久々の大集団スプリントを制したのは、22歳のダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)。ブエルタでステージ通算9勝のジャンポールを父にもつオランダ期待の若手がグランツールで初勝利を掴んだ。



レース前半の山岳地帯を駆け抜けるプロトンレース前半の山岳地帯を駆け抜けるプロトン photo:Tim de Waele
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第12ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第12ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2015第12ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第12ステージ image:Unipublic


逃げグループを形成するジェイコブス・ヴェンター(南アフリカ、MTNキュベカ)やアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)逃げグループを形成するジェイコブス・ヴェンター(南アフリカ、MTNキュベカ)やアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waeleクイーンステージをグルペットで乗り切ったスプリンターたちに再びチャンスが巡ってくる。ピレネー山脈を離れてカタルーニャ州のリェイダを目指す第12ステージの難易度は低く、前半に2級山岳コル・デ・ボイソルスを越えてしまうと残りは平坦基調だ。

チームメイトに守られて走るマイヨロホのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)チームメイトに守られて走るマイヨロホのファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleリェイダ市内の緩斜面最終ストレートでは大集団によるスプリントが予想されたが、この日は7km地点で形成された5名の先頭グループが粘り強い走りを見せた。

第12ステージを走る新城幸也(ユーロップカー)第12ステージを走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele前日に落車し、タイムを失ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は足の舟状骨の骨折によってスタートせず。ツール覇者を欠く174名の大集団から抜け出したマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)、ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、コロンビア)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ジェイコブス・ヴェンター(南アフリカ、MTNキュベカ)、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)は6分近いリードを稼ぎ出した。

2級山岳コル・デ・ボイソルスを2番手通過したリンデマンが3ポイント獲得。リンデマンは山岳賞ランキング3位にジャンプアップしたが、前日のクイーンステージでポイントを量産したオマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)の圧倒的リードは揺るがず。

山岳地帯を離れ、カタルーニャ州の平野部に差し掛かったところでジャイアント・アルペシンとトレックファクトリーレーシングの連合軍がメイン集団のコントロールを本格化させる。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)とダニー・ファンポッペル(オランダ)の集団スプリントを狙う2チームが先頭5名とのタイム差を着々と縮め始めた。

タイム差は残り60km地点で3分まで縮小したが、そこから先頭5名はペースアップを見せた。追い上げる大集団に有利な平坦基調の直線路が続いたにも関わらず、残り40km地点で依然としてタイム差は2分半をキープ。メイン集団を牽引するアシスト選手達の表情が険しいものになっていく。

残り20km地点で2分という絶妙なタイム差を刻みながら先頭5名はローテーションを継続。マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)擁するランプレ・メリダも集団牽引に合流し、メイン集団はさらにスピードを上げた。



レース前半の2級山岳コル・デ・ボイソルスを抜けるレース前半の2級山岳コル・デ・ボイソルスを抜ける photo:Tim de Waele


アンドラを離れ、カタルーニャ州の平野を目指すアンドラを離れ、カタルーニャ州の平野を目指す photo:Tim de Waele残り12km地点でようやくタイム差が1分を割り込んだところでファンポッペルがパンクで後退。ファンポッペルは無事にメイン集団に復帰し、引き続きトレックファクトリーレーシングが積極的に集団をリードする。

レース後半に逃げグループのペースを上げるマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)レース後半に逃げグループのペースを上げるマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele残り5km地点でタイム差30秒という逃げ切りも十分にあり得る状況が続いたが、ハイスピードで抵抗し続けた逃げグループは残り2km地点に差し掛かって牽制。残り1kmアーチを前にアタックを仕掛けたヴェンターにブエが反応し、残る3名は飲み込まれた。

集団スプリントを制したダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)集団スプリントを制したダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waeleヴェンターを抜いて先頭に立ったブエ。しかし振り返るとそこにはスプリンターチーム率いる大集団の姿が。最後まで粘ったブエもフィニッシュまで300mを残して吸収。同時にスプリンターたちの勝負が始まった。

残り300mで吸収されたマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)残り300mで吸収されたマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleジャイアント・アルペシンとロットNLユンボのリードアウトは機能せず、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)やトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)、トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ)、そしてファンポッペルが横並びでスプリント。フィニッシュラインまで加速を続けたファンポッペルが先着した。

ラボバンクコンチネンタルとヴァカンソレイユを経て、兄ボーイ・ファンポッペルとともに2014年からトレックファクトリーレーシングで走るダニー・ファンポッペルは、ツール・ド・フランスでステージ通算9勝、ブエルタでステージ通算9勝、ジロ・デ・イタリアでステージ通算4勝を飾っているジャンポール・ファンポッペルの息子。スプリンターとして90年代に活躍した父ジャンポールは現在オランダのルームポットで監督を務めている。

「このブエルタで初めてのチャンスが回ってきた。大会1週目は暑さに苦しんでしまい、チャンスを逃し続けていた。今日は責任感をもって勝負に挑み、チームとして素晴らしい仕事を果たせたと思う。とても良いコンディションだと感じていたし、緩斜面のスプリントで僕を打ち負かすのは難しい。チームメイトたちの献身的な走りもモチベーションになったよ」と、初出場のブエルタでステージ優勝を飾ったファンポッペルは語る。ファンポッペルは2013年と2014年のツールにも出場したが、いずれも途中リタイアに終わっている。

ファンポッペルは残り12km地点で前輪をパンクしたものの、チームメイトたちの力を借りて集団に復帰。「最後はポポヴィッチに連れられてポジションを上げ、デゲンコルブの番手まで上がった」と振り返る。「でもデゲンコルブのラインが良くなかったので、後ろから早めに仕掛ける形になった。脚に力を感じながら全開でスプリントして、簡単にライバルたちを追い抜くことが出来た」。トレックファクトリーレーシングは今大会ステージ2勝目を射止めた。

選手コメントはチーム公式サイトより。



ステージ優勝を飾ったダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)ステージ優勝を飾ったダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele

Summary - Stage 12 (Escaldes-Engordany... 投稿者 la_vuelta

Onboard camera / Cámara a bordo - Stage 12... 投稿者 la_vuelta


ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第12ステージ結果
1位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)   4h02’11”
2位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
3位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
6位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
7位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ)
8位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、チームスカイ)
10位 ファビオ・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア)
83位 新城幸也(日本、ユーロップカー)

DNS クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                 47h14’30”
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              +27”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +30”
4位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)           +1’28”
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       +1’29”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +1’52”
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)              +1’54”
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                +1’58”
9位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)               +3’07”
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)           +4’15”

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       79pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)         74pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            74pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)              55pts
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                  25pts
3位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)           16pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        10pts
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                 14pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      21pts

チーム総合成績
1位 チームスカイ                            142h02’40”
2位 アスタナ                                +3’45”
3位 モビスター                               +8’20”

ステージ敢闘賞
マキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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