三船雅彦さんとサポーターズクラブの仲間たちがしまなみ海道を自転車で巡った。毎年ルートを変えながら走っているこの企画。今回はゆめしま海道を走る一日に帯同取材した。広島を拠点とする自動車メーカーのマツダとのコラボのもと、縦横無尽にライドを楽しんだ一日の様子を紹介します。

尾道駅前に集合した三船雅彦さん&サポーターズクラブの皆さん尾道駅前に集合した三船雅彦さん&サポーターズクラブの皆さん photo:Makoto AYANO
かつてベルギーを拠点にプロロードレーサーとして走り、ロンド・ファン・フラーンデレンなどのビッグレースを走ってきた日本のレジェンドレーサーの一人、三船雅彦さん。そんな彼が主宰する「サポーターズクラブ」では、毎年のようにクラブ員たちと春のしまなみ海道ツーリングに出かけている。

三船さんとサポーターズクラブのしまなみ海道ライドは今年で8年目。日本各地、いろいろな目的地を選んで企画してきたが、なかでも毎年必ず訪れているのが、この「サイクリングの聖地」として知られるしまなみエリアだという。

サポートカーのマツダCX-5に荷物を積み込むサポートカーのマツダCX-5に荷物を積み込む photo:Makoto AYANO
3月14日、尾道駅前に14人のサイクリストたちが集まった。この日のルートはおもに弓削島・佐島・生名島をめぐる「ゆめしま海道」ライド。有人7島、無人18島から構成される上島町は、しまなみ海道のメインルートから外れることで訪れる観光客はまだ少なく、とくにローカル色が強いことで知られる。その理由は橋でつながっていないこと。しかし1週間後には岩城島に新たな橋が開通することで、一躍注目されるエリアだ。

尾道の坂の上の風景に和む。千光寺には新たに展望台もオープンした尾道の坂の上の風景に和む。千光寺には新たに展望台もオープンした photo:Makoto AYANO
「道との遭遇」をテーマに、マイナールートを好む三船さんツアーでは、メジャー化する前にゆめしま海道を走っておこうと考えた。三船さんが導いてくれるのは、推奨ルートのブルーラインを外れて寄り道を楽しむ自転車小旅行だ。道=「未知」との遭遇とかけて、見知らぬルートを行くことをあえて楽しむのだ。

地元の方々と一緒に向島への渡船フェリーに乗り込む地元の方々と一緒に向島への渡船フェリーに乗り込む photo:Makoto AYANO
ゆめしま海道ライドの予定ルート図ゆめしま海道ライドの予定ルート図 「しまなみ海道も毎年同じところを走るわけじゃなく、むしろ普通のサイクリストたちが行かないような道を選んで繋いで走っています。サイクリング推奨ルートになっているブルーラインからそれて、島の隅々まで走ります。このライドのリピーターさんはとくに多いんですが、毎年参加する人でも違ったルートを走るので飽きないと思います。リピート参加を続けると、既走ルートを示すSTRAVAのヒートマップは赤い線で埋め尽くされます(笑)」と三船さん。

ルートは直前になって知らされる。実は筆者は5年前のしまなみライドに参加したことがあり、今回のルートにはそのとき走った裏道もいくつか含まれており、しかし回り方は違っているから再訪が楽しみだった。ソロでのしまなみ海道サイクリングは昨年1月に走っていたので、メインルートから外れることが嬉しい(笑)。

会員が100人を超えるという三船さんのサポーターズクラブ。初めて顔あわせのメンバーも居るため、尾道駅前にて自己紹介の挨拶を済ませると、さっそく出発。

向島の桟橋に到着。わずか4分ほどの船旅だった向島の桟橋に到着。わずか4分ほどの船旅だった 向島の渡船フェリー乗り場を降りて走り出す向島の渡船フェリー乗り場を降りて走り出す

まずは対岸の向島(むかいしま)への渡船フェリー乗り場へ。船が生活の足となっているため、可愛い渡船は日曜でも学校の部活動に向かう学生さんや買いものに向かう人などが利用する。料金はひとり100円+自転車が10円で、110円。甲板に乗り込んでから集金のおじさんに手渡しだ。ちなみに4分ほどで対岸に到着する。

グループをリードする三船雅彦さん。華麗な走りが光るグループをリードする三船雅彦さん。華麗な走りが光る photo:Makoto AYANO
今回のツーリングには、広島に拠点を置く自動車メーカーであるマツダのCX-5が2台、サポートカーとして随行する。一台は年明けに発表された新型の特別仕様車「CX-5フィールドジャーニー」で、もう一台は三船さんが普段から愛用しているCX-5だ。マツダからは2人の自転車好きスタッフも参加。マツダにはサイクリング好きな社員が多く、自転車同好会やトライアスロン部などもある。サイクリングとクルマの開発の関係は次頁でも紹介するとして、「サイクリングの楽しさを伝え、拡げていきたい」という三船さんの想いと、「サイクリストの皆さんに広島としまなみ海道の素晴らしさ、マツダ車の走る歓びを体感して欲しい」というマツダの想いが一致したことで実現したこのコラボレーションも、すでに8年目を数える。

マツダのCX-5フィールドジャーニー(左)と三船さんのCX-5(奥)の2台のクルマがサポートカーとして随行するマツダのCX-5フィールドジャーニー(左)と三船さんのCX-5(奥)の2台のクルマがサポートカーとして随行する photo:Makoto AYANO
2台のクルマはいざというときのサポートカー。そして荷物なども預かってくれる。向島への船は小さすぎてクルマは積めないため、橋を使って渡り、因島で合流することに。基本は追走してくれるため、クルマに興味があって希望すればいつでも試乗させてもらえるという。とくに新型CX-5フィールドジャーニーはアウトドアテイスト溢れる特別仕様車で、皆の注目度が高かった。カッコいいクルマにサポートされて走ると気分はプロレーサーだ。

向島と因島を結ぶ因島大橋が見えてきた向島と因島を結ぶ因島大橋が見えてきた photo:Makoto AYANO
向島に上陸し、少し肌寒い天気のなか快調に走り出した13人の仲間たち。走り方を重視するメンバーたちの走りはさすがの美しさだ。遅れたり、疲れてサポートカーに乗るという人は居なさそうだ。

因島大橋を背に海岸線を走る因島大橋を背に海岸線を走る photo:Makoto AYANO
ひときわ大きな建造物である因島大橋では、橋の付け根の真下に回り込むルートが引かれていた。橋脚の真下を通過しながら見上げる巨大建造物の迫力に圧倒される。そして因島大橋では自転車の通行帯は車道の下の層に設けられる、いわば屋根付き道路だ。

因島大橋は車道部分の下部に自転車道路がつけられている因島大橋は車道部分の下部に自転車道路がつけられている photo:Makoto AYANO
因島大橋の直下を仰ぎ見ながらくぐるように走る因島大橋の直下を仰ぎ見ながらくぐるように走る photo:Makoto AYANO
橋のたもとからの斜面をよじ登ると、そこには「はっさく大福」で有名な和菓子屋さん「はっさく屋」がある。はっさく大福には八朔の果肉の房がまるごと入っており、甘酸っぱい味が楽しめる。果物そのものを使用しているので賞味期限が短く、その場で楽しむのがいちばんという贅沢な味だ。いちご大福、まるごとみかん大福、豆だらけ大福など、どれも美味しい。因島では外せない補給食だ。

はっさく大福は八朔のみずみずしい甘酸っぱい味が美味しいはっさく大福は八朔のみずみずしい甘酸っぱい味が美味しい photo:Makoto AYANO
サポートカーのマツダCX-5を率いて走れば、気分はプロレーサーだサポートカーのマツダCX-5を率いて走れば、気分はプロレーサーだ photo:Makoto AYANO
因島の土生(はぶ)港からはフェリーに乗って生名島(いきなじま)へと渡る。マツダのサポートカーも積めるので、ここは同行できる。生名島へ渡ると、一気にのどかな雰囲気に。ここからの上島町、ゆめしま海道エリアの島々には信号がひとつも無いのだ。

ブルーラインには含まれない島の中央部の峠を越えるブルーラインには含まれない島の中央部の峠を越える photo:Makoto AYANO生名島へと渡る土生の港を目指す生名島へと渡る土生の港を目指す photo:Makoto AYANO


生名島には立石港と生名港の2つの港がある。連絡フェリーは立石港に到着し、ほぼ5分の3周するのどかな外周路を走った。道と海の距離が近く、クルマがほとんど走っていないので快適そのもの。おしゃべりしながら走れるサイクリングはやっぱり楽しい。生名島はマラソンでも有名な「スポーツの島」であるのがうなずける。

フェリーで生名島へと渡った。ここからは「ゆめしま海道」だフェリーで生名島へと渡った。ここからは「ゆめしま海道」だ photo:Makoto AYANO上島町の4つの島をモチーフにした立石港の可愛い石のオブジェ上島町の4つの島をモチーフにした立石港の可愛い石のオブジェ photo:Makoto AYANO

クルマの居ない道で島の裏側へと進んでいくクルマの居ない道で島の裏側へと進んでいく photo:Makoto AYANO
生名橋を渡り、佐島へ生名橋を渡り、佐島へ photo:Makoto AYANO
ハープのような斜張橋である生名橋を渡り、佐島へ。外周路が途切れている佐島は島の外周を一周することができない。多くの観光客にとって通りすぎるだけの島であるため、奥へ進むほどにとびきりの離島感が味わえる。「その先」へと通じていないので、ほとんどクルマは通らないのだ。

佐島の西岸ののどかな海岸線を走る佐島の西岸ののどかな海岸線を走る photo:Makoto AYANO
地図で道が行き止まりになっている方へ方へと進む三船さん。道は狭くなり、アップダウンもある心細くなるほどの細道へ。サポートカーもぎりぎり通れるほどで、ルーフキャリアに積んだ自転車が道脇の木立に触れて音を立てる。

長磯の浜は通称「かくれビーチ」と呼ばれるシークレットスポット長磯の浜は通称「かくれビーチ」と呼ばれるシークレットスポット photo:Makoto AYANO
ブルーラインがUターンした珍しいスポットブルーラインがUターンした珍しいスポット photo:Makoto AYANO
クルマがすれ違えない細道の先に、ひっそりと佇む小さな浜があった。ブルーラインがUターンしているという、しまなみエリアでも珍しいポイントに出た。この「長磯の浜」(通称かくれビーチ)は5年前にも訪れたシークレットスポット。もっとも、もし存在を知っていても、佐島港から4kmの山道の先にあるので、行きにくいことこの上ないレアスポットなのだ。

長磯の浜へ通じる細道は、クルマがすれ違えないほど長磯の浜へ通じる細道は、クルマがすれ違えないほど photo:Makoto AYANO
佐島の奥へと向かう、アップダウンを縫って走る山道佐島の奥へと向かう、アップダウンを縫って走る山道 photo:Makoto AYANO激坂を上り詰めて対岸へと出る激坂を上り詰めて対岸へと出る photo:Makoto AYANO

次なる目的地は弓削島だ次なる目的地は弓削島だ photo:Makoto AYANO
もと来た山道を戻り、次なる目的地は弓削島。弓削大橋を渡り、港の前の上島町役場の並びにあるしまでCafeへ。5年前に立ち寄ってランチをいただいたオススメのお店で、スタッフは島のお母さんたち。以前に立ち寄ったときのことをなんとなく覚えていてくれた。ちなみに「しまなみサイクルオアシス」にもなっている。

弓削島のしまでCafe  5年前にもランチで立ち寄ったお店だ弓削島のしまでCafe 5年前にもランチで立ち寄ったお店だ photo:Makoto AYANO柔らかい肉と甘い香りの名物レモンポーク丼柔らかい肉と甘い香りの名物レモンポーク丼 photo:Makoto AYANO


町の交流スポットにもなっているしまでCafeでは島産のおいしい野菜や、新鮮な魚介類を使った島ご飯、上島町の名物であるレモンポークの丼やソテーなどが楽しめる。レモンポークとは、島の特産物のレモンの絞りカスを飼料に育った「島豚」で、柔らかい肉質と甘い脂肪の風味が楽しめる。のどかな島で潮風を浴びてストレス無しで育つのもいいらしい。他にも鯛の甘露煮と島野菜が見た目にも美しい「摘み菜ランチ」も好評だ。

しまでCafeで勧められる被りモノはどれもおかしいしまでCafeで勧められる被りモノはどれもおかしい photo:Makoto AYANOこれはウニの被り物です(笑)これはウニの被り物です(笑) photo:Makoto AYANO

しまでCafe店内にはレモンやウニ、みかんの「被り物」が常備してあり、お客さんに被っての記念撮影を勧めている(笑)。島のお母さんが勧めるままにそれを被るサポーターズクラブの皆さん。港の前でポーズを取り、遠くに見える岩城島橋を背景に記念撮影。ノリが良すぎです(笑)。

被り物で変身した5人が岩城橋をバックにポーズ(笑)被り物で変身した5人が岩城橋をバックにポーズ(笑) photo:Makoto AYANO
この被り物、かつて開催されていたしまなみ縦走イベントなどではエイドで被ることができた「名物」なのだが、イベント中止が続くなか、そんな機会が無くなってしまった。サイクリストの皆さんは弓削島に行ったら、ぜひしまでCafeに立ち寄って被らせてもらって欲しい。

そのお笑い写真の奥に写っている「上島架橋(岩城橋)」は3月20日昼に開通し、4つの島を結ぶ3つの橋、ゆめしま海道は全線開通を迎えた。つまりフェリーを使うことなく橋と自転車道で通しで走れるようになったのだ。次なる機会にはぜひ走りに来たい。

マツダCX-5フィールドジャーニーも渡船フェリーに乗り込むマツダCX-5フィールドジャーニーも渡船フェリーに乗り込む photo:Makoto AYANO
島の中央部は意外にアップダウンが多い島の中央部は意外にアップダウンが多い photo:Makoto AYANO
ランチのあとは島の中央部を縦断し、東岸へと出る。弓削島の北端はアップダウンに富んでおり、かなり高度のある海岸線への登りは食後の運動にはバッチリ? ちょっと厳しいヒルクライムで、初心者の女性は旦那さんの優しいプッシュを受けて無事クリア。脚の売り切れた男性を、上級者が押してくれるシーンも。一日をともにして、参加者同士の仲はしっかりと深まったようだ。

弓削島の北端から望んだ遠景は素晴らしかった弓削島の北端から望んだ遠景は素晴らしかった photo:Makoto AYANO
海の風景はドラマチックだ海の風景はドラマチックだ photo:Makoto AYANO
激坂を登る。初心者と脚の売り切れた仲間をサポートして登る激坂を登る。初心者と脚の売り切れた仲間をサポートして登る photo:Makoto AYANO激坂で有効なダブル押し。グイグイ登ります激坂で有効なダブル押し。グイグイ登ります photo:Makoto AYANO

上弓削港からフェリーで因島へと再び渡る。そこから先は「しまなみ海道」だ。因島から向島へ、日暮れの気配を感じながら尾道を目指す。夕暮れに映える因島大橋はひときわ美しい。一日も終わる頃になればグループライドの皆の息はぴったりあって、ローテーションも気持ち良く決まる。

夕暮れに照らされる因島大橋  夕暮れに照らされる因島大橋 photo:Makoto AYANO
向島から尾道へ。夕暮れの時間も魅力的だ向島から尾道へ。夕暮れの時間も魅力的だ photo:Makoto AYANO向島から渡船で尾道へ帰ってきた向島から渡船で尾道へ帰ってきた photo:Makoto AYANO

向島から朝にも乗った連絡船で尾道へ渡り、今回のツアーはおしまい。ほのぼのとしたゆめしま街道ツアーの一日を、沈む夕陽を見ながら思い返して余韻に浸る。今日巡ったゆめしま街道は、岩城橋の完成による全線開通でこれから少しメジャーにはなるだろう。でも、いつまでも素朴さを失わないでもらいたい。

提供:マツダ、写真と文:綾野 真