第96回ジロ・デ・イタリアは、史上初めて隣国フランスのガリビエ峠に立ち寄る。アルプスの厳しい山岳ステージを経験したのち、一行はマリアローザ争いを締めくくるドロミテ山塊へ。ここでは難関山岳がひしめく後半ステージを紹介します。



5月16日(木)第12ステージ ☆
ロンガローネ〜トレヴィーゾ 134km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第12ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第12ステージ・高低図 image:RCS SPORT2日間の山岳ステージを終えると、ジロはフランスに向けて徐々に西進を開始する。前日のゴール地点ヴァイオントダムの悲劇によって大きな被害を受けたロンガローネをスタートし、広大な平野の真ん中にあるトレヴィーゾを目指す第12ステージ。

57km地点には最大勾配18%の4級山岳ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオが登場する。一帯はスプマンテの産地であり、ワインの臭いが立ち込める急勾配の登りを選手たちは行く。さらに地点で最大勾配14%の4級山岳モンテッロをクリア。これらの短くも急勾配な登りに苦しめられるスプリンターも出てくるだろう。地元出身のグアルディーニやモードロ、ヴィヴィアーニはモチヴェーション高くこのステージに挑むはずだ。



5月17日(金)第13ステージ ☆☆
ブッセート〜ケラスコ 254km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第13ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第13ステージ・高低図 image:RCS SPORT広大なロンバルディア平原を東から西へ。ミラノの南方に広がる平原を、ブッセートからケラスコまで駆けるコースの全長は今大会最長の254km。距離だけを見るとワンデークラシックさながらのロングステージ。翌日からマリアローザ争いにおける重要な山岳ステージが連続するため、本命たちは集団内で距離をこなす。

中盤までは完全に真っ平らで、ラスト60kmを切ってから3級山岳を含むアップダウンが数カ所登場する。ラスト6kmで標高差100mの登りをこなしてからケラスコの街に入る。碁盤目状に作られた街の直線路で、残された数少ないチャンスを落としたくないスプリンターたちが先頭に出る。いよいよアルプスが近づいて来た。



5月18日(土)第14ステージ ☆☆☆☆
チェルヴェレ〜バルドネッキア 168km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第14ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第14ステージ・高低図 image:RCS SPORTトリノの南に位置するチェルヴェレから、ジロはアルプス山岳へとは言っていく。前半はほぼ平坦だが、ピネローロを過ぎると渓谷沿いに徐々に高度を上げて行く。トリノ五輪で会場として使用された標高2035mのスキーリゾート地セストリエーレを越えると、谷の底まで高速ダウンヒル。そこからバルドネッキアのジャフローに向けた登りが始まる。

アルプスの山々を貫いてフランスに通じるフレジュストンネルの横をかすめ、選手たちは1級山岳ジャフローを目指す。この頂上ゴールの登坂距離は7.3kmで平均勾配は9%。最大勾配が14%に達する急勾配の登りであり、ゴール前はコンスタントに勾配が10%を刻む。道は細く、ラスト500mの平均勾配は11.6%。一人一人ゴールにやってくるようなサバイバル山岳決戦になるだろう。



5月19日(日)第15ステージ ☆☆☆☆☆
チェザーナ・トリネーゼ〜コル・ドゥ・ガリビエ 149km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第15ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第15ステージ・高低図 image:RCS SPORT2回目の休息日を前に、ジロは大きな山場を迎える。ツール・ド・フランスでお馴染みのガリビエ峠に史上初めてジロがゴールする。

登坂距離25kmの長い長い1級山岳モンセニスを登ってフランスに入国すると、ジロは更にアルプスの奥深くに歩を進める。そしてゴールまで35kmを切ったところで、ツールでは定番の2級山岳テレグラフ峠と1級山岳ガリビエ峠のセットが姿を現す。登坂距離11.8km・平均勾配7.2%のテレグラフ峠を越えてから、短い下りを挟んで登坂距離7.8km・平均勾配8.4%のガリビエ峠がスタート。2011年にAシュレクが独走勝利した南側ではなく、北側から標高2642mの峠にアプローチする。まだ山開きが済んでいないゴール地点は、深い雪に囲まれているに違いない。



5月20日(月)休息日



5月21日(火)第16ステージ ☆☆
ヴァロワール〜イヴレア 238km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第16ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第16ステージ・高低図 image:RCS SPORTガリビエ峠の麓の街ヴァロワールでの休息日を終え、選手たちはイタリアへの帰路に着く。来た道を戻り、1級山岳モンセニスを登り返してイタリアへ。ピエモンテ州の平野部に出ると、トリノの北をかすめてイヴレアへ。一旦ゴール地点を通過してから、3級山岳アンドラーテを含む36kmの周回コースをぐるっと1周する。

ゴールの18km手前の3級山岳は、登坂距離6.3km・平均勾配8%という本格的な登り。スプリンターにとっては厄介な存在であり、登りで飛び出した数名による逃げ切りが決まる可能性が高い。開幕から2週間以上経ってもなお元気な「登れるスプリンター」であれば勝負に絡んでくるだろう。この日からジロは再び東へ。1週間前に走ったドロミテの一帯へと戻って行く。



5月22日(水)第17ステージ ☆
カラヴァッジオ〜ヴィチェンツァ 214km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第17ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第17ステージ・高低図 image:RCS SPORT広大な平野を作り出したポー川と並行しながら第17ステージは東に進む。イタリアを代表する工業地帯ならびに農業地帯を駆け抜け、カンパニョーロ社が本社を構えるヴィチェンツァにゴールする。

難易度1つ星の平坦ステージだが、ゴール前にはお決まりのカテゴリー山岳が登場。この日は難易度の低い4級山岳クロサーラがゴールの16km手前にポツンと置かれている。前日の3級山岳アンドラーテよりも難易度が低いため、大集団でのゴールスプリントに持ち込まれる可能性が高いが、下りでアタックを仕掛けてくる選手も出てくるだろう。



5月23日(木)第18ステージ ☆☆☆☆
モーリ〜ポルサ 20.6km(個人TT) →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第18ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第18ステージ・高低図 image:RCS SPORT全長20.6km、ほぼ登りっぱなしのクロノ・スカラータ(山岳個人タイムトライアル)。ガルダ湖の東側に位置する標高1205mの集落に向かって、標高差1000m以上を駆け上がる。

コース全体の平均勾配は5%で、中盤に短い平坦&下り区間を除くと概ね7%弱の山道が続く。コーナーがいくつもあるが、勾配はそこまできつくない。勾配変化も少ないため、ピュアクライマーだけではなくTTスペシャリストにもチャンスがあると言える。

ステージ優勝予想タイムは45分前後・平均スピードは27.0km/h。ここまでマリアローザを争ってきた選手たちの間に大きなタイム差は付かないと見られている。とにかくこの個人TTはドロミテ決戦の前菜、つまり足慣らし。マリアローザ争いは翌日からの2連続ドロミテ山岳ステージで決着すると言っていい。



5月24日(金)第19ステージ ☆☆☆☆☆
ポンテ・ディ・レーニョ〜ヴァル・マルテッロ 139km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第19ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第19ステージ・高低図 image:RCS SPORTコース全長は最短クラスの139km。しかしそこには3つの難関山岳が詰め込まれている。標高2618mの1級山岳ガヴィア峠(登坂距離16.5km・平均勾配8%)、そして今大会のチーマコッピ(最標高地点)である標高2758mのステルヴィオ峠(登坂距離21.7km・平均勾配6.9%)を立て続けにクリア。大会主催者はこのジロを代表する2つの峠では飽き足らず、さらにその先に標高2059mの1級山岳頂上ゴールを置いた。

ゴールが置かれた1級山岳ヴァル・マルテッロは登坂距離22.4km。7%ほどの勾配を刻みながら高度を上げていく。ゴール手前は勾配がころころと変化し、ラスト1kmからは14%ほどの急勾配が続く。もちろんステージの難易度は5つ星。この日を終えた時点で総合上位の面子は数名に絞られているはずだ。



5月25日(土)第20ステージ ☆☆☆☆☆
シランドロ〜トレチーメ・ディ・ラヴァレード 203km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第20ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第20ステージ・高低図 image:RCS SPORTいくら「バランスの取れたコース」とは言っても、ジロらしい過酷な山岳ステージは健在。今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)である第20ステージには、ドロミテを代表する峠が合計5つも組み込まれている。雄大なドロミテ山塊の景色も見どころの一つだ。

選手たちは2級山岳コスタルンガ峠、2級山岳サンペッレグリーノ峠、1級山岳ジャウ峠、2級山岳トレクローチ峠を休む間もなくクリア。そこから大会最後の1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレード頂上ゴールに向かう。天に突き出た三本の岩山に向かうこの登りは、ラスト3kmからの平均勾配が12.4%という厳しさ。岩山に見下ろされた標高2304mの駐車場で、マリアローザ争いは決着の時を迎える。



5月26日(日)第21ステージ ☆
リエーゼ・ピオ・デーチモ〜ブレシア 197km →コースマップ


ジロ・デ・イタリア2013第21ステージ・高低図ジロ・デ・イタリア2013第21ステージ・高低図 image:RCS SPORT北イタリアの中心都市ミラノでの個人タイムトライアルが定番になりつつあったが、2013年の第96回大会はブレシアでフィナーレを迎える。リエーゼ・ピオ・デーチモから西に向かい、人口19万人の都市を巡る4.2kmの周回コースを7周してゴール。前日のトレチーメ・ディ・ラヴァレードでマリアローザを獲得したチームを先頭にして、3週間の闘いを終えんとする選手たちがブレシアに凱旋する。最後を締めくくるのは集団によるゴールスプリントだが、一体どれだけのスプリンターが厳しい山岳ステージを乗り越えることが出来たのだろう。

ナポリでの開幕から3週間。第96代ジロ覇者が表彰台でマリアローザに袖を通す。




text:Kei Tsuji in Napoli, Italy