CONTENTS

ジャパンカップを沸かせたベン・ヒーリーに聞く

ジャパンカップ最終盤、古賀志林道でアタックするベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Makoto AYANO

ジャパンカップ終盤、クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)と2人で抜け出し、一騎打ちで優勝を争ったベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)は、間違いなく今年の宇都宮を盛り上げた一人だった。

来日スケジュールの狂いによって疲労の色は拭えなかったものの、それでも前日のクリテリウムから積極的に逃げを作り、本番でもシモンズと真っ向勝負。そのクリテリウムの開催直前、インターテックの計らいによって宿泊先のホテルでヒーリーに話を聞くことができた。

2025年のツール・ド・フランスでは区間優勝とマイヨジョーヌを着用し、アフリカで開催されたロード世界選手権では銅メダル。今年はアップダウンのあるシーズンを過ごしながらも、大一番であるツール・ド・フランスではリチャル・カラパス(エクアドル)のステージ優勝とマイヨアポワ(山岳賞)獲得のために徹底的なスーパーアシスト役をこなした。

宿泊先のホテルで実施したインタビュー。クリテリウム開始の数時間前のことだった photo:So Isobe

そんなヒーリーに話を聞くのは2025年末にスペイン・ジローナで開かれたSuperSix EVOの発表会に続いて2度目のことだった。その際は「新しいEvoは反応性が上がったし、ハンドル位置も下がったのでとても気に入っている」と話してくれたのを良く覚えている。腰を据えて話を聞くのは今回が初めてだった。

アップダウンの多かった2026年

インタビューの最初、まず今季を振り返ってもらう。ヒーリーは少し苦笑いを浮かべた。

「正直言ってアップダウンのあるシーズンだった。冬のトレーニングはとてもうまく進んだのに、前半戦の最大の目標だったアルデンヌクラシックをバスクでの落車で棒に振ってしまった。バスク自体は完走したんだけど、アルデンヌに向けてコンディションを整えることができなかった」と振り返る。

2026年のツール・ド・フランス。体調が万全ではない状態で臨み、カラパスのアシストとしてレースを作った photo:A.S.O.

目標をツール・ド・フランスに切り替え、準備は再び順調に進んだ。クリテリウム・デュ・ドーフィネでも調子は良かったが、その最終盤で体調を崩してしまう。39.5度の熱が4、5日続き、ドーフィネを挟んで高地トレーニングと暑熱順化を行う予定だったものの、十分にメニューをこなせなかった。ツールでは第1週、第2週と調子が上がりきらず、記録的な暑さも影響した。「ツールでは、100%の状態でなければ違いを作ることはできない。ツール前にできなかった準備の帳尻を、ツールの中で合わせることはできなかった」。

今季ヒーリーが特に力を入れたのが暑さ対策。今年はマヨルカの合宿では気温がすでに40度を超えていたため特別な対策を行うことはなかったものの、結果は思ったほどではなかった。

「暑熱順化のセッションをきちんとトレーニングに組み込んだほうが効果があるとわかった。ただ暑い中で走っても適応は進まないし、トレーニングの質も落ちてしまう。それを学んだよ」。そのやり方は選手ごとに違うそう。「たとえばアレックス・ボーダンは暑さに強いから、僕とは違う方法でツールに向かう」とのこと。そして臨んだ今年のツールでは、調子が上がらない中でチームメイトのリチャル・カラパスのアシストに回った。

「もちろん自分の勝利が欲しい。でも今年のツールでは、自分が勝てるレベルになかった。リチャルが僕より強かったのは明らかだったし、長い登りは彼のほうが向いている。絶好調のときの彼は世界トップクラスだからね。チームのために彼をサポートすることに、何のためらいもなかった。立場が逆だったら、彼も同じようにしてくれたと思う。本当にうまくいったよ」

逃げに乗ることの難しさ

2026年ツールでは中盤以降、積極的に逃げに乗り続けた。しかしヒーリーをもってしても、逃げグループに入ることすら難しくなっているという photo:A.S.O.

ここ数年でヒーリーの名前はすっかり知られるようになった。以前よりマークされるようになったのでは?と聞くと、彼は首を横に振った。

「ツールではどんな選手の動きでもマークされる。今年のツールでも逃げができるまでに長い時間がかかった。誰もが逃げに乗りたいからね。確かに僕は逃げが有利な脚質だけど、それでも逃げに乗るのは難しい。もう簡単についていけるスピードじゃないし、ツール以外のレースでも全体的に逃げに乗るのは難しくなっている」

クリテリウムでもアタックしてレースを活性化させた。まるまる1周を逃げ、持ち前の積極性をアピール photo:Makoto AYANO

ヒーリーは毎年、コーチとテーマを決めてシーズンに臨んでいる。昨年のテーマは「精神面の向上」と「より戦術的なレース運び」。これが2025年ツールの区間優勝に繋がり、「自転車競技では見過ごされがちな」レース分析と自省(セルフリフレクション)によって選手として成長することになったそうだ。

具体的に言えばレースで起こりうる状況をあらかじめ想定しておくのだという。「僕はレース中に冷静に考えるのが得意じゃない。でも取るべきシナリオをいくつか用意しておけば、事前にバーチャルで体験しておける。それがその場の判断を助けてくれるんだ」

スプリントも常に課題のひとつで、ジムワークとバイクでのスプリント練習に取り組んでいる。26歳からでもスプリントは伸ばせるのか、と聞くと、「わからないけど、努力はしているよ。伸びたらそのとき教えるよ」と笑っていた。

MTBからロードへ、そしてアイルランドへ

2025年の世界選手権では3位。最高の走りができたという photo:UCI

ヒーリーの競技人生はトラックから始まった。ロードやクリテリウムも走る中で特に力を発揮したのがMTBで、イギリスのオリンピックアカデミーに加わったが、やがてそこから外れることになる。イングランドで生まれ育ちながらイギリス代表ではなくアイルランド代表を選んだのは、そのことが大きかった。

「キャリアの大きなターニングポイントだったのは確かだ。大きなレースで勝っていたのに、イギリスの自転車協会は僕に見向きもしなかった。だからアイルランドを選んだ。アイルランドのパスポートも持っていたし、ルーツはアイルランドにある。いまは胸を張ってアイルランド代表として走っているよ。何より祖父が本当に嬉しそうなんだ」

ただ、それがキャリアで一番大きな出来事だったとは思っていないという。

「重要な転機はほかにもあったけれど、その一つなのは確かだ。あのままアカデミーにいたらたぶんMTBキャリアを続けていたと思う。あのころは上のレベルへ行くチャンスを探していて、そこに現れたのがロードだった。いまはロードが一番楽しんで取り組める競技なんだ」

「身体にピタリとフィットする」キャノンデールのSuperSix EVO

会話の内容は自身のことからバイクのことへ。自身の意見が取り入れられたSuperSix EVOについて聞いた photo:So Isobe

そんなヒーリーの走りを支えるのが、キャノンデールのSuperSix EVOだ。ジローナで聞きそびれたことも含めて改めて尋ねてみる。前作からの一番の違いは何だったのか?

「最も大きな違いはジオメトリー変更によるフレームサイズの変化。表現するのが難しいんだけど、このバイクは手袋のように僕の身体にぴったり合う。僕は身体が小さくて、旧モデルではサイズ展開が51の次は54だった。ちょうどその間にいたから、妥協している感覚があったんだ。新モデルでは50の次が52になって、僕には52が完璧に合う。いまはとても満足しているし、心地よく乗れているよ」

ヒーリーの身長は175cm。「手を前に伸ばして低いポジションを取るのに加えて、脚が短いんだ。だから最適なサイズを見つけるのが難しい」という。

深いエアロポジションで逃げるヒーリー。スタックハイトが下がったことは大歓迎だという photo:Yuichiro Hosoda

ジローナでキャノンデールのロード製品責任者、ウィル・グリーソン氏に話を聞いた際にも、先代モデルでは、ヒーリーはやや小さい51サイズにロングステムを付けて乗っていたと聞いた。サイズ展開の見直しはヒーリーやカラパスなど小柄な選手が多いEFのためでもあり、スタックハイトを10mm下げたのも、ヒーリーからの要望が大きかったという。ちなみにジローナで筆者(176cm)が乗ったのも同じ52サイズ。中間サイズを求める日本人ユーザーにとってもこの細分化はありがたい変更だ(SuperSix EVOの製品ページはこちら)。

ヒーリーの要望から生まれたレースバイク

鮮やかなチームカラーに彩られたSuperSix EVO LAB71 photo:So Isobe

ヒーリーが新型に初めて乗ったのは、昨年のメディア発表会の数日前のことだった。そこからトレーニングキャンプで使い込み、身体に慣らしてから実戦投入を行った。

「チームメイト全員が変更点に満足していた。特に新しいハンドルバー『SystemBar Road』による進化には目を見張ったよ。前作がすでにレベルの高いバイクだったから、それをさらに良くするのは難しかったと思う。でもキャノンデールはそれをやり遂げたんだ」

グリーソン氏によれば、ヒーリーは常に「自分の走りに合ったバイクが欲しい」とリクエストしていたという。アタックで差をつけて逃げ切る走りには、鋭い加速と空力性能が欠かせない。もっと反応性の高いバイクを、という要望に応えるため、開発陣はフォークとヘッドチューブのレイアップを見直してフロント周りの剛性を高め、同時に軽量化を進めた。

「スタックハイトが下がって、よりレーシングバイクらしくなった。それが旧モデルとの最大の違いだね。狭いハンドル幅も選びやすくなったし、少しフレアさせることもできる。妥協のない、真のレースバイク。それこそが僕らが求めていたものなんだ」

銅メダルを獲得した昨年の世界選手権では、塗装をできる限り薄くした先代EVOにプロトタイプの「SystemBar Road」ハンドルバーをセットして「できる限りベストなバイク」で臨んだ。

ヒーリーが駆るSuperSix EVO LAB71。フロントシングル仕様で組まれている photo:So Isobe

開発チームは、超軽量塗装を施した先代SuperSix EVOに、プロトタイプの「SystemBar Road」ハンドルやチタンボルトを組み込んだスペシャルバイクを用意した。このときのノウハウが、超軽量仕様のSLパッケージを含む新型に生かされている。現在のヒーリーのバイクは、52サイズのLAB71(最高峰)モデルに60mmハイトのヴィジョンMETRON 60 RSを組み合わせて6.9kgだ。

今年のジャパンカップで、フロントシングルの56Tチェーンリングを使っていたのはヒーリーだけだった。

「フロントシングルは好きだね。このXPLRは未来を先取りしたグループセットだと思う。トラブルを最小限にできるし、空力性能も高い。それにフロントシングルならメカニックも喜ぶだろうからね」と笑う。リアカセットは10-46Tで、ロー側のギア比は1.217。フロント54T-リア34Tと比較してもより軽く、フロントダブルの一般的な39T-リア34Tの1.147よりもやや重たい。
キャノンデールに何か要望したことはあるか、と聞くと、ヒーリーは少し考えてからこう答えた。

「キャノンデールは長い間ライダーの意見を聞いて、それを製品に反映させてきた。だから、いまさら伝えることがないくらいだ。EFに入ったときからの付き合いだけど、文句のつけようがないブランドなんだ」

キャノンデールの開発陣にとって、新型EVOの最大の挑戦は「EVOがEVOであるまま、正統進化を遂げること」だった。選手の要望を取り入れながらもEVOらしさは変えない。ヒーリーの言葉からもその積み重ねへの信頼が伺える。

2027年ツールは「カオスを望む」

表彰台で笑顔を見せたヒーリー。2027年ツールは生まれ育ったイングランドを走る photo:Makoto AYANO

最後に来季について聞いた。来年のツールはスコットランドで開幕し、イングランドとウェールズを走る。生まれ育った国でのグランデパールに特別な思いはあるかと聞くと、ヒーリーの関心は意外にも別のところにあった。

「イギリス開幕というより、まず発表されたコースがクレイジーだね。緊張感の高いレースになると思う。これまでのツールもコースは厳しかったけど、結果的に集団が落ち着く展開が多かった。イギリスのステージは僕向きのカオスな展開になってほしいね」

もちろんヒーリーは来年こそ調子を整えてツールを目指すが、その前に今年果たせなかったアルデンヌクラシックでの好成績を目指す。

疲れを抱えながらも積極的な走りでクリテリウムを沸かし、翌日のロードレースで終盤まで攻め続け、シモンズと最後まで競り合ったヒーリー。自分の要望が詰まった新しいSuperSix EVOとともに、来年はどんな走りを見せてくれるのか楽しみにしたい。

キャノンデールのバイクとマヴィックホイールの同時購入でお得になるキャンペーンを実施中

キャノンデールとマヴィック。長くプロチームでタッグを組んできた組み合わせをお得に購入できるチャンスだ (c)インターテック

キャノンデールでは現在、ロードバイクをマヴィックホイールとの同時購入で割引となるキャンペーンを実施中。通常合計価格より最大で130,500円(税込)もお得に購入できる一大チャンスだ。

対象となるのはアルミモデルのCAAD14と、今回取り上げたロードレースモデルSuperSix EVOの計10モデル(完成車・フレームセット)。ホイールは KSYRIUM SL Disc、COSMIC SL 45 Disc、COSMIC SLR 45 Disc、COMETE 50 の4種から選ぶことができる。このお得なチャンスをお見逃しなく。

Cannondale × Mavic SPECIAL BUNDLEの詳細
提供:インターテック | 制作:シクロワイアード編集部