シエナの街中に向かう急勾配の登りでライバルを振り切ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が、自身3度目となるカンポ広場でのガッツポーズを披露した。未舗装路を含む176kmコースで開催された第10回ストラーデビアンケの模様をお伝えします。



「白い道」を進むメイン集団「白い道」を進むメイン集団 photo:Tim de Waele


ストラーデビアンケ2016コースプロフィールストラーデビアンケ2016コースプロフィール image:RCS Sportレース名には「クラシック」という言葉が入っておらず、まだ開催10回目と歴史も浅い。しかしこれほどまでに「クラシック」なレースは他にない。イタリア語で「白い道」を意味するストラーデビアンケがイタリア・トスカーナ州で開催された。

シエナ南部に伸びる未舗装路を走るシエナ南部に伸びる未舗装路を走る photo:Tim de Waele「白い道」つまり未舗装路を含むコースの全長は176kmで、スタートとフィニッシュは中世の面影を色濃く残す丘の上の街シエナ。未舗装区間は9ヶ所設定されており、全長は52.8kmにおよぶ。つまりコース全体の約1/3が未舗装区間であり、中には長さが11.9kmに及ぶものや、最大勾配が20%近くまで跳ね上がるものも。

メイン集団から抜け出した逃げグループメイン集団から抜け出した逃げグループ photo:Tim de Waele曇り空のシエナをスタートしてしばらくすると、先頭ではジェシー・サージェント(ニュージーランド、AG2Rラモンディアール)やリカルド・スタッキオッティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)ら8名がエスケープ開始。しかし未舗装区間に差し掛かるたびにメイン集団ではペースが上がり、レース中盤の時点で集団後方では脱落者が続出する。逃げグループも残り70km地点で早くも吸収される。

続いてカウンターアタックを仕掛けたのはトップチームのアシストたち。ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)やサルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)、アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)、マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)の5名が先行し、これをメイン集団が追いかける。落車やパンク、横風による分裂によってレース後半に差し掛かる時点でメイン集団は60名ほどに絞られていた。



砂埃を巻き上げてトスカーナの丘を進むプロトン砂埃を巻き上げてトスカーナの丘を進むプロトン photo:Tim de Waele


エティックス・クイックステップを先頭に未舗装のダウンヒルをこなすエティックス・クイックステップを先頭に未舗装のダウンヒルをこなす photo:Tim de Waeleトスカーナの丘を縫う「白い道」を進むうちに先頭はブランビッラ、プッチオ、ブックウォルター、モンフォールに絞られ、第7未舗装区間でその中からブランビッラが独走開始。すると続く第8未舗装区間でレースは大きな動きを見せる。急勾配区間を含むこの残り19km地点のダートでアルカンシェルがアタックした。

レースを動かしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)レースを動かしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Tim de Waeleペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の加速にはゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が反応。イタリアチャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は脱落する。

シエナのカンポ広場にフィニッシュするシエナのカンポ広場にフィニッシュする photo:Tim de Waele後ろを振り向かず突き進んだサガンはすぐに先頭ブランビッラに追いつき、スティバルとカンチェラーラとともに4名の先行グループを形成して最後の第9未舗装区間をクリアする。カンチェラーラのアタックは決まらず先頭は4名のまま後続グループを引き離した。

スティバルを下したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)スティバルを下したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele残り8kmを切って定石通り(メンバー2名を揃えるエティックスの)ブランビッラが先頭グループの最後尾からスピード差をつけてアタック。一旦はカンチェラーラとサガンに吸収されたが、再度アタックしたブランビッラが再び先頭を独走する。そのまま残り1kmアーチを切ったブランビッラが約10秒リードでシエナ旧市街の石畳坂に差し掛かる。

UCI女子ワールドツアー初戦を制したエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス)UCI女子ワールドツアー初戦を制したエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス) photo:Tim de Waele勾配が15%を刻むこのサンタカテリーナ通りでブランビッラは徐々にリードを失い、後方ではカンチェラーラが加速。スティバルはカンチェラーラに食らいついたもののサガンは脱落。頂上通過後にブランビッラを捉えたカンチェラーラとスティバルが先頭に立ち、肩を突き合わせながら「世界一美しい広場」と称されるカンポ広場への最終コーナーを曲がった。

荒れた石畳のコーナーをバイクを押さえ込んでクリアしたカンチェラーラがスティバルを押さえ込む。観光客でごった返すカンポ広場にカンチェラーラが3本指を立ててフィニッシュした。

2008年と2012年に続くストラーデビアンケ制覇。キャリア最後のシーズンに早くも3勝目を飾ったカンチェラーラは「サガンは登りで厳しい表情を見せていたので、最後の登りではペースを上げて彼を切り離した。賭けだったし、リスクを伴ったけどうまくいった。スティバルは昨年の優勝者で、シクロクロス出身なので一番警戒していたんだ。彼との勝負になると予想していた」とコメントする。

「経験を生かし、自分自身を信頼して掴んだスペシャルな勝利。3回目の優勝で、第6未舗装区間は自分の名前を冠したものになるらしい。なんとも光栄なことだ。来年ここにまた戻ってくることはないけど、自分の名前は生き続ける」とカンチェラーラ。キャリア最後のクラシックシーズンに向けて上々の仕上がり。今後カンチェラーラはティレーノ〜アドリアティコに出場し、ミラノ〜サンレモやその後に続く「北のクラシック」に備える予定だ。

男子レースに先立って同日シエナではUCI女子ワールドツアー初戦が行われ、世界チャンピオンのエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス)が優勝。萩原麻由子はDNFに終わったが、チームメイトのエマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウィグル・ハイファイブ)が3位に入っている。



3度目のストラーデビアンケ制覇を果たしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)3度目のストラーデビアンケ制覇を果たしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele


ストラーデビアンケ2016結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)         4h39’35”
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)
3位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)       +04”
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)                     +13”
5位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)            +34”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)             +37”
7位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)                  +41”
8位 ティエシー・ベノート(ベルギー、ロット・ソウダル)
9位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ)
10位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)                  +50”

ストラーデビアンケ・ウィメン2016
1位 エリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルスドルマンス)            3h30'13"
2位 カタジナ・ニエビアドマ(ポーランド、ラボ・リブ)                  +03"
3位 エマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウィグル・ハイファイブ)              +13"
DNF 萩原麻由子(日本、ウィグル・ハイファイブ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele