35歳ルーベン・プラサは115kmに渡る独走でゴールに飛び込み、盤石かと思われていたトム・ドゥムランはアスタナの総攻撃の前に陥落。第20ステージはファビオ・アルがマイヨロホを手中に収める大逆転劇の舞台となった。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第20ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第20ステージ image:Unipublicチームメイトに囲まれたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)チームメイトに囲まれたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos19日間のステージを経たプロトンは、最終決戦の舞台である第20ステージに到達した。マドリードを取り囲むように広がる山脈がマイヨロホ争いの舞台だ。この日は1級山岳が2つ登場し、それを逆側から登り返す175.8km。サンロレンソ・デ・エル・エスコリアルをスタートしてから1級山岳プエルト・デ・ナバセラーダと1級山岳プエルト・デラ・モルクエラを通過し、Uターンを経て1級山岳プエルト・デラ・モルクエラと1級山岳プエルト・デ・ナバセラーダ(プエルト・デ・コトス)を逆側から再び
登る。

逃げグループ内で走る新城幸也(ユーロップカー)逃げグループ内で走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Miwa.Iijima逃げグループを率いるルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)逃げグループを率いるルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ) photo:A.S.O.スタートの時点で総合首位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)と2位ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)の差はわずか6秒。大会後半に掛けて強さを増すドゥムランに対し、アルをはじめホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らがどのように攻撃を仕掛けるか、また表彰台争いがどう動くかが最大の焦点だ。

単独で逃げ続けるルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)単独で逃げ続けるルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ) photo:A.S.O.この日スタートアタックを仕掛けたのはシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)。新城幸也(ユーロップカー)も直後から積極的に動き、モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン)やアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)など10名と共に先頭グループを形づくった。

しかし最後の逃げ切りのチャンスを逃がすまいとニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)らを含む30名が追走し、合流を嫌ったルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)が先頭から単独アタック。プラサを見送った10名と追走グループは2つ目の山岳で合流し、巨大な集団ができあがる。これによって総合争い渦中にいるモビスターが4名、アスタナが2名を先行させるという作戦の駒を進めた。

プエルト・デラ・モルクエラを掛け上がる先頭プラサは快調なペースを維持し、追走グループに対してすぐさま2分半差をつける。一方10分以上後ろを走るメイン集団ではジャイアント・アルペシンがコントロールを担い、その後方にアスタナ、カチューシャ、モビスター、ティンコフ・サクソが連なった。

3つ目の1級山岳(2度目のプエルト・デラ・モルクエラ)では、プラサを先行させた逃げグループは人数の多さ、そしてプラサの刻むハイペースから不安定な状態となり、選手が次々と飛び出していく。結果的にアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)、マッテーオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、ホセ・ゴンサルベ(ポルトガル、カハルーラル)という4名が先頭プラサを追い、新城は遅れを喫してしまう。

最後の1級山岳に差し掛かっても、ここまで90kmを走ってきたプラサの勢いは一向に衰えない。「脚の調子が非常に良いことは分かっていたし、今日のコースも僕に地の利があった。だから全身全霊を掛けてステージ優勝を狙いにいった」と言うプラサ。

終止アウターギアを踏み抜き、追いかける4人を向こうに回しても1分差を割らせない。大会最後の山頂をクリアし、10kmのダウンヒルと、残り1kmを割ってから始まる緩斜面でもスピードを一切落とさずフィニッシュ。スタート直後のアタック合戦から積極的に牽き、単独となってからも115kmという距離を逃げ切っての記録的な優勝を遂げてみせた。



独走でゴールに飛び来むルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)。115kmを逃げ切っての勝利独走でゴールに飛び来むルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)。115kmを逃げ切っての勝利 photo:CorVos


トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)を置き去りにするミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)を置き去りにするミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) photo:CorVos「こんな勝利なんて本当にウソみたいだ。逃げグループの協調体制が取れなくなった時点で逃げたことが良かった」とプラサは言う。ツール・ド・フランス第16ステージに続く2大会連続のグランツールステージ優勝であり、平均時速は38.1kmにものぼった。

逃げグループから合流したアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン)とルイスレオン・サンチェス(スペイン)がファビオ・アル(イタリア)を牽引する逃げグループから合流したアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン)とルイスレオン・サンチェス(スペイン)がファビオ・アル(イタリア)を牽引する photo:A.S.O.ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)と共に遅れるトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)と共に遅れるトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVosそしてステージ争いの後方、総合勢を含むメイン集団でも3つ目の山岳で熾烈な登坂勝負が勃発する。

アスタナがアシストを使って集団の人数を絞り込むと、アルを連れたミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)が発進。この早いタイミングでの攻撃にナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)はチェックに回ったが、ドゥムランと他の総合勢は若干距離を空けてしまう。一旦は合流に成功したものの、山頂手前で今度はアル自らがアタック。アル、キンタナ、マイカが再び逃げ始め、苦しい表情を見せるドゥムランは大会序盤のような粘りの走りを維持できない。

苦しむドゥムランを見て、チェック役のランダも加速してアルの元へとジャンプすると、この動きにロドリゲスとチャベスが同調し、頂上を前にドゥムランとミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)だけが取り残されてしまう状況になる。

対ドゥムラン協定を結んだアル、ランダ、マイカ、キンタナ、ロドリゲス、チャベスは緩斜面の下りでローテーションを回し、追いかけるドゥムランとニエベとは15秒差。ドゥムランも独走力を駆使し6名を視界に捉えるところまで追い上げを見せる。

しかしドゥムランが合流するかと思われたその刹那、当初から逃げグループに入り先行していたアスタナの2名(LLサンチェス、ゼイツ)と、カチューシャ1名(ロサダ)がアルグループにジョイント。機関車を増強した先行グループは一気にペースアップを果たし、前から降ってきた選手を吸収しながらハイペースを刻んだ。

リズムを失ったドゥムランのペースは最後の1級山岳に入っても回復せず、1分、1分半と加速度的に遅れを喫しマイヨロホの夢が断たれてしまう。するとドゥムランを引き千切った精鋭グループでは表彰台争いが勃発し、総合5位キンタナと4位マイカが抜け出した。



ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)と共にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がフィニッシュルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)と共にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がフィニッシュ photo:CorVos
総合ジャンプアップを狙って飛び出したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)総合ジャンプアップを狙って飛び出したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVosアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、アスタナ)とディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)がアルの結果を祝いながらゴールアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、アスタナ)とディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)がアルの結果を祝いながらゴール photo:CorVos




遅れを喫してしまったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)遅れを喫してしまったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVosロドリゲスを引き離し総合2位を狙うマイカ、そしてキンタナは逃げグループから遅れた選手を引き連れながらダウンヒルをクリア。およそ1分差をアルグループに対してキープしゴールに飛び込む。総合2位を脅かされたロドリゲスだったが、追走グループの先頭に立ち、マイカから12秒差でフィニッシュに滑りこみ総合2位を確保する。

ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が再びマイヨロホに袖を通すファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が再びマイヨロホに袖を通す photo:CorVosそして同時にアルもLLサンチェスを労いながら、総合優勝を手中に収めた喜びを表現するガッツポーズでフィニッシュ。ゴール後すぐにバイクを降りてチームメイトやスタッフと抱き合うと、感情の渦に顔を上げられなかった。

一方ドゥムランは新城やバルベルデと共にマイカから5分、アルから4分遅れでフィニッシュ。総合を6位まで落とし、マイヨロホをアルに譲り渡す結果となった。

プラサの115kmに渡る独走勝利と、ドゥムランの陥落、アルのマイヨロホ王手など激動の第20ステージが終了。それと共に新城幸也も怪我を克服して、日本人としては初めての3大ツール完走をほぼ確定させることとなった。

各選手のコメントは追って掲載します。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第19ステージ結果
1位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)
2位 ホセ・ゴンサルベ(ポルトガル、カハルーラル)
3位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)
4位 ロマン・シカール(フランス、ユーロップカー)
5位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)
6位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ)
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
8位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
9位 マッテーオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
10位 モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
45位 新城幸也(ヨーロッパカー)
4h37"'05"
+1'07"
+1'08"
+1'29"
+1'30"


+1'35"
+1'43"
+2'40"
+7'49"


個人総合成績
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)

83h01'40''
+1'17"
+1'29"
+2'02"
+3'30"
+3'46"
+7'10"
+7'26"
+7'32"
+10'46"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)

116pts
114pts
108pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)
2位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)

82pts
63pts
27pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

15pts
23pts
24pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 チームスカイ
3位 カチューシャ

249h1'59"
+29'47"
+35'44"


ステージ敢闘賞
アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)

text:So.Isobe
photo:CorVos


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