カンチェラーラ、サガン、ボーネンの三強が、大声援に包まれながら、パテルベルグを駆け上がるだろう。雨の予報も出ているロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)の見どころをチェックしておこう。

勝負を決める「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」

ロンド・ファン・フラーンデレン2014ロンド・ファン・フラーンデレン2014 image:www.rondevanvlaanderen.be「モニュメント」と呼ばれる世界を代表する5つのワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが、「クラシックの王様」の異名を持つロンド・ファン・フラーンデレンだ。

コッペンベルグでバイクを押す選手たちコッペンベルグでバイクを押す選手たち photo:Cor Vos1913年に第1回大会が開催され、今年で開催98回目。フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれるフランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」と言い切っていいだろう。自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上には黄色のフランドルフラッグが翻る。今年もフランドル地方の熱気はこのロンドで頂点に達する。

2013年 パテルベルグでバトルを繰り広げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)2013年 パテルベルグでバトルを繰り広げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)とペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vosロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。石畳に覆われた急坂がいくつも登場する。

スタート地点はブルージュで、フィニッシュ地点はレース博物館のあるオウデナールデ。昨年コースから取り払われた名物の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」は今年も登場しない。代わって「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースが勝負を決める。

今年は最大勾配22%の「コッペンベルグ」が例年よりもフィニッシュに近いのが特徴だ。渋滞によってバイクを押す選手が続出するこの激坂を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取りも重要なファクターを担うだろう。

連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。ゴールから13kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。

天気予報によれば、フィニッシュ地点オウデナールデの気温は最高18度、最低12度(昨年は最高6度、最低-1度)。曇り時々雨という予報が出ており、雨が降れば濡れた石畳が牙を剥く。フランドル地方特有の気まぐれな天候がレース展開に大きく影響するだろう。



ロンド・ファン・フラーンデレン2014ロンド・ファン・フラーンデレン2014 image:www.rondevanvlaanderen.be


登場する17カ所の急坂
1 109km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
2 119km地点 コルテケール アスファルト 平均6.4% 最大17.1% 長さ1000m
3 127km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
4 130km地点 ウォルヴェンベルグ アスファルト 平均6.8% 最大17.3% 長さ666m
5 142km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
6 163km地点 レベルグ アスファルト 平均6.1% 最大14% 長さ700m
7 171km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
8 181km地点 カペリイ アスファルト 平均5.5% 最大9% 長さ1000m
9 189km地点 カナリーベルグ アスファルト 平均7.7% 最大14% 長さ1000m
10 205km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
11 208km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m

12 215km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
13 220km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
14 222km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
15 233km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m
16 243km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
17 246km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m


今年も注目はカンチェラーラ、ボーネン、サガン

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele昨年「パテルベルグ」でペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)を力で引き離し、独走で2度目のロンド制覇を果たしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)は優勝候補の筆頭だ。

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleカンチェラーラは例年よりもコンディショニングが遅れ気味と見られていたが、ミラノ〜サンレモで2位の成績を残すと、その後のセミクラシックで調子の良さを見せた。まだシーズン0勝だが、連覇の懸かったロンドに向けて調子を合わせてきた。今年も独走のスイッチが入ったカンチェラーラを止める選手は現れないかも知れない。

トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos同じく2度の優勝経験者であるチームメイトのステイン・デヴォルデル(ベルギー)はカンチェラーラにとって非常に心強い存在のはずだ。ベルギーチャンピオンの、セカンドエースとしての動きに注意したい。

ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele初出場した2011年大会はDNFに終わったが、以後、2012年大会5位、2013年大会2位と、順調すぎるほどのステップアップを見せているサガンは、1週間前のE3ハレルベークで優勝し、ヘント〜ウェベルヘムで3位に。オスカル・ガット(イタリア)を従えての出場で、初の「モニュメント」制覇に向けて準備は整っている。

2005年、2006年、2012年大会の優勝者で、地元ベルギーの英雄トム・ボーネン(ベルギー)は、屈強なオメガファーマ・クイックステップのエースとして出場。仮に優勝を果たすことが出来れば、歴代最多4度目の勝利となる(現在ビュイス、マーニ、ルマン、ムセーウと並ぶ3勝)。

事前の記者会見でボーネンはトップコンディションに達していないことを打ち明けたが、昨年レース序盤に落車リタイアを喫しているだけに、ロンドの頂点へ返り咲くことに闘志を燃やしているはず。チームにはニキ・テルプストラ(オランダ)やゼネク・スティバル(チェコ)、ギヨーム・ファンケイルスブルク(ベルギー)ら、自らも勝利を狙えるアシストが揃っている。チームにとってシーズンで最も獲りたいタイトルに違いない。

もう一つのベルギーチーム、ロット・ベリソルはユルゲン・ルーランズ(ベルギー)とトニー・ギャロパン(フランス)の二枚看板。他にもセプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)らが地元での栄光を夢見て出場する。

アウトサイダーとしては、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)とともに出場するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)や、ワイルドカード枠で出場するIAMサイクリングのシルヴァン・シャヴァネル(フランス)らにも注目。展開によっては、春先から好調ぶりを見せているスプリンターのアルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)らが上位に絡んでくるだろう。

text:Kei Tsuji

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