グリーンジャージを意味するマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)はスプリンター最高の栄誉。今年もツールには、マイヨヴェールを狙って世界屈指のスプリンターたちが集結する。カヴェンディッシュ(チームコロンビアHTC)やオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)らがゴール前で激しいバトルを繰り広げるだろう。

5月ジロでステージ3勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)5月ジロでステージ3勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Kei Tsuji今年のツールには10の平坦ステージが用意されており、その中でスプリンター向きと見られているのは8ステージ。ピレネー突入前に3回(第2・3・5ステージ)、ピレネーからアルプスに向かう中盤に4回(第10・11・12・14ステージ)、そして最終日パリの合計8回だ。

現在最も勢いのあるスプリンター、それはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビアHTC)だと言い切れる。一躍トップスプリンターに伸し上がったこのマン島出身の23歳は、昨年ツールでステージ4勝(北京五輪を見据えて途中リタイア)の怒濤の活躍。爆発力を秘めた圧倒的なスプリントで、ミラノ〜サンレモを含め、数々のタイトルを手にしてきた。

昨年マイヨヴェールを獲得したオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)昨年マイヨヴェールを獲得したオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク) photo:www.tourderomandie.ch今年もカヴ(カヴェンディッシュ)はジロでステージ3勝、前哨戦ツール・ド・スイスで2勝を飾るなど絶好調。強靭なチーム力に支えられ、“狙った獲物は逃がさない”敵無しの強さを見せている。ツールでも少なくとも数ステージで優勝を飾るだろう。

しかしどれだけステージ優勝を量産しても、ピレネーとアルプスで失速してリタイアすればマイヨヴェール獲得は無い。イギリス人史上初のマイヨヴェール獲得を狙うカヴは、山岳にめっぽう弱く、山岳をグルペットで乗り切れるかどうかがカギになる。

初日の個人TTでも期待されるトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)初日の個人TTでも期待されるトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ) photo:Cor Vosカヴ最大のライバルとして注目を集めていたトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)は、直前のベルギー選手権でナショナルチャンピオンジャージを獲得。自身2度目のコカイン陽性によりレース主催者から歓迎されていなかったが、仲裁機関が開幕前日にボーネンにGOサインを出した。

モナコでのチームプレゼンテーションには、チームメイトのアラン・デーヴィス(オーストラリア)が出席していたが、ボーネン出場決定に伴いデーヴィスは帰宅。ボーネンがスタートラインに並ぶ。(7月4日訂正)

ジロを欠場したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)がツールで復活を目指すジロを欠場したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)がツールで復活を目指す photo:Cor Vos昨年マイヨヴェールを獲得したのはオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)だ。軽快なスプリントが持ち味のこの3度の世界チャンピオンは、中級の山岳なら難なくこなしてしまう。ライバルスプリンターが山岳で苦しむ間にポイントを量産できれば、マイヨヴェール争いは混沌とするだろう。

2005年にノルウェー人として初のマイヨヴェールを獲得したトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)は、独走力も兼ね備えたスプリンター。初日のモナコ個人TTでも好成績が期待されており、序盤からマイヨヴェール争いに絡んで来るだろう。チームメイトのハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ)も注目の存在だ。

かつてのスプリンターチームの旗頭ミルラムを率いるのはゲラルド・チオレック(ドイツ)。昨年はチームメイトのカヴの影に隠れて目立たなかったが、グランツールで集団スプリントを制する実力は充分にある。

2007年ツールでステージ2勝を飾ったダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)もマイヨヴェール候補の一角だが、そのコンディションにはムラがある。今シーズンは故障も影響してまだ波に乗りきっていない。日を追うごとにコンディションを上げてくると予想される。

マイヨヴェール候補としては一歩劣るが、ジロで何度もスプリント上位に絡んだタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)や、マキュアンとステーグマンを欠くカチューシャを牽引するダニーロ・ナポリターノ(イタリア)とフィリッポ・ポッツァート(イタリア)にも注目したい。

2008年ツールのポイント賞ラインキング(チーム名は当時の所属チーム)
1位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)270pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、クレディアグリコル)220pts
3位 エリック・ツァベル(ドイツ、チームミルラム)217pts
4位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)181pts
5位 キム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)155pts
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)136pts
7位 ロバート・ハンター(南アフリカ、バルロワールド)131pts
8位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、サイレンス・ロット)129pts
9位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン)119pts
10位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、チームコロンビア)116pts

歴代マイヨヴェール受賞者
2007年 トム・ボーネン(ベルギー)
2006年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2005年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2004年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年 バーデン・クック(オーストラリア)
2002年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2000年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1999年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1998年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1997年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1996年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1993年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1992年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1991年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1990年 オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ)