ザック・マクドナルド再び。昨年のシクロクロス東京で見せた圧倒的な力は今年も健在だった。ベン・ベルデンや山本和弘を振り切った23歳が連覇を果たし、CL1では昨年2位の豊岡英子が宮内佐季子とのデッドヒートを制して勝利した。


全日本王者の竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)全日本王者の竹之内悠(ベランクラシック・イコイ) photo:So.Isobeベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)の足下から睨みをきかせるベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)の足下から睨みをきかせる photo:So.Isobe

エリート男子スタート。ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)がホールショットエリート男子スタート。ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)がホールショット photo:So.Isobe

先頭で砂浜の折り返しを行くザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015)先頭で砂浜の折り返しを行くザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015) photo:So.Isobe「昨年とは全然コンディションが違う。砂浜に新たに設けられたコーナーがすごくタフで辛かった」こうザックは4回目のシクロクロス東京のコースを振り返る。「残り周回数が7と表示されたときは"勘弁してくれ!"と思った」とも。

ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup) photo:So.Isobe林の中を走る竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)林の中を走る竹之内悠(ベランクラシック・イコイ) photo:So.Isobe号砲を経て、先頭で砂浜区間に飛び込んだのは第1回シクロクロス東京の優勝者、ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)だった。赤と白の真新しいチームキットに身を包んだベルデンは、ザック・マクドナルドらを引き連れて林の中に消えていく。

スリッピーな林の中を駆け抜ける山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)スリッピーな林の中を駆け抜ける山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) photo:So.Isobe昼の試走時間中に降り出した雨は止むこと無く、波打ち際の砂を重たくし、林間セクションの粘土をゆるませる。トップライダーでも手を焼く泥区間を終え、2番目の砂浜にはベルデンを抜いたザックが先頭で現れた。

ザックは「スタートはベンにやられてしまったけれど、きちんとチェックに入ることができた」と1周目を振り返る。ベルデンに続き、全日本王者の竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)、少しの間隔を置いてプロ選手生活最後のレースを迎えた山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)、前田公平(Bioracer)らが続きファーストラップを完了する。

3周目に竹之内がやや後方に下がると、先頭争いはザックとベルデンに委ねられる。しかし「砂浜よりもテクニカルでスリッピーな林の中で差をつけようと心がけた」と語るザックが着実にリードを稼ぎ、独走体勢を築き上げることに成功した。

その後方では山本が3位に上がるも、全日本王者の意地を見せたい竹之内が猛追。共に1週間前の世界選手権男子エリートを走った両者は付かず離れずの熾烈な争いを繰り広げていく。

先頭で深い砂のコーナーをスムーズにこなし、スリッピーな泥セクションをロス無く走るザック。その有利は誰の目にも明らかだった。彼は「僕が世界選手権を走っている間に、ベンはビッグレースが無かった。その差が出たのでは。移動に伴う時差や疲労への対処も含めて経験の差が出た」と後に振り返る。

結局ザックは「スリッピーな路面に対処しきれなかった」と言うベルデンに対し、およそ1分半差をつけて最終11周回目に突入。最後の砂浜区間を丁寧に、かつハイスピードを維持したままクリアすると、最終ストレートで大勢の観客たちとハイタッチ。1周目の中盤以降一度も首位を譲ることなく、シクロクロス東京2連覇を成し遂げた。


砂浜区間でスピードを見せた竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)砂浜区間でスピードを見せた竹之内悠(ベランクラシック・イコイ) photo:Yuya.Yamamotoペースを上げて3位を奪い返す山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)ペースを上げて3位を奪い返す山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) photo:Yuya.Yamamoto

山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)と竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)が激しくデッドヒートを繰り広げる山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)と竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)が激しくデッドヒートを繰り広げる photo:Yuya.Yamamoto
優勝したザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015) 優勝したザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015)  photo:So.Isobe12年間に渡るプロ生活のフィニッシュラインを切る山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)12年間に渡るプロ生活のフィニッシュラインを切る山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) photo:So.Isobe


ファンや報道陣に囲まれる山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)ファンや報道陣に囲まれる山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム) photo:So.Isobe「今日はテクニカルなレースになると分かっていたから、ハンドルを上げて(ベルギーの砂地獄で有名な)コクサイデと同じセッティングで臨んだ」と語る23歳のザック。ちなみにザックは昨年大会でコクサイデを好きなコースとして挙げている。

チャンピオンジャージを着たザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015)チャンピオンジャージを着たザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015) photo:Yuya.Yamamotoまたザックは「東京や野辺山をはじめ、多くのレースを走った経験が有利に働いた」と晴れやかな表情で語る。「こんな雨だったのに信じられないくらいの観客が集まっていて、本当に嬉しかった」とも。来シーズンについては「きちんとしたチーム体制を整えて臨みたい。目標は全米シクロクロスタイトル」と語った。

シクロクロス東京2015 エリート男子表彰台シクロクロス東京2015 エリート男子表彰台 photo:Yuya.Yamamotoそして竹之内と山本の意地がぶつかる3位争いには、ギャラリーからこの日最大の歓声が集まった。終盤に竹之内が前に出たものの、「最高に集中して砂浜区間をスムーズにこなすことができた」と語る山本が再び先頭を奪い返す。2位ベルデンに迫る走りを見せた山本は、リードを維持したまま3位フィニッシュ。12年間に渡るプロ生活最後のレースで3位表彰台、日本人最高位獲得という優秀の美を飾った。

「絶対表彰台に乗りたかった。悠は上手いのでテクニカルな部分で詰めてくる。僕はパワーで優っていたので、踏める区間で差を広げるよう徹した」と山本。「限界まで出し切れました。いいレースだったと思います」とも。以下に山本のコメントを紹介しよう。

今日は観客の皆さんに力をもらえたレースでした。どのセクションでも熱く気持ちのこもった声援をもらえたので後悔はありません。

プロ選手として区切りをつけようと考えていました。ケガで仕方なくやめる、というような形ではなく、自分の意思としてその選択をしたかった。その決意をした後はそれまでよりも良い結果が出ていました。

これまでは選手として走ることでスポーツサイクルの魅力を広めてきました。これからはもっと広い形でその魅力を伝えていくことができると思います。選手として走るということもやっぱり魅力ですが、それ以上にこれからの活動で自転車界に貢献していきたいという思いがあります。

僕が一番大好きなことをできた12年間でした。選手活動を通じ応援してくれる人の輪がたくさん繋がったのが、一番大きな収穫でした。こんなに恵まれた競技人生を送ることができて幸せだったと思っています。


豊岡英子(パナソニックレディース)先頭でCL1レースが幕開ける豊岡英子(パナソニックレディース)先頭でCL1レースが幕開ける

豊岡英子(パナソニックレディース)豊岡英子(パナソニックレディース) photo:So.Isobe13名がスタートした女子エリート。世界選手権から帰国したばかりの豊岡英子(パナソニックレディース)がホールショットを獲ると、怪我明けの坂口聖香(パナソニックレディース)や宮内佐季子(Team CHAINRING)を従えてトップを快走する。

豊岡英子(パナソニックレディース)を追い上げる宮内佐季子(Team Chainring)豊岡英子(パナソニックレディース)を追い上げる宮内佐季子(Team Chainring) photo:So.Isobe「UCIポイントこそ付かないけれど、これだけの観客が集う注目度の高いレース。どうしても勝ちたかった」と言う豊岡は、重い砂浜や滑る泥で確実にペースを刻む。後方からは「シーズン終盤でエネルギーが溜まっていなかった」と語る宮内が追い上げるも、対抗するように豊岡もペースアップしてみせる。

激しいデッドヒートが数周に渡って続いたが、毎周回バイクを交換し、終始リードを崩さなかった豊岡が勝利。3秒後に悔しさと疲労をにじませながら宮内がゴールラインを切った。

豊岡は勝利の要因としてピットワークを挙げる。「常に最高のコンディションでバイクを受け取れた。スリッピーな路面に対応するように気圧を下げてもらい、タイムを上げることができました。」と言う。終盤での空気圧は1.0を下回っていた、とも。新しい全日本チャンピオンジャージのデビュー戦を最良の形で終えた。


怪我から明け、3位表彰台を獲得した坂口聖香(パナソニックレディース)怪我から明け、3位表彰台を獲得した坂口聖香(パナソニックレディース) photo:So.Isobeゴールに飛び込む豊岡英子(パナソニックレディース)ゴールに飛び込む豊岡英子(パナソニックレディース) photo:So.Isobe

4位と好走した武田和佳(Team Chainring)4位と好走した武田和佳(Team Chainring) photo:So.IsobeCL1表彰台 豊岡英子(パナソニックレディース)が中央に立つCL1表彰台 豊岡英子(パナソニックレディース)が中央に立つ photo:Yuya.Yamamoto


シクロクロス東京結果
エリート男子

1位 ザック・マクドナルド(アメリカ、シクロクロスプロジェクト2015)
2位 ベン・ベルデン(アメリカ、W-Cup)
3位 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)
4位 竹之内悠(ベランクラシック・イコイ)
5位 ティム・ジョンソン(キャノンデールp/bシクロクロスワールド.com)
6位 前田公平(Bioracer)
7位 門田基志(TEAM GIANT)
8位 ティム・アレン(FEEDBACK SPORTS)
9位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)
10位 濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)
1h00'20"
+1'27"
+1'39"
+1'49"
+4'19"
+5'20"
+5'46"
+5'58"
-1Lap


CL1
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)
2位 宮内佐季子(Team Chainring)
3位 坂口聖香(パナソニックレディース)
4位 武田和佳(Team Chainring)
5位 橋口陽子(TEAM 轍屋)
6位 坂口楓華(パナソニックレディース)
7位 福本千佳(同志社大学自転車競技部)
8位 川崎路子(CLUB Viento)
9位 今井美穂(CycleClub.jp)
10位 林口ゆきえ(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
34'11"
34'14"
35'16"
36'08"
37'17"
37'57"
38'40"
39'29"
39'54"
40'55"


text:So.Isobe