アメリカ中部のミズーリ州を舞台にした第3回ツアー・オブ・ミズーリ(UCI2.HC)が、9月7日から13日までの7日間に渡って開催され、平坦ステージでスプリンターたちが鎬を削った。タイムトライアルでリードを広げたデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)が初総合優勝に輝いている。

開幕2連勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)開幕2連勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:www.tourofmissouri.com2007年に初開催されたツアー・オブ・ミズーリは、今年で3年目のまだ若い1週間のステージレース。初回大会はジョージ・ヒンカピー(アメリカ)が、昨年の第2回大会はクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ)が総合優勝に輝いた。

UCIアメリカツアーにおけるHC(超級・オークラス)ステージレースは、このミズーリとツアー・オブ・カリフォルニア、そしてツール・ド・ジョージアの3レース。今年はスポンサー不足によりジョージアがキャンセル(来年は開催予定)されたため、HCレースはこのミズーリとカリフォルニアの2つだけ。ミズーリもスポンサー不足により来年以降のレース継続が危ぶまれている。

HCレースだけに出場チームは豪華で、アスタナ、ガーミン、リクイガス、クイックステップ、サクソバンク、チームコロンビア・HTCのプロツアー6チームが出場。サーヴェロ・テストチームやBMCレーシングチームを始め、国内外のプロコンチネンタル/コンチネンタルチームチームが出揃った。

全7ステージのうち、第5ステージの個人タイムトライアルを除いて集団スプリント向きの平坦コース。下馬評通り、ツール・ド・フランスでステージ6勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が開幕2ステージを連続で制覇し、今シーズンの通算勝利数を23勝まで伸ばした。

個人タイムトライアルで最速タイムを叩き出したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)個人タイムトライアルで最速タイムを叩き出したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン) photo:www.tourofmissouri.comボーナスタイムにより総合首位に立ったカヴェンディッシュだったが、第3ステージで優勝したトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)に総合首位の座を明け渡すと、呼吸器系のトラブルによって第4ステージをスタートせず。イエロージャージはカヴェンディッシュ、フースホフト、そして第4ステージを制したフアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)を転々と渡り歩いた。

総合争いが決したのは第5ステージの個人タイムトライアル。距離31kmのほぼ真っ平らなコースで最速タイムを叩き出したのは、全米TTチャンピオンジャージを着るデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)だ。

本来ガーミンはヴァンデヴェルデで大会連覇を狙っていたが、ヴァンデヴェルデは第1ステージのゴールスプリントで落車し、手を骨折してリタイア。代役としてエースを担ったザブリスキーが、ステージ優勝で総合首位に立った。

30秒遅れのステージ2位にはグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)、44秒遅れでのステージ3位にはトム・ジーベル(アメリカ、ビッセル)が入り、それぞれ総合2位と3位にジャンプアップ。期待されたリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)は伸び悩み、この個人TTで5位に。残るステージの難易度が低いため、ライプハイマーの総合優勝の夢は潰えた。

その後も平坦ステージはスプリンターチームの独壇場で、第6ステージをフランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)が、最終ステージをマーティン・ギルバート(カナダ、プラネット・エナジー)が制して幕切れ。ザブリスキーが30秒のタイム差を守りきり、初の総合優勝に輝いた。

初の総合優勝に輝いたデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)初の総合優勝に輝いたデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン) photo:www.tourofmissouri.comグランツール全てでステージ優勝経験が有り、全米のTTチャンピオンに5回輝いているザブリスキー。しかしこれがキャリア初のステージレース総合優勝だ。「チームメイトには目一杯のハグをしてあげたい。彼らの走りには本当に感謝している。最後の2日間は本当にキツかった。ロードレースがチームスポーツであることを再確認させてくれたよ」と、レース後に喜びを語っている。

来年以降のミズーリ開催が危ぶまれている状況についてザブリスキーは「もしこのミズーリが継続されないなら残念で仕方がない。このようなステージレースをアメリカで開催する意味は大きいんだ。見ての通りファンもこのレースが好きだし、当然走っている選手も好き。みんなミズーリでのレースを楽しんでいるのに」とレース継続を訴えた。

また、ツール第16ステージで派手に落車し、ほお骨を骨折したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)がこのミズーリでレースに復帰。勝負には絡めなかったが、総合89位でしっかりと完走している。

選手コメントはレース公式サイトより。


9月7日(月)第1ステージ セントルイス 121km
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)2h43'56"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
総合首位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)

9月8日(火)第2ステージ サント・ジュヌビエーブ〜ケープ・ジラード 180km
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h16'53"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
総合首位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)

9月9日(水)第3ステージ ファーミントン〜ローラ 183km
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)4h27'50"
2位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
3位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス)
総合首位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)

9月10日(木)第4ステージ セント・ジェームス〜ジェファーソンシティ 175km
1位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)4h07'55"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)
総合首位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)

9月11日(金)第5ステージ セデーリア 31km(個人TT)
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)36'30"
2位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)+30"
3位 トム・ジーベル(アメリカ、ビッセル)+44"
総合首位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)

9月12日(土)第6ステージ チリコシー〜セントジョーゼフ 177km
1位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)3h41'41"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、コラヴィータ)
総合首位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)

9月13日(日)第7ステージ カンザスシティ 116km
1位 マーティン・ギルバート(カナダ、プラネット・エナジー)2h33'11"
2位 アンドリュー・ピンフォールド(カナダ、OUCHマキシス)
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)

個人総合成績
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)22h26'56"
2位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)+30"
3位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームコロンビア・HTC)+42"
4位 トム・ジーベル(アメリカ、ビッセル)+44"
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)+1'02"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+1'09"
7位 ベン・ジャックメインズ(アメリカ、ビッセル)+1'13"
8位 ドミニク・コルニュ(ベルギー、クイックステップ)+1'15"
9位 ラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)+1'16"
10位 ローリー・スーザーランド(オーストラリア、OUCHマキシス)+1'22"

ポイント賞
トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)

山岳賞
モイセス・アルダペシャベツ(メキシコ、チームタイプ1)

新人賞
ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)

チーム総合成績
サクソバンク

text:Kei Tsuji
photo:www.tourofmissouri.com