アルベルト・コンタドールの骨折リタイアと、ヴィンチェンツォ・ニーバリの圧倒的な勝利。明暗がくっきりと浮き彫りになったツール・ド・フランス2014第10ステージを、優勝したニーバリほか、注目選手のコメントで振り返る。



総合首位に返り咲いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

単独ゴールに飛び込むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)単独ゴールに飛び込むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Cor.Vos
独走でゴール前の激坂を駆け上がるヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)独走でゴール前の激坂を駆け上がるヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Cor.Vos素晴らしいチームワークの末に掴んだワンダフルな勝利。特に終盤のミケーレ・スカルポーニの走りは素晴らしかった。10日間にわたる厳しい闘いの最後に待っていた、雨と霧の過酷なステージ。7つの山岳と多発する落車。これまで経験したグランツールの中で一番厳しいステージだった。フィニッシュでは(今年産まれた)娘に向けてジェスチャーを送ったんだ。毎日妻と電話しているけど、娘のエマは僕の声がTVで聞こえる度に静かになって眼を見開いているらしい。

ステージ2勝目を飾ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ステージ2勝目を飾ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleアルベルトの落車は非常に残念。ちょうど目の前で落車して、危うく自分も巻き込まれるところだった。どうして落車したのかは分からないけど、とにかく酷い落車だった。すぐに集団のペースを落としたものの、危険なマルティンとクヴィアトコウスキーが4分30秒リードで逃げていたので、リッチー・ポートやチームカーと話した結果、しばらくしてペースを戻したんだ。

明後日からはマイヨジョーヌを守るための闘いが始まる。でも決してライバルがいないわけじゃない。リッチー・ポートやアレハンドロ・バルベルデが脅威になるだろう。2分以上のアドバンテージを活かしながら走りたい。今のコンディションは2013年ジロ・デ・イタリアと同じ高いレベルにある。トレーナーのパオロ・スロンゴと組んで、このツールに向けてコンディショニングを続けてきた結果だ。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が再びマイヨジョーヌに袖を通すヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が再びマイヨジョーヌに袖を通す photo:Cor.Vosクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ前に今回のメンバーで揃ってテネリフェでトレーニングキャンプをを行なった。そこで良いトレーニングを積めたんだ。ドーフィネではまだトップライダーに敵わなかったけど、その後さらにサンペッレグリーノ峠でトレーニングを実施。コンタドールとの闘いを想定して、バイクペーサーでリズムの変化に対応するトレーニングを行なった。

フルームとコンタドールが落車リタイアしたから勝てたなんて言われたくない。すでにリードは得ていたし、アルベルトとの闘いの準備も出来ていた。落車はロードレースにつきもので、自分だって過去に何度も落車でチャンスを失ってきた。ツールが2人の主役を失ったことが残念でならない。アルベルトの怪我が酷くないことを願う。

山岳賞トップに立ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

山岳ポイントを荒稼ぎしたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)山岳ポイントを荒稼ぎしたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor.Vos僕にとって今日は重要な一日だった。何しろ山岳ポイントを大量に獲得出来るチャンスだったんだ。ステージ優勝には1km届かなかったけど、アルベルト・コンタドールの落車と比べたら何てことない。

マイヨアポワに袖を通すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)マイヨアポワに袖を通すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor.Vosアルベルトは積極的な姿勢を見せていたし、ピレネーでレースを大いに盛り上げていたはず。今日はフィニッシュまで登りを2つ残して2分リード。ステージ優勝が危ういと思いながら逃げ続けた。マイヨアポワを狙うべきかステージ優勝を狙うべきか。どちらか片方を狙えば、もう片方が付いてくると思っている。また山岳ステージで逃げて山岳ポイントを量産したい。するとステージ優勝が見えてくると思う。

ステージ2位フィニッシュを目指すティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)ステージ2位フィニッシュを目指すティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) photo:A.S.O.ステージ2位のティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)

ステージ2位という結果に満足している。素晴らしい結果だけど、今日は雨と寒さで非常に厳しいステージだった。ヴォージュで雨が降ると決まって厳しい闘いになる。ヴォージュの山岳はどれも短くて急勾配。自分向きのコースではないからこそ2位という結果には満足だ。いつかこのフィニッシュで勝ちたいと思う。

自分のコンディションは良いし、何も後悔していない。ニーバリが自分よりも強かった。それだけだ。残り300mからはまるでスタジアムの大喝采の中を走っているようだったよ。とてもスリリングで、全力を出し切ることが出来た。コンタドールの落車は残念だ。フルームに続いて、大会にとって大きなロスになった。かと言って自分の目標が変わるわけじゃない。これからも総合トップ10を目指して、マイヨブランも獲得したい。でもコンタドールが落車したように、ツールでは毎日何が起こるか分からない。まだレースは半分が終わっただけ。まだ山岳ステージが5つも残っている。

スタートラインに並んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)だったが...スタートラインに並んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)だったが... photo:A.S.O.リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)

チームカーに乗り込むアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)チームカーに乗り込むアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleニーバリのアタックに反応できたのは僕だけだった、でもそれがレースだと思う。今日は良いレースだったと思うけど、毎日みんなをゴールラインまで牽くのはお世辞にも良いとはいえない。もし、ヴィンチェンツォがアタックすれば、皆は反応する必要があると思うんだ。彼はもう十分なタイム差をすでに持っているからね。

アルベルト・コンタドールを失ったビャルヌ・リース監督

アルベルトは速度の乗った下りの直線で落車してしまった。恐らく路面のバンプや穴に引っかかってしまい、彼はバイクと一緒に放り投げられてしまった。アルベルトは選手人生を懸けていたし、チームもパリの表彰台を目指して全力を尽くしていた。アルベルトはクラッシュの後バイクにまたがって、18kmを走った。最大限の力を発揮して印象的な走りを見せてくれたが、レースを降りると言う選択をしなければならなかった。

逃げグループを牽引するトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)逃げグループを牽引するトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor.Vos怪我は膝下脛骨の骨折。複雑骨折は無いが、手術が必要だろう状態だ。今日彼は私たちと一緒に夜を過ごし翌朝マドリードに向けて発つ。ドクターと検討し、必要であれば手術を受ける事になるだろう。前向きになるべきだが、現時点では彼がブエルタを走るとは言えない。彼の回復スピードやいつからトレーニングを再開できるかによるだろう。

落車したものの、復帰しアシストを勤め上げたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)落車したものの、復帰しアシストを勤め上げたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) photo:Cor.VosコンタドールのリタイアについてTweetしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

ツールは今日大きな損失を被った。(メンションをつけて)コンタドール、早い回復と、ブエルタでまた会えることを。

追走グループを長時間に渡って牽引したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ

今日も先頭で走ることができた。悪くないね。登りはじめで僕らは5.6人のグループだったけれど、スポーツディレクターと相談して逃げとのギャップを詰めることにした。

僕はクヴィアトコウスキーについてくるよう言って、それから加速した。ミカルにとっては良いチャンスだったし、最後は上手く機能できなかったけれどそれでもOKさ。トライした末に良いレースができたと思うし、全く退屈なんてことは無かった。個人的には最後か、その一つ前の山まで行ければ良いと思っていたし、最後は全く力が残っていなかったんだ。ようやく休息日。翌週のレースプランを練ることにするよ。

落車について語るミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)

"やっちまった!クラッシュする!"って思った。そして"くそ!突っ込むところに女性がいる!"と気づいたんだ。思わず叫んだよ。

text:Kei.Tsuji,So.Isobe,Naoki,Yasuoka