ロード選手)
下りのコーナーでコースに立っていたが、ふだんは人気のない場所にもかかわらず地元の老若男女の方々が大勢で観に来ており、この地での開催はとても良かったと思う。

1980年代に美山町で国際ロードレース(TOJの前身)が開催されていた時代を知っているので、こんな国際大会が京都に帰ってきてくれてとても嬉しい。来年も大会が開催されることを強く願っている。



大会を支えた関係者たちにインタビューした印象としては、期待も大きく、選手からの評価も高い京都ステージだったようだ。初開催で、しかも平日の月曜日の開催とは思えないほど観客が多かったので、第一歩として成功ではないだろうか。

レースを面白くするコースの難易度と比例して、主催者や運営側の安全面に対する準備や配慮が来年以降の課題となろう。世界的にも有名な京都で開催される意義も大きく、日本のロードレース文化発展に貢献できる大会であることは間違いないだろう。


report&photo:Shu.Kato

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