マリアローザの他にもジロ・デ・イタリアには3つの特別賞ジャージが存在する。スプリンターのためのマリアロッサ、クライマーのためのマリアアッズーラ、そして若手のためのマリアビアンカだ。ここでは各賞のシステムと有力候補を紹介します。



マリアロッサ ポイント賞

マリアロッサを獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)マリアロッサを獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji総合争いに注視しがちなステージレースに花を添えるのが、華々しい集団スプリント。ポイント賞ジャージは、迫力あるスプリントバトルを体現するかのような真っ赤なジャージデザインが特徴。「スピード」「スプリント」「パワー」を象徴するジャージはマリアロッサ(赤色ジャージ)と呼ばれる。ジャージスポンサーはアイスメーカーのアルジダ社。

長年ジロではステージの種類に関わらず一律のポイントが与えられてきたため、総合狙いの選手たちがポイント賞のトップに輝くパターンが頻出した。2012年以前のポイント賞受賞者を見ると総合上位に絡むようなオールラウンダー&クライマーの名前が並んでいる。

2014年にポイントシステムに変更が加えられ、平坦ステージでより多くのポイントを稼ぐことができる配分になった。2015年はさらに平坦ステージの獲得ポイントが増加し、ますますスプリンター向きの賞になったと言っていい。例えば平坦ステージで優勝すれば50ポイント獲得だが、険しい山岳ステージやタイムトライアルで勝利しても15ポイント(平坦ステージの中間スプリント以下)しか獲得できない。ポイント配分は以下の通りだ。

フィニッシュ ポイント配分
A&Bカテゴリー(平坦:第2, 3, 4, 5, 7, 11, 12, 17, 21ステージ):
50pts, 35pts, 25pts, 18pts, 14pts, 12pts, 10pts, 8pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
Cカテゴリー(中級山岳:第6, 8, 16, 18ステージ):
25pts, 18pts, 12pts, 8pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
D&Eカテゴリー(超級山岳/TT:第1, 9, 10, 13, 14, 15, 19, 20ステージ):
15pts, 12pts, 9pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt

スプリントポイント ポイント配分
A&Bカテゴリー(平坦:第2, 3, 4, 5, 7, 11, 12, 17, 21ステージ):
20pts, 12pts, 8pts, 6pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
Cカテゴリー(中級山岳:第6, 8, 16, 18ステージ):
10pts, 6pts, 3pts, 2pts, 1pt
D&Eカテゴリー(超級山岳/TT:第1, 9, 10, 13, 14, 15, 19, 20ステージ):
8pts, 4pts, 1pt

マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele今季すでに世界最多8勝を飾っているマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が2年ぶりにジロに帰ってくる。キッテルはデンマーク開幕の2014年大会でスプリント2連勝を飾ったが、発熱によってイタリアの地を踏むことなくリタイアしている。2011年のプロデビュー以降これまで多くの勝利を収めている27歳のジャーマンスプリンターだが、実は、まだイタリア国内で勝利したことがない。

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Tour of Turkey/Brian Hodesドイツの先輩スプリンターにあたるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は2008年、2010年、2015年にステージ1勝ずつ飾っている。グライペルは直前のツアー・オブ・ターキーで落車して脚を負傷し、集団スプリントでは精彩を欠いた。チーム力を発揮してステージ1勝を飾ったものの本調子とは言えない状態だ。

カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiジロにはイタリアンスプリンターが大集合する。昨年マリアロッサを獲得したジャコモ・ニッツォロ(トレック・セガフレード)の他、同年ステージ2勝のサーシャ・モードロ(ランプレ・メリダ)、同年ステージ1勝のエリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)、そしてヤコブ・マレツコ(ウィリエール・サウスイースト)、クリスティアン・ズバラーリ(ディメンションデータ)、ソニー・コルブレッリ(バルディアーニCSF)らがフィニッシュ前を沸かすだろう。

次世代弾丸スプリンターの21歳はカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は昨年のブエルタに続くステージ優勝なるか。2度目のジロ出場となるミラノ〜サンレモ覇者のアルノー・デマール(フランス、FDJ)はグランツール初勝利を追い求める。登れるスプリンターとして知られるホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)やニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)は平坦ステージだけでなく中級山岳ステージでも勝負に絡んでくるだろう。

歴代ポイント賞受賞者
2015年 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア)
2014年 ナセル・ブアニ(フランス)
2013年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)



マリアアッズーラ 山岳賞

マリアアッズーラを獲得したジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)マリアアッズーラを獲得したジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) photo:Kei Tsujiグランツールの中で最も山岳の難易度が高いと言われるジロ・デ・イタリア。それだけに、山岳賞ジャージには大きな価値がある。

長年にわたって緑色のマリアヴェルデが採用されていたが、2012年から青色に変更された。「クライミング」「俊敏さ」「スタミナ」を象徴するジャージの名称はマリアアッズーラ(青色ジャージ)。引き続きバンカ・メディオラヌムがスポンサーにつく。

登場するカテゴリー山岳は、チーマコッピ、1級山岳、2級山岳、3級山岳、4級山岳の5種類。当然のことながら難易度の高いカテゴリー山岳に高ポイントが与えられており、仮に連日逃げて4級山岳を11回先頭通過しても、1回の1級山岳通過でひっくり返る計算だ。なお、ツール・ド・フランスとは異なり、山頂フィニッシュのポイント2倍システムは設定されない。

山岳賞 ポイント配分
チーマコッピ:45pts, 30pts, 20pts, 14pts, 10pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
1級山岳:35pts, 18pts, 12pts, 9pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
2級山岳:15pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
3級山岳:7pts, 4pts, 2pts, 1pt
4級山岳:3pts, 2pts, 1pt

ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス  、写真は第17ステージより)ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス 、写真は第17ステージより) photo:Cor Vos昨年山岳賞に輝いたジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)はバルベルデの山岳アシストに専念することになるだろう。同様に多くのクライマーたちは総合エースのために走る必要があるため自由な動きが許されない。山岳賞争いに加わるのは、前半ステージで総合成績を落としたクライマーたちだ。

2013年の受賞者ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)はチームリーダーとして総合成績を優先するはず(昨年総合22位)。2014年ツール・ド・フランス総合敢闘賞獲得のアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)やジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)と言った比較的自由に動けるクライマーたちマリアアッズーラを狙うことになるだろう。今季オリカ・グリーンエッジに加入したルーベン・プラサ(スペイン)とアメツ・チュルカ(スペイン)も山岳ステージで注目だ。

歴代山岳賞受賞者
2015年 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
2014年 ジュリアン・アレドンド(コロンビア)
2013年 ステファノ・ピラッツィ(イタリア)
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)



マリアビアンカ ヤングライダー賞

マリアビアンカを獲得したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)マリアビアンカを獲得したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji若手選手を対象としたヤングライダー賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージに座を奪われていたが、9年前に復活した。対象となるのは誕生日が1991年1月1日以降の選手。ディスカウント系スーパーマーケットのユーロスピンがスポンサーを務める。

ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele多くの場合、若手選手はアシストとして力を尽くさなければならず、本人の希望通りマリアビアンカに100%注力出来る選手は少ない。これはマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)にも同じことが言える。

ヤングライダー賞対象選手としてはキャノンデールのダヴィデ・フォルモロ(イタリア)とジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)、チームスカイのセバスティアン・エナオゴメス(コロンビア)とイアン・ボズウェル(アメリカ)ら次世代オールラウンダーの名前が挙がるが、いずれの選手もエースのために走るためヤングライダー賞のチャンスは薄い。

他にもボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、マヌエル・センニ(イタリア、BMCレーシング)、メルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)、20歳になったばかりの今大会最年少ダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・サウスイースト)らがヤングライダー賞対象選手だ。

歴代ヤングライダー賞受賞者
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポート(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ未設定

text:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands