5つのUCIプロチームを揃えるツール・ド・ランカウイ(UCI2.HC)が2月27日、マレーシアのランカウイ島で開幕する。19回目の開催を迎える東南アジア最大のステージレースに、今年も愛三工業レーシングが出場。10日間の闘いで注目のステージ、選手をチェックしておこう。



10日間かけてマレーシアを巡る19回目のランカウイ

ツール・ド・ランカウイ2014コースマップツール・ド・ランカウイ2014コースマップ image:www.ltdl.com.my1996年に初開催されたツール・ド・ランカウイ。カテゴリーはHC(超級)で、開催期間は10日間と長く、そのオーガナイズには定評がある。中東や中国で新しいレースが台頭した今も、依然としてUCIアジアツアーで大きな存在感がある。

超級山岳ゲンティンハイランドにフィニッシュする第4ステージ超級山岳ゲンティンハイランドにフィニッシュする第4ステージ image:www.ltdl.com.my第19回ツール・ド・ランカウイの開幕地は、アンダマン海に浮かぶランカウイ島。観光客が多く訪れるリゾートアイランドを走るのは初日の第1ステージだけで、第2ステージ以降はマレー半島に舞台が移る。

なお、「ランカウイ一周」の名前を冠しているが、過去にはランカウイ島が全く登場しない年が続いた。

マレー半島の西岸を南下し、首都クアラルンプールを経て、シンガポールに近い同半島南部でUターン。後半は半島の東岸を北上し、クアラトレンガヌにフィニッシュする10日間。

細かいアップダウンが続くものの、10ステージのうちおよそ9ステージはスプリンター向きのコース。そのためゴールスプリントに特化したメンバーを揃えているチームが多い。

総合争いを決めるのは、第4ステージのゲンティンハイランドだ。標高1675mの高原リゾートに向かうこの超級山岳で、早くも総合争いは決するだろう。よほどの大逃げが決まらない限り、それ以降のステージで総合順位の変動は起こらない。前半ステージで総合優勝者が実質的に決まると、残る後半ステージはスプリンターたちのもになる。

ステージ全長は最短101.1km、最長230.1km。10日間で1495.9kmを走りきる。連日気温が35度まで上がり、時にはスコールが選手を襲う。ヨーロッパと7時間の時差があるため、気候や時差で調子を落とす選手も出てくるだろう。



ツール・ド・ランカウイ2014ステージリスト
2月27日(木)第1ステージ ランカウイ〜ランカウイ 101.1km
2月28日(金)第2ステージ スンガイプタニ〜タイピン 132.5km
3月1日(土)第3ステージ カンパー〜クアラルンプール 166.5km
3月2日(日)第4ステージ スバン〜ゲンティンハイランド 110.9km
3月3日(月)第5ステージ カラク〜ルンバウ 139.9km
3月4日(火)第6ステージ ムラカ〜ポンティアン 199.1km
3月5日(水)第7ステージ コタティンギ〜ペカン 230.1km
3月6日(木)第8ステージ クアンタン〜マラン 202.6km
3月7日(金)第9ステージ バンダーパーメイスリ〜クアラトレンガヌ 111.1km
3月8日(土)第10ステージ タシクケニル〜クアラトレンガヌ 103.1km




5つのUCIプロチームが出場 ゲンティンを制するのは誰?

2013年大会 ゲンティンハイランドを行くピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)とジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)2013年大会 ゲンティンハイランドを行くピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)とジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanaka中東や中国の新興レースに対抗すべく、年々出場チームをアップグレードしているツール・ド・ランカウイ。2014年大会にはUCIプロチームのティンコフ・サクソ、カチューシャ、オリカ・グリーンエッジ、アスタナ、ベルキン、ユーロップカーが出場する。

2013年大会 イエロージャージを着るテオ・ボス(オランダ、ブランコプロサイクリング)2013年大会 イエロージャージを着るテオ・ボス(オランダ、ブランコプロサイクリング) photo:Sonoko Tanakaしかし、昨年出場したオメガファーマ・クイックステップやガーミン・シャープが「レーススケジュールに合わない」として出場を辞退するなど、やはりヨーロッパチームにとって2月下旬〜3月上旬のアジアレース出場は大きな負担になる。出場チームは豪華だが、どのUCIプロチームも2軍を送り込んでいるのが実際のところだ。

気温30度以上の暑さの中、トレーニングライドに出かける選手たち気温30度以上の暑さの中、トレーニングライドに出かける選手たち photo:Kei Tsuji総合優勝候補は、つまり超級山岳ゲンティンハイランドの優勝候補は、ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)をはじめとするオールラウンダーたち。ウェーニングは昨年のゲンティンハイランドでジュリアン・アレドンド(コロンビア、当時チームNIPPO・デローザ)に敗れて2位に。タイム差を詰めることが出来ず、総合2位でレースを終えている。「今年こそは」という思いが強いはずだ。

地元マレーシアの注目を集めるアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)地元マレーシアの注目を集めるアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング) photo:Kei Tsuji2011年大会の総合優勝者ヨナタン・モンサルベ(ベネズエラ、ネーリソットリ・イエローフルオ)や、昨年ツアー・オブ・ターキーで山頂フィニッシュを制したナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)、2006年のツアー・オブ・ジャパン富士山ステージ覇者のジョンリー・オーガスティン(南アフリカ、MTNキュベカ)、グランツール出場16回の経験(最高位は2007年ジロの総合7位)をもつベテランのエフゲニー・ペトロフ(ロシア、ティンコフ・サクソ)らがゲンティンハイランドでバトルを繰り広げるはずだ。

もちろんカデル・ミズバニ(イラン)率いるタブリスペトロケミカルを始め、アジアチームにとっては格上チームを相手にアピールする最高の場であり、モチベーション高く勝負に挑んでくるはず。レース環境的には、時差や気温差が少ないアジアチームに有利であるとも言える。

ゴールスプリントで注目したいのは、昨年のランカウイで開幕2連勝を飾ったテオ・ボス(オランダ、ベルキン)だ。トラック個人追い抜き世界記録保持者(4分10秒534)のジャック・ボブリッジ(オーストラリア)やグレーム・ブラウン(オーストラリア)を揃えるベルキンのトレインはおそらく大会最速。大柄な選手を揃えるベルキンがゴール前を支配するだろう。

ベルキントレインに対抗するのは、昨年スプリント2勝のフランチェスコ・キッキ(イタリア、ネーリソットリ・イエローフルオ)や、スプリント1勝のアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、今年のツアー・オブ・カタールで何度もスプリント上位に絡んだアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)、マレーシアで絶大な人気を誇るアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)らだ。



盛、西谷、福田でスプリントを狙う5年連続出場の愛三工業

6名で5回目のランカウイに挑む愛三工業レーシング6名で5回目のランカウイに挑む愛三工業レーシング photo:Kei Tsuji

2010年大会 スプリント勝利を飾った西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、後ろで盛一大も手を挙げる2010年大会 スプリント勝利を飾った西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、後ろで盛一大も手を挙げる photo:Yufta Omata5年連続でランカウイに出場する愛三工業レーシングは、出場する21チームの中では古株だ。2010年には西谷泰治がゴールスプリント制覇、2011年に綾部勇成が超級山岳キャメロンハイランドでステージ優勝を飾っている。

2011年大会 キャメロンハイランドを制した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)2011年大会 キャメロンハイランドを制した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) photo:Yuko Sato別府匠監督は「普段からUCIアジアツアーに参戦しており、ランカウイも5回目なので、コースや滞在ホテルをある程度分かっているというアドバンテージがあります」とコメントする。

トレーニングライドから戻ってきたバイクを一台一台丁寧に洗車するトレーニングライドから戻ってきたバイクを一台一台丁寧に洗車する photo:Kei Tsuji「近年、ゴール勝負の位置取りが熾烈になってきていると感じています。昨年はステージ9位が最高で、UCIポイントを取れなかった。9位以上の壁があると感じました。今年はスプリントに目標を絞ってメンバーを揃えたので勝負出来るんじゃないかと思います」。

ゴールスプリントでエースを担うのは、盛一大や西谷泰治ではなく福田真平。その理由について別府監督は「あまりにもゴール前の位置取りが激しいので、スピードのある選手を前に行かせないと勝負に残れない。もがける福田を、西谷や盛に引き上げてもらったほうが良いカタチでスプリントに持ち込めると思っています。勝てるスプリンターのレンショーがカヴェンディッシュをリードアウトするイメージ。その逆は難しいかも知れない。合宿で練習を積んだスプリントトレインの真価が楽しみです」と語る。

山岳ステージでは綾部勇成や伊藤雅和、平塚吉光が前に出る。「経験を積んで欲しいという思いから総合系の選手も入れています。アジアを代表するゲンティンハイランドで、ヨーロッパの強豪と走るチャンス。実力を知ってもらいたい」と別府監督。

「今年は日本から愛三だけなので、UCIアジアツアーで日本の代表としてどこまで出来るのか注目されているので、恥ずかしくない走りをしたいと思っています」と、5回目のランカウイに向けて気合いを込めた。

2月26日の夜に行なわれるチームプレゼンテーションを経て、2月27日の朝に第1ステージがスタート。チームプレゼンテーションの模様は別記事でお伝えします。



text:Kei Tsuji in Langkawi, Malaysia