8月に行われる新規レースのJプロツアーは、なんと山口県庁敷地や本庁舎地下駐車場などを走るTT。そして翌日のクリテは県庁前の山口パークロードを使う。これらは今年から始まった”サイクル県やまぐちProject”の取り組みの一つだ。



最も美しい国体ロードコースのカルストロード 2011年山口国体にて最も美しい国体ロードコースのカルストロード 2011年山口国体にて photo:Hideaki TAKAGI
今年のJプロツアーは奈良、山口、そして前橋で新規大会が開催される。とりわけ第14戦・8月27日の藩庁門タイムトライアルinやまぐち、第15戦・8月28日の維新やまぐちクリテリウムは、コースが山口県庁周辺という抜群のロケーションで行われる。タイムトライアルは山口県庁内の敷地や本庁舎地下駐車場などを通る前代未聞のコースだ。

山口県庁本館玄関前がTTのコース山口県庁本館玄関前がTTのコース photo:Hideaki TAKAGI
”サイクル県やまぐちProject”山口県主導で今年からスタート

この開催にあたっては行政としての山口県が深くかかわっている。この2大会は山口県がすすめる”サイクル県やまぐち”実現への取り組みの一環として行われるもの。山口県は組織改革を行い、今年から観光スポーツ文化部を創設した。来る2018年の「明治維新150年」に向けた観光やスポーツによる山口県の取組みを、自転車関係を中心に紹介しよう。

4月21日に行われた第1回「サイクル県やまぐち」推進協議会で、村岡嗣政山口県知事は、「山口県は、秋吉台や角島などの美しい景観と整備された道路ネットワーク、東アジアに近接した地理的環境、自転車関連産業の立地など、サイクルスポーツの振興に適した環境にある。明治維新150年(2018年)に向けた観光施策とも連携を図りながら、イベントの開催やサイクルエイドの整備等を進め、サイクルスポーツを通じた山口県の魅力を交流人口の拡大、地域の活性化に繋げたい」と発表した。

Jプロツアー第14戦 藩庁門タイムトライアルinやまぐち コース図Jプロツアー第14戦 藩庁門タイムトライアルinやまぐち コース図 image:山口県Jプロツアー第15戦 維新やまぐちクリテリウム コース図Jプロツアー第15戦 維新やまぐちクリテリウム コース図 image:山口県やまぐち十種ヶ峰国際ダウンヒル Coupe du Japon、UCIレース コース図やまぐち十種ヶ峰国際ダウンヒル Coupe du Japon、UCIレース コース図 image:山口県

今年のシンボルイベントはJプロツアー、MTB-DH、サイクリングなど

「サイクル県やまぐち」推進協議会は、その推進基盤となる組織であり、山口県と関係市町、関係団体によって構成される。同協議会では”シンボルイベントの開催”、”サイクルスポーツ環境の整備”、”効果的な情報発信”の3つをプロジェクトの柱とする。そのシンボルイベントとして”All Yamaguchi Ride Festa”と称し、今年の8月下旬から9月上旬にかけての4日間で、Jプロツアー2戦と、UCIダウンヒルレースを含む総合サイクルイベントを行う。

山口県では今までに数多くの自転車イベントが開催されてきた。現在ではJエリート/フェミニンツアーでもある「きらら浜サイクルミーティング」は12年目・36回を数える。美しい角島大橋などを望むロングライドの「ツール・ド・しものせき」、山口市南部をめぐる「ツール・ド・ヤマグチ湾」や、瀬戸内海の多島美を楽しむことができる「サザンセト・ロングライドinやまぐち」も毎年開催されている。さらには2011年には山口国体が防府競輪場と秋吉台周辺で、そして1994年アジア大会では宇部興産道路がチームロードのコースとなった経緯がある。

TTのスタート地点。正面は山口県庁本館TTのスタート地点。正面は山口県庁本館 photo:Hideaki TAKAGITTスタート地点そばの藩庁門TTスタート地点そばの藩庁門 photo:Hideaki TAKAGI

8月下旬から9月上旬にかけての4日間行われる5つのイベント

1.藩庁門タイムトライアルinやまぐち Jプロツアー第14戦
 8月27日(土) 山口県庁敷地内、建物内を使う1周2kmの個人タイムトライアル

2.維新やまぐちクリテリウム Jプロツアー第15戦
 8月28日(日) 日本の道100選の山口パークロードと山口市役所敷地内を通るクリテリウム

3.やまぐち十種ヶ峰国際ダウンヒル Coupe du Japon、UCIレース
 9月3、4日(土、日) 今シーズン唯一のUCIダウンヒルレース

4.サイクリング秋吉台
 8月28日(日)山口県の誇る大パノラマを堪能できる秋吉台を巡るサイクリング

5.ポタリング・キッズサイクルイベント・体験会
 8月27、28日にポタリング、8月27、28日と9月3、4日の4日間でキッズサイクルイベントと試乗会・MTB体験会のそれぞれを実施

ここでシンボルイベントのうちの2つ、Jプロツアー2戦が行われるコースを紹介しよう。山口県観光スポーツ文化部スポーツ推進課のみなさんと山口県自転車競技連盟の棟久明博事務局長に、実際のコースを案内いただいた。

Jプロツアー第14戦 藩庁門タイムトライアルinやまぐち

8月27日(土)に行われるJプロツアー第14戦は個人タイムトライアル。コースは山口県庁敷地内や本館地下駐車場などを通るという前代未聞のコース。今年1回きりの開催という「幻のレース」であり、山口県行政の文字通り中心部を使うレースは後にも先にも全国的にないだろう。これほど珍しくそして大胆なレースが今から待ち遠しい。

コースは山口藩の正門、つまり藩庁門近くの県庁入り口付近からスタートする。国指定重要文化財の旧県会議事堂前を通り、コーナーを経て県庁の地下駐車場へ入る。上りコーナーを立ち上がり、標高の最も高い県庁北庁舎を回る。本館玄関前を経てスタート地点方向へ下りてくる1周2kmがコースだ。テクニックとパワーの両方が必要で、コースをいかに知るかがポイントだが、もちろん場所柄事前の試走ができないので選手全員が同じ条件だ。

TT 地下駐車場への入り口TT 地下駐車場への入り口 photo:Hideaki TAKAGI山口県庁地下駐車場を通るTT山口県庁地下駐車場を通るTT photo:Hideaki TAKAGI

TT 地下駐車場からの出口TT 地下駐車場からの出口 photo:Hideaki TAKAGITT 地下駐車場出口からは上りが続くTT 地下駐車場出口からは上りが続く photo:Hideaki TAKAGI

Jプロツアー第15戦 維新やまぐちクリテリウム

8月28日(日)に行われるJプロツアー第15戦はクリテリウム。コースは日本の道100選に指定された山口県庁前から南方向へ伸びるパークロードを使う。美しい植栽と街灯、そして中央分離帯からなる片側2車線道路をレース時間中は完全封鎖する。県庁側の北側折り返し地点が最も標高が高く、南側へ緩く傾斜する。南側折り返しは山口市役所の駐車場内を通る。

南側折り返しがテクニカルなほかは直線状の道で、最終折り返しから約200mで緩い上りフィニッシュとなる。山口県庁と山口市役所を結ぶ行政の中心であり、県立美術館や図書館などのある文化ゾーンでもある。ここを日曜日の昼にロードレーサーがハイスピードで駆け巡るさまは圧巻だろう。

クリテリウムはパークロードを使うクリテリウムはパークロードを使う photo:Hideaki TAKAGIクリテリウムコース沿いには山口県立美術館がクリテリウムコース沿いには山口県立美術館が photo:Hideaki TAKAGI
クリテリウム南側折り返しは山口市役所駐車場へ入るクリテリウム南側折り返しは山口市役所駐車場へ入る photo:Hideaki TAKAGIクリテリウム スタート/フィニッシュ地点クリテリウム スタート/フィニッシュ地点 photo:Hideaki TAKAGI

来年度以降はロードレースへ

2011年山口国体で使われたカルストロード2011年山口国体で使われたカルストロード photo:Hideaki TAKAGI2016年の山口県でのJプロツアーはタイムトライアルとクリテリウムという組み合わせだが、来年度以降は場所を大幅に移してロードレースを行う構想もある。そちらにも期待したい。

これら8月から9月にかけて山口県で行われるイベントにはぜひとも自転車持参で楽しんでみよう。山口県は明治維新を支えた多くの人材を輩出、初代から現職に至るまで全国最多8名の総理大臣も輩出している。歴史あるそして自然と文化の豊かな山口県を肌で感じよう。


photo&text:高木秀彰
取材協力:山口県観光スポーツ文化部スポーツ推進課、山口県自転車競技連盟

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