世界最大規模の自転車メーカー・ジャイアントが、エアロバイク「TRINITY ADVANCED」をフルモデルチェンジ。扁平率の大きなチューブ形状や、一体型ストレージ/ハイドレーションの採用により空力性能を向上させたトライアスロン専用バイクへと進化を遂げた。またUCI規定に準拠したTTバージョンもラインアップされる。



ジャイアント TRINITY ADVANCED PROジャイアント TRINITY ADVANCED PRO (c)ジャイアント
久方ぶりに大幅なモデルチェンジを果たし登場した新型「TRINITY ADVANCED PRO」は、UCIレギュレーションにとらわれること無く空力性能を追求したトライアスロン専用バイク。エアロロード「Propel」と同じく実世界でのエアロダイナミクスの追求を大きな開発コンセプトとした1台である。

開発プロセスにおいてもPropelと共通する点が多く、フランスのマニクール・サーキットにある空力研究施設「ACE」と再び提携。完成に至るまで250以上ものフレーム形状が検討され、膨大な回数のCFD(数値流体力学)解析と風洞実験を実施したという。加えて、風洞実験ではバイクとライダーが走行中に実際に受ける空気抵抗を正確に計測するためにペダリング動作をする可動マネキンを使用。ライダーが実際に動いている状態において最も空気抵抗が低くなるフレーム形状を導き出すことに成功している。

従来モデルを踏襲するリア三角の設計従来モデルを踏襲するリア三角の設計 (c)ジャイアントハイドレーションユニットやエアロブレーキにより空力性能を高めたハイドレーションユニットやエアロブレーキにより空力性能を高めた (c)ジャイアントリアブレーキには時速50km/hで3ワットの空気抵抗低減効果を発揮する流線型カバーを装備リアブレーキには時速50km/hで3ワットの空気抵抗低減効果を発揮する流線型カバーを装備 (c)ジャイアント


ADVANCEDカーボン製のフロントフォーク「AeroDrive Tri Fork」や、専用設計の新型ベースバー「AeroDrive Tri Bar」は、UCI規定を大幅に越える5:1という扁平比率の翼断面を採用。定評あるエアロブレーキ「SpeedControl」とあわせて、空気抵抗を極限まで抑えたフロント周りを形成している。一方で、ジャイアントが特にこだわりを持つハンドリング性能にも優れるという。また、リアの空力性能も改善されており、リアブレーキには時速50km/hで3ワットの空気抵抗低減効果を発揮する流線型カバーを配した。

加えて、トライアスロンではフレーム各部に取り付けられるフロントのハイドレーションユニットやストレージボックス、ボトルを空力パーツとしてフレーム設計に考慮。3つのパーツそれぞれにも空力的に優れた形状を採用したことも新型TRINITY ADVANCED PROの大きな特徴である。

Propelと共通のエアロブレーキSpeedControlを採用Propelと共通のエアロブレーキSpeedControlを採用 (c)ジャイアント空力性能を高める形状とされたストレージボックス空力性能を高める形状とされたストレージボックス (c)ジャイアント

ワイドな調整幅を持つ専用ハンドルワイドな調整幅を持つ専用ハンドル (c)ジャイアントダウンチューブ周りの整流効果を高めるエアロボトルダウンチューブ周りの整流効果を高めるエアロボトル (c)ジャイアント


ハイドレーションユニットはエアロかつ飲み口までアクセスしやすい形状としており、フレームサイズに応じて最大700mlの容量を持つ。容量440mlのエアロボトルはダウンチューブ周りの空気の流れをよりスムーズとするべく流線型デザインを採用している。

ステム後部のトップチューブ上面に配置されるストレージボックスは、空力性能を高める形状を採用したことに加え、後付けストレージボックスの弱点であるスタンドオーバーハイトの高さも改善。ソフト素材の採用により左右両面からの開口が可能で、水や汗などは浸透しにくいという。補給食や予備パーツのほか、シマノDi2用のジャンクションも収納可能だ。

CFD解析と可動マネキンを用いた風洞実験により空力性能を煮詰めたCFD解析と可動マネキンを用いた風洞実験により空力性能を煮詰めた (c)ジャイアント
このTRINITY ADVANCED PROの開発に合わせジャイアントはハイドレーションとストレージシステムを装備した競合の主要トライアスロンバイク4台と比較テストを実施。結果、TRINITY ADVANCED PROが最もエアロダイナミクス性能に優れていることを証明したという。ジャイアントのオンロードカテゴリーマネージャーであるニクソン・ファン氏は次のようにコメントする。

新型TRINITY ADVANCED PROを駆るトライアスリートのティム・バン・バーケル(オーストラリア)新型TRINITY ADVANCED PROを駆るトライアスリートのティム・バン・バーケル(オーストラリア) (c)ジャイアント「レースを想定したエアロダイナミクス性能を計測するため、私たちは全てのバイクで補給システム“有り”と“無し”の両方でテストを行いました。TRINITYは補給システム無しでは競合製品とほとんど同等でしたが、実際のレースに必要な装備を付けた状態でのTRINITYは、速さで勝るだけでなく、唯一補給システム無しの状態よりも高いエアロ性能であることが証明されました。」

そして、空力性能に加えてTRINITY ADVANCED PROではフィッティング性の向上も図られている。ジオメトリーは世界中のトライアスリートの意見をもとに刷新され、従来の3サイズから4サイズ展開に。また、表裏を入れ替えることで40mmの高さ調整が可能な「AeroDrive Tri Bar」をはじめ、DHバーやアームレストも上下左右に幅広い調整幅を有している。



大幅な進化を遂げトライアスロンに特化したバイクへと生まれ変わった新型TRINITY ADVANCED PRO。9月の「アイアンマン70.3 サンシャインコースト」でプロトタイプと共に優勝したティム・バン・バーケル(オーストラリア)は次の様にコメントしている。

「レースに完全対応している新型TRINITY ADVANCED PROを本当に気に入っているよ。エアロ形状のフレームとフォークは新しいジオメトリで最適なポジションを出せるし、ハイドレーションとストレージも一体化されて使いやすさとエアロを両立している。トレーニングでもレースでも速く走るためはこのバイクじゃなきゃダメなんだ」



UCIレギュレーションに準拠したTT用モデルもラインアップ

TRINITY ADVANCED PRO TTを駆るトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)TRINITY ADVANCED PRO TTを駆るトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos
世界戦ジュニアTTを制したレオ・アッペルト(ドイツ)世界戦ジュニアTTを制したレオ・アッペルト(ドイツ) photo:Kei Tsujiジャイアント TRINITY ADVANCED PRO TTジャイアント TRINITY ADVANCED PRO TT (c)ジャイアント


新型「TRINITY ADVANCED」には、UCIレギュレーションに準拠したタイムトライアル用モデル「TRINITY ADVANCED PRO TT」もラインアップ。こちらは既にジャイアント・アルペシンにより実戦投入されており、トム・デュムラン(オランダ)と共にブエルタ・ア・エスパーニャやツール・ド・スイスのTTステージ優勝に貢献。また、世界戦ジュニアTTでは優勝したレオ・アッペルト(ドイツ)もTRINITY ADVANCED PRO TTを使用していた。販売パッケージはフレームセットのみとなっている。

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