1月18日の顔見世クリテリウムを皮切りに、第17回ツアー・ダウンアンダー(UCIワールドツアー)が動きだす。真夏のオーストラリアを舞台にした1週間の闘いの見どころをチェックしておこう。



真夏の南オーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー真夏の南オーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー photo:Kei Tsuji


オールラウンダー向きに進化した真夏のステージレース

美しいアルディンガビーチを横目に進むプロトン美しいアルディンガビーチを横目に進むプロトン photo:Kei Tsujiツアー・ダウンアンダーの開催は今年で17回目。南オーストラリア州に根付いたロードレースとして産声をあげ、2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たした。長年UCIが推し進める「ロードレースの国際化」の象徴とも言える。

アデレード市内を走るプロトンアデレード市内を走るプロトン photo:Kei Tsuji「ダウンアンダー」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。大きな気温の変化に慣れ、そして10時間近い時差を解消するため、多くの選手が時間に余裕をもって現地入りしている。

2014年 ウィランガヒルでエヴァンスを引き離して総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)2014年 ウィランガヒルでエヴァンスを引き離して総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛り。連日気温が40度を超えた2014年ほどの暑さではないが、気温30度前後の快適なコンディションが続くとの予報が出ている。なお、日本との時差は0.5時間(現在はサマータイム期間中なので日本時間+1.5時間)だ。

アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。

スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、伝統的にマッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げて来た。しかし、ここ数年は山岳ステージの重要度が上がっているため総合上位にはグランツール総合上位に名を連ねるオールラウンダーたちが名を連ねている。

1月17日のチームプレゼンテーションを経て、1月18日にアデレード市街地で行なわれるUCI非公認の顔見せクリテリウム「ピープルズチョイス・クラシック」で8日間の闘いがスタート。初日からトップスプリンターたちがバトルを繰り広げられるはずだ。

総合争いは、スターリングの登りフィニッシュが設定された第2ステージや新登場KOMパラコンベにフィニッシュする第3ステージで動くだろう。大会最大の難所であるKOMオールドウィランガヒルにゴールする第5ステージで総合争いは決する。最終日はアデレード市内で行われる平坦ステージだ。



ツアー・ダウンアンダー2015ステージリスト
1月18日(日)ピープルズチョイスクラシック アデレード      51km
1月19日(月)休息日
1月20日(火)第1ステージ タヌンダ〜キャンベルタウン      133km
1月21日(水)第2ステージ アンレー〜スターリング        150km
1月22日(木)第3ステージ ノーウッド〜パラコンベ        143km
1月23日(金)第4ステージ グレネルグ〜マウントバーカー     145km
1月24日(土)第5ステージ マクラーレンヴェイル〜ウィランガヒル 151km
1月25日(日)第6ステージ アデレード〜アデレード        90km



ゲランス欠場でポートやエヴァンスに注目 平地はキッテルの独壇場か

カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji1月と言えばシーズン序盤の序盤。そのため選手のコンディションには大きなバラツキがある。まだまだふっくらとした(絞れていない)欧米の選手がいる一方で、地元オーストラリアやニュージーランドの選手たちは調子を上げている。

リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、MTBでのトレーニングライド中に落車して鎖骨を骨折。2006年、2012年、2014年に続く4度目の優勝の夢は泡と消えた。

マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji開幕前から優勝候補として注目を集めているのがリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)だ。精彩を欠いた2014年シーズンを過去のものにするためにポートは例年にも増してオフシーズントレーニングに取り組み、絞れた状態で挑んだオーストラリア選手権タイムトライアルで初優勝を飾った。同ロードレースでは結果を残せなかったが、ライバルたちが最も警戒する存在であることに間違いはない。

ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング) photo:Kei Tsuji2015年2月に自身が開催するグレートオーシャンレースを最後に現役を引退するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)にも注目が集まる。エヴァンスは2014年大会でステージ優勝を飾りながらも、僅か1秒差で総合優勝を逃している。元ツール・ド・フランス覇者にとっては自身最後のステージレースであり、沿道からは熱烈な声援が飛ぶはずだ。

ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsujiオーストラリアの期待を集めるオリカ・グリーンエッジは2011年大会の覇者キャメロン・マイヤー(オーストラリア)をはじめ、ダリル・インピー(南アフリカ)やサイモン・クラーク(オーストラリア)ら強力なラインナップが揃う。大会最強と目されるチーム力を揃えてくるあたり地元チームとしての意気込みを感じる。

総合優勝経験者としては2002年のマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)、2005年のルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、2007年のマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)が出場予定。

他にもライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)らが総合上位に絡んでくるだろう。

ダウンアンダーで他の追随を許さないステージ通算16勝を飾り、2度総合優勝に輝いているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は欠場。ジャーマンスプリンターの系譜を継ぐのはマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)だ。ジャイアント・アルペシンはトム・ドゥムラン(オランダ)やクーン・デコルト(オランダ)らを送り込んでおり、フィニッシュに向けて最速トレインを形成するはずだ。

オーストラリアチャンピオンのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)や、ジャパンカップクリテリウムで勝利したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)、マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)ら、地元オーストラリア勢がキッテルのスピードを抑え込むことができるかに注目。グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)、ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)らもスピード勝負に挑む。

2015年大会で注目したいのはワイルドカード枠で出場する2チーム、ドラパックプロサイクリングとUniSAオーストラリアだ。ツアー・オブ・ジャパンと熊野でステージ優勝したワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック)はグレーム・ブラウン(オーストラリア)に導かれて勝利を狙う。UniSAオーストラリアはアワーレコード挑戦予定のジャック・ボブリッジ(オーストラリア)やスプリンターのスティール・ヴォンホフ(オーストラリア)らを擁しており、過去最強のラインナップでUCIワールドチーム相手に闘う。

text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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