新規のいなべステージはスカイダイブドバイのラファー・シティウィとフランシスコ・マンセボがワン・ツー。昨年の総合覇者、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)が上位に入り、連覇へ向けて好位置につけた。

8周目、下り区間を終えてアタックしたラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)8周目、下り区間を終えてアタックしたラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGI
三重県鈴木英敬知事、いなべ市日沖靖市長、片山右京監督とともに、スタートセレモニーにて三重県鈴木英敬知事、いなべ市日沖靖市長、片山右京監督とともに、スタートセレモニーにて photo:Hideaki TAKAGIいよいよツアー・オブ・ジャパンのロードレースが始まった。第2ステージいなべは、三重県北部のいなべ市阿下喜駅からスタートし15.2kmコースを8周する130.7km。コースは1箇所、急で狭い上りがあり分断されやすい難しいもの。当日は前夜からの雨が降り続き、レース中晩にようやく雨が止んだが路面はウェット。
3周目上り、内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)ら3周目上り、内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)ら photo:Hideaki TAKAGI
正式スタート後は各チームのアタック合戦となり常に不安定だがアタックが決まらない時間が長く続く。1周目の上りはペースは速いものの集団でクリア。その後もアタックがかかるが決まらない。3周目、単独で逃げたのはウラジミール・グセフ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)。グセフはやがて吸収され4周目にはイランの入らない逃げができるがこれも吸収される。5周目にはソーフィアン・ハディ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)が単独逃げ、7周目序盤まで逃げ続ける。
7周目、上り区間で内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がチームメイト2人を発射する7周目、上り区間で内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がチームメイト2人を発射する photo:Hideaki TAKAGI
ラスト2周、ブリヂストンアンカーの攻撃で14人の逃げ

単独逃げるハディとメイン集団との差は1分。やがてメイン集団も活性化し小規模なアタックがかかるがすべて吸収される。そして7周目。上り区間でブリヂストンアンカーが内間康平と初山翔がダミアン・モニエとトマ・ルバを引き上げ、ハイスピードで上り2人を発射する。この動きで集団前方が長く延び、KOMを過ぎて下りに入る箇所で14人がまとまって先頭集団を作る。逃げていたハディはこの段階で吸収され下がっていく。
7周目、先頭集団には昨年の総合覇者、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)が入っている7周目、先頭集団には昨年の総合覇者、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)が入っている photo:Hideaki TAKAGI7周目、1分30秒差のメイン集団は愛三工業レーシングチームらが引く7周目、1分30秒差のメイン集団は愛三工業レーシングチームらが引く photo:Hideaki TAKAGI

先頭の14人はペースを上げ、すぐに1分もの差がつく。先頭集団は、スカイダイブドバイはシティウィとマンセボ、ブリヂストンアンカーはルバとモニエ、NIPPO・ヴィーニファンティーニはディディエール・シャペロとアントニオ・ニーバリ、さらにルカ・ピベルニク(ランプレ・メリダ)、ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)、イリヤ・ゴロドニチェフ(RTSサンティックレーシングチーム)

アミール・ザルガリ(ピシュガマン ジャイアントチーム)、ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)、アダム・フェラン(ドラパック プロフェッショナルサイクリング)、マーク・オブライエン(アヴァンティ レーシングチーム)、オスカル・プジョル(チーム右京)の以上14名11チーム。

全17チームのうち11チームが乗ったが国内コンチネンタルチームの大半が乗れておらず、メイン集団を牽引するがいったんついた1分半の差は大きい。先頭集団では最終周回の上り、シティウィが上り口からKOMまでの1kmを先頭固定でハイペースで上りきる。そして下り終えた箇所でシティウィが単独抜け出し差を広げる。後続は意思が統一されずシティウィの逃げを許す。
8周目、上り区間の下からペースを上げるラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)8周目、上り区間の下からペースを上げるラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGI
ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイ プロサイクリングチーム)が逃げ切り優勝

結局シティウィが15秒の差をつけて優勝、2位にはマンセボが入りスカイダイブドバイがワン・ツーフィニッシュ。メイン集団は差を詰めて55秒後にフィニッシュ。決定的な大差とならずに次ステージ以降に望みを託す結果に。

優勝したシティウィは現・2年連続のチュニジアロードチャンピオン。今シーズンは2月のアミッサ・ボンゴ(UCI2.1)で個人総合優勝、2014年ジェラジャ・マレーシア(UCI2.2)で個人総合優勝の29歳。来日は昨年のツール・ド・熊野に続いて2回目。2012年はユーロップカーで「新城選手と一緒に走っていた」という。
「厳しいコースだったがチームで勝てました。最後は上り区間を頑張ればと走って優勝することができました」と語る。
ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)が逃げ切り優勝ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)が逃げ切り優勝 photo:Hideaki TAKAGI2位スプリントはフランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)が制する2位スプリントはフランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)が制する photo:Hideaki TAKAGI個人総合時間&ポイントリーダーはラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)個人総合時間&ポイントリーダーはラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGI
日本人最高位の土井雪広は「ブリヂストンアンカーの攻撃で逃げができたとき、チームからはプジョルが入ったが彼は総合を狙う選手でなかったのでどう攻撃すべきか考えたところはありました。ダニエル・ホワイトハウスと自分が総合狙いなので走り方はこれから考えたい。タイム差は許容範囲内なのでまだまだ攻めて行きたいです」と語る。

水谷壮宏ブリヂストンアンカー監督は「90点の出来です。逃げに2人乗せたがもう一人乗せられたと思いますね。今日は(内間)康平が前半から良く動いてくれたことも良かったです。コースの特性から、序盤から動くことも考えたが動きが鈍かったのでラスト2周で仕掛けました」と語る。

いなべで日本チームはどう戦ったのか

圧倒的な登坂力を持つイラン人選手の参戦で、昨年と同じ轍を踏まない策はどのチームももちろん考えていた。そのひとつがこのいなべステージで差をつけること。新規コースだが日本チームにとっては地の利で試走をすることが出来た。短いながらも急で狭い上りのあるこのコース。海外選手がコースを覚える前、つまり1周目から上り区間で仕掛けることが策のひとつ。

だが実際はそれまでの区間でのアタック合戦で脚を使っていたこと、”自分のチームだけが仕掛けても泳がされるだけ”、あるいは海外チームが試走はしていないものの危険と判断して逃げを潰し、そして上りで前方に位置したことで、日本チームによるアタックは見られなかった。ドバイもイランも試走をしていない。海外チームではランプレの1名が走っただけだった。この絶好の機会を日本人選手は生かすことが出来ず、後手を踏んで海外チームの独占を許してしまった。

唯一ブリヂストンアンカーだけが”90点の出来”と評するように計画的な攻撃でフランス人選手2人を前に送り込むことに成功した。キナンと右京はそれぞれの外国人選手が逃げに乗ったため目的を達成した部分もある。宇都宮ブリッツェンは勝負どころの直前に増田成幸がメカトラに遭ったことが痛かった。

コースをわかっていたがその他の部分でアタックしても結果的に肝心の部分で攻撃を仕掛けられず、日本人選手は21位が最高という結果は、実力の差としか言いようがない。総合で増田がトップから1分07秒差は挽回できない差ではないが富士山ステージを考えると、多くの日本チームと日本人選手はステージ狙いにシフトすることも考える。だが悔しさは選手も監督も同じ。美濃ステージ以降の挽回を期待したい。


結果

第2ステージいなべ 128.7km
1位 ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)3時間10分06秒 
2位 フランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)+15秒
3位 ルカ・ピベルニク(ランプレ・メリダ)
4位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
5位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)
6位 イリヤ・ゴロドニチェフ(RTSサンティックレーシングチーム)
7位 アミール・ザルガリ(ピシュガマン ジャイアントチーム)
8位 ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)
9位 ディディエール・シャペロ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)
10位 アダム・フェラン(ドラパック プロフェッショナルサイクリング)

個人総合順位 第2ステージ終了時点
1位 ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)3時間13分20秒
2位 フランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)+20秒
3位 アダム・フェラン(ドラパック プロフェッショナルサイクリング)+21秒
4位 ルカ・ピベルニク(ランプレ・メリダ)+24秒
5位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)+30秒
6位 ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)+31秒
7位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)+33秒
8位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(タブリーズ ペトロケミカルチーム)+34秒
9位 アミール・ザルガリ(ピシュガマン ジャイアントチーム)+36秒
10位 イリヤ・ゴロドニチェフ(RTSサンティックレーシングチーム)

個人総合ポイント順位 第2ステージ終了時点
1位 ラファー・シティウィ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)25点
2位 フランシスコ・マンセボ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)20点
3位 ルカ・ピベルニク(ランプレ・メリダ)16点

個人総合山岳順位 第2ステージ終了時点
1位 マッティア・ポッツォ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)7点
2位 マリオ・コスタ(ランプレ・メリダ)5点
3位 ソーフィアン・ハディ(スカイダイブドバイプロサイクリングチーム)5点

チーム総合順位 第2ステージ終了時点
1位 スカイダイブドバイプロサイクリングチーム 9時間41分38秒
2位 ブリヂストンアンカーサイクリングチーム +29秒
3位 NIPPO・ヴィーニファンティーニ +34秒

photo&text:Hideaki TAKAGI
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