逃げきりかそれとも集団スプリントか。2008年以前のコースに戻されたミラノ〜サンレモが3月23日に開催される。スプリンター向きと呼ばれるコースでクライマーやパンチャー達が果敢に飛び出す。新城幸也(ユーロップカー)も出場する伝統戦の見どころをチェックしておこう。



レマニエとポンペイアーナが廃止 難易度が下がった294kmコース

ミラノ〜サンレモ204コースマップミラノ〜サンレモ204コースマップ image:RCS Sportイタリアに春の訪れを告げる伝統の一戦、ミラノ〜サンレモが3月23日にイタリア北部で開催される。イタリア国内で「ラ・プリマヴェーラ(春)」と呼ばれるミラノ〜サンレモは、今年で開催105回目。「クラッシチッシマ(クラシックの最上級)」とも呼ばれ、極めて格式の高いクラシックレースだ。

終盤コースレイアウト終盤コースレイアウト image:RCS Sportコースはその名の通りミラノからサンレモまで。フランスの所謂「パリ〜○○○」と呼ばれるレースとは異なり、正真正銘ミラノの中心地をスタートし、リグーリア海岸のサンレモまで線でつなぐ。

チプレッサとポッジオの登りチプレッサとポッジオの登り image:RCS Sportその距離は300kmの大台目前の294km。日本で言うところの、東京〜愛知、大阪〜静岡に匹敵するほどの長旅。現存するロードレースの中で最長距離を誇っている。

大雪に見舞われた2013年大会大雪に見舞われた2013年大会 photo:Kei Tsuji内陸部の大都市ミラノをスタートするコースは、平野部を突っ切る前半部が平坦基調。ジェノバ近郊のトゥルキーノ峠(標高532m)を越えると、リグーリア海に沿ったオーシャンロードが始まる。

トゥルキーノ峠は大会の最標高地点だが、レース展開的には重要なポイントではない。勝負の鍵を握るのは、後半に登場するトレ・カーピ、チプレッサ、ポッジオの登りだ。なお、2008年から2013年までレース中盤に設定されていたレ・マニエ峠(標高318m)は今年から省かれている。

レースが慌ただしさを増すのが、トレ・カーピ(3つの岬)と呼ばれるカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタの3つの岬。さらにゴール28km手前から連続するチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)とポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)だ。

当初はこのチプレッサとポッジオの間、ゴール21km手前にポンペイアーナ(距離5km/平均5%/最大14%)の登りが組み込まれると発表されたが、荒れた路面や下りの危険性を考慮してキャンセルに。クライマー向きにコースが変更されたと思いきや、結局はスプリンター向きのコースに戻された。

最大の勝負どころであるチプレッサとポッジオでは、今年も激しいアタック合戦が繰り広げられるだろう。ここで飛び出した選手が、スプリンターチームの追撃を抑え込み、ゴールまで逃げ切りを図る。最後のポッジオの頂上からゴールまでは僅かに6.2km。その構成は3km下って3km平坦。ゴール地点はサンレモの町の海側に位置するルンゴマーレ・カルヴィーノだ。

ポッジオ通過後のテクニカルなダウンヒルや、ゴール直前の平坦区間で飛び出す選手も出てくる。クライマーやパンチャーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。この2通りの展開が絶妙なバランスでクロスするコースレイアウトが、ミラノ〜サンレモ最大の魅力だ。

2013年大会は季節外れの寒波によって降雪に見舞われ、中盤のトゥルキーノ峠がキャンセルに。レースは一旦中断し、選手たちはチームバスでトゥルキーノ峠を越えた。今年は低温&降雪を免れることが出来そうだが、降水の予想は出ている。選手たちが冷たい雨の中を7時間にわたって走ることになるかも知れない。

ミラノ〜サンレモ2014コースプロフィールミラノ〜サンレモ2014コースプロフィール image:RCS Sport



世界最高峰のスプリンターとアタッカーがミラノに集結

2013年 ゴールスプリントを制したのはゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)2013年 ゴールスプリントを制したのはゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji2013年は6名のゴールスプリントに持ち込まれ、ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)が勝利した。サプライズと言っては失礼だが、ダークホースであるチオレックの勝利には誰もが驚いた。今年はライバルチームのマークが一層厳しくなるため、大会連覇は容易いものではない。

アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)と勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)と勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vosスプリンターとして有力候補に挙げられるのが、ペタッキとレンショーという心強いアシストを得ているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)や、今シーズンすでに世界最多6勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)、そしてパリ〜ニースで活躍を見せたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)らだ。

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele登れるスプリンターとして名を馳せるホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の他にも、アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ・サクソ)らが虎視眈々とスプリントを狙っている。

2012年 ゴールスプリントを制したサイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ)2012年 ゴールスプリントを制したサイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji登りの数が減ったことでスプリンター向きに姿を変えたミラノ〜サンレモ。しかし、だからといってクライマーやパンチャーが指をくわえてレースを観戦するわけではない。

ティレーノ〜アドリアティコやパリ〜ニースで調子の良さを見せたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)と言ったオールラウンダーたちが春のビッグタイトルを狙っている。

優勝経験者のサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)らもチプレッサやポッジオで動きを見せるだろう。

アタックでもスプリントでもチャンスを掴めるのが、昨年表彰台に登ったペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)の2人。新加入オスカル・ガット(イタリア)とともに出場するサガンは優勝候補の筆頭とも言える。これまで何度も僅差で勝利を逃しているカンチェラーラは、ベルギーのクラシックに向けてここで結果を出しておきたいところだろう。

日本からは新城幸也(ユーロップカー)が出場。DNFに終わった2010年以来の出場となるミラノ〜サンレモに関して新城は「チームからどのような指示が出るかわからないけど頑張りたい」とコメントしている。ティレーノ〜アドリアティコ終了後そのままイタリアに残り、2度目のミラノ〜サンレモに挑む。

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール) photo:Riccardo Scanferla新城幸也(ユーロップカー)新城幸也(ユーロップカー) photo:Riccardo Scanferla



text:Kei Tsuji

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