ジェノヴァ市街地周回コースの至る所で落車が発生。混乱を避けた79名の集団が約2%の登りストレートに突入し、失速するライバルを振り切ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)がジロ・デ・イタリアのステージ初優勝を飾りました。



ジロ・デ・イタリアのペイントが目を引くジロ・デ・イタリアのペイントが目を引く photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第2ステージジロ・デ・イタリア2015第2ステージ image:RCS Sportジロ・デ・イタリアのロードステージ初日、第2ステージはミラノ〜サンレモの後半部分を逆走する形でリグーリア州のリヴィエラ海岸を東に進む177kmで行われた。

スタート前に話すマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)スタート前に話すマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsujiフィニッシュまで53kmを残して4級山岳プラートザニーノ(登坂距離3km/平均勾配6%)が登場するものの、スプリンターには問題のないレベル。それよりもフィニッシュ地点ジェノヴァの市街地周回コースが選手たちを悩ませた。

逃げるマルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)ら5名逃げるマルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)ら5名 photo:Kei Tsujiこの日の逃げに乗ればマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)着用のチャンス。アクチャルスタートの旗が振られると同時に集団先頭から飛び出したマルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)に4名が追いついたところで集団はペースを落とした。

マリアローザを着て走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マリアローザを着て走るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji逃げグループを形成したのはフラッポルティとルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)、エルゲルト・ズパ(アルバニア、サウスイースト)、ジャコモ・ベルラート(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)の5名。つまりバルディアーニCSFを除くUCIプロコンチネンタルチームにロットNLユンボを加えた5名が逃げる。

蒸し暑いアルベンガの街を離れ、ゆるい海風を受けながらリヴィエラ海岸を進むうちにタイム差は9分まで拡大した。

マリアローザチームとして、そして同時にマイケル・マシューズ(オーストラリア)の勝利を狙うスプリンターチームとしてオリカ・グリーンエッジが前半から集団を牽引。残り100kmを切ってからタイム差は縮小に転じる。

今大会最初の、そしてこの日唯一の4級山岳で力を見せたのはリンデマンだった。UCIワールドチーム所属選手としての貫禄を見せつけて頂上を先頭通過したリンデマンがマリアアッズーラ着用を決めている。

一方のメイン集団ではティンコフ・サクソのペースアップによって脱落する選手が続出。「序盤の登りの時点で体調が悪いことに気づきました」と語る石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)はこの4級山岳で集団から脱落した。

その他にもジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)を含む多くのスプリンターが集団から脱落したものの、チームメイトの力を借りて集団に復帰する。リヴィエラ海岸に沿う平坦路に戻るとトレックファクトリーレーシングやジャイアント・アルペシンが集団コントロールを開始。いよいよ選手たちの視界にジェノヴァの街が入ってきた。



リヴィエラ海岸をジェノヴァに向かって東に進むリヴィエラ海岸をジェノヴァに向かって東に進む photo:Kei Tsuji
海にせり出した断崖を縫うように進む海にせり出した断崖を縫うように進む photo:Kei Tsuji海水浴客に見守られながらプロトンは進む海水浴客に見守られながらプロトンは進む photo:Kei Tsuji

大型フェリーが停泊するジェノヴァの街が見えてきた大型フェリーが停泊するジェノヴァの街が見えてきた photo:Kei Tsuji


ジェノヴァの街を目前にハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)らが落車ジェノヴァの街を目前にハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)らが落車 photo:Kei Tsujiステージレースのロードステージ初日らしいナーバスな集団の中では落車が多発する。ジェノヴァ到着を前にハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)を含む大落車が発生し、事実上戦線からの離脱を余儀なくされる。

マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)らが強力に集団を牽引マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)らが強力に集団を牽引 photo:Kei Tsuji落車はジェノヴァの周回コース(9.5km x 2周)に入っても多発し、その影響で総合有力候補であるドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)やライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)が脱落する。激しく落車したピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)は、鎖骨骨折から復帰したばかりにも関わらず、レース2日目にリタイアを余儀なくされた。

登り基調のスプリントで優勝したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)登り基調のスプリントで優勝したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji集団先頭ではティンコフ・サクソがメンバー総動員のペースアップを開始し、危険を回避するとともにポッツォヴィーヴォらの集団復帰を阻む。無事に集団復帰を果たしたヘシェダルに対し、ポッツォヴィーヴォはこの日だけで1分09秒ものタイムを失っている。

クラークに感謝するサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)クラークに感謝するサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiティンコフ・サクソのペースアップと相次ぐ落車によって集団は80名弱に絞られ、序盤から逃げていた選手たちを飲み込んで最終周回へ。残り3kmを切ってからチームスカイのサルヴァトーレ・プッチォ(イタリア)とベルンハルト・アイゼル(オーストリア)が集団先頭に立ち、同じタイミングで別府史之(トレックファクトリーレーシング)がチームメイトを集団の先頭近くまで引き上げた。

泣きながらチームメイトに迎えられるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)泣きながらチームメイトに迎えられるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiオリカ・グリーンエッジやトレックファクトリーレーシング、ランプレ・メリダを先頭にして残り1kmを切り、勾配2%の最終ストレートになだれ込む小集団。どのリードアウトも完全に機能せず、フィニッシュまで200mを残してアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が最初に腰を上げた。

グライペルにはジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)やモレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)が応戦したものの、いずれの選手も登りでトップスピードに乗らない。グライペルを抜いたホフランドの後ろから、ヴィヴィアーニが他の選手よりも軽いギアで駆け出す。コンパクトで俊敏なスプリントでヴィヴィアーニが先着した。

「この数年間、惜しいところまで行きながらもいつも勝利に一歩届かなかった。これはプロキャリアの中で最大の勝利。時間がかかったけど、自分を信じ、諦めずに努力し続けた成果がようやく出た」。ジロでステージ初優勝を飾った26歳のヴィヴィアーニはフィニッシュ後に感極まって涙した。

マリアローザを着るサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は同一集団でフィニッシュしたものの、着順によって総合首位の座はステージ6位のマシューズの手に渡っている。翌日の第2ステージでは、ヴィヴィアーニがマリアロッサ、マシューズがマリアローザ、そしてヤングライダー賞2位のエスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)がマリアビアンカを着ることに。

ニッツォロを献身的にアシストした別府は0秒差のステージ73位。4級山岳で遅れた石橋は約50kmにわたって単独での追走を強いられ、周回コースで集団に追い抜かれながらも20分11秒遅れでフィニッシュにたどり着いている(完走扱い)。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



ステージ初優勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)ステージ初優勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiマリアローザはマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の手に渡るマリアローザはマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の手に渡る photo:Kei Tsuji

20分11秒遅れでフィニッシュした石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)20分11秒遅れでフィニッシュした石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2015第2ステージ結果
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)            4h13’18”
2位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
4位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、サウスイースト)
6位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
7位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
9位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
10位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
73位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
195位 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)              +20’11”

個人総合成績
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)     4h32’44”
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)             +07”
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
8位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)
9位 イワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ・サクソ)
10位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)

マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

チーム総合成績
オリカ・グリーンエッジ

text&photo:Kei Tsuji in Sanremo, Italy