アジアに名だたる難関山岳、ゲンティンハイランドでコロンビア生まれのクライマーが輝いた。ピーター・ウェーニングとの一騎打ちを制したジュリアン・アレドンドがリーダージャージを獲得し、総合争いで優位に立っている。

一人逃げるトラヴィス・マイヤー(オリカ・グリーンエッジ)。最大で9分のリードを得た一人逃げるトラヴィス・マイヤー(オリカ・グリーンエッジ)。最大で9分のリードを得た photo:Sonoko.Tanaka新城幸也(ユーロップカー)と西谷泰治(愛三工業レーシング)の逃げから一夜明けたツール・ド・ランカウイ第5ステージ。その舞台となったのはシャーアラムをスタートし、ゲンティンハイランドへと至る110.3kmだ。

距離こそ短いものの、ゴールが設定されているのは標高1699mのゲンティンハイランド。幾多の名勝負が繰り広げられてきたこの地で、今年は2名による激しい戦いが火花を散らした。

この日スタートサインをしたのは132名。厚い雲に日差しが遮られる気候の中、午前10時にスタートが切られた。

集団をコントロールするユーロップカー。前から6番目に新城幸也の姿が集団をコントロールするユーロップカー。前から6番目に新城幸也の姿が photo:Sonoko.Tanaka

エースのため先頭を牽くフォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ)エースのため先頭を牽くフォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanaka約20kmに渡るレース序盤のアタック合戦の末、エスケープを決めたのはトラヴィス・マイヤー(オリカ・グリーンエッジ)一人。単騎果敢にペダルを踏み込むマイヤーは、2010年のナショナルTTチャンピオンの実力を如何無く発揮し、最大で9分以上のタイム差を稼ぎだすことに成功する。

霧の中でアタックするジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ)霧の中でアタックするジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ) photo:Sonoko.Tanakaしかしがマイヤーが築いたリードも、ピエール・ローラン(フランス)をエースに据えるユーロップカーが中心となってメイン集団のコントロールを図ったことで徐々に短縮。リーダージャージのワン・メイイン (中国)擁するハンシャン・サイクリングが後半ここに加わると、マイヤーとの距離は残り44kmの第3スプリントポイントを境に縮まっていった。

ゲンティンハイランドを行くピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)とジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)ゲンティンハイランドを行くピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)とジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanakaゲンティンハイランドの上りが始まるのは残り40km地点。メイン集団は高速で展開したことにより人数を減らし、その数はおよそ50名ほど。このペースアップの中でマイヤーは飲み込まれ、チームメイトのいない状況下、残り20kmから始まる急勾配区間でワンが脱落。

「僕より強いクライマーがいたことを認めなければならない。けれど全力を出し切れたことに対して満足しているよ」とゴール後に語るワンは、千切れてもなお集団の30秒後ろで展開し、リーダーとしての意地を見せる。

一方で、ワンが遅れたことでリーダージャージ獲得のチャンスが訪れたメイン集団では、各チームが心理戦を展開。長期に渡るタイ合宿を経てコンディションの上がっている新城幸也もここに位置取り、ローランのためにペースを作っていく。

新城らが仕事を終えて離脱すると、残り5kmで集団の人数は16人。ガーミン・シャープとチームNIPPO・デローザのみが2名を揃える状況の中、ここからフォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ)がエース、アレドンドのためのアタックを開始。

この動きが封じられると、次いでジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ)も飛び出しを図るが失敗。このペースアップを受け、後ろで粘っていたワンは遂に後方へと沈むことに。

単独ゴールに飛び込むジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)単独ゴールに飛び込むジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanaka

脱落した後も粘りを見せたワン・メイイン (中国、ハンシャンサイクリング)。総合5位に転落脱落した後も粘りを見せたワン・メイイン (中国、ハンシャンサイクリング)。総合5位に転落 photo:Sonoko.Tanaka霧が立ち込めるコンディションの中、メイン集団から抜け出しに成功したのはピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)とアレドンド。ランデブーの後、ここからアレドンドがアタックを仕掛け独走に持ち込むと、そのまま雨降るゴールへと飛び込んだ。

一昨日のキャメロンハイランドで稼いだタイム差をもって、狙い澄ましたようにリーダージャージの獲得に成功したアレドンドは、「プロになってまだ1年ほどだけど、今日は最良の日となった」とコメント。「バリアーニと僕はメイインが脱落したのを受けてアタックしたんだ。リードを持っていることに落ち着いている。残りのステージでのチームメイトのレースメイクに期待しているよ」と加えた。

この日の日本人最高位は、ゲンティンハイランドでローランのアシストを務めた新城幸也の26位。次いで愛三工業レーシングでは伊藤雅和の45位が最高位となっている。

ツール・ド・ランカウイ2013第5ステージステージ表彰ツール・ド・ランカウイ2013第5ステージステージ表彰 photo:Sonoko.Tanakaリーダージャージを手にしたジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)リーダージャージを手にしたジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko.Tanaka


翌第6ステージは、メンタカブからクアンタンへと至る217km。4級山岳を4つ含むコースで、チームNIPPO・デローザのチーム力が問われる。



ツール・ド・ランカウイ2013第5ステージ結果
1位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) 3h11′41″
2位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)   +26″
3位 ビクトル・ニノ (コロンビア、RTSレーシングチーム) +44″
4位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ・サムスン) +1′05″
5位 ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・シャープ) +1′28″
6位 アミール・コラドザグ (イラン、タブリーズ・ペトロケミカル チーム) +1′40″
7位 ツガブ・グルメイ (エチオピア、MTNキュベカ・サムスン)  +1′43″
8位 フォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ) +1′47″
9位 ジョン・エブセン (デンマーク、シナジー・バク サイクリング)  +1′50″
10位 ネイサン・ハース (オーストラリア、ガーミン・シャープ) +1′58″
26位 新城幸也(ユーロップカー)
45位 伊藤雅和 (愛三工業レーシング) +10分53秒
55位 中島康晴 (愛三工業レーシング) +13分11秒
59位 石橋学 (チームNIPPO・デローザ) +15分06秒
69位 徳田鍛造 (チームNIPPO・デローザ) +18分04秒
72位 西谷泰治 (愛三工業レーシング) +18分28秒
83位 福島晋一 (チームNIPPO・デローザ) +22分54秒
110位 佐野淳哉 (ヴィーニファンティーニ) +27分07秒
116位 盛一大 (愛三工業レーシング) +28分39秒
117位 綾部勇成 (愛三工業レーシング)
118位 福田真平 (愛三工業レーシング)

個人総合成績
1位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ) 17h43′20″
2位 ピーター・ウェーニング (オランダ、オリカ・グリーンエッジ) +1′22″
3位 セルヒオ・パルディージャ (スペイン、MTNキュベカ・サムスン) +2′10″
4位 ピーター・ステティーナ (アメリカ、ガーミン・シャープ) +2′33″
5位 ワン・メイイン (中国、ハンシャンサイクリング) +2′40″
6位 ツガブ・グルメイ (エチオピア、MTNキュベカ・サムスン) +2′45″
7位 アミール・コラドザグ (イラン、タブリーズ・ペトロケミカルチーム)
8位 フォルッナート・バリアーニ (イタリア、チームNIPPO・デローザ) +2′49″
9位 ネイサン・ハース (オーストラリア、ガーミン・シャープ) +2′54″
10位 ジョン・エブセン (デンマーク、シナジー・バク サイクリング) +2′55″

ポイント賞
アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)

アジアンライダー総合成績
ワン・メイイン(中国、ハンシャンサイクリング)

山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、チームNIPPO・デローザ)

チーム総合成績
MTNキュベカ・サムスン


text:So.Isobe
photo:Sonoko.Tanaka

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