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ヴィットリアの新型ハイエンドタイヤ、CORSA PRO特集の最終回。テクノロジー詳細と選手インプレに続いて紹介するのは、EFエデュケーション・イージーポストのメカニック、南野求さんへのインタビュー。メカ目線からの進化、選手からの評価、そして、チームでタイヤがどのように運用されているのかを深く聞いた。

EFエデュケーション・イージーポストの南野メカに聞く

「世界で一番CORSA PROを触っている日本人」。ヴィットリアがサポートするEFエデュケーション・イージーポストのメカニックを務め、熱戦が繰り広げられたジロ・デ・イタリアに帯同した南野求さん以上に、メカ目線のCORSA PROの印象を聞くにふさわしい人はいないだろう。

EFエデュケーション・イージーポストのメカニックを務める南野求さん。ジロ・デ・イタリアにて photo:Miwa Arashiro

ロゴ無しのプロトタイプ段階からCORSA PROに触れ、トップ選手たちから意見交換を吸い上げ、タイヤが製品版になるまでのプロセスに協力。「製品版は品質がグッと良くなった。選手たちからはコーナリングが速くなったという意見が多く、パンクなどのトラブルも減っていると感じます」と、南野さんは客観的にCORSA PROを評価する。

南野さんは、キナンレーシングチームとデルコ・NIPPOワンプロヴァンスを経て、2021年からEFエデュケーション・イージーポストで活躍する気鋭のメカニック。チームの機材拠点(サービスコース)があるジローナに住まい、レース帯同やその準備に、と多忙な毎日を送っている。

EFエデュケーション・イージーポストのサービスコース。南野さんほか、メカニックが忙しく働く作業拠点だ photo:So Isobe

筆者は2月初頭に南野メカが務めるサービスコースを訪ねる機会を得たが、そこで見たのは100台以上あるバイク、そして数えきれないほどのホイールに装着されていたロゴ無しのCORSA PROのプロトモデルたち。通常レース用の28Cを中心に、これから迎えるクラシックレース用の30Cの姿も無数。既に知っていた情報だったものの、とっくにチューブラーはチューブレスに置き換わり、さらにリスク回避のためにAir-Linerを通常使用している事実に、時代が変わったことを実感させられたのだった。

以下に、オンラインで南野メカと繋ぎ、CORSA PROについて聞いたインタビューを紹介する。トップ選手たちの評価は?南野メカが見た・触った印象は?そして、世界の最前線でワールドツアーチームはどのようなタイヤセットアップをしているのか。じっくり読み解き、CORSA PROを選ぶ際の参考にしてほしい。

「何の心配なく運用できることは、プロチームにとって最大のメリット」

EFエデュケーション・イージーポストのサービスコースで準備されていたCORSA PRO。この時点で製品版のロゴはない photo:So Isobe

こちらは30Cだろうか?クラシックレース用に準備されたものだと思われる photo:So Isobe
装着を待つ無数のCORSA PRO(プロトタイプ)たち photo:So Isobe


CW:2月にチーム拠点にお邪魔した際、プロトタイプが多数装備されているのを見ました。その際「メーカーにフィードバックを送っています」と話してもらったのを覚えていますが、実際にどのようなやりとりを交わしたのでしょう?選手の声を伝えたりしたのですか?

そうですね。プロトタイプが渡されていた段階でチームとしてもしっかりテストし、選手らからのフィードバックをヴィットリアには伝えていました。ただ、正直なところプロトの段階で非常に出来が良く、テスト側としても、どういうシチュエーションでパンクすることが多かったとか、選手それぞれの好みを把握したりとか、確認事項的な側面が強かったです。

CW:製品版となるまでの過程で進化は感じましたか?

ありましたね。製品版になってグッと質が上がりました。乗らずとも触ったら分かるレベルです。具体的にいえば、コンパウンドは更にしなやかになっている。トレッドサイドも非常に緻密に考えられていることはメカニック目線でも伝わってきます。もちろん、開発者ではないので、何をどう配合したのか、なんてことは知り得ないのですが(笑)。トラブル数も減っていると感じます。

雨のジロ第8ステージで逃げ切ったベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

CW:選手からはCORSA PROに対してどのような評価・声が出ていますか?

特に多いのが、コーナーが良くなった・速くなったという話ですね。逆に不満点は一切ありません。選手にしても、私たちメカニックにしても心配することが無い。気を揉む要素が一つ少ない、ストレスフリーで走れるというのは、我々プロチームにとって一番のメリットです。

そして、メカニックからするとチューブレスの取り付け作業が簡単になった印象があります。ビード周辺に保護層が新しく加わったおかげで、かなり作業性が良くなりました。ビードも上がりやすいですし、エアも抜けづらい。以前であれば、一日置いてエアリークしている個体にはシーラントを足したりしていましたが、そういう例も少なくなっていて、メカニックとしては楽させてもらっています。

ジロ第10ステージで優勝し、全グランツールステージ優勝を達成したマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

CW:それは一般ユーザー目線で見ても大きなメリットですね。

性能はもちろん運用面でも安心だと思いますよ。従来からあるチューブレスへの心配や不安はかなり払拭されていると思います。

28Cが基本。大人数ゆえの効率的な機材運用

CW:CORSA PROは24Cから32C(チューブレス)までタイヤ幅がラインナップされています。チームはどのサイズを使うのでしょうか。

メインユースは28C。選手の体重別にグループを分け、効率的な空気圧調整を行なっているという photo:CorVos

26はもう全く使わず、基本的に28で統一しています。作業の効率化を図るために空気圧も選手の体重別に3グループに分けて管理しているんです。例えば、(リチャル)カラパスはグループBだから5.3気圧、今日は雨でチャベスはグループAだから減らして4.4気圧、とシステマチックに。トラブル時の原因特定にも影響が出ますし、今日は雨だから減らそう、とメカニック個々が判断することはありません。

CW:チームはここ最近でチューブラーからチューブレスへの移行を果たしましたね。当初、選手からの反応はどのようなものでしたか?

特にクライマーからは軽いチューブラーが良いという意見が多かったのですが、「チームの決定だから従うよ」と(笑)。でも実際は重量によるデメリットはそこまで大きくなく、むしろ転がりや空力など、トータルで考えればメリットが大きかった。今では全員が納得した上でチューブレスタイヤを運用しています。

「Air-Linerは選手だけじゃなく、一般ユーザーにも大きなメリット」

CW:サービスコースではAir-Linerをほぼ全選手が使っていると聞き驚きました。ロードレース界全体でも新しい試みだと思いますが、チームはどのように評価し、運用しているのですか?

作業待ちのAir-Liner。EFエデュケーション・イージーポストではほぼ全選手がレースユースしている

やはりパンク時のリスク回避のための選択です。特に最近はトラブルでレースの行方が決まることも多いですし、リスク回避に重点を置く選手がかなり多いと感じています。特にクラシックレースだと、パヴェ(石畳)区間でパンクしてもAir-Linerがあれば出口で待っているスタッフのところまで自走できる。その違いは大きいです。落車のリスクも低減できますしね。

実際にベルギーレースで「パンクしたけど、このおかげで帰ってこれたよ!」ということもありました。普段からいい機材を使っている選手らからしても新鮮な体験なんでしょうね。

CW:ホイール外周部が重くなるというデメリットはありますが、それを上回るメリットがあるということですね。

実際には30gくらいあり、シーラントと組み合わせるため、走りの軽さだけで見るなら無い方が良いのは事実です。とはいえ、今のチームバイク(キャノンデール SuperSix EVO)が、非常に軽くてUCI規定の6.8kgを下回るんです。もちろん、回転部分という要素もありますが、選手のネガティブな反応というのは少ないですね。

正直に言えば、最初は皆がレースで使うことに懐疑的でした。でも使うたびに「あって良かった」という場面を経験していますし、今は装着した方がいいよね、という意見になっています。作業性は少し悪くなりますが、いざという時の安心感は段違い。一般の方にこそ使って頂きたい製品だと感じています。

「間違い無いタイヤ。それがCORSA PRO」

「CORSA PROを選べば間違いない、と感じています」 photo:Miwa Arashiro

CW:率直に、南野さんは新しいCORSA PROをどう評価しますか?

前作よりも更に良いタイヤです。タイヤの選択肢も多くなって迷うこともあると思いますが、迷ったらCORSA PROを選べば間違いない。絶対に満足できるタイヤだと思いますよ。

このタイヤを触って、そろそろロードタイヤも性能的な限界が近いんじゃないのかな、と感じしまうほどでした(笑)。これ以上、何をどうすれば良くなるんだろう、というのがちょっと想像しづらい領域に入ってきましたね。

ジロ・デ・イタリアを祝う、限定50セットのピンクエディション

ジロ最終日に用意されたピンクサイドのCORSA PROをセットする南野メカ photo:VTJ

ローマを駆け巡るジロ・デ・イタリア最終日にプロトンを彩ったのがCORSA PROのピンクエディションだ。3週間の戦いを締めくくるべく作られたタイヤはEFエデュケーション・イージーポストとアルペシン・ドゥクーニンク、アスタナ・カザフスタンのバイクにセットされ、今季限りの現役引退を表明しているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が勝利。過酷で華やかなジロ閉幕を祝うと共にファンの注目を集めた。

さらに総合成績ではCORSA PROを履くプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が近年のジロ史に残る僅差の大逆転勝利を挙げ、第106代総合勝者に輝いた。ログリッチにとっては初のジロ総合優勝であり、3連覇したブエルタ・ア・エスパーニャを合わせれば自身4度目のグランツール総合優勝。CORSA PROも大きな優勝記録を獲得したこととなった。

ピンクのCORSA PROを履きジロ最終日を制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos

ジロ・デ・イタリア2023を制したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

マリアローザカラーのCORSA PROは世界限定500セット、そのうち国内では50セットが販売されることが決定。ジロ最終日で使われたものと同じチューブレスレディの28Cのみとなり、ユニバーサル・チューブレスタイヤ・シーラント(150ml)とオリジナルTシャツを同梱した特別パッケージとして30,000円(税込)で発売される。少量限定のためVTJの直販サイトにて抽選販売が行われる。抽選応募期間は5月28日18時から6月4日23時45分までで、抽選発表は6月5日17時以降に当選者にメールで通知される。

ヴィットリア Corsa PRO 限定ジロピンクカラースペシャルセット

サイズ700x28c(28-622)
タイプチューブレスレディ
重量295g
内容タイヤ x 2本、ユニバーサルチューブレスタイヤ・シーラント150ml x 1本、コルサプロ・オリジナルTシャツ x 1枚
価格30,000円(税込)

販売スケジュール

抽選販売応募期間2023年5月28日18:00~2023年6月4日23:45
抽選発表は2023年6月5日17:00以降、当選者にメールで通知
販売サイトhttps://vittoria.base.shop/


提供:VTJ text:So Isobe