「バーティカルコンプライアンス」をメインテーマとするドマーネシリーズは、最高峰モデルの6、そしてこのトレックワールドにて発表されたミッドレンジモデル、5/4シリーズをインプレッション。コンセプトはそのままに、買い求めやすいプライスを実現したバリューモデル、その実力とは?

Domane6 高い剛性と乗り心地の両立 Madoneに迫るレーシング性能

2013に向け一気にラインナップを増やしたドマーネシリーズをグレードごとに乗り比べた2013に向け一気にラインナップを増やしたドマーネシリーズをグレードごとに乗り比べた 石畳をはじめとするクラシックレースで勝利するために生まれたドマーネ6シリーズの走りは、まさにピュアレーサーのそれだった。

テストバイクはコンポーネントに機械式のアルテグラを装備した6.2。ホイールはボントレガーのロープロアルミ、RACE Light。もちろん衝撃吸収材が装備される専用カーボンハンドルを装備する市販車仕様だ。

私は始めてドマーネに乗ったが、まず驚かされたのはその高い基本性能だ。「衝撃吸収性に長けたバイク」ということでもっさりとした先入観を持っていたのだが、実際はそれを完璧に覆すレーシングバイクである。全体的な性能が高い次元でミックスされていて、踏み込んだ際にはバイクが素直に前に進んでくれる。

特にヘッドからダウンチューブ、BBにかけてのボトムラインが強固で、ペダリングパワーを正確にスピードへとつなげてくれる。今回試乗したバイクの中では一番の剛性感があり、マドンの軽快感とは少し違うどっしりとした安定感があった。とはいえ硬すぎることはなく、フレーム全体でのバネ感はマドンと性格を同じくするポイントだ。

そして秀逸なのが、先端が後方へとオフセットしたフロントフォークだ。どんな路面状況や乗り方をしてもベタッと路面に食いつき衝撃をいなしてくれ、ライダーに安心感を与えてくれる。

2013に向け一気にラインナップを揃えたドマーネ トレックワールド会場にも多数の試乗車が用意された2013に向け一気にラインナップを揃えたドマーネ トレックワールド会場にも多数の試乗車が用意された そして一番の目玉である独立したシートチューブだが、フォークとの相乗効果で路面からの細かい衝撃を消し去ってくれる。もちろん大きな振動は伝えるが、衝撃の角を消し去ってくれるのでストレスに感じない。石畳のレースではさぞかし武器になるだろうが、その素晴らしいショック吸収性能はホビーライダーでも十二分に享受することはできる。思わずあえて段差に突っ込んでみたくなるほどだ。

アルミホイールでのインプレッションだったが、カーボンのディープリムホイールをアッセンブルすれば、そのまま平坦の高速レースで使える。どんな路面でも対応してくれるという安心感は、集団走行などでのストレスを軽減してくれるだろう。(磯部 聡)

Domane5 6シリーズに肉薄するハイスペックを体感

トップモデルである6シリーズと同じ機構やテクノロジーを数多く搭載し、カーボン素材をOCLV500とすることでコストダウンを実現した5シリーズ。セカンドグレードながら、その実力は完璧に1級品。6シリーズに勝るとも劣らない性能を備えていた。

テストバイクは、アルテグラDi2コンポとボントレガーRACE LITEホイールをアッセンブルした5.9。ハンドル周りはボントレガーのアルミ製に統一される。6シリーズはハンドルバーの衝撃吸収ゲルが上ハンドル部分とドロップ部分にセットされるが、5シリーズに関しては上ハンドル部分のみとなる。

フラッグシップモデルに肉薄する性能を実現したドマーネ5シリーズフラッグシップモデルに肉薄する性能を実現したドマーネ5シリーズ
第一印象は「驚いた」というものだった。それは何故かというと、6シリーズと比較してほとんど性能差を感じなかったからだ。どっしりと構えたダウンチューブ周りの剛性感や、そこから生み出されるダンシングでの安定感なども極めて印象が近いのだ。

試乗車にはやや柔らかめのサドルが装着されていたこともあってか、isospeedテクノロジーによる独立したシートチューブは、路面からの細かな衝撃を見事に消し去ってくれる。荒れたポイントを面白いように走ることができるため、あえてMTB用の試乗コースに入ってしまった程だ。
ダートではもちろん舗装路と同じようにはいかないが、十分走れてしまう。河川敷のサイクリングロードでは往々にして石敷き区間があるが、ドマーネならばそこで感じるストレスは少ないはずだ。

では逆に、6シリーズとの性能差はどこだろう。注意して走ってわかるレベルだが、恐らく6シリーズよりもカーボンチューブの肉厚が少し厚い。そのためペダルを強く踏み込んだ際の反応に若干のタメを感じた。しかしその差異は非常に少ないので、デメリットとして捉える必要はないほどだ。

しかし逆に、肉厚による重量増があることで高速域での直進安定性は増し、高速コーナーではよりベタッと地面に張り付くかのようだ。

総評価として言うと、5シリーズは6シリーズに迫るレーシング性能を持ちながら、少しだけ安定感をプラスしたバイクと言ったところだろうか。それでいて5.2グレードの完成車価格で380,000円というプライスを実現している、非常に価値の高いモデルだ。(磯部 聡)

ドマーネ5 シリーズに乗る。上位モデル「6」との差を感じ分けるのが難しいほどの完成度だドマーネ5 シリーズに乗る。上位モデル「6」との差を感じ分けるのが難しいほどの完成度だ 私は5月にベルギーはフランドル地方でベールを脱いだドマーネのデビュー時から関わってきているので少しばかり思い入れのあるバイクだ。発表当時のスペシャルコンテンツで、そのテクノロジーはあますところなく紹介している。
カンチェラーラの不運(骨折)のせいで華を添えることはできなかったが、今年もっとも注目したバイクのひとつだ。
私はフランドルの石畳でドマーネ6をテストライドしているので、今回は6に少し乗って記憶を戻してから5にがっつり乗り込んでみた。

綺麗な路面の舗装路で試すドマーネ5の走りは軽快だ。がっしりしたBB周りの剛性でパワーを受け止めつつ、ダッシュ、スプリントに余裕を持って応えてくれる。そして荒れた路面では非常に滑らかに走る。
シートチューブのisospeedテクノロジーやバックオフセットのフォークの機構的な特徴は、走っているときにはとくに感じることができない。局所でなく、バイク全体で仕事をするのがこれらのテクノロジーのすごいところだ。
ドマーネ専用の「エンデュランスジオメトリー」はヘッドの高さで言えばフレームサイズに応じて異なるが、H2よりも若干長めの設定になっている。このジオメトリーがハンドルを普段からやや高めにセットする自分にとって、とてもフィットするもので気に入っている。

ドマーネ5を6と乗り比べて感じたのは、その差がとても少ないということだ。試乗車で用意されたドマーネ6はメカ式のデュラエース、ドマーネ5はDi2のアルテグラ。5にホイールやパーツなどもちょっとグレード高めのものがセレクトされていることもその差を縮めることに成功している。
フレーム素材は600と500で違うものの、ブラインドテストで感じ分けるのはけっこう難しいと感じるほど。もちろん予算に余裕があれば6がいいだろう。しかしこの5がドマーネのベストバリューモデルだと感じる。
(綾野 真)

Domane4 高い安定感が持ち味のロングライドバイク ハイコストパフォーマンスを実現

ドマーネの顔であるisospeedテクノロジーなどはもちろんそのままに、OCLV400カーボンや効果的なパーツチョイスでリーズナブルな価格を実現したドマーネカーボンシリーズのエントリーモデル、4シリーズ。

テストに使用したのは機械式のアルテグラ、ホイールにボントレガーRaceをアッセンブルした4.5。6シリーズと同様の上1-1/8"、下側1.5インチのE2ヘッドチューブやBB90システムを搭載する。

ドマーネ4 ダッシュやスプリントを試すが、走りの良さは上位モデルと共通だドマーネ4 ダッシュやスプリントを試すが、走りの良さは上位モデルと共通だ まず一見して、上位モデルとの差異はケーブルが外出しになっていることが挙げられる。しかしデュオトラップやチェーンの落下を防ぐ内蔵チェーンキーパーなどは受け継がれ、高級感のあるルックスとしている。なお4シリーズ完成車にセットされるハンドルバーには、衝撃吸収用のゲルは装備されない。

走行性能はドマーネの上位モデルの性格はそのままに、性能の各項目をより穏やかにした印象だ。高い負荷でペダルを踏み続けても脚に跳ね返りは柔らかく、コーナーでのヒラヒラ加減も5/6シリーズよりはマイルドで、よりロングライド向きの性格を感じることができた。

ではレーシング性能が無くなってしまったのかというと、そんなことは無い。変わらずダウンチューブ周りの剛性感はたっぷりと残されているし、20~30km/hほどの中速域での加速感は6/5シリーズとほぼ同じで、ペダリングに対して小気味よく反応してくれた。ゼロ発進やスプリント性能については、ホイールを交換すれば引き上げることができるだろう。素直な乗り味なので、パーツ交換における期待をして良さそうだ。

路面からの突き上げに対しても6/5シリーズと同じように小さな衝撃は吸収し、大きな衝撃の角を丸めてくれる。上級モデルの持つ「しなやかさ」に関しては少しレベルは落ちるが、それでも不快に感じないレベルだ。素手でインプレッションを行なってもしびれるような感覚は無かった。

これだけの性能を持ちながら、完成車価格で20万円台を実現しているのには大きな驚きを持ったのが事実。週末のロングライドを中心に、たまにはレースにも出てみたい、というユーザーにオススメの一台だ。
(磯部 聡)

ドマーネ4はコストパフォーマンスに優れたモデルと言えそうだドマーネ4はコストパフォーマンスに優れたモデルと言えそうだ
私は4シリーズとしてドマーネ4.5をチョイスし、5に続いて乗り込んでみた。ケーブル内蔵やシートマストが省かれ、ミックスコンポによってコストダウンが図られているのはマドンの4シリーズと共通。ダウングレードにおけるトレックの手法には一貫性があるので、車種がグレードごとに多くあってもコンセプトを理解するのが早い。
マドン4のインプレッションでも感じたとおり、パーツ構成のディテールを見るほどに、こと細かくコストダウンが図られていることに感心。それも性能を維持しながらの低価格化の工夫であることにトレックの良心を感じる。そして実現されるバーゲンプライス。

ドマーネ4は6、5に比べて性格はおとなしくなっていくものの、走りの良さに陰りは見られない。スポーツバイク入門者に安心して勧められる性能があり、ジオメトリー的にはマドンよりもリラックスできるポジションなので、その先にロードレース出場を目指さない人であればドマーネがオススメできる。「まずはスポーツライドの世界に入りたい」「ツーリング的な走りがメイン」という人には良いチョイスだ。

予算があって能力が伸びるのが早い人には少し頑張って5を薦めたい。先にレースが見えている人なら、マドンの選択肢も視野に入れつつ選んで欲しいと思う。(綾野 真)
提供:トレック・ジャパン レポート:シクロワイアード編集部