チプレッサとポッジオを越えてなおもメイン集団は40名の大所帯。ミラノ〜サンレモを締めくくる集団スプリントで、落車を逃れたアルノー・デマール(フランス、FDJ)が自身初のモニュメント制覇を達成した。



サンレモに向かって地中海沿いを西進するサンレモに向かって地中海沿いを西進する photo:Tim de Waele


逃げグループを形成するゲディミナス・バグドナス(リトアニア、AG2Rラモンディアール)ら11名逃げグループを形成するゲディミナス・バグドナス(リトアニア、AG2Rラモンディアール)ら11名 photo:Tim de Waeleイタリアに「ラ・プリマヴェーラ(春)」がやってきた。ミラノをスタートし、リグーリア海岸のオーシャンロードと連続する登りをこなしてリヴィエラの街サンレモにフィニッシュする第107回ミラノ〜サンレモ。2016年シーズンのモニュメント(5大クラシック)初戦は、春らしい暖かな太陽が降り注ぐ中で争われた。

7時間におよぶ長旅は、朝10時、ミラノをスタート。25種類のチームジャージを着る総勢200名が291kmコースに繰り出すとすぐに11名の逃げグループが形成された。逃げメンバーは以下のとおり。

ゲディミナス・バグドナス(リトアニア、AG2Rラモンディアール)
ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)
マッテーオ・ボノ(イタリア、ランプレ・メリダ)
マーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)
マルコ・コレダン(イタリア、トレック・セガフレード)
セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、アンドローニジョカトリ)
アドリアン・クレク(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)
ヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)
サムエーレ・コンティ(イタリア、サウスイースト)
ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)
アンドレア・ペロン(イタリア、ノボノルディスク)

晴れ渡るロンバルディア平原を走る晴れ渡るロンバルディア平原を走る photo:Tim de Waeleボノ、チャリンギ、クレク、バルタ、ペロンは2年連続の逃げ。チャリンギとボノ、バルタに至っては3年連続の逃げ。ミラノ〜サンレモでの逃げ方を心得ている彼らは最大で10分35秒のリードを稼ぎ出すことに成功する。しかしその時点でまだサンレモのフィニッシュラインは250km先。ティンコフとオリカ・グリーンエッジが落ち着いてメイン集団をコントロールし、ロンバルディア平原を抜けて一路リグーリア海岸を目指した。

リグーリア海岸の高速道路を走るリグーリア海岸の高速道路を走る photo:Tim de Waeleレース中盤、ちょうど大会最高地点であるトゥルキーノ峠の先、リグーリア海岸に出てすぐの区間で崖崩れが発生したため主催者RCSスポルトは急遽コースの変更を各チームに通達。並走する高速道路を1区間だけ走って崖崩れ区間を回避する措置が取られた。この迅速な対応によってレースはニュートラル措置を取ることなく続行。迂回によってレースは4km延長されて295kmで争われることに。

サヴォーナの街に差し掛かるメイン集団サヴォーナの街に差し掛かるメイン集団 photo:Tim de Waeleリグーリア海岸に出たメイン集団では、ティンコフやカチューシャ、ディメンションデータ、オリカ・グリーンエッジ、コフィディスがメンバーを集めてペースアップ。残り60kmを切ってから始まる実質的な最初の難所トレカーピ(3つの岬)に差し掛かる頃にタイム差は2分に。スプリンターを苦しめたいティンコフやBMCレーシング、オリカ・グリーンエッジ、ロット・ソウダルが登りでペースを上げたため、トレカーピを終える頃にタイム差は40秒にまで縮まっていた。

レース時間が6時間を超え、フィニッシュまで34kmを残したところで逃げグループは分裂する。コレダンのアタックによって6名に絞り込まれた状態でチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)の登坂を開始する。しかしメイン集団は20秒後方に迫っていた。

このチプレッサに向けて激しいポジション取りを繰り広げたメイン集団の中では落車が断続的に発生する。残り30km地点で、優勝候補の一角であるマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、アルノー・デマール(フランス、FDJ)が相次いで落車。いずれの選手もメイン集団に復帰したが、右肘に怪我を負ったマシューズはポジションを上げることはできなかった。



リグーリア海岸を走るメイン集団リグーリア海岸を走るメイン集団 photo:Tim de Waele
残り30km地点で落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)残り30km地点で落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele残り30km地点で落車したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)残り30km地点で落車したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele


発煙筒がたかれるトレカーピを走る発煙筒がたかれるトレカーピを走る photo:Tim de Waeleチプレッサで逃げを飲み込んだメイン集団では、スプリンターにダメージを与えたいアスタナがペースアップを開始。優勝経験者マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)をはじめとするスプリンターが脱落していく。するとジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が先頭でアタックを仕掛け、ここにイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)が追い付いた。

集団前方で登りをこなすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)集団前方で登りをこなすペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Tim de Waele10秒リードでチプレッサの頂上を越えたヴィスコンティとスタナードには、下り終了後の平坦路でダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とファビオ・サバティーニ(イタリア、エティックス・クイックステップ)、マッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)が追いついて先頭5名。カチューシャが牽引するメイン集団に対して15秒のリードを得たものの、ポッジオを前にフィニッシュまで11kmを残して吸収される。

ポッジオでアタックするトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)ポッジオでアタックするトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waeleそして始まったポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)の登坂。フィニッシュの5.4km手前で頂上を迎えるこの最後の難所で、カチューシャがアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)のためにペースを刻む。エーススプリンターが確実に集団に残り、さらにアタックを仕掛けにくい絶妙なペースを作った。

ポッジオでアタックするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ポッジオでアタックするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tim de Waele集団は例年よりも比較的平穏にポッジオを登ったが、アンドレア・フェーディ(イタリア、サウスイースト)のアタックが起爆剤となり、頂上まで1kmを残してアタックが続発する。トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)のカウンターアタックで飛び出したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が先頭でポッジオ頂上をクリア。元世界チャンピオンが独走でテクニカルダウンヒルに差し掛かった。

スプリントで競り合うユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とアルノー・デマール(フランス、FDJ)スプリントで競り合うユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とアルノー・デマール(フランス、FDJ) photo:Tim de Waeleファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)、ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が並んでクヴィアトコウスキーを追ったが、互いの出方を窺う牽制が入ったためペースが上がりきらない。トップチューブに座ってペダリングするクヴィアトコウスキーが5秒リードで下りを終え、フィニッシュまで残り3kmの平坦路に突入した。

ローマ通りでのスプリントを制したアルノー・デマール(フランス、FDJ)ローマ通りでのスプリントを制したアルノー・デマール(フランス、FDJ) photo:Tim de Waeleポッジオの登りでばらけ、さらにコーナーが連続する下りで長く伸びたメイン集団が平坦区間でまとまる。その数およそ40名。集団スプリントに持ち込みたくないカンチェラーラが残り2kmで加速し、先頭クヴィアトコウスキーをキャッチする。一旦落ち着いたところで今度はエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が勝負に出る。

落車したフェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)が失意のフィニッシュ落車したフェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)が失意のフィニッシュ photo:Tim de Waele残り1kmアーチ手前で加速したボアッソンハーゲンにはグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が食らいつき、2人で数十メートルのリードを得たものの、一列棒状のメイン集団が残り500mで合流。ボアッソンハーゲン、ファンアフェルマート、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)、サガン、カンチェラーラという順でスプリント開始のタイミングを窺う。

するとローマ通りの入り口の緩いコーナー(残り300m)でガビリアが前走ファンアフェルマートの後輪に触れて落車。後続のサガンとカンチェラーラは巧みなハンドルさばきで落車を回避したが、スプリントに向けたスピードを失ってしまった。

そんな混乱の中からロングスプリントに持ち込んだユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)を追って、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)やデマールが絶好の位置から加速開始する。しかしブアニはギアトラブルによって失速。伸びやかなスプリントで先行するルーランズをかわし、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)の追撃を振り切ったデマールが先着。両手で顔を覆う「信じられない」というポーズでデマールが6時間54分45秒におよぶ長い戦いにピリオドを打った。

「(残り30kmの落車で)一旦はゲームオーバーだと思ったけど、ウィリアム・ボネが常にそばでアシストしてくれた。そしてポッジオの登りに向けてマチュー・ラダニュ、ケヴィン・レザ、イグナタス・コノヴァロヴァスが位置取りしてくれた。すべてのサイクリストが夢見るクラシックレースでの勝利。ここにたどり着くまでにもっと長い経験が必要だと思っていた」とデマールは語る。

1991年生まれの24歳が、1995年のローラン・ジャラベール以来となるフランス人によるミラノ〜サンレモ制覇。直前のパリ〜ニースでステージ優勝したデマールが初のモニュメント制覇を果たした。

選手コメントは後ほどまとめてアップします。



ミラノ〜サンレモ表彰台、2位スウィフト、1位デマール、3位ルーランズミラノ〜サンレモ表彰台、2位スウィフト、1位デマール、3位ルーランズ photo:Tim de Waele


ミラノ〜サンレモ2016結果
1位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                   6h54’45”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
6位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
7位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
8位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、サウスイースト)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
11位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
12位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
13位 マテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
14位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール)
15位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
16位 ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
17位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
18位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ)
19位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
20位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アンドローニジョカトリ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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