翌日からの山岳決戦を見据えるメイン集団を引き離して、超高速アタック合戦から抜け出した26人が逃げ切った。ジロ・デ・イタリア第17ステージで、逃げグループの中からステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)が残り1200mでアタック。チームに3勝目をもたらした。



白い山々を背にヴェネト州を目指す逃げグループ白い山々を背にヴェネト州を目指す逃げグループ photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2014第17ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第17ステージ高低図 image:RCS Sportヴェネト州のヴィットリオヴェネトに至る第17ステージは平坦基調。グルペットで山岳をこなしてきたスプリンターたちにチャンスが回ってくる。

マリアローザを着て登場したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)マリアローザを着て登場したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsujiしかし、残り50kmを切ってから3つの4級山岳を含めた細かいアップダウンが続くため、完全なるスプリント向きステージとは言えない。急勾配の登りも含まれているため、逃げ切りが決まりやすいレイアウトと言える。実質的にこの日が逃げ切りのラストチャンス。そのためスタート直後からレースは高速化した。

前日のステルヴィオ峠の一件に関して監督によるミーティングが行なわれたが、予定通り第17ステージはサルノーニコをスタート。序盤の30kmが下り区間ということも手伝って、最初の1時間の平均スピードが52.1km/hという猛烈な勢いでアタック合戦が続く。

ようやくアタックが決まったのはレース開始から1時間半が経ってから。70km地点でファンエムデン、ガスパロット、モンタグーティ、ピラッツィ、ボエム、カーノラ、ガット、レボン、ヴェッカネン、クネゴ、ボノ、バク、ウェレンス、アントン、デヘント、パウエルス、マラカルネ、ゲシュケ、ロサダ、ヴォルガノフ、ダイグナン、ペトロフ、マッカーシー、フェリーネ、オス、フラッポルティという26名が飛び出す。総合成績における危険な選手が入っていないとして、モビスターはこの逃げ集団の先行にGOサインを出した。



4級山岳レ・スカーレ・ディ・プリムラーノを登るメイン集団4級山岳レ・スカーレ・ディ・プリムラーノを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji逃げを見送ったメイン集団はスローダウン逃げを見送ったメイン集団はスローダウン photo:Kei Tsuji

ヴェネト州の田舎町を通過するプロトンヴェネト州の田舎町を通過するプロトン photo:Kei Tsuji


4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオに差し掛かる逃げグループ4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオに差し掛かる逃げグループ photo:Kei Tsujiモビスターは逃げ追撃の姿勢を見せず、レース後半に入ってもスプリンターチームは集団前方に姿を見せず。120km地点でタイム差は10分を超えた。

4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオを先頭で登るトーマス・デヘント(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオを先頭で登るトーマス・デヘント(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsujiやがて逃げ切りの許可を得た26名の中でステージ優勝を懸けた闘いが始まる。残り30kmを切って最初に仕掛けたのはトーマス・デヘント(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)。雨が降り始める中、デヘントが独走を開始した。

5名の先頭グループを率いるマッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)5名の先頭グループを率いるマッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール) photo:Kei Tsuji残り20kmに位置する最大勾配18%の4級山岳ムーロ・カ・デル・ポッジオで、追走グループの中からステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)が飛び出して先頭デヘントに合流する。

5名によるバトルで勝利したステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)5名によるバトルで勝利したステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji追走グループの中では、雨に濡れた下りでサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が落車し、オスカル・ガット(イタリア、キャノンデール)もメカトラで後退。マッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)、ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)の3人が協力してペースを上げ、先頭のデヘントとピラッツィを捉えた。

この先頭5人はファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)らを23秒引き離して残り10kmを切る。すると5人の中から、残り3kmを切ってピラッツィがアタックを開始。残り1.2kmで仕掛けたスパートが決まった。

2度目のアタックで独走に持ち込んだピラッツィが、モンタグーティ、ウェレンス、マッカーシー、デヘントを振り切ってゴールへ。タイム差無しの独走フィニッシュ。プロ初勝利を飾った。

27歳ながらこれが5回目のジロ出場であるピラッツィ。これまで数えきれないほどエスケープを試みてきた。2012年のティレーノ〜アドリアティコや2013年のジロでは、その積極性が実って山岳賞を獲得している。しかしここまでステージ優勝やプロレースでの勝利経験は無かった。

「5人でのスピード勝負に持ち込んでしまうと、自分が一番遅いと思っていた。でも序盤からハイスピードな展開だったので、他の4人は本来の力を発揮出来なかったんだと思う。残り2.5kmで仕掛けたが失敗。残り1.2kmでタイミング良く飛び出すことが出来た。プロ入り以来ずっと勝てない日々が続いていたので、この勝利は本当に嬉しい」と、ラツィオ州出身のピラッツィ。バルディアーニCSFにステージ3勝目をもたらした。

最後までモビスターがコントロールしたメイン集団は15分36秒遅れでフィニッシュ。マリアローザのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)を含め、総合上位の選手たちは安全に集団内で第17ステージを終えている。新城幸也(ユーロップカー)は終盤に他チームのチームカーと接触して落車し、147番手でフィニッシュラインを切った。



念願の初勝利を飾ったステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)念願の初勝利を飾ったステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsujiマリアローザを着て山岳3連戦に挑むナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)マリアローザを着て山岳3連戦に挑むナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2014第17ステージ結果
1位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)
3位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
4位 トーマス・デヘント(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
6位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ.fr)
7位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
8位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
9位 マルコ・カーノラ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

49位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
147位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
4h38'11"




+28"





+15'36"


マリアローザ 個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
4位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
6位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
9位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
68h11'44"
+1'41"
+3'21"
+3'26"
+3'28"
+3'34"
+3'49"
+4'06"
+4'16"
+8'02"


マリアロッサ ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

マリアアッズーラ 山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

チーム総合成績
AG2Rラモンディアール

text&photo:Kei Tsuji in Vittorio Veneto, Italy