大小2つのサンベルナール峠を越え、スイス〜イタリア〜フランスの三ヶ国を駆け抜けるツール・ド・フランス第16ステージは、逃げグループの中から残り2kmで飛び出したミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)が優勝。総合争いは山岳で加熱したが、順位に大きな変動はなかった。

標高2473mに向かってペッリツォッティとカルペツ先行

セントバーナード犬の行列セントバーナード犬の行列 photo:Makoto Ayanoスイスから超級山岳グラン・サンベルナール峠を越えてイタリアに入り、1級山岳プティ・サンベルナール峠を越えてフランスにゴールする第16ステージ。山岳救助犬セントバーナードの発祥の地としてしられる標高のある2つの難関峠が、休息日明けの選手たちの前に立ちはだかった。

レースはマキシム・ブエ(フランス、アグリチュベル)のアタックをきっかけに、スタート直後からアタック合戦が始まる。

グラン・サンベルナール峠を先頭で上るウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)グラン・サンベルナール峠を先頭で上るウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)とフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Makoto Ayano先頭では早々に21名の大きな逃げグループが形成されたが、人数を多さを嫌ったフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)とウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)がここからエスケープ。

山岳賞狙いのペッリツォッティと総合ジャンプアップ狙いのカルペツは思惑が一致し、後続を突き放して標高2473mの頂上まで邁進。登坂距離24.4km・平均勾配6.1%の山岳を快調に駆け上がった。

グラン・サンベルナール峠の頂上付近で選手たちを待つ日本からの観戦&応援ツアーの皆さん。がめんださんの絵だ!!グラン・サンベルナール峠の頂上付近で選手たちを待つ日本からの観戦&応援ツアーの皆さん。がめんださんの絵だ!! photo:Makoto Ayanoこの超級山岳グラン・サンベルナール峠はもちろんペッリツォッティが先頭で通過。ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)やピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)を含む追走グループは1分遅れ、アスタナがコントロールするメイン集団は2分遅れでここを通過。ツール・ド・フランスは6カ国目、イタリアに突入した。

快晴のグラン・サンベルナール峠を下り終えると、アスタルロサ擁する追走グループが先頭2人を吸収。この18名の先頭グループの中に3名ずつ送り込んだエウスカルテル(アスタルロサ、アントン、ベルドゥーゴ)とBboxブイグテレコム(フェドリゴ、ルフェーブル、トロフィモフ)が積極的にリードし、メイン集団を4分引き離して最後の難所1級山岳プティ・サンベルナール峠に入った。


サクソバンクの攻撃にもアスタナ崩れず

プティ・サンベルナール峠を先頭でクリアするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)やフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)プティ・サンベルナール峠を先頭でクリアするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)やフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Makoto Ayano登坂距離22.6km・平均勾配5.1%のプティ・サンベルナール峠が始まると、先頭グループからはローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)がアタックを仕掛けて揺さぶりをかけるが決まらず。

アタック合戦の末にペッリツォッティとユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)が登坂力を発揮して先行。これにアスタルロサとアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)が合流し、先頭4名でプティ・サンベルナールを登頂した。

プティ・サンベルナール峠でメイン集団を引くイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)プティ・サンベルナール峠でメイン集団を引くイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) photo:Makoto Ayanoメイン集団ではアスタナに代わってサクソバンクがペースを上げ始め、ここからアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が強烈なアタックを仕掛けると集団は崩壊。

マイヨジョーヌを含む総合上位陣はこの動きに乗じたが、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)やカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)は脱落した。

精彩を欠いたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)はプティ・サンベルナール峠で大崩れ精彩を欠いたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)はプティ・サンベルナール峠で大崩れ photo:Makoto AyanoAシュレクと兄フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が引くこのマイヨジョーヌグループは、総合2位アームストロングを突き放そうとペースアップ。しかし窮地に追い込まれたと思われたアームストロングは息を吹き返し、全盛期を彷彿とさせる走りでマイヨジョーヌグループにジョイン。アームストロングが復活するとサクソバンクは攻撃の手を緩めた。

結局サストレらもメイン集団に復帰して、プティ・サンベルナール峠を先頭から2分遅れでクリア。この上りで大きく遅れたエヴァンスは、最終的にライバルたちから3分もタイムを失う結果に。



アスタルロサ歓喜のステージ初優勝

笑顔でプティ・サンベルナール峠を上る新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)笑顔でプティ・サンベルナール峠を上る新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayanoメイン集団はデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン)が引く形でハイペースで下りを進んだが、先頭を逃げ続ける選手たちを捉えるには至らない。ステージ優勝の行方は逃げる選手たちに絞られた。

先頭はペッリツォッティ、ファンデンブロック、モワナール、アスタルロサの4名。これを数十秒遅れでカザール、フェドリゴ、ロッシュ、グベールの4名が追い上げる展開。下りで順調な追い上げを見せた追走4名が先頭グループを捉えようとした残り2km地点、先頭からアスタルロサがアタックを成功させた。

グルペット内でプティ・サンベルナール峠をクリアする別府史之(日本、スキル・シマノ)グルペット内でプティ・サンベルナール峠をクリアする別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayano牽制するペッリツォッティらに追走グループが合流したその前方では、アスタルロサが最後の力を振り絞って独走。後続を6秒引き離したアスタルロサは勝利を確信すると、初優勝の喜びを噛み締めて何度も何度もガッツポーズ。エウスカルテルに今大会初優勝をもたらした。

2002年にアージェードゥーゼルでプロデビューしたアスタルロサは、今年でプロ8年目の29歳。2007年ツールで総合9位に入るなど、ステージレースでコンスタントに成績を残し、2003年にはツアー・ダウンアンダーで総合優勝に輝いている。

独走でゴールに飛び込むミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)独走でゴールに飛び込むミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル) photo:Makoto Ayano積極的に逃げに乗ることから知名度が高いが、勝利数は極めて少ない。キャリア最大の勝利にアスタルロサは「スーパーハッピーだ!」と喜びを爆発させた。

追走グループの先頭でゴールしたのは「ステージ2位の常連」カザール。ピレネーでステージ優勝を飾ったフェドリゴが3位に入り、アルプスでもその健在ぶりを見せつけた。ペッリツォッティはステージ優勝争いに加わらずに7位。この日の2つの山岳先頭通過で、マイヨアポワのリードを揺るぎないものにするとともに、今大会2度目の敢闘賞に輝いている。

日本人選手2人は、新城幸也(Bboxブイグテレコム)が16分40秒遅れ、別府史之(スキル・シマノ)が25分33秒遅れでゴール。日本人選手初の完走に向けて着実に山岳ステージを一つ一つこなしている。

またこの日、プティ・サンベルナール峠のハイスピードな下りで落車したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)がリタイア。グルノーブルの病院に搬送されたフォイクトは、ほお骨の骨折と脳しんとうの診断を受けた。アスタナが最大のライバルとして注目するサクソバンクは、アルヴェセンに続いてフォイクトまで落車骨折によって失ってしまった。



ツール・ド・フランス2009第16ステージ結果
1位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)4h14'20"
2位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)+06"
3位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)
6位 アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)
7位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)+11"
8位 ステファン・グベール(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 クリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)+59"
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
81位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+16'40"
142位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+25'33"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)67h33'15"
2位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+1'37"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+1'46"
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+2'17"
5位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+2'26"
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+2'51"
7位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)+3'09"
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+3'25"
9位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)+3'52"
10位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+3'59"
130位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2h07'02"
133位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2h08'44"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)218pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)200pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)126pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)159pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)101pts
3位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)97pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)67h35'41"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+25"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+2'14"

チーム総合成績
1位 アスタナ 201h08'46"
2位 アージェードゥーゼル +2'32"
3位 ガーミン +5'54"

第16ステージ敢闘賞
フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)

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