ジャーマンブランドらしい質実剛健と優れた走行性能を兼ね備えたバイクを製造するフォーカス。そのエンデュランスロードCAYOがフルモデルチェンジを果たした。ピュアレーシングモデルIZALCO MAXのテクノロジーを搭載し、レーシング性能を強化した新型のインプレッションをお届けしよう。



フォーカス CAYO1.0 ULTEGRAフォーカス CAYO1.0 ULTEGRA (c)Makoto.AYANO
ドイツに本拠地を置く総合バイクブランド、フォーカス。レースの世界で勝つことができる自転車を開発することを目標に掲げるレーシングスピリットに満ちたブランドだ。1992年に設立された比較的新しいブランドながら、チームミルラム、カチューシャ、そして2013年シーズンからはフランスの名門チームAG2Rへとサポートを行い、多くの実績を残してきたことで、今やドイツを代表するブランドまで上り詰めた。

フォーカスをトップブランドへと押し上げたのは「German Engineered」という信念。それは「情熱」、「成果」、「完璧」という3つの言葉に表されている。工業立国ドイツらしく、最先端のテクノロジーを貪欲にとり入れ、プロライダーによるテストを繰り返し、厳しい品質管理を経てフォーカスのバイクは世に送り出されて行くのだ。

横に張り出されたデザインのヘッドチューブ横に張り出されたデザインのヘッドチューブ 特徴的なプレートがワイヤリングの起点となる特徴的なプレートがワイヤリングの起点となる ボリューミーなクラウン部から一気に細くなるフロントフォークボリューミーなクラウン部から一気に細くなるフロントフォーク


フォーカスのラインナップにおいて、ロングライド・エンデュランスバイクとして位置づけられるのがCAYOだ。トップレーシングモデルとなるIZALCOに次ぐモデルであり、ロードバイクラインナップの中核を担う存在として注力されてきたモデルだ。

CAYOの名を冠するバイクとしては今回が2度目のフルモデルチェンジとなる。そのモデルチェンジの方向性を一言で言い表すなら、「レーシング性能の向上」だ。フォーカスはCAYOをただのコンフォートバイクにとどまらない、グランフォンドレーサーとして、新たに位置づけようとしている。

トップチューブのシート側は細くなっているトップチューブのシート側は細くなっている ボリュームのあるダウンチューブが剛性を稼ぎだすボリュームのあるダウンチューブが剛性を稼ぎだす

剛性とフレキシビリティを兼ね備えたチェーンステー剛性とフレキシビリティを兼ね備えたチェーンステー PF30を採用するBB周りPF30を採用するBB周り


そのために、フォーカスはCAYOに新たなカーボンマテリアルを与えた。フラッグシップレーシングモデルであり、ツールでもジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)の総合2位を支えたIZALCO MAXと同じP2Tカーボン (Power Transfer Technology) を採用したのだ。

この最先端のカーボン素材と成型方法によって、新たなCAYOは前モデルと同等以上の剛性を確保しながら約100gの軽量化に成功し、フレーム重量850gとエンデュランロードというカテゴリーでは最軽量値を記録し、より戦闘力の高いレーシーなバイクへと進化した。

カタログ写真を見ただけだと、ルックスに大きな変更はないように思う人も多いだろう。しかし、実物を目の前にするとその印象は大きく裏切られることとなった。最も大きく変化したのはヘッドチューブ周り。トップチューブがヘッドチューブに近づくにつれ大きくフレアし、ヘッドチューブを横から包み込むような形になっている。

後方にオフセットされ振動吸収性の向上を実現した後方にオフセットされ振動吸収性の向上を実現した BB付近ではボリュームのあるチェーンステーBB付近ではボリュームのあるチェーンステー


ボリュームのあるヘッド周りは、ダンシングした時の振りの軽さや、ハンドリングの正確性といった、ロードバイクを走らせる上で欠かすことのできない性能を向上させてくれるだろうことは想像に難くない。アップライトなポジションをとるためにヘッドチューブが延長された分の剛性を補うという狙いもあるだろう。

ヘッドチューブ自体は、近年のバイクとしては標準装備となった感のある、テーパードヘッドを採用しているのだが、トップチューブのアグレッシブなデザインの影響で、シルエットとしては上が広く下が狭いテーパーになっている。そこにあしらわれる大きなプレートはケーブルルーティング用のもの。交換することで、電動式とワイヤー式の両コンポーネントに対応するよう設計されている。

反応性と回頭性を向上させるために短縮されたチェーンステーはボリューム感にあふれるBB側、中央部から細く絞りこまれたリアエンド側というように、ねじれ剛性を高めつつ、路面の凹凸からくる細かな振動を吸収する快適性を両立させるためのデザインが採用されている。

扁平に成形されたシートステーが快適な乗り心地を生み出す扁平に成形されたシートステーが快適な乗り心地を生み出す オーソドックスな新円形状のシートチューブオーソドックスな新円形状のシートチューブ シートチューブはトップチューブより上に伸びているシートチューブはトップチューブより上に伸びている


シートステーも細く扁平に成形され快適性の向上に寄与するデザインとされている。そのシートステーと、チェーンステーをつなぐ独特の形状のリアエンドはCAYOのアイコンともいえる部分。リア三角を縦にしなやかにさせるために、前モデルに比べて、シートステーとチェーンステーの接合部からより後ろに出したデザインへと変更されている。

走行性能とコンフォート性能。相反する二つの性能を高い次元でまとめ上げた新しいCAYO。忘れてはいけないのは、そこまでの性能を持ちながら、CAYOはフォーカスのセカンドモデルであるということ。そう、高性能を手ごろなコストで手に入れることができるのだ。

今回のインプレッションバイクは機械式アルテグラにホイールはシマノのエントリーグレード、RS-11をアッセンブルしたもの。フォーカスの意欲作をインプレライダー両氏はどのように評価するのだろうか。それでは、早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「いつまでもどこまでも乗っていられそうな気分にさせてくれる」山崎敏正(シルベストサイクル)

「いつまでもどこまでも乗っていられそうな気分にさせてくれる」山崎敏正(シルベストサイクル)「いつまでもどこまでも乗っていられそうな気分にさせてくれる」山崎敏正(シルベストサイクル) すごく乗りやすくて、いつまでもどこまでも乗っていられそうな気分にさせてくれるバイクですね。前作までのCAYOがレースバイクとコンフォートバイクのどちらでもない中庸さを持っていたのに比べると、かなり快適性を高めてきたなという印象です。

それは、トップチューブ長が短くなって、ヘッドチューブが伸びたことにより、楽な姿勢をとることができるジオメトリーによるものでしょう。30km/hくらいでシャカリキになることなく、長距離を走るという様な乗り方にぴったりです。ほのぼのと、長時間サイクリングを楽しむのにはうってつけですね。

フレーム自体のコンフォート性能も高く、荒れている道でも、凹凸を乗り越えた時の不快な振動をうまく収束させることで、身体にいやなダメージが残らないようにいなしてくれます。

かといって、そういった快適性重視のバイクにありがちなダルさは無く、軽快感のある踏み心地を持っているバイクでもあります。無理に加速しようとしなくとも自然とスピードが上がっていく不思議な感覚がありました。身体の効率の良い部分を使わせてくれるのでしょうか、踏んでいる感覚に対して、スピードの上がり方の割合が大きく感じるバイクです。

登りもその軽快感を生かして、ダンシングでもシッティングでも軽やかに登っていきます。フレーム素材が良いのでしょうか、いわゆるハイエンドバイクのような反応の良さ、フレームの反発力の良さを感じます。横方向の剛性は非常に高く、ダンシングでこじるような力のかけ方をしても、破綻する兆しはありませんでしたね。

ボリュームがあり、特徴的なヘッド周りですが、見た目の印象ほどガチガチに固められているというわけではありません。そこはフロントフォーク、そしてリアバックとのバランスのとれたレベルの剛性にチューンされていました。ルックスのいかつさとは裏腹にピーキーなところは無く、非常に乗りやすい仕上がりでした。

一方下りは、ハンドルの位置が近くて高いこともあって、高速コーナーを連続で攻めていくといったシチュエーションには向いていないと感じました。ただ、ハンドル位置を低くしたり、ステムを伸ばしたりすることで低重心にすれば、コーナーリングのふらつき感は解消されるでしょう。そうすればクリテリウムやロードレースでだって、活躍できるでしょう。

フルアルテグラのアッセンブルも文句のつけようがありませんし、このバイクが想定しているライディングスタイルであれば、交換が必要なところは中々ないでしょう。自転車そのものの魅力を楽しみたい、遠くへ愛車と共に過ごす時間を楽しみたいという人で、その上で軽快感のある走りを味わいたいという欲張りな方を満足させてくれるバイクに仕上がっています。


「幅広いレベルのサイクリストを満足させることができる」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

コンフォートバイクと思って乗ってみたら、不意打ちを食らってしまいました。かなり、きびきびとした走りをするバイクです。一番このバイクの良さが発揮されたのは登りですね。登りではついダンシングしたくなるような乗り味で、強く踏み込んでもすごくスムースに前に出てくれます。登りが得意な人にとってはたまらない乗り味で、パリッと軽快に進んでいくので、ヒルクライマーには魅力的でしょうね。

シートステーやチェーンステー周りで突き上げを逃がすような加工がなされているので、乗り心地も高いレベルにありつつ、ロードインフォメーションも的確に伝えてくるレーシングテイストもあります。ヘッドチューブが長めのジオメトリであるため、実業団レースなどのピュアレースシーンは少し畑が違うかもしれませんが、ただのロングライドバイクではなくてより速く、より遠くまでいきたい人にはぴったりでしょう。

「幅広いレベルのサイクリストを満足させることができる」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「幅広いレベルのサイクリストを満足させることができる」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
ストレートフォークの味付けもあって、ダンシングの振りも軽くて非常に好印象です。長い峠をいくつか越えていくような、少しハードなロングライドに良く出かけるというような方に、ぜひオススメしたいですね。正直、パフォーマンスで言えば他社のトップレンジにも引けを取らない性能を持っていると思います。

ハイエンドモデルと比較すると、踏んだ瞬間の加速感がすこし穏やかな感じはありますが、実際の加速自体は非常にスムーズで、もたつくようなことはありません。非常にレベルの高いパフォーマンスを持っていると言えるでしょう。逆にいえば、初心者には扱いづらい側面もあるハイエンドモデルよりも幅広いレベルのサイクリストを満足させることができるかもしれません。

ITMのパーツを中心として、バイク全体のグラフィックを統一しているところや、フルシマノのアッセンブルと言ったところでパーツ構成にぬかりが無いく、コストパフォーマンスは非常に優れていると思います。1台目としても、2台目としても良い選択肢になるでしょう。

登りが得意というバイクの特徴を生かして、ホイールをより軽量なものに変えるともっと楽しく乗れると思います。たとえば予算次第ですが、シマノのWH-9000-C24‐TUもしくは、WH-9000-C24‐CLといったところでしょうか。ロングライド派であれば、チューブレス対応ホイールを使って、更なる快適性の向上を目指しても良いかもしれません。

ある程度脚があって登りも好きで峠にも良くいくけれども、ロードレースには参加せずに週末のロングライドを楽しんでいるというサイクリストが、より楽に、速く、快適に走るためのステップアップとして、まさにぴったりの性格のバイクだと思います。

フォーカス CAYO1.0 ULTEGRAフォーカス CAYO1.0 ULTEGRA (c)Makoto.AYANO
フォーカス CAYO1.0 ULTEGRA
サイズ:48、51、54、57cm
フレーム:CAYO P2T カーボン
フォーク:CAYO P2T カーボンモノコック T4
コンポーネント:シマノ アルテグラ
ホイール:WH-RS11
重量:7.8kg(51サイズ)
価格:349,000円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

山崎敏正(シルベストサイクル)山崎敏正(シルベストサイクル) 山崎敏正(シルベストサイクル)

「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。

CWレコメンドショップページ
ショップHP

鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。

CWレコメンドショップページ
ショップHP


ウエア協力:reric
ウエアのインプレッションはこちら


text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO