今季よりNIPPOヴィーニファンティーニをサポートする国産タイヤブランド、IRC。同社のアイデンティティであるロード用チューブレスタイヤのラインアップより「Formula PRO TUBELESS X-Guard」をインプレッション。独自開発の耐パンクベルトによって耐久性を高めたタフなレーシングモデルの実力に迫る。



IRC Formula PRO TUBELESS X-GuardIRC Formula PRO TUBELESS X-Guard photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
転がり抵抗が20%低く、衝撃吸収性に優れるなどロードバイク用タイヤにおいて現在主流のクリンチャーに対し、様々なアドバンテージを持つチューブレスタイヤ。加えて、パンク時のエア保持時間が長いため危険が少なく、エアの自然漏洩が少ないことから充填頻度が減るなど、純粋な走行性能以外にも様々なメリットを有している。

トレッドはシンプルなスリックパターンを採用トレッドはシンプルなスリックパターンを採用 40x40tpiという高密な「X-Guard」という耐パンクベルトを装備している40x40tpiという高密な「X-Guard」という耐パンクベルトを装備している そんなロード用チューブレスタイヤに着目し、規格が立ち上がったばかりのころからいち早く製品を市場に送り出してきたIRC。

現在はNIPPOヴィーニファンティーニにサポートを行い、トップのプロレースシーンでその性能を磨き続けている。そんな同社のレーシングチューブレスシリーズが「Formula PRO TUBELESS」だ。

3種類がラインアップされる同シリーズの中で、今回インプレッションする「Formula PRO TUBELESS X-Guard」は、他の2モデルと比較して47%も高い耐パンク性を実現したモデルだ。他モデルにも採用されている通常の耐パンクベルトに加え、40x40tpiという高密度の「X-Guard」という耐貫通ベルトを装備している。

一方で軽量化も図られており、軽量クリンチャータイヤとブチル製インナーチューブの合計とほぼ同等重量の1本280gに抑えられている。また耐パンクベルトによる柔軟性の低下も最小限に抑えられており、チューブレスならではの乗り心地の良さを味わうことができるという。

サイズは700×23Cの1種類展開。カンパニョーロEURUS 2WAY-FITに装着し、エアーを7barまで充填した際の実測幅は23.0mmちょうど。国産ブランドらしい高精度な仕上がりとなっている。今回は1ヶ月間約1,000kmに渡って、峠の下りからヒルクライム、日々の通勤、サーキットエンデューロまで様々なシーンでライドテストを行った。早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション

チューブレスタイヤといえば嵌め込みづらく、作業性が悪いというイメージを持たれている方は少なくないだろう。しかし、IRCの担当者によると、改良によって以前ほどはキツくはなくなったという。今回カンパニョーロEURUS 2WAY-FITに装着してみたが、キツいクリンチャーと同程度という印象で、「超」がつくほどの困難は伴わなかった。ちなみに嵌め込みのコツはIRCのホームページで手順を追って解説されているので参考にしたい。

ちなみに、何故チューブレスタイヤの嵌め込みキツいかというと、同じ車輪径の表記ながら、スポークテンション等によって実際の車輪径が変わってくるため、寸法を最小公倍数的にしなければならないからだそう。実際に今回も前後で嵌めこみやすさが異なっており、フロントは手だけで装着できたが、リアには最後のビード嵌めのときにIRCのチューブレス専用タイヤレバーを使用した。

空気圧を5bar~8barの範囲で変えながらテストを行ったところ、個人的(体重73kg)には6barぐらいがベストだと感じた。この数値にいきついたのは、サイドを積極的に変形させるためであり、大小様々な振動を吸収させることで、むしろ転がり性能が高圧状態よりも高くなるからだ。体重60kg台の人なら5bar程度を基準に調整するのが良いと思われる。

「非常に高い耐久性を持つレーシングタイヤ。低圧で使用すると持ち前の転がり性能を活かすことができる」「非常に高い耐久性を持つレーシングタイヤ。低圧で使用すると持ち前の転がり性能を活かすことができる」
レーシングタイヤとしてグリップは充分な性能があり、時速60km/hを越えるシーンでも不安を覚えることはない。コーナリング時にはサイドの変形は感じられず、硬めながらもコンパウンド自体がしっかりと路面を捉えてくれる。クリンチャータイヤの様なフィーリングである。コーナリング時の挙動は、昨今のワイドタイヤに慣れていると、ほんの僅かにクイックだと感じるが、23Cとしては標準的だ。

ただ、7barで雨の日に乗ってみたところ、低速時にマンホールや点字ブロックの上でトルクをかけるとスリップをおこしてしまった。これはコンパウンドの硬さに加え、耐パンクベルトやスリックトレッドであることにより、トレッド表面自体がほとんど変形していないからだと考えられる。

ただコンパウンドが硬いことで、非常に高い耐久性を実現しているのもまた事実。一般的なレーシングタイヤの場合、1,000kmも走ればトレッドに切り欠きができたり、砂利が食い込んでいたりということがあるが、今回のインプレッションではそういった傷みは全くなかった。

衝撃吸収性は昨今主流となっている25C程度のクリンチャーと同程度で、23Cという幅でみれば比較的高いと言えるだろう。特に車道から歩道に乗り上げる際など、段差を越える時に大きな衝撃が加わると「リム打ちしたのでは?」とチェックしてしまうほどにサイドが潰れてくれる。

タイヤ単体で280g、クリンチャー専用に対してやや重いチューブレス対応ホイールと組み合わせると決して軽いとはいえないが、登りは決して不利ではない。特に路面が荒れた登りではトラクションがかかってくれるためパワーをスポイルしている感触がなく、勾配が緩い箇所ではチューブレス持ち前の高い転がり性能が活きてくる。もちろん平地や下りは言わずもがなで、踏み出しこそやや重いと感じるが、一度スピードにのせてしまえば、巡航では周りに対してパワーをセーブすることが可能だ。

総じてFormula PRO TUBELESS X-Guardをオススメしたいのは、ロングライドやブルベをメインとするライダーだ。やはり耐久性の高さは可能な限りトラブルを避けたいシーンで強い味方になってくれる。そして、これはチューブレス全般に言えることだが、タイヤクリアランスの関係で25Cといった太めのタイヤが使えないフレームのユーザーにもオススメで、この23Cチューブレスならば25Cクラスのクリンチャーと同等の快適性を手に入れることができる。

IRC Formula PRO TUBELESS X-Guard
耐パンクベルト:X-Guard
サイズ:700×23C
実測幅:23.0mm(カンパニョーロ EURUS 2WAY-FITに装着 / 7bar充填時)
重 量:280g
指定空気圧:6.0~8.0bar/90~115PSI
価 格:7,600円

photo:Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
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