今ツールにおいて125kmは最も短いが、カテゴリー1級の山岳ポイントが3つ続き、さらに超級の山頂ゴールが詰め込まれたコースの獲得標高差は3,600mともっともハードなステージ。そして翌日のツールマレーを越えてオタカムにゴールする第18ステージも、短く・厳しく・山頂ゴールという似たプロフィールのステージが続く。



ユキヤが見せた逃げグループ牽引の大仕事

先頭グループを率いる新城幸也(ユーロップカー)先頭グループを率いる新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele
新城幸也(ユーロップカー)を先頭に1級山岳ペイルスルド峠を登る逃げグループ新城幸也(ユーロップカー)を先頭に1級山岳ペイルスルド峠を登る逃げグループ photo:Tim de Waeleエタップ・ドゥ・ツールを走ってから自走でツール観戦に来た日本人ファンたちエタップ・ドゥ・ツールを走ってから自走でツール観戦に来た日本人ファンたち photo:Makoto.AYANO昨日のレース後に「明日のピレネーステージが大きなカギ。ロランのために序盤の逃げに乗りたい」と話していた新城幸也(ユーロップカー)がレース開始から逃げに出た。ユキヤの逃げの大きな目的は、ロランが後方から上がってきた時のアシスト。7人で飛び出した逃げに最初の山岳ポイント1級ポルティヨン峠でロランが早くもジョイン。以降、ユキヤはロランのステージ勝利&総合ジャンプアップのための仕事にとりかかることになる。

ペイルスルド峠を前に逃げに出たヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)を前に、ユキヤは逃げの第1集団の先頭をほぼ固定状態で引き続けた。淡々と、しかし力強く力を振り絞るペダリングを続ける。
「日本のチャンピオンのアラシロが素晴らしい働きをみせています」とダニエル・マンジャスさんの熱のこもったレース実況が響き渡る。緑のジャージの袖に赤い帯のあるユキヤの姿は観客たちの目にしっかりと刻まれた。

今までのステージで逃げにはことごとく入れなかった。そして2日前までは天候の変化に喉をやられ、脚の調子は上々でも万全の体調とは言えない状態だった。力の出しきれない日が続き、チームの作戦も実を結ばず。気持ちの上でもやや鬱憤が溜まっていた。それを一気に吐き出すかのような走りを披露した。ユキヤはペイルスルド峠でロランから「ここからは全開で行こう」と指示を受けていたという。

山岳賞1位のラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)と2位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、そしてロランの他にも総合ジャンプアップを狙う総合10位のバウク・モレマ(オランダ、ベルキン)、総合13位ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)らを含んだ22人の逃げグループで、ユキヤの仕事はラスト25kmまで続いた。このグループの逃げ切りに大きな貢献をした。



予想以上の成果をもたらしたティンコフのプランB

超級山岳プラダデで逃げ切りステージ2勝目を挙げたラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)超級山岳プラダデで逃げ切りステージ2勝目を挙げたラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Makoto.AYANO
ステージ2勝目を飾ったラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)ステージ2勝目を飾ったラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleマイカのために登りでペースを作るニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)マイカのために登りでペースを作るニコラス・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele山岳賞を狙うラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)山岳賞を狙うラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) (c)CorVos山岳賞ジャージマイヨアポワがマイカの元へと遠ざかったホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)山岳賞ジャージマイヨアポワがマイカの元へと遠ざかったホアキン・ロドリゲス(カチューシャ) photo:Makoto.AYANOマイカの勝利を喜びチームカーから身を乗り出すオレグ・ティンコフ氏マイカの勝利を喜びチームカーから身を乗り出すオレグ・ティンコフ氏 photo:Makoto.AYANOユキヤが仕事を終えると、その後はマイカのステージ優勝を狙いたいティンコフ・サクソのニコラス・ロッシュにバトンタッチした。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)がステージ勝利目指して独走を開始するが、マイカとロドリゲスの山岳賞争いの闘いも始まる。ここまでの3つの山岳ポイントではすべてロドリゲスに先行を許してきたマイカだが、腰を上げて加速し、ロドリゲスを振り切ることに成功。後はステージ勝利に向けての追走を始める。

「前を追ったわけではなく、山岳ジャージを手に入れるためにロドリゲスだけをマークしていた。彼をアタックで振りきってから、前の4人を追いかけた。勝てると思ったし、ラスト5kmは快適だった。登りが詰め込まれたコースは完全に僕向きだった」と振り返るマイカ。残り2kmでヴィスコンティを振り切ると、余裕を持って山岳ポイントがダブルで設定されるプラダデ山頂ゴールを制した。

第14ステージのリズール超級山岳頂上ゴールを制してから4日、2つめのステージ勝利を挙げたマイカ。ティンコフ・サクソにとっては前日のマイケル・ロジャースの勝利に続く2日連続優勝だ。そしてチームの合計3勝目。コンタドールが落車で去りリーダーの居なくなったチームは目標を切り替えた結果、マルセル・キッテルで3勝を挙げたジャイアント・シマノと同じ勝ち星を挙げるに至った。しかも山岳賞ジャージのマイヨアポアも手元にある。

先の勝利はコンタドールに捧げた。今回の勝利は今年じゅうに結婚する予定のフィアンセ、マグダさんに捧げると言うマイカ。今日のリース監督が指示したチーム戦略は、マイカのステージ優勝だった。かつ想定された山岳賞争いにおいては、最初から3つ目までの山岳ポイントでは疲れないようにロドリゲスとはあえて争わず、超級かつ山頂ゴールでWポイントに設定された最後のプラダデで勝負を決めるというものだった。

マイカは言う。「ビヤンヌ(リース)は最初の峠のポイントで『ラファル、待て、待て。スプリントはするな。その代わり最後にステージを勝て』と言ったんだ。ステージを勝てばダブルポイントが得られるから。彼はとても合理的だ。やみくもに1級山岳でポイントを稼がなくても、ステージ優勝すればマイヨアポワを獲得出来ると僕を諭してくれたんだ」。

ロドリゲスとのポイント差は31ptのリードに広げた。明日、ピレネー最終日は最大79ポイントの獲得が可能。続く19と21ステージにそれぞれ1ポイントが設定されているため、もちろん逆転も起こりうる。マイカは安心はしていない。そして続く難関山岳ステージにさらに意欲的だ。
「チームにとってこのジャージは非常に重要だから、明日のステージでも動く必要がある」。

マイカはツールがすっかりお気に入りのようだ。総合6・7位を続けたジロだが、雨や寒さ、そして悪条件のコースが続くジロよりツールのほうが向いていると話す。「初めてのツールでステージ2勝。ツールが好きになったよ。ジロとは違って天気が良いので、これまで経験したグランツールの中でベストだ」。

アレクサンドル・ヴィノクロフの父(左)と2人の息子らによるアスタナ応援団がペイルスルード峠にいたアレクサンドル・ヴィノクロフの父(左)と2人の息子らによるアスタナ応援団がペイルスルード峠にいた photo:Makoto.AYANOこの日、最初の山岳ポルティヨン峠まで自転車で自走し、以降はチームカーで追走集団に着いていたオレグ・ティンコフ氏。窓から身を乗り出し、喜びの声を挙げながらゴールに向かい、観客たちには祝福ウェーブのリクエストをしていた。コンタドールの離脱で失敗に思えたティンコフ・サクソのツールは、ここまでのステージ3勝とマイヨアポアですでに失望を埋め合わせるに十分な成功を手にしたように見える。

なおコンタドールはマドリッドでの怪我の診断の結果に、完治まで日が掛かりすぎるためブエルタには間に合わないことを自身のTwitterで発表した。しかリース監督は「まだ決めるには早い。傷が癒えるには時間がかかる。しかしアルベルトにはレベルの高い基礎があるし、怪我からの回復は速い。我々の決断はもう少し待つ必要がある」としている。



AG2Rの完璧なチームプレー ニーバリに唯一着いていけたペロー

攻撃を仕掛けるロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)攻撃を仕掛けるロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waeleペローとともにライバルを引き離すヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ペローとともにライバルを引き離すヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleバルベルデを引き離し、ニーバリを追うティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)バルベルデを引き離し、ニーバリを追うティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) photo:Tim de Waele総合争いのレースを繰り広げるマイヨジョーヌ集団では、プラダデの登りに入る前のダウンヒルでロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)がアタックした。早すぎるバルデのアタックに ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)は苦手な下りで反応せざるを得なかった。バルデは30秒の差をもってプラダデに突入した。

最後の厳しい上りを前にして、自滅の可能性がある早すぎるアタック。「ライバルたちの脚試しと、昨日の”悪い日”に失ったタイムを取り戻そうと思った」と言うバルデだが、これは総合4位につけるチームメイトのジャンクリストフ・ペローのためのアシストの動きでもあった。

バルデが吸収されてからプラダデでのマイヨ・ジョーヌ集団のバトルは本格化。しかしアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が遅れだし、ピノも”悪い日”にあたって脱落。終盤、ラスト5kmでアタックしたニーバリに対し着いて行けたのはペローのみ。
バルデはピノ、バルベルデ、 ティージェイ・ヴァンガーデレン(BMCレーシング)のグループに留まり、ピノの背後に着く走りに徹した。総合5位につける自身のリザルトより、ペローの表彰台のためにライバルたちを監視する役に回った。前で苦しむピノを、余裕をもちながら監視する。ペローがニーバリとともに遥か前方に行ってしまっても、バルデは自分では行かなかった。

結果的にニーバリに遅れずに同タイムフィニッシュしたペロー。変わらずの総合4位ながら、総合3位のピノに8秒差にまで迫った。バルベルデにも32秒差と詰め寄った。
ペローは言う。「ロメン(バルデ)の下りでのアタックは僕とのリレーのようなものだった。彼の今日の働きは素晴らしかった。僕が今日前方でゴール出来たのは彼のおかげだよ。彼のおかげで有利にレースを展開出来たんだ。自分のコンディションにはとても満足している。ツール3週目にニーバリと並んで走るなんて!。彼は掛かっているギアが一枚違うんだ」。

バルデは言う「ジャンクリストフ(ペロー)が前に行ってからのチームの目的は明快。”彼をポディウムに登らせること”だった。それからは僕はできるだけ少ない力で行った。今も5位にとどまれて嬉しいよ。結局、最後にモノを言うのは脚だ。山頂フィニッシュでニーバリに対抗出来ているのはペローだけ。彼をサポートすることをいとわないよ。AG2Rの選手2人が総合トップ5にいる。協調体制は完璧だ」。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)にジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が食らいつくヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)にジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が食らいつく photo:Makoto.AYANO



遅れを最小限に食い止めたバルベルデ

10位争いの集団を引くティボー・ピノ(FDJ.fr)。背後にはロメン・バルデがピタリと着く10位争いの集団を引くティボー・ピノ(FDJ.fr)。背後にはロメン・バルデがピタリと着く photo:Makoto.AYANO
ティボー・ピノ(FDJ.fr)らの背後からラスト350mでアタックを仕掛け5秒をもぎとったアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)ティボー・ピノ(FDJ.fr)らの背後からラスト350mでアタックを仕掛け5秒をもぎとったアレハンドロ・バルベルデ(モビスター) photo:Makoto.AYANOニーバリグループから早くに脱落して危機に陥ったかに見えたバルベルデだったが、チームメイトに助けられ、後半持ち直して総合2位から滑り落ちること無くゴールした。どころか、ピノ、バルデ、ヴァンガーデレンがいる集団後方に着いてゴール前まで行くと、残り350mで前を行く3人から大きくラインを変えてアタックを繰り出し、ゴールまでに5秒のタイム差をもぎとった。遅れてもただそれに甘んじない、経験がモノを言う走りで、TTでのライバルとなるピノとヴァンガーデレンに5秒の差をつけた。つまりペローとの遅れも最小限に食い止めた。

「一時は危なかった。でもチームメイトが傍にいてくれたから難局を乗り切ることが出来たんだ。リズムを保つことでニーバリとペローとのタイム差を抑え込むことが出来た。ポディウムは今までになく近い。でもピノとペローはもうすぐそこまで迫っている。僕よりTTが得意なペローはもっとも危険なライバルだ」。



ステージにあと一歩届かなかったロラン「アラシロに感謝」

超級山岳プラダデを単独で登るピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)超級山岳プラダデを単独で登るピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) (c)CorVos総合を上げ、目標とするトップ10以内に戻したピエール・ロラン。とくにユキヤの働きを賞賛しながらも、ステージ勝利には手が届かなかったことに満足できない様子だ。ジロでの疲れの影響があるようだ。

「4、5、6位になる選手と勝者を分ける何かが僕には欠けていた。フレッシュさや、鋭い加速などがもう少しあれば着いて行けたのに。終盤はもう追う脚がなかった。
勝利には結び付けられなかったけれど、チームメート、とくにアラシロにはすごく感謝している。きっとジロを最後まで戦ったことが影響しているんだと思う。ジロとツールでトップ10にはいればそれは素晴らしいんだろうけど、たぶん僕はこの先、ツールかジロのどちらかひとつを選ばければいけないんだと思う。
明日も困難な一日になるだろう。でも僕らチームは再びトライしていく。トップ集団に食らいついてパリでの総合トップ10入りを確保したい」。



素晴らしい働きの末、自身の総合も70位に上げたユキヤ

14分17秒遅れの60位でプラダデにゴールした新城幸也(ユーロップカー)14分17秒遅れの60位でプラダデにゴールした新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto.AYANO41位以降の集団で、14分17秒遅れの60位でプラダデにゴールした新城幸也。グルペットではないグループでのゴールが続くため総合を70位に上げている。
「キツかった。でも、最初のアタックが決まって良かった。最後まで先頭の集団に残れていたら敢闘賞だったかもね(笑)。連日、チームは全員がそれぞれの役割をきちんとこなし、山でもスプリントでも、常に上位に選手を送り込んている。チームが9人揃ってきちんと機能している証拠。今夜は少しでもダメージを回復して、明日の最後の山岳ステージをまた頑張る。明日のツールマレー峠も相性が良いしね!」とコメントしている。



ピレネー山岳最終日は有名な峠が2つ。2,115mのツールマレー峠を越え、1,520mのオタカムにゴールする短くも厳しい145.5km。日によって活躍する選手、悪い日を迎える選手が変化する今のツールで、ステージ、ジャージ、総合争いは激化すること必至だ。


photo&text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:CorVos,TimDeWale,A.S.O,
※新城幸也のコメントはユキヤ通信より
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