今ツール最多となる7つのカテゴリー山岳を走り抜けるハードな一日を制したロメン・バルデ。ステファン・クミングスに敗れた第14ステージでの雪辱を晴らすことに成功したフレンチライダーをはじめ、2位に入ったピエール・ロランや総合勢のコメントを紹介します。



ステージ優勝を飾ったロメン・バルデ(フランス、AFG2Rラモンディアール)

ピレネー2日目の山岳ステージを制したロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)ピレネー2日目の山岳ステージを制したロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele
独走するロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)独走するロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele今朝のチームミーティングで決めた作戦通りに動いた。逃げに乗るまでが一番辛かったね。ここ数日は大きな逃げグループができていたけれど、あまり大きすぎる集団では意思疎通が上手く図れない。だから今日は何としても逃げに乗り、さらに超級山岳グランドン峠で逃げを可能な限り小さくする必要があった。麓からアタックしようと思ったものの、向かい風がきつくてタイミングを待ったんだ。

マンデ(ピノと逃げてクミングスにやられた14ステージ)では登りの後に下りがあるとは知らなかったし、その思惑違いは大きなミスだったように思う。昨日の夜の段階では勝てるなんて思ってもみなかった。一緒に逃げたチームメイト2人が大きな助けになったし、今日はチームとして戦いに挑んだ。(第14ステージの)マンドでの敗北が、今日の勝者を生み出した。

2位に入ったピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)

ソワニエから補給を受け取るピエール・ロラン(ユーロップカー)ソワニエから補給を受け取るピエール・ロラン(ユーロップカー) photo:Makoto.AYANO本当に残念だけど、これがスポーツってものだ。正直に言うと、ロメン・バルデが集団を牽いている時、彼は僕の友人だといって利用したかったんだ。彼と僕は違うチームだけれど、その関係を最大限に活かしたかった。最後のラセ・ド・モンヴェルニエで、シリル・ゴティエが献身的な働きをしてくれた。彼が僕のためにしてくれたことは、簡単に語れるものじゃない。シリルは人並み外れた選手だよ。だから、僕も全力で応えたんだ。

グランドン峠では、小さな事件が起こったね。ヤコブ・フグルサングがモトにぶつかってしまった。そこでロメン・バルデがアタックを仕掛けたんだ。僕は彼を見送ることにしたんだけど、今考えれば間違っていたね。2位と1位の間には大きな差がある。だから今日のステージはティボー・ピノが2位に、ロメン・バルデが3位にはいった14ステージよりも断然素晴らしい。彼が勝ったことはこの上なくうれしいけど、自分が勝っていたらもっと良かったんだけどね。

危なげなくマイヨジョーヌをキープするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

先頭にたってプロトンを引くチームスカイとマイヨ・ジョーヌのクリス・フルーム先頭にたってプロトンを引くチームスカイとマイヨ・ジョーヌのクリス・フルーム photo:Makoto.AYANO先頭バルデから3分03秒遅れでやってきたマイヨジョーヌグループ先頭バルデから3分03秒遅れでやってきたマイヨジョーヌグループ photo:Tim de Waeleマイヨジョーヌを受け取ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が表彰台を去るマイヨジョーヌを受け取ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が表彰台を去る photo:Tim de Waeleこのステージでも少し競り合いが起こったね。ロドリゲスが山岳ポイントを目指してアタックした時の様に。総合で9位以内につけているチームは彼らのポジションを守るために集団前方に上がってきている。それは僕らにとって有利に働いているね。

ゲラント・トーマスが4位にいるというのは夢のようなシナリオさ。キンタナとバルベルデは表彰台をキープするために守りの走りに徹さざるを得ない。彼らがアタックするときは、全てを得るか、全てを失うかどちらかの結果しかないということ。だから、僕が彼らにだけ注意していればいいんだ。

自分自身の調子もとてもいいね。2年前よりも絞れているんじゃないかな。レースをコントロールできていることにも自信が付いてきた。残りの2ステージは本当にハードなステージ。できれば何事もなく過ごしたいもの。ステージ優勝出来れば最高だけれど、そのためにチームメイトを死ぬほど疲労させてしまうのは望ましくない。

ファーストプライオリティはイエロージャージにある。ワウト・ポエルスとともにラルプデュエズを登るのは初めて。彼の家族や友人達が”ダッチコーナー”で待っているらしいんだ。きっと、僕らのチームにとって最後の挑戦になるだろう。最高のフィナーレを迎えることが出来ると思っているよ。

このツールでは、ラルプデュエズよりもハードな登りをこなしてきたけれど、あの登りが伝説的な登りであることは間違いない。できればハンガーノックに陥った2年前の様にならないように気をつけるよ。

その前に、明日のステージがあるんだった。シャシー峠は初めて登ることになる。一方で、ラ・トゥッスイールについてはよく知っている。かなり厳しい登りだよ!最後のほうは少し勾配が緩まるんだけど、きっとモビスターは残り5kmあたりでアタックしてくると思っているよ。

まだ諦めないナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

メイン集団からアタックを仕掛けるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)メイン集団からアタックを仕掛けるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleまだ、このツールで僕が勝てる可能性は残されていると思っている。調子はいいし、勝ちたいという気持ちがまだ萎えていないからね。2つのチャンスが僕には残されている。明日と明後日のステージで、今日作れなかったタイム差を生み出すために僕らはトライしていく。

明日のラ・トゥッスイールもかなり僕向きだけれど、やっぱりラルプデュエズで勝負を決めたいね。今日、ニーバリが加速した時、バルベルデはベストな状態ではなかったから僕は様子を見ることにしたんだ。ほとんどの山岳ステージをこなしたいま、クリス・フルームは彼の残してきたリザルトにふさわしいダメージを負っているはず。とはいっても、僕も同じなんだけどね(笑)残る2ステージ、ノープランなのか秘密の作戦があるのかは、お楽しみさ。

マイヨアポワを手に入れたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

山岳賞トップに立ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)山岳賞トップに立ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waele
かなりタフな一日だったが、脚の調子自体は良かった。だからスタートからすぐさまアタックして、なるべく山岳ポイントを加算するべく動いた。今日は全てが上手く運んだけれど、29名にも膨れ上がった逃げグループをコントロールするのに骨が折れたよ。グランドン峠手前の補給所ではペースが速くサコッシュを受け取ることができなかったので、登りでは苦しめられてしまった。

今日は山岳ポイントを加算するか、ステージ優勝を狙うかどちらかに的を絞っていたけれど、その瞬間にステージ優勝はなくなった。でもまだステージ優勝は諦めていないし、厳しい山岳ステージが2日間もある。(ヤコブ)フグルサングとロメン(バルデ)が山岳賞を狙ってくるだろうけれど、マイヨアポワを守る準備はできているよ。

攻撃を仕掛けたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)

グランドン峠でアタックしたアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)グランドン峠でアタックしたアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ) photo:Makoto.AYANOコンタドールを連れてアタックするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)コンタドールを連れてアタックするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele今までの自転車競技生活の中で最も厳しい一日の一つだった。トライしてどうなるか様子を見たかったが、結果的には何も実らなかった。グランドンでバルベルデを陥落させることはできたけれど、いつものような集中力が出てこない。今最も必要なのはリカバリーだ。今日のアタックは脚ではなくて、僕の闘志がそうさせた。バルベルデを総合表彰台から引きずり下ろすのは、彼に大ストップが起こらない限り不可能だ。

コンタドールを強力にアシストしたラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

今日は戦略が上手くいったように思うし、アルベルトの側でずっとサポートができた。最終週に入ったし、僕は常々グランツールの最終週に調子が上がる。レースはまだ終わっていないし、ティンコフ・サクソはポディウムを狙って戦い続けるさ。ライバルとの差を生み出すにはレース展開を厳しくする必要がある。アルベルトが普段通りであれば、そしてその状況を造り上げれば有利に運ぶことができるだろう。16ステージの落車で昨日は調子が良くなかったが、今日は問題無かった。いい兆候だよ。

マイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

まだまだ休息が欲しいところだけど、今日はたくさんの峠を登って標高を稼いだ。とてもキツい一日だった。今日も逃げに乗ろうと追いかけたが、既に逃げグループとの差が付いていたので合流できなかった。でも登りでは普段よりも苦しまずに済んだから、脚の調子は悪くない。今日はスロバキアからの最高なサポーターが応援してくれたことが力になった。故郷の国旗が沿道に並んだ気分は最高さ。

各選手のコメントはチーム公式サイト、レース公式サイトより。


text:Naoki YASUOKA,So Isobe
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,CorVos,Tim de Waele