2015/03/15(日) - 00:52
超級山岳ゲンティンハイランドの代わりに登場した1級山岳フレイザーズヒルは平均勾配3.6%。ピュアクライマーには勾配がなさすぎた。大集団スプリントでも上位に絡むヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)が先頭でフィニッシュラインにやってきた。
大会タイトルスポンサーのプロトン社が本社を置くシャーアラムをツール・ド・ランカウイ第7ステージはスタートする。スタートラインが引かれたのはシャーアラムの名物ブルー・モスク(スルタン・サラディン・アブドゥル・アジズ・モスク)の前。そこからクアラルンプールをかすめるようにして内陸の山岳地帯に向かう。
前日までひたすら集団を引いていたアスタナのカザフスタン三人組(コザタイェフ、フォミニク、ゼイツ)や前日2位のクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)らがこの日はスタートせず。
交通量の多いクアラルンプールの高速道路を大々的に規制して、117名に縮小したプロトンが進む。郊外に広がるアブラヤシのプランテーションに差し掛かると、フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)、パク・スンベク(韓国、KSPO)、ニクモハマド・アズマン(マレーシア、NSCマレーシア)、リアム・ベルタッツォ(イタリア、サウスイースト)の4名が先行。タイム差は8分まで広がった。
本来のフィニッシュ地点である超級山岳ゲンティンハイランドの麓を通過し、さらに奥地へと向かう選手達。レース通過道路は補修されている場合が多いが、ゲンティンハイランドのキャンセルによって急遽コースが変更されたため、コース上には砂が浮いた凸凹道も登場。荒れたコースはパンクを誘発した。
メイン集団を率いたのはチームスカイやティンコフ・サクソ、コロンビア。フィニッシュまで50kmを残して先頭ではベルタッツォが独走を開始したものの、大会最大の山場に向けて鼻息を荒げるプロトンを振り切ることは不可能。先頭ベルタッツォが1級山岳フレイザーズヒルの前半で吸収されると、そこから最終総合争いが始まった。
2008年にもゲンティンハイランドの代替案として登場したフレイザーズヒル。クアラルンプールから車で2時間ほどの高原リゾート(標高1150m)であり、頂上の空気は下界のそれとは全く異なる。
登坂距離26.9kmで標高差は970m、平均勾配は3.6%。残り8kmからコンスタントに6%を刻むものの、残り2kmから平坦路に近いような緩斜面となる。15%の急勾配区間も登場するゲンティンハイランド(実質的な平均勾配は8%オーバー)と比べると明らかに難易度は低い。
直線路が皆無と思ってしまうほど曲がりくねった登りで、チームスカイがメイン集団を支配した。ダニー・ペイト(アメリカ、チームスカイ)が先頭固定でハイペースを刻み、アタックを許さないスピードで追い越し困難な山道を進む。残り8kmで1車線の狭路に切り替わると、集団先頭はフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)にスイッチした。
残り5kmでロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)がアタックするシーンも見られたが、続いてイアン・ボスウェル(アメリカ、チームスカイ)がメイン集団のペースを上げて吸収。しかし決定的なリードを生むことなく約10名の状態で残り1kmを通過。残り300mでMTNキュベカのレグイグイがスプリントを開始した。
慌ててセバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)が追走したものの、今大会の平坦集団スプリントでも2位に入っているレグイグイのスプリントは別物。パワーで押し切ったレグイグイが先頭でフィニッシュし、ステージ優勝とリーダージャージを獲得した。
レグイグイはアルジェリア出身の25歳で、UCIのワールドサイクリングセンターを経てプロ入り。2013年からMTNキュベカで走っている。「今シーズン初勝利を生後1ヶ月の娘に捧げたい」。表彰台でおしゃぶりポーズを見せたレグイグイは笑う。
「今日は序盤から調子が良くて、ジャック(ジャンセヴァンレンスバーグ)とナトナエル(ベルハネ)と一緒に集団前方で残り25kmからの登坂をスタート。アシストする予定だったナトナエルが残り5kmの時点で『今日は勝利を狙える状態じゃない』と告げてきたので、自力で集団先頭に残りながらスプリントに持ち込んだんだ」。ランカウイのクイーンステージを制したMTNキュベカのスプリンターはそう語る。
「決して楽な登りじゃなかったよ。180km走った最後に登場する登りが楽なわけがない。でも比較的勾配が緩くてスピードが出る登りだったのでパワーで乗り切れた。この調子であれば、ツール・ド・フランスのメンバー入りも夢じゃない」。ワイルドカード枠でツール・ド・フランス出場権を得ているMTNキュベカの代表入りに向け、レグイグイが大きくアピールした。
クイーンステージを終えて、エナオゴメスとピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)、フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)の3人が10秒差でレグイグイを追う展開。リーダージャージを着て走ったカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は14分28秒遅れでフィニッシュしている。
「残り3kmまでは集団の後ろで走れていました。トップの駆け引きを見たかったんですが、それは叶わなかった」と声を落とすのは、1分31秒遅れの16位でフィニッシュした早川朋宏(愛三工業レーシング)だ。
「周りのアジア人選手のことは考えずに『前に行こう前に行こう』とばかり考えながら走っていました。やれるだけのことはやったと思います」とコメント後、早川は表彰台に向かう。アジア人選手が軒並み遅れたため、早川がアジアンライダー賞で一躍トップに立った。
早川は最終ステージを白いアジアンライダー賞ジャージを着て走る。なお、アジアンライダー賞ではトップに立ったものの、早川の総合順位はUCIポイント獲得圏内の15位から16位にダウンしている。
ツール・ド・ランカウイ2015第7ステージ
1位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) 4h38’41”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)
3位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)
4位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
8位 ロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)
9位 ジェスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
10位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
16位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +1’31”
24位 中根英登(日本、愛三工業レーシング) +2’47”
個人総合成績
1位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) 26h11’37”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +10”
3位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
5位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ) +12”
6位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF) +16”
7位 ジェスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
8位 ロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)
9位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
10位 イアン・ボスウェル(アメリカ、チームスカイ) +22”
16位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +1’47”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
早川朋宏(日本、愛三工業レーシング)
チーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
大会タイトルスポンサーのプロトン社が本社を置くシャーアラムをツール・ド・ランカウイ第7ステージはスタートする。スタートラインが引かれたのはシャーアラムの名物ブルー・モスク(スルタン・サラディン・アブドゥル・アジズ・モスク)の前。そこからクアラルンプールをかすめるようにして内陸の山岳地帯に向かう。
前日までひたすら集団を引いていたアスタナのカザフスタン三人組(コザタイェフ、フォミニク、ゼイツ)や前日2位のクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)らがこの日はスタートせず。
交通量の多いクアラルンプールの高速道路を大々的に規制して、117名に縮小したプロトンが進む。郊外に広がるアブラヤシのプランテーションに差し掛かると、フランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)、パク・スンベク(韓国、KSPO)、ニクモハマド・アズマン(マレーシア、NSCマレーシア)、リアム・ベルタッツォ(イタリア、サウスイースト)の4名が先行。タイム差は8分まで広がった。
本来のフィニッシュ地点である超級山岳ゲンティンハイランドの麓を通過し、さらに奥地へと向かう選手達。レース通過道路は補修されている場合が多いが、ゲンティンハイランドのキャンセルによって急遽コースが変更されたため、コース上には砂が浮いた凸凹道も登場。荒れたコースはパンクを誘発した。
メイン集団を率いたのはチームスカイやティンコフ・サクソ、コロンビア。フィニッシュまで50kmを残して先頭ではベルタッツォが独走を開始したものの、大会最大の山場に向けて鼻息を荒げるプロトンを振り切ることは不可能。先頭ベルタッツォが1級山岳フレイザーズヒルの前半で吸収されると、そこから最終総合争いが始まった。
2008年にもゲンティンハイランドの代替案として登場したフレイザーズヒル。クアラルンプールから車で2時間ほどの高原リゾート(標高1150m)であり、頂上の空気は下界のそれとは全く異なる。
登坂距離26.9kmで標高差は970m、平均勾配は3.6%。残り8kmからコンスタントに6%を刻むものの、残り2kmから平坦路に近いような緩斜面となる。15%の急勾配区間も登場するゲンティンハイランド(実質的な平均勾配は8%オーバー)と比べると明らかに難易度は低い。
直線路が皆無と思ってしまうほど曲がりくねった登りで、チームスカイがメイン集団を支配した。ダニー・ペイト(アメリカ、チームスカイ)が先頭固定でハイペースを刻み、アタックを許さないスピードで追い越し困難な山道を進む。残り8kmで1車線の狭路に切り替わると、集団先頭はフィリップ・ダイグナン(アイルランド、チームスカイ)にスイッチした。
残り5kmでロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)がアタックするシーンも見られたが、続いてイアン・ボスウェル(アメリカ、チームスカイ)がメイン集団のペースを上げて吸収。しかし決定的なリードを生むことなく約10名の状態で残り1kmを通過。残り300mでMTNキュベカのレグイグイがスプリントを開始した。
慌ててセバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)が追走したものの、今大会の平坦集団スプリントでも2位に入っているレグイグイのスプリントは別物。パワーで押し切ったレグイグイが先頭でフィニッシュし、ステージ優勝とリーダージャージを獲得した。
レグイグイはアルジェリア出身の25歳で、UCIのワールドサイクリングセンターを経てプロ入り。2013年からMTNキュベカで走っている。「今シーズン初勝利を生後1ヶ月の娘に捧げたい」。表彰台でおしゃぶりポーズを見せたレグイグイは笑う。
「今日は序盤から調子が良くて、ジャック(ジャンセヴァンレンスバーグ)とナトナエル(ベルハネ)と一緒に集団前方で残り25kmからの登坂をスタート。アシストする予定だったナトナエルが残り5kmの時点で『今日は勝利を狙える状態じゃない』と告げてきたので、自力で集団先頭に残りながらスプリントに持ち込んだんだ」。ランカウイのクイーンステージを制したMTNキュベカのスプリンターはそう語る。
「決して楽な登りじゃなかったよ。180km走った最後に登場する登りが楽なわけがない。でも比較的勾配が緩くてスピードが出る登りだったのでパワーで乗り切れた。この調子であれば、ツール・ド・フランスのメンバー入りも夢じゃない」。ワイルドカード枠でツール・ド・フランス出場権を得ているMTNキュベカの代表入りに向け、レグイグイが大きくアピールした。
クイーンステージを終えて、エナオゴメスとピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)、フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)の3人が10秒差でレグイグイを追う展開。リーダージャージを着て走ったカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は14分28秒遅れでフィニッシュしている。
「残り3kmまでは集団の後ろで走れていました。トップの駆け引きを見たかったんですが、それは叶わなかった」と声を落とすのは、1分31秒遅れの16位でフィニッシュした早川朋宏(愛三工業レーシング)だ。
「周りのアジア人選手のことは考えずに『前に行こう前に行こう』とばかり考えながら走っていました。やれるだけのことはやったと思います」とコメント後、早川は表彰台に向かう。アジア人選手が軒並み遅れたため、早川がアジアンライダー賞で一躍トップに立った。
早川は最終ステージを白いアジアンライダー賞ジャージを着て走る。なお、アジアンライダー賞ではトップに立ったものの、早川の総合順位はUCIポイント獲得圏内の15位から16位にダウンしている。
ツール・ド・ランカウイ2015第7ステージ
1位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) 4h38’41”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)
3位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)
4位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
8位 ロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)
9位 ジェスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
10位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
16位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +1’31”
24位 中根英登(日本、愛三工業レーシング) +2’47”
個人総合成績
1位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) 26h11’37”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +10”
3位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
5位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ) +12”
6位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF) +16”
7位 ジェスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
8位 ロドルフォ・トーレス(コロンビア、コロンビア)
9位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
10位 イアン・ボスウェル(アメリカ、チームスカイ) +22”
16位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +1’47”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
早川朋宏(日本、愛三工業レーシング)
チーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
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