急勾配の細い峠道ばかりが続いた獲得標高差3300mの中級山岳ステージ。翌日にクイーンステージが控えたこの日、スロベニアから大勢の観客に見守られ、プロトンが新緑が美しい山岳地帯を走った。ジロ第13ステージの現地レポート。


青空が広がるパルマノーヴァ青空が広がるパルマノーヴァ photo:Kei Tsuji
「山本」「山本」 photo:Kei Tsuji
独走で1級山岳モンテマッジョーレを登るステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)独走で1級山岳モンテマッジョーレを登るステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング) photo:Kei Tsujiチヴィダーレ・デル・フリウリを通過するチヴィダーレ・デル・フリウリを通過する photo:Kei Tsuji


フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州は日本人にとって馴染みが薄い地域かもしれない。州都はトリエステ。名称にヴェネツィアが入っているものの、観光都市ヴェネツィアはお隣のヴェネト州にある。

トレンティーノ=アルト・アディジェ州やヴァッレ・ダオスタ州、シチリア州、サルデーニャ州と同様に特別自治州にカウントされ、合計15ある通常の州よりも大きな地方自治権が与えられている。共通するのはイタリアという国の端っこにあることと、独自の文化や言語が根付いていること。激坂モンテゾンコランは同州にあるが、地理的な理由でジロが頻繁に通るわけではない。

さらに同州ではイタリア語の方言というよりは独立した言語であるフリウリ語も話されている。生粋のフリウリ語話者の数は少なくなっているとは言え街の名前はイタリア語とフリウリ語の2種類併記が標準だ。

コースの沿道にはスロベニア国旗が目立った。それもそのはずこの日のコースは極めてスロベニア国境に近い山岳地帯を走る。見上げた山を越えるとそこはスロベニアで、少し北に行けばオーストリア。その影響でイタリアでありながらイタリアではないような、どこか違う国を走っているような錯覚を感じてしまう。スロベニアからきた観客とスロベニア語でコミュニケーションする警察までいた。

2004年にEU入りしているスロベニアの通貨はユーロで、イタリアとの間にはもちろんパスポートコントロールもない。プリモス・ログリッチ(ロットNLユンボ)の活躍で注目を集める人口比イタリアの4%(200万人)という小国が勢いを伸ばしている背景には、そんな自転車大国への近さもあると思われる。

登りでサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)が逃げグループを牽引登りでサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)が逃げグループを牽引 photo:Kei Tsuji
バールでテレビ観戦してジロを待つバールでテレビ観戦してジロを待つ photo:Kei TsujiピンクのTシャツを着てジロを待つピンクのTシャツを着てジロを待つ photo:Kei Tsuji
撮影もせずに教会前でジェラートを食べているのは一緒に仕事しているフォトグラファーのティムとモトドライバーのキム撮影もせずに教会前でジェラートを食べているのは一緒に仕事しているフォトグラファーのティムとモトドライバーのキム photo:Kei Tsuji


ステージ優勝したミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)は生粋のクライマーだ。2011年のジロでドロミテの峠を繋いだ獲得標高差6320mという過酷なステージで勝利しており、ジロでは5年ぶり2度目のステージ優勝となる。

ニエベはプロレース通算4勝目。初勝利は2010年ブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージの1級山岳コトベジョ峠で、2勝目が先に述べたジロ第15ステージの1級山岳ガルデッチャ、そして3勝目が2014年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第8ステージの1級山岳クールシュヴェル。つまりこれまで全て山頂フィニッシュでの勝利だったので、「山頂フィニッシュ以外での勝利」は初めての経験だ。

ミケル・ランダ(スペイン)のリタイアに沈んでいたチームスカイ。ダリオ・チオーニ監督は「今日は最初からミケル・ニエベとセバスティアン・エナオゴメスを逃げに送り込む作戦だった。逃げに入ってからは前を積極的に引かなくても良い理想的な展開で、フレッシュな状態を保ったたまま逃げグループが疲弊したタイミングでアタック。展開が完全にはまった。明日のステージも選択肢が沢山あり、またステージ優勝を狙っていく」と言う。確かにニエベ、エナオゴメス、ロッシュ、ロペスガルシア、ボズウェル、ダイグナンと、マリアローザを度外視してその豊富な山岳力をステージ成績に注げばさらに勝利を重ねることができそうだ。

スロベニアから多くの応援団が駆けつけるスロベニアから多くの応援団が駆けつける photo:Kei Tsuji
アスタナを先頭に2級山岳ヴァッレを登るメイン集団アスタナを先頭に2級山岳ヴァッレを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji
緑の森に包まれた2級山岳ヴァッレを走る緑の森に包まれた2級山岳ヴァッレを走る photo:Kei Tsuji
プロセッコを開けるミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)プロセッコを開けるミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsujiプロセッコを一口飲むアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)プロセッコを一口飲むアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei Tsuji


序盤からハイスピードな展開で急勾配の山岳が続いたことから、スプリンターを含むグルペットにとって厳しい展開となったこの日、35分12秒遅れのグルペットを最後に174名が完走している(タイムオーバーは48分55秒)。DNSのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を含めて7名がこの日レースを去った。

コスタリカ人として初めてマリアローザに袖を通したアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)は、レース後の記者会見が終わってからガールフレンドのラウラさんにローザ(薔薇)をプレゼントした。

少し変わった統計として、アマドールは今大会マリアローザを着た選手の中で最年長。と言ってもまだ29歳であり、ユンヘルスが23歳、ドゥムランが25歳、ブランビッラとキッテルが28歳と、それまでのマリアローザ着用者が若かっただけ。ちなみに(また人口比の話で恐縮だが)ルクセンブルクはイタリアの人口の1%(54万人)で、コスタリカは8%(487万人)の小国だ。

翌日の第14ステージは美しいドロミテの峠が連続するタッポーネ(クイーンステージ)。距離210kmで獲得標高差5400mという途方もない数字が並び、レース時間も6時間超えが予想される。ポルドイ、セッラ、ガルデーナ、カンポロンゴ、ジャウ、ヴァルパローラと、見ると卒倒しそうなスケールの峠ばかりが詰め込まれている。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らはまだ周囲の様子を気にしながら余裕をもって走っている感があるが、いよいよ彼らが全開アタックを繰り出す日がやってきた。マリアローザ争いのみならずそのドロミテの美しさも必見のステージ。しかもそんな日に限って前日のフィニッシュ地点とスタート地点が2時間半ほど離れているためチームの負担も大きい。ここから最終週にかけてジロはサバイバルレースとなる。

text&photo:Kei Tsuji in Cividale del Friuli, Italy
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