レースがラスト20kmに差し掛かったころ、フィニッシュラインではオリカ・グリーンエッジのチームバスがアーチに衝突するトラブルが発生。急遽ゴール地点の移動が決定されたが、その数分後にはゴール地点が元の位置に。追い打ちをかけるように多くのビッグネームが落車に巻き込まれるなど、ドタバタ劇で第100回ツールは動き出した。

スタート地点に差し掛かるプロトンスタート地点に差し掛かるプロトン photo:A.S.O.近年のツールとしては珍しく、スプリンター向きの平坦ステージで開幕した第100回大会。コルシカ島の東海岸を北上するほぼフラットな213kmは、スプリンターの独壇場となるはずだった。

スタート前に落車し、膝から流血するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)スタート前に落車し、膝から流血するクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.そんな平坦ステージで、あっさりと逃げは決まる。スタートフラッグが振られたのと同時に加速したジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)に4名が追従すると、メイン集団はすぐにスローダウン。ほぼ0km地点から逃げが始まった。

逃げグループを形成したクザンとラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)、フアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル)、シリル・ルモワンヌ(フランス、ソジャサン)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)は、今大会最初のカテゴリー山岳である4級山岳やスプリントポイントで競り合いながらエスケープ。

4級山岳とスプリントポイントではいずれもゴールスプリントさながらの迫力の勝負が繰り広げられ、エウスカルテルのロバトが初日にマイヨブランアポワルージュを着る栄誉を得る。スプリントポイントはボームが先着。

メイン集団をコントロールしたのはオメガファーマ・クイックステップ、アルゴス・シマノ、ロット・ベリソルの3チームで、タイム差は3分差以内に抑え込まれる。集団牽引の割合は、オメガファーマ80%、アルゴス13%、ロット7%。マイヨヴェールを狙うアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が集団先頭(6番手通過)でスプリントポイントを駆け抜けた。

4級山岳を先頭で通過するフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル)4級山岳を先頭で通過するフアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル) photo:A.S.O.航空隊がトリコロールを空に描く航空隊がトリコロールを空に描く photo:Cor Vos

逃げグループを形成するラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)逃げグループを形成するラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) photo:Cor Vos
ロット・ベリソルやオメガファーマ・クイックステップがメイン集団を牽引ロット・ベリソルやオメガファーマ・クイックステップがメイン集団を牽引 photo:Cor Vos逃げグループのペースは一定ではなく、フレチャの指示でペースダウンとペースアップを繰り返す。逃げがペースを落とせばメイン集団もペースを落とし、タイム差は30秒から4分を行ったり来たり。しかし、平坦ステージで逃げ切る秘策を見つけることが出来ないまま、フレチャらはラスト37kmで早くも吸収された。

逃げ吸収とともに集団先頭は活性化し、横風区間での集団分裂を狙うレディオシャック・レオパードやサクソ・ティンコフがペースアップ。結果的に集団分裂は起こらなかったが、不安定な状態に陥った集団内では落車が多発するようになる。

コルシカ島の東海岸を北上するコルシカ島の東海岸を北上する photo:Cor Vos

中盤にかけて独走するジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)中盤にかけて独走するジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー) photo:A.S.O.チームメイトと一緒に走るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)チームメイトと一緒に走るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:A.S.O.

ラスト20kmを切って発生した落車にイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)らが巻き込まれるラスト20kmを切って発生した落車にイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)らが巻き込まれる photo:Cor Vosラスト15km地点でジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)が落車すると、続いてライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)が落車。ちょうどスプリンターチームがトレインを組み始める頃、ゴール地点ではオリカ・グリーンエッジのチームバスがフィニッシュラインのアーチに衝突して立ち往生するという事態が発生する。

フィニッシュラインのアーチに衝突し、立ち往生したオリカ・グリーンエッジのチームバスフィニッシュラインのアーチに衝突し、立ち往生したオリカ・グリーンエッジのチームバス photo:Cor Vosゴールの約20分前に発生した、チームバスがフィニッシュラインを塞ぐという前代未聞の事態によって、コミッセール(審判団)は急遽ゴール地点を3km手前に移動することを決定。しかし何とかチームバスが移動したため、その数分後にはゴール地点を元の位置に戻すことが決まる。

ラスト10kmを切って発生した大落車ラスト10kmを切って発生した大落車 photo:Cor Vosこの二転三転のゴール移動は、ラジオツール(競技無線)を通してチームに伝えられ、チームが選手に無線で伝達。しかし多くの選手は事態を把握しないままゴールに向かっていた。

ドタバタに追い打ちをかけるように集団前方では落車が発生し、ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)やアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が地面に叩き付けられる。足止めを食らったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)や、メカトラで停止を強いられたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は戦線から離脱した。

落車によって統率が崩れた集団は、ロット・ベリソルやアルゴス・シマノに引かれながら、テクニカルなコースを猛進する。ラスト1200mでアタックを仕掛けたニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)はアルゴス・シマノのトレインによって吸収。

ラスト200mから始まったゴールスプリントで、先に仕掛けたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)に、キッテルが反応する。スピードに乗った状態から伸び続けたキッテルが先着した。

ゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)ゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos
波乱のゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)波乱のゴールスプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos混乱のゴールスプリントで、キッテルがツールのステージ初優勝を飾るとともに、初めてマイヨジョーヌに袖を通した。「夢が叶った。第1ステージで優勝しようと、チームとして冬場からずっと準備していたんだ。終盤は混乱の展開だったけど、チームメイトは落ち着いて仕事を遂行してくれた」と、最高の形でツールをスタートさせたキッテル。チームバスが立ち往生したことや、ゴール地点の位置が二転三転したことは耳に入っていなかったという。

初めてマイヨジョーヌに袖を通すマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)初めてマイヨジョーヌに袖を通すマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Cor Vos混沌としたレース状況を考慮して、コミッセールは198名全員を同タイム扱いにすると発表。落車によって遅れてゴールしたコンタドールやサガンらはタイムロスを被らずに済んだ。「バッドラックだった。何カ所か擦過傷を負ったけど、それらは表面的なもの。左肩と右膝を打ってしまった。怪我が深刻ではないことを願う」とコンタドール。

この日は198名全ての選手がフィニッシュ。最も怪我が深刻なマルティンは病院へと搬送された。幸い骨折は免れたが、脳しんとうと肺挫傷、さらに肘には筋肉に届く5cmの重傷。翌日スタートするか否かは発表されていない。

翌日からのチームカーの順番を一つでも上げるためにスプリントに絡む予定だった新城幸也(ユーロップカー)は、落車の影響でポジションを落としてしまい、99位で初日を終えている。

選手コメントはチーム公式サイトより。

ツール・ド・フランス2013第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)             4h56'52"
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
4位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)
5位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 クリス・ボックマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
99位 新城幸也(日本、ユーロップカー)

敢闘賞
ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)

個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)             4h56'52"
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
4位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)
5位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 クリス・ボックマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)

ポイント賞 マイヨヴェール
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)               45pts
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)           35pts
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)         30pts

山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 フアンホセ・ロバト(スペイン、エウスカルテル)               1pt

新人賞 マイヨブラン
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)             4h56'52"
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
3位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)

チーム総合成績
1位 ヴァカンソレイユ・DCM                         14h50'36"
2位 オリカ・グリーンエッジ
3位 ロット・ベリソル

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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