今季よりロードホイールの本格展開を開始したジャイアント。そのラインアップの中から、55mmハイトのフルカーボンクリンチャー/チューブレスホイール「SLR AERO」シリーズをインプレッション。耐熱性に優れる自社製リムや駆動剛性を高める独自開発スポーキングを採用したエアロホイールの実力に迫った。



ジャイアント SLR0 AEROジャイアント SLR0 AERO
長年に渡って自転車造りで培ってきたテクノロジーをもとに、本格的にホイールの展開を開始したジャイアント。今回インプレッションを行う「SLR AERO」シリーズは、55mmハイトのロード用エアロホイールで、クリンチャーとチューブレスの両タイヤが装着可能な1本だ。既にインプレッションをお伝えしたローハイトの軽量ホイール「SLR」シリーズと共通のテクノロジーを多く採用。エアロ系の従来モデルにあたる「P-SLR」シリーズよりブラッシュアップを図った。

SLR AEROシリーズに投入された新テクノロジーの中でも特にトピックなのが「DBL:Dynamic Balanced Lacing」という独自開発の新スポーキング。これはジャイアントが掲げるホイールの開発コンセプト「ホイールが回転している状態でのバランスの追求」に基づいたものである。

2:1スポーキングを改良したDynamic Balanced Lacingを採用2:1スポーキングを改良したDynamic Balanced Lacingを採用 写真のホイールが回転すると赤スポークには引張力が、黄スポークには圧縮力が掛かる写真のホイールが回転すると赤スポークには引張力が、黄スポークには圧縮力が掛かる (c)giant-bicycles.com

DBLでは対向するスポークの長さとテンションを変えているDBLでは対向するスポークの長さとテンションを変えている 左右でフランジ径が異なるハイローフランジ左右でフランジ径が異なるハイローフランジ


この「DBL」とは、左右のテンションバランスが取りやすいことから、各メーカーがリアホイールにこぞって採用する「2:1」スポーキングを改良したもの。「2:1」の場合にドライブトレイン側のスポークの半分が圧縮力を、もう半分が引張力を受け、荷重の向きによって相反する動きをしてしまうことで、ロスが発生してしまうことにジャイアントは着目。このロスを低減するために、圧縮力を受けるスポークを短くし、そのテンションを高めることで、駆動時に全てのスポークの負荷が均一になるよう組み上げられている。

リムは高さ55mmx幅23mmというプロファイルで、昨今主流のワイドタイヤに対応。ジャイアントがこれまでに培ってきたカーボン技術が余すこと取り入れられており、ジャイアント社内にて製造。素材にはT700グレードのカーボン原糸と高耐熱性レジンを組み合わせている。

リム幅は23mm。23Cタイヤのサイドウォールとブレーキ面がほぼ面一となるリム幅は23mm。23Cタイヤのサイドウォールとブレーキ面がほぼ面一となる クリンチャーに加え、チューブレスにも対応するクリンチャーに加え、チューブレスにも対応する

U字に近いリム断面の形状。ニップルは内蔵とされているU字に近いリム断面の形状。ニップルは内蔵とされている 前後共にエアロスポークを採用する前後共にエアロスポークを採用する


この高耐熱性レジンはブレーキングの摩擦熱による破損を防ぐためのもので、他社の標準値より約35%も高い245℃というガラス転移温度で耐熱性を向上。一般的にレジンはガラス転移温度が高いほどに粘度が高くなり、カーボン繊維の間に浸透しくくなるために強度低下の原因にもなるが、ジャイアントはこれまでに培って来た高い技術力で強度を確保しつつ高耐熱性レジンの使用を可能とした。

ハブはジャイアントの独自設計品で、横剛性を高めるために、前後ともフランジ間の距離を最大限に拡幅。リアはDBLに対応すると共に左右でフランジ径の異なるハイローフランジ設計とし、バランスを追求した。

フランジ幅を最大限に拡幅したフロントハブフランジ幅を最大限に拡幅したフロントハブ DTスイスのスターラチェットを組み込んだリアハブ(SLR0 AERO)DTスイスのスターラチェットを組み込んだリアハブ(SLR0 AERO)

バルブナット用の面を出す専用スペーサーが付属バルブナット用の面を出す専用スペーサーが付属 チューブレス化キットと専用パッドが付属するチューブレス化キットと専用パッドが付属する


SLR AEROシリーズは「SLR0 AERO」と「SLR1 AERO」の2グレードで展開される。グレード間ではスポークとハブ内部(ラチェットやベアリングなど)が異なり、リムやDBLスポーキングは共通だ。

「SLR0 AERO」は、ハブ内部にDTスイス240Sのスターラチェットシステムを採用し、細やかなノッチで反応性を高めている。スポークはエアロ形状のDTスイスAerolightをメインに、リアの一部にAerocompを使用。リムハイト50mm以上のクリンチャーエアロホイールとしては軽量級の1,591g(実測、リムテープ込み)をマークしている。

ジャイアント SLR1 AEROジャイアント SLR1 AERO
SLR1 AEROのリムは、SLR0と共通だがグラフィックが異なるSLR1 AEROのリムは、SLR0と共通だがグラフィックが異なる リアに3爪式のラチェットを採用するSLR1 AEROのハブリアに3爪式のラチェットを採用するSLR1 AEROのハブ


「SLR1 AERO」は、ハブ内部にオーソドックスなDTスイス製3爪式ラチェットシステムを採用し、信頼性高い仕上がりとなっている。スポークは丸断面バテッドのサピムRaceをメインに、リアの一部にLaserを組み合わせている。実測重量は1,727g (実測、リムテープ込み)だ。

ジャイアントが持つテクノロジーを惜しげもなく注ぎ込み開発されたチューブレス対応フルカーボンエアロホイール「SLR AERO」シリーズ。インプレッションライダーに細沼達男さん(細沼自転車店)を迎え、その走行性能やグレード間の差異を探った。



ー インプレッション

「『回り始めたら止まらない』と感じさせるほどの優れた巡航性 高い速度域で本領を発揮するホイール」
細沼達男(細沼自転車店)


「ひとたび回り始めたら止まらない」。SLR AEROにはそう感じさせるほどの高い巡航性があります。様々なコースプロファイルに対応できる懐の深さや乗り心地は、同時にテストした「SLR(30mmハイト)」に譲りますが、時速35~40km/h台のホビーレース的な高い速度域では圧倒的に「SLR AERO」が有利。速度域が高めのレースや、ロングライドでも平均速度が高いのであれば「SLR AERO」の方がオススメですね。トレインで走っている時やダウンヒルは、SLRよりもラクをすることができます。

「『回り始めたら止まらない』と感じさせるほどの優れた巡航性 高い速度域で本領を発揮するホイール」細沼達男(細沼自転車店)「『回り始めたら止まらない』と感じさせるほどの優れた巡航性 高い速度域で本領を発揮するホイール」細沼達男(細沼自転車店)
また、シリーズの中でも「SLR0 AERO」と「SLR1 AERO」の間には体感できる性能差がありますが、その差は「SLR」シリーズほどではなく、価格差よりも小さいと感じました。

まずは両グレードに共通する性能から。乗り始めて最初に感じたのは、リムのシッカリ感・頼もしさです。見た目通りの縦剛性の高さで、踏み込んだ際にも、真円を保ちながら回り続けてくれるような印象でした。そこに、リムハイトが高いことによる空気抵抗の低さや、DBLスポーキングによる高い伝達効率が加わることで、この高い巡航性に結実しているのでしょう。横剛性も高いレベルにあり、フロントはハブフランジ幅が広くスポークが短いので、ヨレる気配がありません。

「集団走行やダウンヒルでは、SLRよりもラクをすることができる」「集団走行やダウンヒルでは、SLRよりもラクをすることができる」 「両グレード感には確かな性能差があるが、価格差ほど大きくはない」「両グレード感には確かな性能差があるが、価格差ほど大きくはない」 「エアロホイールだから登りは不得意」というイメージを持たれる方は少なくないでしょうが、「SLR AERO」についてはそうとも限りません。長距離の本格的なヒルクライムであればSLRシリーズの様な軽量モデルに分があるのは明らかですが、変形により駆動ロスや空気抵抗が少ないことから、数値よりも重さを感じにくいのです。アップダウンのあるコースでも、下りの勢いでこなせる登りが多ければ、むしろ「SLR AERO」の巡航性が活きてくることでしょう。

もちろん、リム剛性が高い分だけ振動吸収性がトレードオフにはなっていますが、組み合わせるタイヤやチューブでカバーできる範疇です。今回のテストホイールには23Cのタイヤが取り付けられていましたが、エアボリュームのある25Cにして低圧で乗ってあげると良いでしょう。そうすることで、ホイールが持つ巡航性を損なうことなく快適性を高めることができます。

ブレーキング性能は、SLRシリーズと同じくSLR AEROシリーズも高いレベルにあります。「SLR1 AERO」であれば価格的にも重量的にもアルミリム+カーボンカウルのハイブリッド構造のエアロホイールがライバルとなりますが、それらと比較しても晴天時のブレーキ性能で言えば引けを取ることはありません。また、カーボンホイールを複数所有している方であれば、ホイールを替えた際にシューを交換せずに済むのは魅力的なポイントではないでしょうか?

ここからは2グレード間の比較ですが、冒頭でも述べたように体感できる差がありますが、価格ほどの差ではないと言えるでしょう。「SLR0 AERO」と比較すれば「SLR1 AERO」は重量があり、ハブの違いによる回転性能の差異はあるものの、剛性感や巡航性はほぼ同一です。むしろスポークが太くなっている分だけ剛性は僅かに増しているかもしれません。

まとめると、両グレードともにオススメしたいのは、レース志向であったり、ロングライド派でも平地メインのコースを好む方です。軽いホイールしか使ったことないという方にもおすすめで、ローハイトモデルにはない進みの良さを味わってほしいですね。

「SLR0 AERO」か「SLR1 AERO」は予算に応じて選べば良いでしょう。もちろんより高い性能を求める方には「SLR0 AERO」ですね。また、ジャイアントのロードホイールは前後でバラ売りをしているため、フロントに「SLR」、リアに「SLR AERO」を組み合わせてみても面白いでしょう。

SLR0 AEROフロント実測重量 708gSLR0 AEROフロント実測重量 708g SLR0 AEROリア実測重量 883gSLR0 AEROリア実測重量 883g

SLR1 AEROフロント実測重量 769gSLR1 AEROフロント実測重量 769g SLR1 AEROリア実測重量 958gSLR1 AEROリア実測重量 958g


ジャイアント SLR0 AERO
サイズ:700C
リム素材:軽量フルカーボンコンポジット
リム高:55mm
リム幅:23mm
フロントハブ:ジャイアント Alloy
リアハブ:ジャイアント Alloy、スターラチェット式フリー
スポーク:DTスイス Aerolite straight pull/Aerocomp straight pull
スポーキング:フロント16本(ラジアル組)、リア21本(Dynamic Balanced Lacing組)
対応スプロケット:シマノ11速および10速
対応タイヤ:チューブレス、クリンチャー
実測重量(リムフラップ込み):フロント708g、リア883g
付属品:ブレ―キパッド、チューブレス用リムテープ&バルブ
税抜価格:フロント 110,000円、リア 140,000円

ジャイアント SLR1 AERO
サイズ:700C
リム素材:軽量フルカーボンコンポジット
リム高:55mm
リム幅:23mm
フロントハブ:ジャイアント Alloy
リアハブ:ジャイアント Alloy、3爪式フリー
スポーク:サピム Race straight pull/Laser straight pull
スポーキング:フロント16本(ラジアル組)、リア21本(Dynamic Balanced Lacing組)
対応スプロケット:シマノ11速および10速
対応タイヤ:チューブレス、クリンチャー
実測重量(リムフラップ込み):フロント769g、リア958g
付属品:ブレ―キパッド、チューブレス用リムテープ&バルブ
税抜価格:フロント 78,000円、リア 90,000円



インプレライダーのプロフィール

細沼達男(細沼自転車店)細沼達男(細沼自転車店) 細沼達男(細沼自転車店)

東京都板橋区にあるジャイアントパートナーストア「細沼自転車店」店主。高校生の時にスポーツ自転車をはじめ、愛好歴は35年にのぼる。自動車会社勤務やフリーライターを経て、2011年から約3年半に渡りファンライド誌編集長を経験する。自転車メディアに関わる10年間に数多くのロードバイクインプレッションを実施し、海外ブランドの現地発表会への参加実績も豊富。その後2015年2月に自身のサイクルショップをオープンさせる。愛車はジャイアントTCR ADVANCED SL。

細沼自転車店

text&photo:Yuya.Yamamoto
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カテゴリー: Book
著者: 野嶋 剛
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