最大勾配が28%に達する2級山岳で絞られた集団から、コンタドールを発射台に飛び出したサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)がアタック。集団が割れる荒れた展開から抜け出した38歳が独走勝利を飾った。



チームスカイ率いるメイン集団が逃げを追うチームスカイ率いるメイン集団が逃げを追う photo:Tim de Waele


ブエルタ・アル・パイスバスコ2016第4ステージブエルタ・アル・パイスバスコ2016第4ステージ image:Vuelta al País Vascoバスク一周第4ステージはレセカからオリオまでの165km。「ビスケー湾の真珠」と称されるサンセバスチャンの南に広がる山岳地帯を走る。レース前半にはクラシカ・サンセバスティアンの名物坂である1級山岳ハイスキベルや3級山岳アルカレも登場し、レース後半は山の上に位置するアイアに向かってヒルクライムリピート。2級山岳が4つ連続して設定されており、特にフィニッシュ手前の2つの2級山岳アイアは平均勾配が15%に達する激坂だ。

カテゴリー山岳で動くカルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)らカテゴリー山岳で動くカルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)ら photo:Tim de Waele「アルデンヌ・クラシック」を彷彿とさせるこのアップダウンコースで、ルイスアンヘル・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)やティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、クリストフ・リブロン(フランス、AG2Rラモンディアール)、カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)、アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)、シモーネ・ペティッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)が逃げを組んだ。

雨のバスク地方を走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)雨のバスク地方を走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleチームスカイ率いるメイン集団は2分半遅れでレース後半のアップダウン区間へ。フィニッシュまで20kmを残した最後から2つ目の2級山岳アイアでワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)やファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が動きを見せるも、アシストを揃えるチームスカイが封じ込める。約40名に絞られたメイン集団は先頭から1分遅れで最後の2級山岳アイアに突入した。

集団を振り切ったサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)集団を振り切ったサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)が真っ先にアタックしたが決まらず、最大勾配28%の激坂区間でセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)が一人抜け出すことに成功する。雨に濡れた激坂を蛇行しながら進んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がエナオモントーヤに追いついた一方で、リーダージャージを着るミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)は脱落した。

久々の勝利を喜ぶサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)久々の勝利を喜ぶサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleメイン集団から抜け出したエナオモントーヤとコンタドール、キンタナは、先頭で生き残っていた逃げメンバーのベローナとウェレンスに合流。そこからベローナが独走に持ち込んだが、コンタドールを含めて先行していた選手たちは残り2km地点で全て吸収される。ランダもメイン集団に復帰した。

リーダージャージを獲得したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)リーダージャージを獲得したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waeleするとカテゴリーの付いていない短い登りでコンタドールが再び動く。ダンシングで加速したコンタドールにはエナオモントーヤがぴったりとマーク。そこからカウンターアタックでサンチェスが飛び出し、頂上目がけて全開で踏んだサンチェスがリードを広げて下りへ。得意のダウンヒルで後続をさらに引き離すとともに息を整えたサンチェスが、フィニッシュまでの1kmを踏み抜いた。

コンタドールやキンタナを含む20名弱の集団は追いつかず、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)やワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)の追撃をタイム差ゼロで振り切ったサンチェスが勝利を飾った。

「とてもとても美しい1日だ。今日は序盤に集団から遅れてしまって、なんとかチームメイトと協力して集団に復帰。そんな厳しい1日の最後にステージ優勝を飾るなんて本当にアメイジングだ。雨が降る危険なレースで、登りが断続的に登場するとともにペースも速かった。終盤はアタックの応酬だったよ。コンタドールのアタックに反応して、登りの頂上まで200mを残してカウンターアタック。そこからフィニッシュまで全開走行だった」とサンチェスは語る。

サンチェスは北京五輪ロードレースで金メダルを獲得したアストゥリアス州出身の38歳。長年所属したエウスカルテルの解散後、しばらくチーム契約を結べずに引退の危機を迎えていたが、2014年シーズン開始後にBMCレーシングに合流した。2015年ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのチームタイムトライアルでの優勝メンバーだが、個人レースでの勝利はBMCレーシング加入後初だ。

「個人としての最後の勝利は2013年のドーフィネまで遡るんだ。あれから長い時間が経った。精神的にもこの勝利はとても重要。明日はもっと厳しいコースが待っているし、天候も悪く、ライバルたちも強力なので、総合争いはどうなるか分からない。とにかく今はこの勝利を祝いたい気分だ」とサンチェスはコメントしている。

最後の短い登りで再び脱落したランダが8秒遅れでフィニッシュしたためリーダージャージはウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)の手に。4秒差でセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)が続いており、総合上位12名が14秒差にひしめく混戦状態だ。1級山岳ウサルツァの山頂フィニッシュが登場する翌日の第5ステージで再びビッグネームが動きを見せるだろう。

選手コメントは各チーム公式サイトより。



ブエルタ・アル・パイスバスコ2016第4ステージ結果
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)             4h13’12”
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
4位 アレクシ・ヴィエルモーズ(フランス、AG2Rラモンディアール)
5位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ローソン・クラドック(アメリカ、キャノンデール)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
20位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)                 +08”

個人総合成績
1位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)           17h52’48”
2位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)        +04”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)                  +07”
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)              +08”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)              +10”
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                      +12”
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                +14”
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 セバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、FDJ)

ポイント賞
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)

山岳賞
1位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)

スプリント賞
1位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)

チーム総合成績
1位 カチューシャ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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