オランダでの第99回ジロ・デ・イタリア開幕まで残り2日。総合優勝を狙ってドロミテやアルプスで山岳バトルを繰り広げるオールラウンダーをピックアップ。ニーバリ、バルベルデ、ランダがマリアローザの有力候補だ。



2015年ジロ・デ・イタリア トロフェオセンツァフィーネを手にしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)2015年ジロ・デ・イタリア トロフェオセンツァフィーネを手にしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji


ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele総合リーダーの証であるマリアローザの色は、主催紙ガゼッタ・デッロ・スポルト紙に使用されている紙の色に由来する。直訳すると「ピンク色のジャージ」ではなく「バラ色のジャージ」。総合優勝者には終着地トリノでトロフェオ・センツァフィーネが授与される。

アラフィリップらを振り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アラフィリップらを振り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleボーナスタイムは今年も健在。タイムトライアル(第1、第9、第15ステージ)を除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位3秒、2位2秒、3位1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージではボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。ボーナスタイムを地道に積み重ねた選手が、最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、総合トップ10争いで笑うことになるかもしれない。

ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Bettini前年度の覇者アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)はツール・ド・フランスに集中するために欠場する。出場メンバーの中で総合優勝経験があるのは2013年のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、2012年ライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)、2011年ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)※繰り上げ、2004年ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)の4名だ。

リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール) photo:Tim de Waele3年ぶり5回目のジロ出場となるニーバリは2010年総合3位、2011年総合2位、そして2013年に総合優勝。チームメイトのファビオ・アル(イタリア)がツール・ド・フランスに照準を合わす中、ニーバリは2度目のマリアローザ獲得を目指す。今季ニーバリは2月のツアー・オブ・オマーンで総合優勝を飾ったものの、ティレーノ〜アドリアティコ総合6位、ジロ・デル・トレンティーノ総合21位、リエージュ51位と低迷しているが、これはジロとツール、そしてリオ五輪に向けた調整だと捉える声も。ヤコブ・フグルサング(デンマーク)やエロス・カペッキ(イタリア)、スカルポーニらがドロミテとアルプスの山々でニーバリをアシストする。

エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleニーバリ最大のライバルと目されるのがジロ初出場のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だ。バルベルデは「リオ五輪にフレッシュな状態で挑むため」にレースプログラムを大きく変更。これまでツール・ド・フランスに8回出場(総合トップ10フィニッシュ5回)、ブエルタ・ア・エスパーニャに10回出場(2009年総合優勝、総合表彰台6回、総合トップ10フィニッシュ9回)しているが、意外にもジロには出場したことがない。

ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) photo:Bettini今季バルベルデはブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝、ブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオン総合優勝、そしてフレーシュ・ワロンヌで4度目の優勝。36歳の誕生日を迎えたばかりのベテランオールラウンダーは絶好調だ。チームを移籍して復調したカルロス・ベタンクール(コロンビア)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)、ホセ・エラーダ(スペイン)らがボディーガードを担う。

トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele1年前のジロでアルをアシストしながら山岳ステージで2勝し、総合3位でレースを終えたミケル・ランダ(スペイン)はアスタナからチームスカイに移籍。26歳のバスクライダーが初めてチームリーダーとしてグランツールを走る。ランダは直前のトレンティーノで山岳ステージを制して総合優勝を飾っており、好調のままジロ開幕を迎える。

同じバスク出身のミケル・ニエベ(スペイン)やニコラス・ロッシュ(アイルランド)、セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア)、イアン・ボズウェル(アメリカ)と言った強力な山岳アシストを従えるランダだが、タイムトライアルに不安を抱えるのも事実。1年前の個人TTでランダはコンタドールから4分を失っている。チームスカイ移籍後、TTバイクのポジショニングに時間を割いたというランダの進化に注目だ。

ジロで総合2位を2回(2013年と2014年)経験しているリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)も心機一転ニューチームでの出場。総合14位に終わった前年よりも豊富な山岳サポート体制を得ており、今年のジロを「今までのキャリアの中で最大のチャンス」と断言する。

同じくコロンビア出身で、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝を飾って総合5位、そしてRCSスポルト主催のアブダビツアーで総合優勝を飾った26歳のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)は2度目のジロ挑戦。山岳ステージではドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)やイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)に代表されるクライマー系オールラウンダーもバトルを繰り広げるだろう。

2012年の総合優勝者ヘシェダルは昨年ジロの最終週に目覚しい走りを見せ、最終的に総合5位でフィニッシュしている。地元オランダ開幕だけに、昨年総合7位に入ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)のモチベーションも高いはず。クルイスウィクは直前のツール・ド・ヨークシャーで存在感ある走りを見せた。

2014年ツール・ド・フランスの山岳王ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)は2013年のジロで総合7位に入ると翌年総合6位。昨年ブエルタで総合3位に入り、オールラウンダーとして着実な進化を遂げている。昨年ステージ優勝を飾り、今季パリ〜ニースとツール・ド・ロマンディで総合4位に入った26歳のイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)も伏兵として注目だ。

昨年ブエルタでオールラウンダーとして開花し、総合6位でレースを終えたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は初日の個人TTの優勝候補。今季個人TTで2位を3度経験しているだけにモチベーションは高いはず。しかし、初出場のジロで総合争いに絡むことを期待されているが、開幕前の記者会見で「リオ五輪タイムトライアルに照準を合わせているため、総合を狙えるコンディションではない」ことを明かしている。



歴代マリアローザ獲得選手
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)

text:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands

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