大会最大の山場を迎えたツアー・ダウンアンダー。難所とされるウィランガ・ヒルの上りで生き残ったアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)が集団スプリントを制して優勝。最終日を前に、過去11年間フル出場のデーヴィスがハットトリックで初総合優勝を確実なものにした。

集団コントロールに力を尽くすクイックステップ集団コントロールに力を尽くすクイックステップ photo:マーク・ガンター/ツアー・ダウンアンダー選手たちが「間違いなく最難関ステージ」と口を揃えるツアー・ダウンアンダー第5ステージ。スナッパーポイントからウィランガまでの今大会最長148kmのコースは、平坦周回コースと山岳周回コースの組み合わせで、後者には名所ウィランガ・ヒルの上りが設定されている。平均勾配7.5%が3.5kmに渡って続く本格的な上りだ。

ウィランガ・ヒルはこれまでの大会で何度も登場しているが、今回はここを二度上ることになる。二度目の頂上を越えるとゴールまで20km。総合上位につけるスプリンターたちはこの上りで生き残ることができるのか?大会最大の勝負どころであり、当然のことながら沿道は観客で埋め尽くされた。

この日もジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSA)のアタックでレースは動き始める。これにアナス・ルンド(デンマーク、サクソバンク)やセルゲイ・クリモフ(ロシア、カチューシャ)ら7名が合流し、序盤から8名の逃げグループが形成。しかし総合で39秒遅れのイマノル・エルビーティ(スペイン、ケースデパーニュ)らが逃げに乗っていたため、クイックステップはメイン集団のスピードを弱めなかった。

ウィランガ・ヒルで逃げ続けるセルゲイ・クリモフ(ロシア、カチューシャ)とジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSA)ウィランガ・ヒルで逃げ続けるセルゲイ・クリモフ(ロシア、カチューシャ)とジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSA) photo:マーク・ガンター/ツアー・ダウンアンダーやがて最初のウィランガ・ヒルの上りが始まると、先頭グループはボブリッジとクリモフの2名に絞られ、大会を通して果敢な走りを見せるボブリッジがそのまま先頭で頂上を通過。メイン集団もこの一度目の上りで縮小したが、総合リーダージャージを着るデーヴィスは何とかこれに食らいついた。

二度目の上りに差し掛かると、逃げ続けていたボブリッジらは吸収される。続いてメイン集団からアタックしたのはマシュー・ロイド(オーストラリア、サイレンス・ロット)とダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)の二人。この逃げを追撃したのは、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)率いる集団だ。

ロイドとモンクティエは集団を振り切ってウィランガ登頂を成功させたが、続く下り区間でメイン集団に吸収される。総合2位のグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)が山岳で大きく遅れる一方で、リーダージャージのデーヴィスは遅れを最小限にとどめ、チームメイトの力を借りてメイン集団に残った。

二度の上りでスプリンターが集団に残ったならば、集団スプリントに持ち込まれるのが定石だ。オグレディで総合トップ奪取を狙うチームサクソバンクが集団を牽引してゴールに向かったが、そこでもデーヴィスの勢いは止まらなかった。好位置でスプリントを開始したデーヴィスは他の追随を許さず、喜びを爆発させながらゴール。何度も拳を突き上げた。

3度目のスプリント勝利を飾ったアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)3度目のスプリント勝利を飾ったアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ) photo:マーク・ガンター/ツアー・ダウンアンダー

遅れてゴールしたブラウンに代わって、オグレディが総合2位にジャンプアップ。しかし総合トップのデーヴィスとのタイム差は25秒あり、翌日の最終ステージでオグレディが全てのボーナスタイム16秒を獲得したとしても届かない。デーヴィスはステージ3勝目を達成するとともに、実質的にダウンアンダー総合優勝を決定づけた。この日2位に入ったホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)が総合3位に浮上している。

難関ステージで遅れないどころか、勝利してみせたデーヴィスは「戦略はパーフェクトだった。チームはまさにアンビリーバブル(信じられないほど素晴らしい)。僕が風を受けて走ったのはラスト100mだけ。チームメイトに感謝の気持ちでいっぱいだ。これほど嬉しい気持ちに包まれるのは、キャリアの中で初めて」と、喜びに溢れたコメントを残している。

首位奪回ならずのオグレディは「最後のスプリント勝負は残念な結果だった。いいスプリントに持ち込めたのに、前方が塞がれてしまった」と悔しさを見せながらも、総合2位に入ったことについて「1ヶ月のトレーニングでこのレベルまで走れたことは喜ぶべきこと」と語っている。初代ダウンアンダー覇者としての存在感を見せつけた。

表彰台で天を仰ぐアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)表彰台で天を仰ぐアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ) photo:マーク・ガンター/ツアー・ダウンアンダー

ツアー・ダウンアンダー2009第5ステージ結果
1位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)3h28'33"
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
3位 マルティン・エルミガー(スイス、アージェードゥーゼル)
4位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)
5位 ジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)
6位 ローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)
7位 ウェズリー・ザルツバーガー(オーストラリア、フランセーズデジュー)
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン)
9位 マシュー・ロイド(オーストラリア、サイレンス・ロット)
10位 ジュリアン・エルファレ(フランス、コフィディス)

個人総合成績
1位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)17h44'59"
2位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)+25"
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)+30"
4位 マルティン・エルミガー(スイス、アージェードゥーゼル)
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア)+38"
6位 マシュー・ウィルソン(オーストラリア、UniSA)+39"
7位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ランプレ)+40"
8位 ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、フランセーズデジュー)
9位 ミカエル・シュレル(フランス、フランセーズデジュー)
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン)

スプリント賞
アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)

山岳賞
アンドニ・ラフエンテ(スペイン、エウスカルテル)

新人賞(U25)
ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)

チーム総合成績
フランセーズデジュー

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