2日前のクリテリウムに続いてカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がツアー・ダウンアンダー第1ステージで勝利。オーストラリアが誇る次世代スプリンターがライバルたちを圧倒した。



緩いアップダウンを繰り返しながら内陸部を目指す緩いアップダウンを繰り返しながら内陸部を目指す photo:Kei Tsuji
マキュアンのインタビューを受けるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マキュアンのインタビューを受けるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiオーストラリアらしさを前面に押し出した家族オーストラリアらしさを前面に押し出した家族 photo:Kei Tsuji


逃げるアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)ら3名逃げるアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)ら3名 photo:Kei Tsuji選手たちが宿泊しているアデレード中心部のヒルトンから北に5kmの位置にあるプロスペクトをスタートする第1ステージ。街中を抜けて今大会最初の(そしてこの日唯一の)KOMローワー・ハーミテイジを越え、ワインの一大産地として知られるバロッサバレーのリンドックを目指す。

メイン集団の前方に位置取るBMCレーシングメイン集団の前方に位置取るBMCレーシング photo:Kei Tsujiリンドックの26.9km周回コース(合計3周)を含む全長130.8kmコースには緩いアップダウンがあるものの、スプリンターには問題にならない難易度。選手たちを苦しめたのはコースの起伏ではなく、最高気温38度という暑さと、コンスタントに吹く風、そして空の色がオレンジに変わるほどの砂埃だった。

ショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)が逃げグループを率いるショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)が逃げグループを率いる photo:Kei Tsujiスタート後すぐのKOMローワー・ハーミテイジで飛び出したのは「UniSAチームの中で自分の仕事は、逃げに乗ること」というショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。1月7日に開催されたオーストラリア選手権タイムトライアルでBMCレーシングの2人に次いで3位に入った24歳が抜け出すと、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)とマルティン・ケイゼル(オランダ、ロットNLユンボ)の2人が飛びついた。KOMを先頭通過したレイクは山岳賞ジャージを手にしている。

オーストラリアチャンピオンのジャック・ボブリッジ(オーストラリア、トレック・セガフレード)オーストラリアチャンピオンのジャック・ボブリッジ(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji雲によってギラギラした太陽は遮られているものの、ジメジメした暑さに包まれた丘陵地帯で最大2分のリードを稼ぎ出したエスケープトリオ。一方、オリカ・グリーンエッジ率いるメイン集団はタイム差を1分30秒前後に抑え込む。

リンドックの周回コースに入ると逃げグループからケイゼルが脱落し、やがて「まだ脚が仕上がっていない」というグジャールもメイン集団に戻る。TTスペシャリストのレイクが残り20kmから独走状態に。レイクは「ヨーロッパ生まれの2人(グジャールとケイゼル)が暑さに苦しんでいたので、個人タイムトライアルに持ち込んだ」と振り返っている。

メイン集団の先頭はスプリンターチームが入り乱れた状態で進み、孤軍奮闘していたレイクを残り6kmでキャッチ。チームスカイ、エティックス・クイックステップ、トレック・セガフレード、オリカ・グリーンエッジ、ディメンションデータがそれぞれトレインを組み、向かい風が吹き付けるブドウ畑を貫く直線道路を駆け抜けた。



沿道にはオーストラリア国旗が目立つ沿道にはオーストラリア国旗が目立つ photo:Kei Tsuji
メイン集団の先頭でオリカ・グリーンエッジが目を光らすメイン集団の先頭でオリカ・グリーンエッジが目を光らす photo:Kei Tsuji逃げ続けるアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)とショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)逃げ続けるアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)とショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji
バロッサバレーのブドウ畑の中を走るメイン集団バロッサバレーのブドウ畑の中を走るメイン集団 photo:Kei Tsuji


逃げを泳がせながら進むメイン集団逃げを泳がせながら進むメイン集団 photo:Kei Tsujiスピードマンを揃えるチームスカイがベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)のために先頭に立ってフラムルージュ通過。しかしスウィフトが埋もれたことで、ロングスプリントに持ち込んだアダム・ブライス(イギリス、ティンコフ)を追う形でスプリントが始まる。

低い体勢でスプリントするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)低い体勢でスプリントするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji残り10kmを切ったところで降り始めた小雨はレースに影響せず、向かい風&わずかに登り基調の最終ストレートで競り合うスプリンターたち。日曜日のピープルズチョイスクラシックで勝利を収めたユアンの加速力が抜きん出ていた。

クリテリウムと合わせて2連勝したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)クリテリウムと合わせて2連勝したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji横一線で並ぶ2位以下の選手たちの数メートル先で両手を広げたユアン。「ポケットロケット」と形容される身長165cmの小柄な21歳が、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝に続くUCIワールドツアーレース2勝目を飾った。

何度もガッツポーズするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)何度もガッツポーズするカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「一日中ずっと調子の良さを感じていた。クリテリウムと違って、ロードレースで勝つには一日をコンサバティブに過ごさないといけない。最後まで最もフレッシュな脚を残していて、最高のチームのサポートを受けることが出来て初めて勝利の女神が振り向いてくれるんだ。チームの戦力をスプリントに割いてくれているエースのサイモン・ゲランスに感謝しているよ。もし彼が総合争いだけに集中すると言えば、チームとして快く承諾する。彼のような偉大な選手の了承を得ていることがモチベーションに繋がっている」と、表彰式後のインタビューでユアンは語る。

ユアンは総合首位の証であるオレンジ色のオーカージャージで第2ステージを走る。「明日このジャージを着て走ることを誇りに思う。UCIワールドツアーのステージレースで総合首位に立つのは初めての経験。特に自分の国でそれを実現したのだからスペシャルだ」。

ステージ2位に入ったのは33歳のマーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)。「他のオーストラリア人選手と比べてまだ多くのレースを走っていないので、絶好調のカレイブを破るのは至難の技。今日はチームがサポートしてくれた。このチームに移籍して初めてサポートを受けてステージ2位。幸先の良いスタートが切れたよ」と、マーク・カヴェンディッシュの発射台役としてエティックス・クイックステップから揃ってディメンションデータに移籍したレンショーは語っている。



21歳のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が表彰台に上がる21歳のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が表彰台に上がる photo:Kei Tsuji
リーダージャージを手にしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)リーダージャージを手にしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji敢闘賞に輝いたアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)敢闘賞に輝いたアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Kei Tsuji


ツアー・ダウンアンダー2016第1ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      3h24’13”
2位 マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)
3位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、キャノンデール)
4位 マルコ・クンプ(スロベニア、ランプレ・メリダ)
5位 アダム・ブライス(イギリス、ティンコフ)
6位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
7位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
8位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)

個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      3h24’03”
2位 マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)        +04”
3位 アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ワウテル・ウィッパート(オランダ、キャノンデール)            +06”
5位 ショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)         +07”
6位 マルコ・クンプ(スロベニア、ランプレ・メリダ)              +10”
7位 アダム・ブライス(イギリス、ティンコフ)
8位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
10位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

ポイント賞
カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
ショーン・レイク(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

ヤングライダー賞
カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

チーム総合成績
キャノンデール

敢闘賞
アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia