昨ステージのゴール地点ペルピニャンから一路100km移動し、スペインに入国。ツール・ド・フランチャはバスクに並んで自転車レースの盛んなカタルーニャ地方へ。「Cataluna is not Spain」のアピールの旗を持つ観客も目立った。

ジローナがツール・ド・フランスを歓迎ジローナがツール・ド・フランスを歓迎 photo:Makoto Ayanoジローナはかつてのアームストロングをはじめ北米系の選手たちの欧州の拠点として知られている。

朝のサイン台には1959年にスペイン人として初めてツールを制したフェデリコ・バハモンテスが特別ゲストとして招かれていた。足取りもしっかりしたこの老人はかつて「トレドの鷹」と呼ばれたチャンピオン。昨ステージで勝ったヴォクレールに記念の盾を渡す。

悪魔おじさんはスペインにも登場!悪魔おじさんはスペインにも登場! photo:Makoto Ayano朝恒例のユキヤとフミのインタビュー取り。これは書こうか書くまいか迷っていたことではあるが、ユキヤは一昨日あたりからメディアへの対応ができなくなっている。質問への応えは素っ気無く、ひとことふたことですぐにバスに姿を消すようになる。とても「使えるコメント」にはならない。殺到した日本、そして各国メディアへの拒絶反応なのか、調子が思わしくないのか、それとも集中しているからなのかは、つかめない。

一方のフミ。集中力を高めてぴりぴりしている様子は感じられるも、カメラやマイクを向けるとそれに合わせてきっちり応える。コメントは常に前向き。向けたカメラには素早くポーズを数パターンくれる。

カメラマンのリクエストに応える別府史之(日本、スキル・シマノ)カメラマンのリクエストに応える別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoどちらが良くてどちらがダメという話ではない。フミは5シーズンの間プロとして走ってきて、プロトンの中では異質の存在の東洋人として常にメディアの注目を浴び、リクエストに応えてきた経験がある。

対してユキヤはいきなり世界最高のカテゴリーに飛び込んだネオプロ。エキップ・アサダ時代の出場レースとは注目度が違う。そこで活躍したことでいきなりメディアの格好の取材対象となり、激しい取材攻勢にあったことで拒否反応を起こしたのだろうか?

トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)にサインをねだるトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)にサインをねだる photo:Makoto Ayano有名選手の対応ですごいと思うのは、同じ質問をいろいろなメディアの人間に何度も繰り返し聞かれても、等しく対応できる処理能力だ。

マイクが違うだけで同じ質問を同じ場所で同じように聞かれ、それに応える。何度だって応える。同じ答えを繰り返しているようでも、マイクが違えばメディアは違う、マイクの向こうにいる国や相手は違うのだということを知っている。ときには「今のと同じコメントを英語でしゃべって」などと頼むメディアもある(それが双方にとって効率的だから!)。

「カタルーニャはスペインじゃない!!」「カタルーニャはスペインじゃない!!」 photo:Makoto Ayano辟易する心は表情に出さず、オウムのように応えるのもプロ選手がこの世界を渡っていく技術なのだろう。

すでに5ステージを消化して疲れが出てくる頃。この日、フミは「疲れは感じていません。逃げに乗りたい」と前向きなコメントをくれるが、調子がいい状態とはいえなかったようだ。実際、モナコに入る前にお腹の調子を崩していたのか、兄の始さんに託された漢方薬を、私が昨ステージの朝にフミに届けたところだった。

天気は生憎の曇り空だが、少し陽気な雰囲気に包まれたカタルーニャ。ファンに見送られ、一路コスタ・ブラーバ(素晴らしい海岸)へと向かう。海のリゾート地をつなく海岸線ルートだ。山岳の難易度は高くは無いが、カテゴリーつきの丘が繰り返す。道は細く曲がりくねっている。

最初の山岳ポイントを越え、海岸線出でたところでプレスカーを停め、集団を待つ。逃げのアタックが決まりかけてプロトンのスピードが上がっていた。全選手が通り過ぎてチームカーの隊列もなかばになったころ、一人フミが遅れてやってきた。あまりに早いドロップに驚いたが、スキル・シマノのチームカーも前に出ていることから判断して問題はなさそうだ。

アップダウンはいったん収束し、海岸線の平坦区間へ。フミの集団復帰を確認し、次の山岳ポイントへショートカットルートで向かう。雨が降り出してきた。冷たくは無い。

スリッピーなバルセロナへ

逃げるデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)逃げるデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス) photo:Makoto Ayano小雨ながら雨に濡れた都心部の路面は滑りやすいだろう。ユキヤの転倒はゴール地点のモニターに映し出された国際映像で確認できた。ゴール地点で待つ日本人プレス陣も(おそらく日本でテレビを観ている方たち同様に)ヒヤヒヤだ。

海岸沿いで確認したフミの集団復帰の知らせは、バルセロナ都心部へのプレス用ショートカットルートが封鎖されていたことで慌てていたのでお知らせすることが出来ず。その後登場した山岳ポイントをメイン集団内で越えていた姿を見ているが、ゴール前のバルセロナ市街に入ってからはTVカメラが映すメイン集団内にフミを見つけられず、かつどこで遅れたのかは確認が出来なかった。

集団内で走る別府史之(日本、スキル・シマノ)集団内で走る別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Makoto Ayanoミラーの逃げが最後まで可能性を残したことで大いに盛り上がったが、曲がりくねった道から一転、バルセロナ市街の広い・直線的なコースが集団に有利に働いた。集団の先頭交代はスムーズさを増し、一気にミラーを捕まえることになった。

しかし新城に加えてロジャース、ハウッスラー、ボーネンらも次々と落車。ボーネンは昨日の2度のパンクに続いてまったくツイていない。


雷神トールは上りスプリントで最強

ガッツポーズでゴールに飛び込むトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)ガッツポーズでゴールに飛び込むトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ) photo:Makoto Ayano上りスプリントを制したフースホフト。バルセロナ出身の上りスプリントに強い3度の世界チャンプ、フレイレを抑えた。フースホフトはモンジュイックの丘に上るゴールまでのコースは過去走ったことがなかったが、サーヴェロテストチームのサンス・ベガ監督がバルセロナ出身とあって、今朝のスタート前にはクルマから撮影したビデオを観て予習を済ませていたと言う。

昨ステージはヴォクレールらの逃げ切りを許してしまったことでフラストレーションを感じていたフースホフト。もし平坦ステージで集団スプリントになるならチームが助けてくれる。そして山岳ステージならばサストレのためのアシストとして、出来るだけのことをにする。「サーヴェロチームはプロコンチネンタルだけれど、多分最高の牽引トレインを組めるチーム」。

長らく過ごしたクレディアグリコルが昨年度一杯で解散。格下の新チームへの移籍。しかしそこにはサストレと充実の体制が作られてあった。契約は常に冒険だが、吉と出た。パリ〜ルーベでは転倒して勝利を逃したが、スプリントで勝てる体制がある。サストレがマイヨジョーヌを狙うのは少し先の第3週になるだろうが、ツール初出場のサーヴェロテストチームはアピールを始めている。


無事ゴールしたユキヤとフミ

トップから6分55秒遅れでゴールする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)トップから6分55秒遅れでゴールする新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano大きな怪我は無い感じで遅れてゴールに入ったユキヤ。「何でもありません、大丈夫です」と言い残してバスへ。

フミも遅れてゴール。フミは「実は"ハラキリ"だったので」と短く言って、お腹を抑えるジェスチャーをしてバスの中に消えたそうだ。朝からお腹の調子が悪かったということなのだろう。


マイヨヴェールを狙わないカヴ

笑顔で表彰台に上がるトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)笑顔で表彰台に上がるトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ) photo:Makoto Ayanoカヴェンディッシュがこの日、まったくスプリントに参加しなかったことで、マイヨヴェールをめぐるポイントでフースホフトはカヴにわずか1ポイント差につけた。そしてカヴはこの日、ゴール後に複数のメディアに対して最終的なマイヨヴェールを狙わないことを宣言している。シャンゼリゼにたどり着き、そこで勝つことを第一に、マイヨヴェールのための中間ポイント争いには参加しないというのだ。

ゴールスプリントばかりが注目されるが、ポイント賞は中間スプリントポイントの細かな積み重ねで取れるもの。そしてゴールスプリントに絡まない日が一日でもあると、この激戦からはすぐさま脱落する。「二兎を追うもの一兎を得ず」とならないよう、カヴはステージ勝利の増産とともに、グランツール3度目の挑戦にして初の完走を目指す。

ランスはアンドラでマイヨジョーヌを着るか?

マイヨジョーヌが近づいているアームストロング。明日のアンドラ・アルカリス頂上ゴールについて聞かれてこう応える。

「アスタナチームはいい状態だ。我々からアタックする必要はあまり感じていない。むしろ誰かが先に仕掛けるだろうね。サストレが加速するだろうね。サストレをウォッチ、エヴァンスをウォッチ、シュレクブラザースをウォッチだね。でもアルベルトも準備が出来ている。アタックすれば誰も付いていけないよ」。

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