序盤からのハイスピードな展開によって脱落した石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)が途中リタイア。逃げグループの中から飛び出したパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が逃げ切り勝利を果たしました。



華やかにデコレートされた街を通過華やかにデコレートされた街を通過 photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第9ステージジロ・デ・イタリア2015第9ステージ image:RCS Sport休息日を翌日に控えた第9ステージはアップダウンとワインディングが詰め込まれた224km。中盤にかけて2級山岳テルミニオ(登坂距離20km/平均勾配4.2%)と1級山岳コッレ・モレッラ(登坂距離9.5km/平均勾配6.3%)が立て続けに登場する。

逃げグループのペースを上げるライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)逃げグループのペースを上げるライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waeleさらに残り11km地点で2級山岳パッソ・セッラ(登坂距離3.6km/平均勾配8.0%)を越えてサンジョルジョ・デル・サンニオにフィニッシュする。アルデンヌ・クラシックさながらのアップダウンコースであり、1日の獲得標高差は4100mに達した。

序盤の登りで一人遅れた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)序盤の登りで一人遅れた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji逃げ切りが決まりやすいレイアウトということもあり、集団が割れるほどのハイスピードなレース幕開けとなったこの日、石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)は序盤の登りで一人脱落してしまう。単独で追走を続けたもののグルペットに追いつけず、約75km地点でバイクを降りて回収車に乗った。

高速アタック合戦を切り抜けて飛び出したのは11名。2日連続逃げのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)や、ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)を含む強力な面子が逃げた。

2級山岳テルミニオを越える頃にはタイム差は6分まで拡大したが、ティンコフ・サクソのペースコントロールによってタイム差は4〜5分を行ったり来たり。アスタナのペースアップによって1級山岳コッレ・モレッラでタイム差は2分を切ったが、逃げを捕まえてしまうことはなかった。

カテゴリー山岳でポイントを稼いだサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が山岳賞暫定トップに立つ中、フィニッシュまで75kmを残してトムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)が逃げグループから単独アタック。独走に持ち込んだスラグテルが、追走グループを1分45秒、メイン集団を4分引き離した状態で最後の2級山岳パッソ・セッラに突入した。



1級山岳コッレ・モレッラを登る逃げグループ1級山岳コッレ・モレッラを登る逃げグループ photo:Tim de Waele
逃げグループから飛び出したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)逃げグループから飛び出したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waele走りながら話すリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)走りながら話すリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele
この日もランダ、コンタドール、アル、ポートの山岳バトルが繰り広げられたこの日もランダ、コンタドール、アル、ポートの山岳バトルが繰り広げられた photo:Tim de Waele


先頭トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)にジョインしたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)先頭トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)にジョインしたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele10%を超える勾配が続く2級山岳パッソ・セッラを先頭スラグテルはペースを崩さず登坂。しかし、逃げ切りの可能性が高まった追走グループの選手たちも黙っていない。エリッソンドらがカウンターアタックを仕掛けたが決まらず、1分前を走るスラグテルを淡々と追い続ける。

アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)自らペースを上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)自らペースを上げる photo:Tim de Waele単独で追走グループからジャンプし、先頭スラグテルに追いついたのはただ一人だけ。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)のアシストとして逃げグループ内で待機し、エースの勝負のために力を温存していたティラロンゴだった。

独走でフィニッシュするパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)独走でフィニッシュするパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele残り8km地点でスラグテルに追いついたティラロンゴは、残り5kmからの登りでスラグテルを振り切って独走開始。リードを守ったままサンジョルジョ・デル・サンニオの目抜き通りにやってきたティラロンゴが単独追走していたクルイスウィクを21秒振り切って勝利した。

スプリントでコンタドールらを引き離すファビオ・アル(イタリア、アスタナ)スプリントでコンタドールらを引き離すファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele37歳と313日というジロ最年長ステージ優勝者が誕生。若手が揃うアスタナに経験を与えるベテランクライマーが2011年と2012年に続くステージ通算3勝目をつかんだ。

ランダに感謝するファビオ・アル(イタリア、アスタナ)ランダに感謝するファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji「良い逃げに乗ったと自負している。当初はチームメイト(アル)を最後の登りで待つ予定だったんだ。でもタイム差が大きかったので作戦を変更した」と、久々に自分の走りに徹したティラロンゴは語る。「チームカーの指示を得てアタックし、きつい登りでタイムを縮めて先頭スラグテルにジョイン。これは予想外の勝利だ」。

最終的に逃げ切りを成功させたのは9名の選手達。その後方ではアルのアタックを切っ掛けにマリアローザ争いが過熱した。

2級山岳パッソ・セッラでアルがアタックすると、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)、そしてチームメイトのミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)というお馴染みのトップ選手がジョイン。リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)はこの精鋭グループ入りを逃してしまう。

ランダが献身的に先頭を牽引し、ウランを少しでも引き離したいアルはコンタドールに協力を要請。こうしてローテーションが回り始めた総合トップスリーが後続を引き離しにかかる。

残り5kmを切ったところでアルが何度か加速したものの決まらず、最後は長い緩斜面ストレートでのスプリント争いに。ここでもアルの積極性は光り、力づくでライバルたちを引き離した。アルはコンタドールとポートから1秒を奪うことに成功している。コンタドールはタイム差1秒を失ったものの、3秒差でマリアローザを守っている。

「最後の登りを越えてからはコンサバティブに走ろうと思っていたものの、アルに嘆願されてローテーションに加わった。1秒を失う結果になったけど現状には満足しているよ」とコンタドールは語る。左肩の脱臼を全く感じさせない走りで、コンタドールがマリアローザをキープしたままジロは1回目の休息日を迎える。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



ジロ史上最年長ステージ優勝を飾ったパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)ジロ史上最年長ステージ優勝を飾ったパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
左腕を使ってマリアローザに袖を通すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)左腕を使ってマリアローザに袖を通すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji23分42秒遅れのグルペットでフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング)23分42秒遅れのグルペットでフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第9ステージ結果
1位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)               5h50’31”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)           +21”
3位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)           +23”
4位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)
5位 ヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)
6位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
7位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
8位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)          +27”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                   +56”
11位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)         +57”
12位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
13位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
163位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)            +23’42”
DNF 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)        38h31’35”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +03”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)               +22”
4位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                     +46”
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)                   +1’16”
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)            +1’46”
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)            +2’02”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)      +2’10”
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)              +2’20”
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)             +2’24”

マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text&photo:Kei Tsuji in San Giorgio del Sannio, Italy