海に浮かぶ要塞のような景観の修道院へ向かうラスト2km。第11ステージの個人TTはユネスコ世界遺産のモンサンミッシェルにゴールするという最高の舞台が用意された。

パリのエッフェル塔に次ぐフランスの誇る観光名所モンサンミッシェル。湿地帯に伸びる細い道路の先にあるこの小山のような修道院の島は、昨年、あるいは過去何度かのツールではその前の本土側の道路がコースとなり、遠目には眺めてきた。

ゴール地点から臨むモンサンミッシェルゴール地点から臨むモンサンミッシェル (c)Makoto.AYANO
この島自体までにツールが到達したのは過去一回きり。23年前の1990年ツール。ゴールはモンサンミッシェルのど真ん前に設定された。当時ヨハン・ムセーウがゴールスプリントを制したが、モンサンミッシェルと選手を写真や映像に収めようとすると、どうしても後方からになる。ムセーウのゴールシーンも後方からの絵ばかりが使われたという過去を持つ。

そこで今回主催者ASOが用意したのがラスト500mでモンサンミッシェル前を折り返すゴールの設定。そうすれば選手を正面から撮った背景にモンサンミッシェルの神々しい全容が入るというわけだ。この折り返し地点前後にはカメラマンたちがあの手この手でベストアングルを考えていた。コース上の脇にねそべり、バリアの間からカメラをのぞかせ、リモコンを使って魚眼で…。

モンサンミッシェルを折り返してゴール地点へモンサンミッシェルを折り返してゴール地点へ (c)Makoto.AYANOモンサンミッシェルと選手を一緒に撮ろうと頑張るフォトグラファーたちモンサンミッシェルと選手を一緒に撮ろうと頑張るフォトグラファーたち (c)Makoto.AYANO


現在、堤防を取り除いて桟橋を建築し、モンサンミッシェルを小島に戻す国家プロジェクトが進行中とのことで、ラスト区間はあちこちが工事中だ。カメラマンにも大敵の、選手たちを悩ましたのがこの日の強風。ラスト2kmの吹きさらし区間では横風が、湿地帯の粘りある湿気と砂塵を運んで吹き抜けた。

風向きはコースに対して真横に吹き付けた。モンサンミッシェルはこの日ストライキが行われており、島自体へ登ることはできなかった。(島にはためいていた旗がストのTVへのアピールだ)しかし手前でターンするコースからは十分にその姿が堪能できた。そして、神々しさや大きさを感じるのは離れて眺めたときだ。

海からの風は強く、横に吹き付ける海からの風は強く、横に吹き付ける (c)Makoto.AYANOコースの外には干潟が広がるコースの外には干潟が広がる (c)Makoto.AYANO


モンサンミッシェルを背後にゴールへと飛び込む新城幸也(ユーロップカー)モンサンミッシェルを背後にゴールへと飛び込む新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto.AYANO表彰台に上った清水さいたま市長表彰台に上った清水さいたま市長 (c)Makoto.AYANO「10年フランスに住んで一度も行ったことがないので、モンサンミッシェルを訪問するのが今回のレースの楽しみ」と話していた新城幸也(ユーロップカー)。

この日はさいたまクリテリウムbyツール・ド・フランスのフランスでの発表会のために渡仏したさいたま市長、さいたまスポーツコミッション代表の清水勇人氏がツールを視察。ユキヤの後方につくチームカーに乗ってレースを堪能した。

当のユキヤは追い込みながらもモンサンミシェル前ではにこやかな笑みを浮かべゴール。優勝したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)に+4'29"の103位 。

「タイムトライアルの順位は気にしていない。この日以降のコンディションを上げるために走っていた。後半になるにつれて、すごく脚が回って気持ちよく走れた。沿道にたくさんの日の丸が見えてうれしかったし、とにかく調子が良いことを確認できた」。

そして、念願のモンサンミッシェル訪問を叶えた気持ちを「モンサンミッシェル、意外に小さいね(笑)」と話し、笑いを取った。

清水市長はチームカーでユキヤに随行した気持ちを「とにかく新城選手への声援が多くて、驚きました。走っているあいだじゅう、ずっとアラシロ!、ユキヤ!、と声援が飛ぶ。フランスでこんなにも有名なのかと、ただ驚きましたね。」と興奮して話していた。

15位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)15位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Makoto.Ayano 
再びタイムを落としたカデル・エヴァンス(BMCレーシング)再びタイムを落としたカデル・エヴァンス(BMCレーシング) photo:Makoto.Ayano 
ポイント獲得を目指し奮闘したペーター・サガン(キャノンデール)だったがポイント獲得を目指し奮闘したペーター・サガン(キャノンデール)だったが photo:Makoto.Ayano


ステージ中盤のサプライズの走りはペーター・サガン(キャノンデール)。暫定7位でゴールする力走を見せ、個人TTで上位15名に付与されるポイントを狙った。暫定7位でゴールするも、結果的には17位となってポイント獲得は逃してしまった。しかし個人TTでまで貪欲にポイントを狙ってくるサガンの意欲とは!

ベストタイムを叩き出したのは12時半過ぎに65番目という早めのスタートを切ったトニ・マルティン。そして2つの中間計測タイムではマルティンのタイムをそれぞれ1秒、2秒上回りながらも、結果的には最後にタイムを落とし12秒遅れに終わったフルーム。ラスト11km区間はマルティンがフルームを14秒リードしたことになる。フルームの勝利を疑わなかった観客、そしてMCのマンジャスさんも、フルームがゴールした時はサプライズの声に沸いた。

タイムを落とし総合を諦めたピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)タイムを落とし総合を諦めたピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO平凡なタイムに終わったアンディ・シュレク(レディオシャック・レオパード)平凡なタイムに終わったアンディ・シュレク(レディオシャック・レオパード) (c)Makoto.AYANO


コースの風は時間の経過により大きく向きを変えたが、フルームの走った17時からの時間帯には後半の海に近い部分で強い向かい風となったのもタイムを落とした原因のようだ。

ようやく運が味方についたマルティン

コルシカ島での第1ステージの落車で全身に擦過傷を負い、眠れない日が続いた。しかし徐々に回復し、このときを待ったマルティン。フルームのタイムを確認しながら泣き出しそうになったが、最後は運も味方した。第4ステージのチームタイムトライアルでは最高の体調では臨めなかったが、今では睡眠も十分にとれるようになり、「今はこの怪我がレース結果を左右しない」と言い切る。

アルカンシェルを着るトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)がトップタイムアルカンシェルを着るトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)がトップタイム photo:A.S.O.
全力でゴールに向かうトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)全力でゴールに向かうトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO平均時速54km台をマークしたトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)平均時速54km台をマークしたトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO


2年連続のTT世界チャンピオンのマルティン。しかしツールでは不運の連続だった。昨年はプロローグでメカトラに見舞われてバイクを交換。マイヨジョーヌに着替えるチャンスを無くす失望。そして序盤ステージの大量落車の犠牲となり、手首を骨折した。ギプスをして走り続け、機会を待った個人タイムトライアルではパンクのトラブルに見舞われて失望。まさにツールの運に見放されていたのだから。

フルームに対抗して総合表彰台を狙う選手たちは、ことごとくタイムを失った。総合2位につけていたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は、今までのツールでのTTの無残な結果から比べればましなほうだが、2分12秒遅れの13位。フルームとの総合時間差はツール中盤にして3分を越えてしまった。コンタドール、エヴァンス、ロドリゲスも無残な結果に。そして声を揃えて言う「フルームは別のレベルに居ると認めざるをえない。」

モンサンミッシェルを走るクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)モンサンミッシェルを走るクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) (c)Makoto.AYANO
ステージ4位のリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)ステージ4位のリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) (c)Makoto.AYANO5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) (c)Makoto.AYANO



ドイツの自転車界の熱い盛り上がりをふたたび

第1ステージのキッテルの勝利とマイヨジョーヌ、第6ステージのグライペル、そして第10ステージのキッテルの2勝目と今日のマルティンの勝利で、ドイツ人選手による通算4勝目・2日連続の勝利だ。「この勝利がドイツの自転車界の人気をふたたび呼び戻すと思うか?」と、もはやお決まりになった質問がマルティンに飛ぶ。

「そうなることを願っている。ドイツの自転車界をプッシュするのはいつもゴールなんだ。今まで僕らは本当に良くやっていると思う。僕らのパフォーマンスを見て、離れたファンもまたサイクリングへ戻ってきてくれることを、そしてドイツの自転車界が盛り上がることを願っている。」

ゴール脇のインタビュールームとプレスセンターが繋がれるゴール脇のインタビュールームとプレスセンターが繋がれる (c)Makoto.AYANOプレスセンターでの共同インタビューを聴くジャーナリストたちプレスセンターでの共同インタビューを聴くジャーナリストたち (c)Makoto.AYANO


ヤン・ウルリッヒのドーピング告白と、相次ぐ選手たちの陽性発覚で、過去に盛り上がったドイツの自転車熱は一気に冷めた。近年ドイツ人選手がこれだけ勝っても、まだ過去の過熱ぶりに戻るまでには時間がかかりそうだ。


photo&text:Makoto.AYANO

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