プロトンの長い旅路を締めくくったのは、ここまで勝利の無かったジョン・デゲンコルブのスプリント。チームメイトに守られて走ったファビオ・アルが総合優勝を達成し、自身初のグランツール制覇を成し遂げた。



21日間の戦いを経て、マドリード中心街に凱旋。観光名所の宮殿を横目に走る21日間の戦いを経て、マドリード中心街に凱旋。観光名所の宮殿を横目に走る photo:CorVos


上下マイヨロホ仕様で登場したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)上下マイヨロホ仕様で登場したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:CorVosベン・キング(アメリカ)ら6名が逃げるベン・キング(アメリカ)ら6名が逃げる photo:A.S.O.集団内で走るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。マイヨプントスを失った集団内で走るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。マイヨプントスを失った photo:A.S.O.激動のブエルタ・ア・エスパーニャは遂に最終日を迎え、スペインの首都であるマドリードに到達した。この日まで残った158名がブエルタに別れを告げるように、完走を祝うように、そして数チームは最終スプリントに向けてマドリード郊外のアルカラ・デ・エナレスから、中心街へと向けてスタートを切っていく。

各選手は観客からの声援を受けながら、グランツール最終日恒例のパレード走行を経てマドリード中心街に到達。18世紀後期から20世紀初頭にかけ建てられたブエナビスタ宮殿、リナーレス宮殿、マドリード市庁舎であるコムニカシオネス宮殿など、歴史的な建造物を横目に、周回コースを駆け抜けていく。

スプリントでリードを崩さないジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)スプリントでリードを崩さないジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos2つの90度コーナーと3つの180度ターンを含むT字型の平坦サーキットコース。祝福ムードに終わりを告げたのは45.6km地点の中間スプリントを前にしてのことだった。

スタート時点でポイント賞首位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)と2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の差はわずか2ポイント。逆転を狙うモビスターが主導権を握り、フランシスコ・ベントソとホセホアキン・ロハス(共にスペイン)の牽きから加速したバルベルデに、ロドリゲスが打つ手は無かった。バルベルデは4ポイントを獲得してマイヨプントスを手中に収めることに成功した。

スピードの上がった集団からは、僅かな逃げ切りのチャンスに掛けてアタックが掛かり始める。フィニッシュまで8周を残した段階からマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、マイヨモンターニャのオマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)、カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)、ローラン・ピション(フランス、FDJ)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、ベン・キング(アメリカ)という6名が逃げ始めた。

オレンジ色の西日が差し込むマドリード中心街を逃げる6名と、およそ30秒差で追いかけるメイン集団。スプリントに意欲を燃やすジャイアント・アルペシンやランプレ・メリダ、トレックファクトリーレーシングらが数人ずつアシストを出し合って集団のコントロールを担っていく。マイヨロホに身を包んだファビオ・アル(イタリア、アスタナ)はチームメイトに囲まれて集団中盤〜後半で残り距離を減らしていった。

日が落ちて夕闇が迫ると、プロトンが本格的な追撃と位置取りを開始。すると逃げメンバーとのタイム差は急速に縮まり始める。ベローナが単独で抵抗を見せ、後方からはアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)がカウンターアタックを仕掛けたものの、残り4kmで集団は一つに。



ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)がステージ優勝。ブエルタ10勝目を手に入れたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)がステージ優勝。ブエルタ10勝目を手に入れた photo:CorVos
チームメイトがジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)を祝福するチームメイトがジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)を祝福する photo:CorVosファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がガッツポーズでフィニッシュファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がガッツポーズでフィニッシュ photo:CorVos



ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)を取り囲んで祝福するチームメイトファビオ・アル(イタリア、アスタナ)を取り囲んで祝福するチームメイト photo:CorVos9名全員を残したMTNキュベカがプロトンを牽引しはじめるも、クリスティアン・クネース(ドイツ、チームスカイ)の単独逃げを吸収した時点で崩壊。引き継いだオリカ・グリーンエッジが一気にスピードを引き上げると、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)擁するジャイアント・アルペシンが後ろに付け盤石の体制を築き上げた。

表彰台に上がったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)表彰台に上がったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos残り1km、最後の180°コーナーをクリアした時点でジャイアント・アルペシンが先頭に立つと、完璧なリードアウトトレインがデゲンコルブを完璧なタイミングで発射させる。ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)が別ラインから追いかけたが、デゲンコルブのリードは揺るがない。21日間の戦いを締めくくるマドリードのフィニッシュでデゲンコルブのガッツポーズが決まった。

「やっとだ!スーパーハッピーだ。この勝利のために21日間我慢してきた」と語るデゲンコルブ。これまでのスプリントで2位を2回、3位を1回と苦しんだが、最終日に優勝を収めることに。デゲンコルブにとってはブエルタのステージ優勝はこれが10度目だ。

そして後方では、総合1位のアルがチームメイトに囲まれながらゆっくりとフィニッシュ。前日に大逆転劇を成功させたアルは、同じく主役を演じたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)と並んでゴール。グランツアー出場5回目にして初の総合優勝であり、2位になったジロ・デ・イタリアの雪辱を見事に晴らすこととなった。

各選手のコメントは追って掲載します。



総合表彰台に立つファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)総合表彰台に立つファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)をホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)が囲うファビオ・アル(イタリア、アスタナ)をホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)が囲う photo:CorVos


ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第21ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
3位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
4位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
5位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
7位 ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
8位 クリスティアン・スバラグリ(イタリア、MTNキュベカ)
9位 ケヴィン・ラザ(フランス、FDJ.fr)
10位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ)
45位 新城幸也(ヨーロッパカー)
2h34"'13"












個人総合成績
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)

85h36'13''
+0'57"
+1'09"
+1'42"
+3'10"
+3'46"
+6'47"
+7'06"
+7'12"
+10'26"


color="green">マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)

118pts
116pts
108pts


color="blue">マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)
2位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)

82pts
63pts
30pts


color="grey">マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

16pts
23pts
24pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 チームスカイ
3位 カチューシャ

256h44'38"
+29'47"
+35'44"


総合敢闘賞
トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

text:So.Isobe
photo:CorVos

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