4月19日に行なわれたジロ・デル・トレンティーノ(UCI2.HC)で総合4位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がアタック。急勾配のセガ・ディ・アラを先頭で登りきったニーバリがステージ優勝と逆転総合優勝を同時に手にした。

ジロ・デル・トレンティーノ2013第4ステージジロ・デル・トレンティーノ2013第4ステージ image:Giro del Trentino4日間・全5ステージで行なわれたジロ・デル・トレンティーノを締めくくるのは、セガ・ディ・アラの頂上ゴール。アディジェ渓谷から11.5kmかけて標高差1069mを一気に駆け上がる。登りの平均勾配は9.2%で、コンスタントに勾配が10%を超える区間もあり、最大勾配は20%に達する。

アシストとしての走りが光った新城幸也(日本、ユーロップカー)アシストとしての走りが光った新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Riccardo Scanferlaこの難関頂上ゴールを前に、総合リーダージャージを着るのはマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)。しかし3分19秒差でカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)、3分48秒差でブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)、そして3分57秒差でヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)と言った面々が続いており、ブエの首位の座が安泰とは言えない。

チームカーにメカトラを伝えるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)チームカーにメカトラを伝えるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Giro del Trentinoこの日、レースを積極的にコントロールしたのは総合4位のニーバリ擁するアスタナだった。レース序盤から逃げたアメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)やシリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)らを最後のセガ・ディ・アラで捕らえると、アスタナが更にペースを上げる。

アスタナのパオロ・ティラロンゴ(イタリア)やタネル・カンゲルト(エストニア)、ファビオ・アル(イタリア)がハイペースを作る集団からは、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)やイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)、そして総合リーダーのブエが相次いで脱落。集団は見る見るうちに人数を減らして行く。

すると、まだ本格的なバトルが始まっていないラスト9kmで総合3位ウィギンズがメカトラでストップ。駆けつけたチームカーからスペアバイクを受け取ったウィギンズは、単独で勢い良くメイン集団を追走。数十秒のギャップを埋める走りで集団に追いつきかけたが、そのタイミングでニーバリがアタックした。

ニーバリのアタックには、マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)だけが反応。カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らは出遅れてしまう。

先頭ではしばらく2人での走行が続いたが、やがてニーバリの独走がスタート。ステージ優勝と総合優勝目指して、シチリア生まれのオールラウンダーが快走した。

メカトラ後、単独追走を余儀なくされたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)メカトラ後、単独追走を余儀なくされたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla急勾配の登りを走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)急勾配の登りを走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla

先行するマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)先行するマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferla

独走に持ち込むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)独走に持ち込むヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferla結局ニーバリはサンタンブロジオを8秒、エヴァンスを1分02秒、ウィギンズを1分39秒引き離してゴール。ステージ優勝を飾るとともに、4分42秒遅れでゴールしたブエから総合リーダーの座を奪うことに成功した。

サンタンブロジオを振り切ってゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)サンタンブロジオを振り切ってゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferlaティレーノ〜アドリアティコに続いて、イタリアにおける重要なステージレースを制したニーバリ。2週間後に迫るジロ・デ・イタリアに向けて好調ぶりをアピールした。「ジロ開幕までまだ時間があるけど、今日のような厳しい登りで勝つことは自信に繋がるよ。でもウィギンズは調子が良さそうだし、エヴァンスやバッソの調子も上がっている。自分はと言うと、強力なチームにサポートされて、ティレーノ〜アドリアティコと同様にミスを一つも冒さなかった」。

総合表彰台 2度目の大会連覇を果たしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)総合表彰台 2度目の大会連覇を果たしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferlaニーバリはレース終了後すぐにベルギーに移動。日曜日に開催されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに出場する。「今日は力を最大限使ってしまったので、日曜日はどうなるか分からない。ライバルたちも強いし、様子を見て走るよ」と謙遜するが、優勝候補の筆頭であることに間違いは無い。

アスタナにとってもう一つの収穫は、22歳のアルが新人賞ジャージを獲得したことだろう。サルデーニャ出身のアルは、屈強なオールラウンダーに混ざって総合4位でフィニッシュ。ニーバリも「ファビオはまるでチャンピオンのような走りを見せた」と讃えている。

一方、メカトラによってチャンスを失ったのがスカイプロサイクリングのウィギンズ。マルクス・ユーンクヴィスト監督は「ブラッドに不運が襲いかかった。あのタイミングでのトラブルは為す術が無い。ブラッドはメイン集団に追いつきかけたが、その直前にニーバリがアタック。追走に力を使ってしまったが、走り自体は素晴らしかった。ジロに向けて好材料が揃ったと言える」と、前向きに結果を捉える。

メカトラによってタイム差がついたが、山岳ステージでのニーバリとウィギンズの力はほぼ互角。2人の闘いは5月のジロ・デ・イタリアまで持ち越し。ここにエヴァンスやバッソらが絡んでくるだろう。

レース終盤までピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)をアシストした新城幸也は、ステージ87位でフィニッシュ。日曜日のリエージュに出場するためユキヤはベルギーに移動する。ステージ40位でゴールした西薗良太(チャンピオンシステム)は、最終的にトップと34分39秒差の総合57位でレースを終えた。

コメントはレース公式サイトならびにチームスカイ公式リリースより。


ジロ・デル・トレンティーノ2013第4ステージ結果
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              4h21'48"
2位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)          +08"
3位 プリミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)            +44"
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)          +1'02"
6位 ステファノ・ロカテッリ(イタリア、バルディーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)+1'10"
7位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)+1'35"
8位 マルコス・ガルシア(スペイン、カハルーラル)                 +1'37"
9位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)          +1'39"
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                +2'20"

22位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)              +4'42"
40位 西薗良太(チャンピオンシステム)                      +9'33"
87位 新城幸也(ユーロップカー)                         +21'37"

個人総合成績
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             17h49'11"
2位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)          +21"
3位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)                +55"
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +1'16"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)          +1'40"
6位 プリミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)           +1'45"
7位 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)+2'15"
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)          +2'18"
9位 ステファノ・ロカテッリ(イタリア、バルディーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)+3'05"
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                 +3'22"

山岳賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

新人賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla