10周のレースで、1周目で逃げが決まった。阿部嵩之と鈴木真理(ともにシマノレーシング)の2人だ。一見無謀にも思えた早すぎる逃げ。しかし好調のこの2人、ゴールまで逃げ切ればツール・ド・北海道最終ステージの再現だ。

2周目、阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)が逃げる。メイン集団は20秒差2周目、阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)が逃げる。メイン集団は20秒差 photo:Hideaki.TAKAGI9月27日(日)、Jサイクルツアー第10戦、第5回全日本実業団サイクルロードレースin飯田大会が長野県飯田市で行われた。
「自転車のまち」としてすっかり定着した飯田市のこの大会も5回目。今年も沿道には多くの観客が声援を送り、選手たちはりんご畑と、今が旬のぶどう畑を横に見ながらの大会だ。

コースは上りの厳しい1周11.5kmで、下りもテクニカルなため、上り下り両方の能力が要求される。歴代優勝記録でも平均時速35kmを下回る難コースだ。昨年まで3年連続土井雪広が優勝していたがもちろん今年は出場しない。
TRクラスはここを10周115kmで競われた。
3周目、観客の応援を背に逃げる阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)3周目、観客の応援を背に逃げる阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI

レースは1周目に決まった。スタート後こそ各チームのアタック合戦だったが、本格的な上りにかかって阿部嵩之がアタック、それをきっかけに20人ほどが先行、さらにピークを越えて阿部と鈴木が抜け出す。2人と集団との差は10秒ほどから2周目に入って30秒差に。しばらくは目に見える範囲だったが、4周目には2分差に拡大。逃げは決まった。

逃げる2人は快調に飛ばす。上りは鈴木がペースを作り、下りは阿部が攻める。平地はローテーションする。2人とも深いクラウチングで、はるか先のゴールまで逃げ切る意思を感じさせる。

9周目、ペースアップを図る佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)9周目、ペースアップを図る佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO) photo:Hideaki.TAKAGI
メイン集団はシマノがコントロールする。その差は最大で4分にまで広がる。一方で他チームも黙ってはいない。愛三勢を中心にペースアップを図ろうとするがシマノ勢がしっかりとチェックに入る。

ラスト3周に入り、愛三に加えてブリッツェン、ニッポらも加勢してようやくその差は1周で30秒から1分を縮めていく。ニッポは佐野、真鍋が主にその役を担う。しかしその差はラスト2周で2分強。一気にペースアップしたと言えど届きにくいタイム差。たとえ追いつめてもシマノは第2の攻撃ができる。ワン・ツーどころかそれ以上をシマノに占められてしまうため他チームは攻撃しにくい。
最終周回、ローテーションして逃げ続ける阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)最終周回、ローテーションして逃げ続ける阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI

最終周回でその差は1分半からついに頂上では1分を切る。しかしあとは下り、阿部の得意とする場面だ。結局、この2人は110km近くを逃げ続けて阿部・鈴木の順でワン・ツーゴール。42秒遅れの3位争いは畑中勇介(シマノレーシング)が制してシマノが表彰台を独占した。

今のシマノはチーム全体が強い。そしてその中心は鈴木と阿部嵩之。この2人に逃げられたら、序盤と言えどもレースは決まったも同然。
阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)がワン・ツーフィニッシュ阿部嵩之(シマノレーシング)と鈴木真理(シマノレーシング)がワン・ツーフィニッシュ photo:Hideaki.TAKAGI
特に光ったのは阿部の走り。他を引き連れない鋭いアタックを連発、さらに際立つ独走力で逃げを成功させた。先の全日本実業団加東ではアタックを連発、ツール・ド・北海道では特に最終日のモエレ沼で爆発。総合優勝の宮澤崇史まであと5秒差まで追い詰めた原動力だ。メジャーチーム入り初年度でいきなり大きな1勝。自身にとってもメジャーレース初優勝だが、これはまだまだ序の口にすぎない。


FR表彰FR表彰 photo:Hideaki.TAKAGI
結果
TRクラス 115km
1位 阿部嵩之(シマノレーシング)3時間24分16秒(AVS33.77km/h)
2位 鈴木真理(シマノレーシング)
3位 畑中勇介(シマノレーシング)+42秒
4位 佐野淳哉(TEAM NIPPO-COLNAGO)+43秒
5位 野寺秀徳(シマノレーシング)
6位 鎌田圭介(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)
7位 飯野嘉則(シマノレーシング)+46秒
8位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+47秒
9位 武末真和(オッティモ・ホル元)+49秒
10位 狩野智也(シマノレーシング)+50秒

BR-1 ゴール、19才の若杉厚仁(spacebikes.com)が優勝BR-1 ゴール、19才の若杉厚仁(spacebikes.com)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI
Jサイクルツアーリーダー 鈴木真理(シマノレーシング)

FRクラス 34.5km
1位 森田正美(チームブリヂストン・アンカーFR)1時間09分30秒(AVS29.77km/h)
2位 星川恵利奈(MUUR ZERO)+40秒
3位 豊岡英子(パナソニックレディース)+2分08秒

Jフェミニンリーダー 豊岡英子(パナソニックレディース)

BR-1クラス 69km
1位 若杉厚仁(spacebikes.com)1時間59分20秒(AVS34.69km/h)
2位 高田森生(アストロOGKカブト)
3位 榊原健一(BREZZAカミハギRT)+02秒
4位 利行洋造(ETNA CICLE NETWORK)+54秒
5位 新井剛(チームスキップ)+2分18秒
6位 遠藤積穂(spacebikes.com)+3分52秒
ER優勝の増田威望(オッティモ)ER優勝の増田威望(オッティモ) photo:Hideaki.TAKAGI

ERクラス 46km
1位 増田威望(オッティモ)1時間23分22秒(AVS33.10km/h)
2位 高橋義博(Cuspeede)
3位 鈴木和典(チーム オーベスト)+05秒
4位 伊藤隼人(HAYATE)+34秒
5位 高坂希太郎(hot staff)
6位 末松弘茂(EsperanceStage我逢人)+35秒


photo&text:高木秀彰