ゴールまで1.5kmを残してヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)がアタック。優勝候補ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)らの追撃を振り切って、27歳のバケランツが僅差で逃げ切った。その差わずかに数メートル、時間にして1秒の差しか無かった。

ツール・ド・フランス2013第2ステージ・高低図ツール・ド・フランス2013第2ステージ・高低図 image:A.S.O.コルシカ島北東部のバスティアから同島南西部に位置する最大の都市アジャクシオまで、全長156kmを駆け抜けるツール・ド・フランス第2ステージ。コルシカ島を横断するためには、必然的に同島中央部の山岳地帯を通らなければならない。第1ステージで激しく落車したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)を含む198名全員がスタートを切った。

青空と大勢の観客に見下ろされ、バスティアの街をスタート青空と大勢の観客に見下ろされ、バスティアの街をスタート photo:A.S.O.逃げ切り勝利とマイヨジョーヌ着用、マイヨアポワ着用を狙って、ダヴィ・ヴェイユー(カナダ、ユーロップカー)、ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)、ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)の4人がタイミングよく集団から抜け出すことに成功する。

逃げるダヴィ・ヴェイユー(カナダ、ユーロップカー)ら4名逃げるダヴィ・ヴェイユー(カナダ、ユーロップカー)ら4名 photo:A.S.O.33km地点のスプリントポイントはボーム先頭。メイン集団は、マイヨヴェール獲得に積極的な姿勢を見せるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)を先頭に3分遅れで通過する。

逃げグループとメイン集団のタイム差は2〜3分を推移したが、山岳区間に差し掛かると、総合狙いのチームが集団前方に上がってペースアップ。危険回避のためのペースアップによって、タイム差は40秒を割り込んだ。

この日2つ目の3級山岳ラ・セッラ峠(登坂距離5.2km・平均勾配6.9%)で、先頭がヴェイユーとカドリの2人に絞られる中、メイン集団からはマイヨジョーヌのマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)らが相次いで脱落する。

メイン集団からはトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がカウンターアタックを繰り出したが、独走に持ち込んだカドリには合流出来ずに吸収。カドリは単独で30秒リードをキープしたまま2級山岳ヴィッツァヴォーナ峠(登坂距離4.6km・平均勾配6.5%)に差し掛かった。

山岳で脱落するマイヨジョーヌのマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)山岳で脱落するマイヨジョーヌのマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:A.S.O.レース中盤の山岳で積極的にペースを作るブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)レース中盤の山岳で積極的にペースを作るブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル) photo:A.S.O.

標高2000mオーバーの山々が迫ってくる標高2000mオーバーの山々が迫ってくる photo:A.S.O.
2級山岳ヴィッツァヴォーナ峠を先頭通過したピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)の後ろにメイン集団が迫る2級山岳ヴィッツァヴォーナ峠を先頭通過したピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)の後ろにメイン集団が迫る photo:A.S.O.標高1163mのヴィッツァヴォーナ峠で動いたのはピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)で、先行するカドリを抜き、そのままヴィッツァヴォーナ峠の頂上をクリアする。長い下り区間をしばらく独走したロランは、キャノンデールプロサイクリングとBMCレーシングチーム率いるメイン集団によってラスト46km地点で吸収。90名ほどに絞られたメイン集団が、ゴール12km手前の3級山岳サラリオ(登坂距離1km・平均勾配8.9%)に突入した。

3級山岳サラリオに向かってメイン集団を牽引するスカイプロサイクリング3級山岳サラリオに向かってメイン集団を牽引するスカイプロサイクリング photo:A.S.O.地中海を見下ろすパンチの効いた登りで、メイン集団からフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックし、これに反応したシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)が先頭で頂上をクリア。頂上手前でクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)が奇襲アタックを仕掛けるシーンも見られたが、ライバルたちはすかさずこれを封じ込めた。

3級山岳サラリオでアタックするシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)3級山岳サラリオでアタックするシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)とフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vosゴールに至る約10kmの平坦区間に差し掛かると、それまで先行していたゴティエは吸収。すると、この日が誕生日のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)がカウンターアタック。ゴールまで7kmを残したこの動きに、フレチャとバケランツ、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)が合流した。

先頭6名は10秒のリードを稼ぎ出してラスト3km。デーヴィッド・ミラー(イギリス)をマイヨジョーヌに導きたいガーミン・シャープと、ペーター・サガン(スロバキア)のスプリント勝負に持ち込みたいキャノンデールプロサイクリングがメイン集団を牽引したが、すでに多くのスプリンターが脱落していたため、集団は統率力を欠いた状態に。

グループ内の牽制を嫌ってラスト1500mでアタックしたバケランツが独走を開始。バケランツ目がけて、後方からはペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)らがスプリントをスタートさせたが僅かに届かない。バケランツが1秒差で逃げ切った。

集団を振り切ってゴールするヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)集団を振り切ってゴールするヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vos
劇的な逃げ切りを果たしたヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)劇的な逃げ切りを果たしたヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vos2008年にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュのU23レースで優勝し、若手の登竜門ツール・ド・ラヴニール総合優勝。プロ入り1年目の2009年に早速エネコツアー総合9位という成績を残し、2010年ブエルタ・ア・エスパーニャでは総合18位に入っているバケランツ。

早速マイヨジョーヌカラーのヘルメットをゲットしたヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)早速マイヨジョーヌカラーのヘルメットをゲットしたヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vosプロ5年目で掴んだ念願の初勝利は、なんとツール・ド・フランスのステージ優勝。そこにマイヨジョーヌまでついて来た。マイヨジョーヌに袖を通したバケランツは興奮気味に英語・フランス語・フラマン語を駆使してインタビューに応える。「ラスト500mの時点でまだリードしていたので『大丈夫、やれる。人生最良の日にしようじゃないか!』と自分に向かって叫んだ。フィニッシュラインを越えた時、あまりの喜びで顔を覆うしかなかった」。

総合上位のピュアスプリンターたちがグルペットでゴールしたため、総合順位は大きく変動。バケランツが1位に浮上し、1秒差でミラーらが続く。第2ステージを終えて総合93位までが同タイムだ。

この日、ヴェイユーを逃げに送り込み、ヴォクレールとロラン、ゴティエをそれぞれ山岳でアタックさせたユーロップカーは、全日本チャンピオンジャージを着る新城幸也で勝負に挑んだ。ゴールスプリントに加わったユキヤはステージ12位という成績を残している。

選手コメントはチーム公式サイトより。

ツール・ド・フランス2013第2ステージ結果
1位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)       3h43'11"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)        +01"
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
6位 ジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)
7位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
8位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)
10位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)
12位 新城幸也(日本、ユーロップカー)

敢闘賞
ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)

個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)       8h40'03"
2位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)             +01"
3位 ジュリアン・シモン(フランス、ソジャサン)
4位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
6位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)

ポイント賞 マイヨヴェール
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)               47pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)       43pts
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)           41pts

山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                5pts
2位 ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)              5pts
3位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)                2pts

新人賞 マイヨブラン
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)8h40'04"
2位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)
3位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)

チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード                      26h00'11"
2位 ヴァカンソレイユ・DCM                            +01"
3位 オリカ・グリーンエッジ

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos

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