2days race in 木祖村2日目は、9kmの味噌川ダム周回コースを14周(うち6kmローリングスタート)の計120kmを走るステージ2が行なわれた。



総合トップでイエロージャージを着る宇田川陽平(WALKRIDE)と総合2位の間瀬勇毅(京都産業大学)との差は7秒。総合3位には 高岡亮寛(イナーメ) がトップから10秒遅れでつけており、総合争いはまだ熾烈な戦いだ。

このレースの特徴の一つとしてボーナスタイムがあり、8周、10周、12周完了時の先頭上位3選手に対して3、2、1秒、ゴール地点では上位3選手に10、6、4秒が与えられる。今年はこのボーナスタイムが総合成績に大きな影響を与えた。

冠雪の山並みをバックに走る集団の選手たち。この壮大な景色も2デイズ木祖村のみどころだ冠雪の山並みをバックに走る集団の選手たち。この壮大な景色も2デイズ木祖村のみどころだ photo:Chiho.Iwasa


ステージ2 120kmステージ2スタート前に各賞リーダージャージが揃うステージ2スタート前に各賞リーダージャージが揃う photo:Chiho.Iwasa

ステージ2は快晴の中、12時に115人が出走。3~7周目の味噌川ダムの上にスプリント地点が計5回あり、スプリントポイントを獲得するため、川田優作(Honda栃木)が積極的に動いた。この川田の動きで、度々スプリント地点過ぎに数人の逃げが形成されるも決定的なものにはならず。

逃げの3人。ブルノ・ゲゼ(NEILPRYDE)と岩佐(サイクルフリーダム)とスプリントポイントを取りに逃げに乗った川田(Honda栃木)逃げの3人。ブルノ・ゲゼ(NEILPRYDE)と岩佐(サイクルフリーダム)とスプリントポイントを取りに逃げに乗った川田(Honda栃木) photo:Chiho.Iwasaこの日、スプリント地点を3度トップ通過し9ポイント獲得した川田は、計12ポイントで暫定総合トップとなった。ただ完走しなければ賞も取り消しされてしまうため、最後まで気が抜けない。

スプリント賞の戦いが終わる8周目からボーナスタイムのある周回賞を狙う戦いが始まった。7人の逃げができ、まず1回目のボーナスタイムを高岡亮寛(イナーメ)が獲得。総合上位2人との差を3秒詰めた。

黄色いリーダージャージを着て集団を走る宇田川陽平(WALKRIDE)黄色いリーダージャージを着て集団を走る宇田川陽平(WALKRIDE) photo:Chiho.Iwasaイエロージャージの宇田川含む集団との差は50秒開き、高岡がバーチャルリーダーに。これらの情報は、レース会場のアナウンスやレースのオフィシャルツイッターで逐一報告されるため、観戦できる場所は限られているもののレース状況が手に取るように分かり、沿道でチームスタッフが選手たちに指示を出すことができる。その後、集団は活性化され、逃げは捕まってしまった。ぺースアップした集団から力のない選手たちは脱落していき、30人ほどに絞られた。

集団が後続差し迫りながらトップを走る岩佐(サイクルフリーダム)とブルノ・ゲゼ(NEILPRYDE)集団が後続差し迫りながらトップを走る岩佐(サイクルフリーダム)とブルノ・ゲゼ(NEILPRYDE) 2度目のボーナスタイムは総合2位の間瀬がトップ通過し、イエロージャージの宇田川との差は4秒となった。その後集団から、ジェイソン・バラド(NEILPRYDE南信スバル)と才田直人(Gruppo AcquaTama)が飛び出した。逃げた2人は直接総合争いに関係なかったため、集団は容認し、タイム差が開いていく。

3度目のボーナスタイムは才田(Gruppo Acqua Tama)がトップ通過し、集団の先頭で高岡が3位通過し、総合タイムを1秒縮めた。ラスト1周に入るゴール前の上り坂でバラドは遅れ、先頭は才田のみ。才田は単独でゴールを目指した。

余裕でゴール前の坂を上る才田直人(Gruppo AcquaTama)と苦しそうなジェイソン・バラド(NEILPRYDE-南信スバル)余裕でゴール前の坂を上る才田直人(Gruppo AcquaTama)と苦しそうなジェイソン・バラド(NEILPRYDE-南信スバル) photo:Chiho.Iwasa才田と集団との差は1分20秒あり、ステージ優勝はほぼ確実となった。さらに、ボーナスタイムの関係で総合上位に食い込めるか? との情報が流れ、会場では最後まで目が離せない展開に。集団も最後ペースアップし、その差を詰めてきたが、1分以上あった差は追いつくまでにはいたらず、才田が逃げ切ってステージ優勝を挙げた。

才田は現在レモネード・ベルマーレに所属しているが、このレースは別のチーム所属の「レンタル選手」として出場。地元で練習地域が同じ Gruppo Acqua Tamaに声をかけられ、急遽先週出場することが決まったとのこと。
初出場でのステージ優勝を果たした才田は言う。「もともとこのレースには出るつもりじゃなかったんです。全日本選手権に向けて乗り込んでいたので、はじめは練習のつもりで飛び出して、行けるところまで行こうと思ったら1分まで差が開いたので、最後まであまり考えずに踏める所まで踏もうと走りました。逃げは2人でしたが、9割くらい自分が引いていました。自分はフランスで活動していたので、彼とはフランス語で話していたんですが、『2位でいいから連れて行って』と言われ、上りで『ゆっくりゆっくり』と叫ばれたけれど、追走グループができているのが見えたので、一人で行った方がいいと思って、謝って一人で行きました。一人で逃げてたのと同じような感じだったので、それもあって練習のつもりで、踏めるところまで踏もうと欲なく行ったのが良かったと思います」。

独走逃げ切りでゴールに入る才田直人(Gruppo AcquaTama)独走逃げ切りでゴールに入る才田直人(Gruppo AcquaTama) photo:Chiho.Iwasa
7人の先頭グループの前を走る高岡亮寛(イナーメ)7人の先頭グループの前を走る高岡亮寛(イナーメ) photo:Chiho.Iwasa集団は逃げのないままゴールへ。このコースはゴール前が登りになっているため、最後の最後まで誰がどの順位で入るか分からない。ステージ2位争いの集団のトップで来たのは風間博之(サイクルフリーダム)。続いて前日総合3位の高岡亮寛(イナーメ) 、前日総合2位の間瀬勇毅(京都産業大学)が入ったが、リーダージャージの宇田川陽平(WALKRIDE)の姿はあらず。

ゴールに走りこんだ高岡亮寛(イナーメ)。最後のボーナスタイムが総合優勝に大きく影響したゴールに走りこんだ高岡亮寛(イナーメ)。最後のボーナスタイムが総合優勝に大きく影響した photo:Chiho.Iwasa宇田川はライバルの2人から26秒遅れてゴールし、総合トップの座を失った。果たして総合トップは誰になったのか? このレース、今は普通となっているチップでのタイム測定ではなく、昔ながらの審判たちの手動計算によって運営されているが、すぐさまボーナスタイムを反映させた総合成績が計算された。ゴール地点でステージ3位のボーナスタイム4秒が加算された高岡が、前日総合2位の間瀬を2秒上回り、大逆転の末総合優勝を果たした。

レースに「たられば」の話はつきものだが、もしこれが4位以下での争いならばボーナスタイムが付かず、間瀬が総合優勝していたという僅差の戦いだった。

ステージ2で優勝した才田直人(Gruppo Acqua Tama)、2位の風間博之(サイクルフリーダム、3位の高岡亮寛(イナーメ)ステージ2で優勝した才田直人(Gruppo Acqua Tama)、2位の風間博之(サイクルフリーダム、3位の高岡亮寛(イナーメ) photo:Chiho.Iwasa初日の個人TTで優勝した中村龍太郎(イナーメ)が昨日、「高岡さんがいい位置にいるので僕とのタイムを考えながらイエロージャージがキープできるように頑張りたい」と言っていたが、最終的にイナーメがイエロージャージを奪還する形となった。

子供たちと一緒に表彰台に上る総合優勝の高岡亮寛(イナーメ)、2位に間瀬勇毅(京都産業大学)、3位に風間博之(サイクルフリーダム)子供たちと一緒に表彰台に上る総合優勝の高岡亮寛(イナーメ)、2位に間瀬勇毅(京都産業大学)、3位に風間博之(サイクルフリーダム) photo:Chiho.Iwasa総合トップに立った高岡は次のように話す。「途中の逃げにチームメイトと僕が入ってうまい具合に逃げれたので、いい動きだったと思います。『このまま行けば総合だな』と思って走ってました。でもそこまで甘くはなく、捕まってからは『また逃げるのは難しいかな』と思いつつ前で展開していて、残り2周からはゴール勝負に切り替えました。機会があればボーナスタイムを取ろうと思っていて、結果的にはそれが良かったですね。
このレースは3ステージあって、30秒くらいの差に狙える選手たちがいるので気が抜けなくて面白いですね。多分、このレースは3回目の出場だと思うんですが、久しぶりの参加なんです。泊まりになるので子供たちを置いてくるのは家族的に厳しくて、今回も子供2人連れてくるのでいいだろうってことで来させて貰いました。子供たちも楽しめたようで良かったです。子供との表彰式は初めてでした。勝てればいいな~、とは思っていたんですが、力んで臨まなかったのが良かったのかもしれないですね」。気負いなく走ったことが、結果的には良かったようだ。

一方U23のホワイトジャージは獲得したものの、念願のイエロージャージには一歩及ばなかった間瀬は「総合を狙っていたので悔しいです。チームメイトが総合ジャージを取るために差をコントロールしてくれて、詰めてくれたけれど、最後のスプリントで高岡さんにマークされて刺されたので悔しいです。高岡さんとの差が元々3秒くらいしかなかったので、当然来るだろうと思っていました。これが実力差かな、と思います。学生の大会がここであるので、この調子で頑張って行きたいと思います」と悔しさをにじませながらも、今後の大会への意欲を見せた。

最後のボーナスタイムが明暗を分けた今年の大会。やはりこのレースは毎年見所が満載だ。今年は総合上位10人に全日本選手権への出場権が与えられる大会へと成長した。充実した現地実況で細かな情報が流れ、選手も観客もレースの醍醐味を満喫できる日本では数少ない本格的なレース。来年もまた何かドラマがあるに違いない。

総合優勝の高岡亮寛(イナーメ) レース表彰式で行なうシャンパンファイトの数は日本一!総合優勝の高岡亮寛(イナーメ) レース表彰式で行なうシャンパンファイトの数は日本一! photo:Chiho.Iwasaポイント賞上位3人、1位の川田優作(Honda栃木)、2位の相本祥政(法政大学自転車競技部)、3位の関谷聡(劇場版 駒澤大学)ポイント賞上位3人、1位の川田優作(Honda栃木)、2位の相本祥政(法政大学自転車競技部)、3位の関谷聡(劇場版 駒澤大学) photo:Chiho.Iwasa


ポイント賞を獲得した川田優作(Honda栃木)のコメント
昨日の結果で総合は狙えないと思っていたので、やる気のあったスプリントだけ頑張って、これ最初で稼げばいけるんじゃないだろうかと思ってガッツリ最初から取って行きました。数人で逃げた時も一人でジャンプして、その中で取らせてってお願いして取らせてもらったり、競り合った事もあったけれど、そんな中でも1位が取れてポイントが稼げました。あまり成績は狙ってなくてトレーニングのつもりで出たら、取れてよかったです。4回目のポイントを絡んだ時にこれ脚がやばいかと思った。途中中切れで本当に切れそうになった時あった。
ポイントをとった後はおとなしくして、完走を優先しました。初めての木祖村のレースでした。コースも面白いし、実力のある人しか勝てないレースです。来年も出てみたいです。

O-40 (40歳以上)を獲得した高橋伸成(桜台レーシングチーム)のコメント
ずっと集団の後ろにいたけれど、タイム差が違い高橋誠さんがどこにいるか注意しながら走っていました。途中に切れたのが分かったので、次にタイム差が違い今田さんの位置とポールさんの位置を見ながら走っていました。ラスト2周で集団から飛び出したのは、何もしないで終わるより、なんとなく調子が良かったので前に出ただけです。ちょっと攻めてみようと思いました。ピンクジャージは一度取りたいと思っていて、年齢的に40代後半なので最後のチャンスかなと思って狙っていて、ズバリ取れたので非常に満足しています

日曜日の午前中には、ジュニアと前日リタイアした選手が参加できる残念レースが72kmで行なわれ、澤野敦志(竹芝サイクルレーシング)が優勝した。2位には齋藤 和輝(多摩ポタ.mode)、3位には高校生の浅野 直輝(飯田風越)が入った。

名物の賞品“鹿の角”を喜ぶO-40賞獲得の高橋伸成(桜台レーシングチーム)名物の賞品“鹿の角”を喜ぶO-40賞獲得の高橋伸成(桜台レーシングチーム) photo:Chiho.Iwasa各賞ジャージ:O-40のピンクジャージ高橋伸成(桜台レーシングチーム)、総合トップのイエロージャージ高岡亮寛(イナーメ)、ポイント賞のグリーンジャージ川田優作(Honda栃木)、U23のホワイトジャージ間瀬勇毅(京都産業大学)各賞ジャージ:O-40のピンクジャージ高橋伸成(桜台レーシングチーム)、総合トップのイエロージャージ高岡亮寛(イナーメ)、ポイント賞のグリーンジャージ川田優作(Honda栃木)、U23のホワイトジャージ間瀬勇毅(京都産業大学) photo:Chiho.Iwasa


2days race in 木祖村2015 ステージ2の結果

1位 才田直人(Gruppo Acqua Tama) 3時間04分30秒
2位 風間博之(サイクルフリーダム) +54秒
3位 高岡亮寛(イナーメ) +54秒
4位 間瀬勇毅(京都産業大学) +54秒
5位 河賀雄大(VICTOIRE広島) +54秒

個人総合時間
1位 高岡亮寛(イナーメ)  5時間13分42秒
2位 間瀬勇毅(京都産業大学) +2秒
3位 風間博之(サイクルフリーダム) +10秒
4位 才田直人(Gruppo Acqua Tama) +15秒
5位 宇田川陽平(WALKRIDE) +24秒

総合優勝:高岡亮寛(イナーメ)
スプリント賞:川田優作(Honda栃木)
O-40賞:高橋伸成(桜台レーシングチーム)
U23賞:間瀬勇毅(京都産業大学)

photo&text:Chiho.Iwasa