海外からやってきた観光客に見守られながら、観光地アランヤをトップスプリンターたちが駆け抜けた。ツアー・オブ・ターキー(UCI2.HC)第1ステージはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)に軍配。若者たちに奪われていた勢いをカヴは取り戻しつつある。



アランヤの街をスタートする選手達アランヤの街をスタートする選手達 photo:Kei Tsuji
チームバイクを調整するNIPPOヴィーニファンティーニの西勉メカニックと福井響メカニックチームバイクを調整するNIPPOヴィーニファンティーニの西勉メカニックと福井響メカニック photo:Kei Tsuji仲良くスタート地点にやってきた山本元喜と黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ)仲良くスタート地点にやってきた山本元喜と黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


序盤のアタック合戦に加わった山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)序盤のアタック合戦に加わった山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji「サバティーニらの加入でエティックス・クイックステップのリードアウト体制が整いつつある。カヴェンディッシュの調子はとても良い。例えば、今回は出場していないけど、キッテルの番手からスプリントすれば10回のうち9回は勝てるだろう。とにかくスプリントではポジショニングが99%だから」。カヴェンディッシュのリードアウト役を務め、自身も2012年にトルコでステージ優勝を飾っているマーク・レンショー(オーストラリア)はスタート前にそう語っていた。

アランヤの街を背に東を目指すプロトンアランヤの街を背に東を目指すプロトン photo:Kei Tsuji4月26日、ツアー・オブ・ターキーがトルコ南部のアランヤで開幕した。多くの欧米チームはイスタンブール経由でアンタルヤ空港に降り立ち、そこからアランヤまで陸路で2時間。そこには北欧やロシアから大挙してバカンス客が詰め掛けるビーチリゾートが広がっている。観光地だけに、レストランや売店では現地のトルコリラだけではなく米ドルやユーロでも支払が可能なほど。カヴェンディッシュの母親も毎年トルコでバカンスを過ごすという。

テオ・ボス(オランダ、MTNキュベカ)とトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)テオ・ボス(オランダ、MTNキュベカ)とトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiロストバゲッジなどのトラブルに見舞われたチームも散見されたが、大きなトラブルなく開幕を迎えた(前日にミラノ発ターキッシュエアラインズのフライトがエンジンとギアのトラブルで炎を上げながらイスタンブール空港に着陸。そこにイタリア人ジャーナリストが搭乗していたなどの波乱は有り)。

3級山岳でスプリントするフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)3級山岳でスプリントするフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsuji空路移動を必要とする遠隔地レースに共通する特徴として、海外チームがトルコに持ち込むのはバイクなどのレース機材に限定。チームカーなどの車両は大会側が用意した共通のワゴン車を使用する。トルコ政府や観光局、ビッグスポンサーがつく大会だけに、大会の運営はスムーズかつ手厚く、資金力ではヨーロッパレースを凌いでいる。

8日間のステージレースの初日は、足慣らしのようなシンプルな平坦ステージ。アランヤの中心地をスタートして15kmの周回コースをこなした後、海沿いを東に向かって65km地点でUターン。アランヤに戻って再び周回コースを2周する全長145km。

山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)も加わったアタック合戦の末に、元世界王者ルイ・コスタの兄で現ポルトガルシクロクロス王者のマリオ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、フェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)、アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)、ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)が先行。3分差をもった逃げがスタートした。

スプリンターを擁するランプレ・メリダやバルディアーニCSFまでもが逃げに選手を送り込んだのは、それだけ他チームのエーススプリンターの力を飛び抜けている証拠。カヴェンディッシュ擁するベルギーのエティックス・クイックステップと、グライペル擁する同じくベルギーのロット・ソウダルが協力して集団を牽引。逃げに必要以上のリードを与えることなく追走を続けた。



観客が詰めかけた街を通過していく観客が詰めかけた街を通過していく photo:Kei Tsuji
3級山岳のハイスピードダウンヒルをこなす3級山岳のハイスピードダウンヒルをこなす photo:Kei Tsuji逃げるフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)ら5名逃げるフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)ら5名 photo:Kei Tsuji
海岸線のゆるいアップダウンをこなすプロトン海岸線のゆるいアップダウンをこなすプロトン photo:Kei Tsuji海岸線のアップダウンをこなすプロトン海岸線のアップダウンをこなすプロトン photo:Kei Tsuji
トルコ国旗を横目に進むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)トルコ国旗を横目に進むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


逃げグループからアタックするフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)逃げグループからアタックするフェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsuji薄曇り&気温20度弱の海岸線を進むうちにタイム差は縮まり、フィニッシュ地点アランヤの周回コースに差し掛かる頃には1分を割り込む。

集団内で走る山本元喜と黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ)集団内で走る山本元喜と黒枝士揮(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji逃げの中で最も動きを見せたのはユナイテッドヘルスケアに所属する21歳のズルロで、3級山岳とビューティーズオブターキースプリントを先頭通過して2つのジャージを獲得。さらに逃げグループからアタックする積極性を見せたが、フィニッシュまで20kmを残して大集団に飲み込まれた。

最終周回に差し掛かるプロトン最終周回に差し掛かるプロトン photo:Kei Tsujiそこからフィニッシュまではスプリンターチームによるハイスピードバトル。エティックス・クイックステップやロット・ソウダルは一旦後方に下がり、代わってティンコフ・サクソやサウスイースト、NIPPOヴィーニファンティーニ、オリカ・グリーンエッジ、ランプレ・メリダが先頭で競り合って残り5km。

カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と一騎打ちを繰り広げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と一騎打ちを繰り広げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji各チーム入り乱れる中、最速トレインを発車させたのはエティックス・クイックステップだった。パリ〜ニースでの鎖骨骨折から復帰したトム・ボーネン(ベルギー)が先頭に立ち、続いてマーク・レンショー(オーストラリア)がカヴェンディッシュを解き放つ。先に仕掛けたサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)を射落とし、カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)との加速力勝負でカヴェンディッシュが勝利した。

カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が下すカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が下す photo:Kei Tsuji「ビッグスプリンターが揃っているのでフィニッシュ前はカオスになると予想していた。そして実際に残り数キロは混沌としていた。リードアウトを含めたチームメイトたちの働きに報いることが出来て良かったよ」。2年連続でターキーの開幕スプリントを制したカヴェンディッシュはそう語る。

カヴェンディッシュは2月のドバイツアーでステージ2勝を飾って総合優勝。さらにクラシカ・デ・アルメリアとクールネ〜ブリュッセル〜クールネで勝利するなど好調なシーズンの滑りだしを見せていたものの、滞在した南アフリカでウィルス性の疾患にかかって低迷。ハイシーズンを前に調子を戻してきた。

「もっと良い春を過ごしたかったけど、南アフリカで病気にかかってレース活動をストップした。一旦休止して、リセットして、再び動き出して今に至る。病気になる前よりも調子が良いとは決して言えないけど、ここまで調子を戻すことが出来て嬉しいよ」と、表彰台でバナナを受け取り、リーダージャージに袖を通したカヴェンディッシュは語る。2014年大会でカヴェンディッシュは最終的にステージ4勝を飾り、ポイント賞に輝いている。

直接対決で敗れたイワンは「いつもテレビで見ていたカヴェンディッシュと走るのは変な気分。しかもただ走るだけじゃなくてスプリントで競り合ったのはすごく特別な気持ちだ。今日はポジション取りに失敗したけど、上手くいけば彼を負かすことが出来ると思う。僅差だったので自信になるよ」とコメント。自信をつけて翌日から打倒カヴを目指す。

「(ニコラス)マリーニの後ろからスプリントする予定だったんですが、各チームがかなり入り乱れた状態でバラバラになりそうだったので、残り数キロになってから(ピエールパオロ)デネグリの指示でマリーニを前まで引き上げて仕事を終えました」と語るのはNIPPOヴィーニファンティーニの黒枝士揮。エースを担ったマリーニの17位がチームの最高位だった。



ステージ1勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)ステージ1勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ボーネンらと勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)ボーネンらと勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji表彰台でバナナを受け取るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)表彰台でバナナを受け取るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
第1ステージ 3位ルッフォニ、1位カヴェンディッシュ、2位イワン第1ステージ 3位ルッフォニ、1位カヴェンディッシュ、2位イワン photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ターキー2015第1ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) 3h17’58”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5位 テオ・ボス(オランダ、MTNキュベカ)
6位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
7位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)
8位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
9位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)
10位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
96位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)
109位 黒枝士揮(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) 3h17’58”
2位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5位 テオ・ボス(オランダ、MTNキュベカ)
6位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
7位 ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)
8位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
9位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)
10位 ヤクブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)

ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)

山岳賞
フェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)

ビューティーズオブターキースプリント賞
フェデリコ・ズルロ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)

チーム総合成績
バルディアーニCSF

text&photo:Kei Tsuji in Alanya, Turkey

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