ジロ・デ・イタリア第3ステージで再びマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利。2日間連続でチーム力とスプリント力を誇示したキッテルがボーナスタイムによってマリアローザを手にした。



日曜日ということもありコース沿道は鈴なりの観客日曜日ということもありコース沿道は鈴なりの観客 photo:Kei Tsuji
マリアロッサを着るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)マリアロッサを着るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji集団前方でスタートを待つ山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)集団前方でスタートを待つ山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


5月8日(日)第3ステージ ☆ ナイメーヘン〜アーネム 190km5月8日(日)第3ステージ ☆ ナイメーヘン〜アーネム 190km image:Giro d'Italia前日の第2ステージと大きく代わり映えしないコースレイアウトの第3ステージ。スタート&フィニッシュ地点が第2ステージとは逆のパターンで、ナイメーヘンからぐるっと平野を走ってアーネムに向かう。残り53.1km地点の4級山岳ポスバンク(2.2km/最大12%)を除いて大きな起伏はなく、オランダ最終日もスプリンターのためのステージだ。

スタートを待つトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)スタートを待つトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiスプリンターチームが戦力100%残しているため逃げにはチャンスが薄いステージだが、フィニッシュ地点アーネムに住むマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)と、前日に逃げながらもジャージ獲得を逃したジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が2日連続で逃げた。

ジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)ら4名が序盤から逃げるジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)ら4名が序盤から逃げる photo:Kei Tsujiこの日はヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)とフレン・アメルスケタ(スペイン、ウィリエール・サウスイースト)がチャリンギとベルラートの旅の伴侶となる。フィニッシュまで140kmを残してタイム差は8分まで拡大。最高気温27度の暑さの中、コース両脇の大勢の観客に見守られながらレースは進んだ。

2日連続で逃げたマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)2日連続で逃げたマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiマリアローザを守る立場のジャイアント・アルペシンに加えて、この日はマリアローザを奪う立場のエティックス・クイックステップが積極的に集団コントロールに加わった。総合系チームが心配するような荒れた展開にはならなかったものの、頻出するロータリーで落車したチームメイトに乗り上げる形でジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が転倒してしまう。

今シーズン限りでの引退が有力視されている38歳のペローが今大会最初のリタイア者となる。病院に搬送されたペローは一部記憶を失っているものの骨折は無し。レース復帰には時間がかからないと見られている。

ドイツ国境に近い平野部を進むメイン集団はロット・ソウダルやティンコフ勢のペースアップによって分裂するシーンも見られたが、完全に集団を分断するような事態は起こらない。一方の逃げグループの中で4級山岳をかけたバトルが繰り広げられ、チャリンギが頂上を先頭通過する。前日の2ポイントに3ポイントを上乗せしたチャリンギがマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)獲得を決めた。



4級山岳でスプリントするマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)4級山岳でスプリントするマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
チームメイトに守られて走るトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)チームメイトに守られて走るトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsujiキャノンデールを先頭にメイン集団が4級山岳を進むキャノンデールを先頭にメイン集団が4級山岳を進む photo:Kei Tsuji
エティックス・クイックステップが強力にメイン集団を牽引エティックス・クイックステップが強力にメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji


アーネムの周回コースに入ったプロトンアーネムの周回コースに入ったプロトン photo:Kei Tsuji合計2周するアーネムの14km周回コースに入る頃にはタイム差は2分半に。エティックス・クイックステップの集団牽引によってタイム差は縮まり、同時に集団後方では脱落者が出始める。

独走に持ち込んだヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)独走に持ち込んだヨハン・ヴァンジル(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji横風区間での分裂に落車が重なって集団は縮小。総合2位プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)や総合8位シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)はメイン集団から脱落した。

スプリントでヴィヴィアーニらを引き離すマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)スプリントでヴィヴィアーニらを引き離すマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji1分リードで最終周回に入った先頭4名の中からディメンションデータのヴァンジルが飛び出して独走を開始する。残り10kmで1分近いリードを保ったヴァンジルだったが、さすがにスプリンターチームを相手にした平坦路での独走は不利。懸命の力走が逃げ切りの可能性を臭わせたが、残り1.7kmでエティックス・クイックステップ率いるメイン集団に吸収された。

スプリントで2連勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)スプリントで2連勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiワール川にかかる橋をエティックス・クイックステップ先頭のメイン集団が駆け抜ける。マリアロッサのキッテルを従えたベルギーチームは、単発的なバルディアーニCSFの干渉も落ち着いて対処する。トレック・セガフレードとロット・ソウダルが被せにかかるが、マッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニのイタリアンリードアウトがキッテルのポジションを守り続けた。

オランダの3ステージを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)オランダの3ステージを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji最後はサバティーニが芸術的なリードアウトを見せ、絶好の位置から緩い左コーナーのベストラインを突き進んだキッテルが後続を引き離す。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)とジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)の追撃も届かず、先に後ろで手を挙げるサバティーニに見守られながら赤いキッテルが両手を挙げた。

圧倒的とも言えるスプリントで2連勝を飾ったキッテル。「この素晴らしいチームを誇りに思う。逃げを捕まえて、スプリントまでスムーズに持ち込んでくれたんだ。間違いなく今日最強のチームだった。チームにはマッテオ・トレンティンとファビオ・サバティーニという素晴らしいパイロットがいる。他のチームメイトが常に風よけになってくれて、最後に彼らがいつも最高のポジションに連れて行ってくれるんだ。一人でも欠けていたらこの成功は掴めなかった」と、エティックス・クイックステップの完璧な仕事ぶりを讃える。

「ステージ優勝に集中していた」というキッテルはボーナスタイム10秒獲得によって総合首位に。トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)から9秒リードし、キッテルが自身初のマリアローザに袖を通した。

オランダでの3ステージを終えてジロは南イタリアに移動する。1日の休息日を挟んでカタンツァーロをスタートする第4ステージにキッテルはマリアローザを着て挑む。チャリンギがマリアアッズーラ、ヴィヴィアーニがマリアロッサ、そしてトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)がマリアビアンカを着て走る予定だ。



マリアローザを着てイタリアに渡るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)マリアローザを着てイタリアに渡るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2016第3ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)     4h23’45”
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
3位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
7位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
9位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、ランプレ・メリダ)
185位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +7’39”

マリアローザ 個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)     9h13’10”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +09”
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)             +15”
4位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)    +17”
5位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)              +21”
6位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)    +22”
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)         +23”
8位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)               +25”
9位 チャド・ハガ(アメリカ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)     +26”

マリアロッサ ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)      106pts
2位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)           80pts
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)            49pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)            5pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)           3pts
3位 フレン・アメルスケタ(スペイン)                     2pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)  9h13’27”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)    +05”
3位 ルーカス・ヴィスニオフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)+12”

チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン                       27h40’21”
2位 ロットNLユンボ                             +15”
3位 エティックス・クイックステップ                      +20”

text&photo:Kei Tsuji in Arnhem, Netherlands

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