「成長への階段」

ツール・ド・熊野など、国際レースでもプロと互角の戦いを演じる鹿屋体育大学。ここからはTEAM NIPPOの中島選手をはじめ優秀な選手が輩出されており「虎の穴」と言っても過言ではない。今回は最近目覚しい活躍を見せる内間選手の言葉を通して、そのルーツを探ってみよう。

鹿屋体育大学自転車競技部は1995年に創部され、今年で16年目を迎える大学自転車界では比較的新しいチームです。チームには「世界で戦える選手を育成する」という明確な目標があり、活動の内容やレースもこれまでの大学自転車部とは全く違ったものとなっています。

日頃からスポンサー、大学、連盟、市民による応援する会など、実に多くの皆さんに支えられて活動していますので、全てのレースで結果を残すために全力を使います。

明治神宮外苑学生自転車クリテリウム2009、内間が1着ゴールで優勝。右に写るチームメイトの吉田隼人とともにワンツーフィニッシュを飾った明治神宮外苑学生自転車クリテリウム2009、内間が1着ゴールで優勝。右に写るチームメイトの吉田隼人とともにワンツーフィニッシュを飾った photo:Hideaki.TAKAGI 特に今シーズンからは、グリップ力の良さに定評のあるパナレーサーや自転車関連メーカー数社にも本格的ご支援を頂くこととなり、チームの活動は一気に充実して来ました。

学生関係では、明治神宮外苑クリテリウム(男女)、全日本学生選手権クリテリウム(男女)、全日本学生選手権ロードレース(男子のみ開催)と、ここまでの今シーズンに開催された5戦全てで優勝を達成しましたが、成績よりも内容を重視する黒川剛監督の要求レベルは高く「主催者やファンが喜ぶような積極的な目立つ走り」をしながら、「自転車界の発展や社会の役に立てる人間性」までも求められます。

国際大会や実業団レースでも「大学生だから」という言い訳は決して許されません。目指すのは常に上のレベル。それが鹿屋体育大学自転車競技部というチームです。

高校時代はインターハイのロードで勝ったりしましたが、大学進学後はそんな過去の栄光は全く通用しないレベルの高さに衝撃を受けました。こうして一段づつ階段を登るように少しづつ強くなって来れたのも、いろんな方々のサポートがあったからこその成果だと感謝しています。

表彰式、ベッティーニポーズで抱え上げられ、喜びを爆発させる内間表彰式、ベッティーニポーズで抱え上げられ、喜びを爆発させる内間 photo:Hideaki.TAKAGI
なかでも競技力の面で大きく成長させてくれたのは、元ナショナルチーム監督の三浦恭資さんのお陰だと思います。大学進学と同時にU23に上がってまだ成績のなかった私をナショナルチームに入れて下さり、そこで戦術を一から叩き込んで頂きました。

三浦さんは、国内ではレース数が少なく走り方を勉強するには不十分な若手(学生)選手たちを引き連れてアジアツアーの転戦を指揮してくださり、私たちはそこでレースの走り方を学ぶことができました。

三浦さんの指示通り走ると海外でもそこそこの成績が残せて、1年目からレースの楽しさも知りました。

しかし海外での成績とは裏腹に、国内のレースは全く成績が残らない状態が続き、最初の頃はチームには迷惑をかけ続けました。今では笑い話ですが、「ジャパンジャージの時だけ良く走る」と、先輩や監督から冷やかされたものです。

ツール・ド・北海道2009でU23リーダージャージを纏い、強豪選手達と肩を並べ走るツール・ド・北海道2009でU23リーダージャージを纏い、強豪選手達と肩を並べ走る Hideaki.TAKAGI このレースで、鹿屋体育大学の選手として5年連続5人目のU23総合優勝を果たすこのレースで、鹿屋体育大学の選手として5年連続5人目のU23総合優勝を果たす Hideaki.TAKAGI

「ファーストアタック」

この4年間、徹底したファーストアタックを心がけて走り続けてきましたが、4年生になって少しだけ自分なりに納得いく走りが出来るようになってきたような気がします。

全日本学生選手権個人ロードレース2010、100km以上を逃げ、ラスト30kmは独走してゴールラインを駆け抜けた全日本学生選手権個人ロードレース2010、100km以上を逃げ、ラスト30kmは独走してゴールラインを駆け抜けた
今年4月のツアー・オブ・タイランドでは毎日逃げ続け、捕まっても諦めない走りを続けましたが、第5ステージでようやく逃げ切ることができ、最後はスプリントで優勝を手に入れることが出来ました。

実は同じような展開で負けたレースは多数ありました。なかには全く前を引かない選手にラスト1kmでアタックされ、優勝をさらわれるという悔しい思いもしましたので、今回の優勝は本当に嬉しく、一生忘れない会心のレースとなりました。

同時に「勝つ時にはこんなに思うように進むんだな」と、レース展開を自らつくれる喜びも感じることが出来ました。

この勝利で最終日は生まれて初めてリーダージャージを着てスタート地点に立つことが出来ました。緊張と興奮のなかレースはスタートしました。私は調子も良く何の問題もありませんでしたが、強靱なアメリカ人選手の「プロコンチネンタルチームの根性」とも言えるアタックの連続にあえなく逆転を許してしまいました。自分の実力が足りないことで総合優勝を失ったこの悔しさも、決して忘れないでしょう。

2010全日本学生ロードのゴール後、2枚看板の伊藤に感謝の握手2010全日本学生ロードのゴール後、2枚看板の伊藤に感謝の握手 そして、このレースでの1勝を経験したことで、「やはり逃げることが自分の優勝できるパターンなんだ」と確信することができました。

でも、逃げに乗るというのはそう簡単なことではありません。何回もアタックできる体力が随分ついてきたと感じる一方で、最近は以前より少ないアタックで逃げに乗れるようにになりました。今までたくさんのレースを走ってきて、逃げグループが出来るタイミングを上手くつかめるようになったからだと思います。

私は常に一つ一つのレースを大切に走るように心がけています。「どうやったら逃げに乗れるか」「どうすればこのメンバーから勝利をつかむ事ができるのか」ということなどを常に考えながら走っています。

良い成績が残った時こそ、悪かった所も見つけ改善するようにしていけば、もっともっと成長していけるはずです。

ハードな競技だからこそ「根性」も大事

大学では自転車競技部長(スポーツトレーニング教育研究センター長)の山本正嘉教授のゼミでスポーツ科学を専攻していますので、常に生理学的な面での体の変化などにも興味を持ち続けて、トレーニングにも取り入れています。

ゼミの勉強との両立は正直いって大変なことですが、自分の成長にはあらゆる面で貢献していると感じています。ちなみに清水都貴先輩(チームブリヂストンアンカー)、中島康晴先輩(TEAM NIPPO)、村上純平先輩(シマノレーシングチーム)も同じゼミの出身です。

充実した学生生活を送ってきましたが、私にはまだやれることが事が沢山あります。練習はもっとハードにできるはずです。

強化部長としてチームをまとめる。レース以外でもリーダーシップを求められる立場だ(先頭左が内間)強化部長としてチームをまとめる。レース以外でもリーダーシップを求められる立場だ(先頭左が内間) レース前、後輩への指導を行う内間(左から2番目)レース前、後輩への指導を行う内間(左から2番目)

今年の冬に参加のチャンスを得た沖縄合宿では、日本を代表するエリートの3名の選手と一緒に走らさせてもらえました。この時、私は「絶対に遅れてはダメだ」と常に考えながら走っていました。

でも一度だけどうしてもついて行けなくなり、遅れてしまいましたが、その時はあまりの苦しさに泣きながら千切れました。あんなことは久しぶりでしたが、「人間は訓練を積めばこんなキツイことが出来るんだな」と学ぶことができました。

大学の施設で低酸素トレを行う内間。苦しい練習に耐えた成果がレースに出る大学の施設で低酸素トレを行う内間。苦しい練習に耐えた成果がレースに出る このハードな競技をやっていくうえで「根性」は凄く大切だと思います。私の取組はまだまだ甘い部分がありますので、さらに自分を追い込むことができるかが今後の課題だと思っています。もっと自分に厳しくすることでレベルを上げられると考えたら、それはそれで楽しみです。

これまで応援頂いた皆さんに「結果で恩返ししたい」と取り組んできた大学4年目のシーズンも既に半分近くが終わろうとしています。先日のツール・ド・熊野では全レースで逃げをつくり、最後は全部捕まりましたが、自分の意志を貫き通す走りが出来ました。

疲労も抜けきらない中で参戦した翌週の全日本学生選手権ロードは、スタート直後からアタックを掛けましたが、チームメイトのアシストを受けながらそのままトップでフィニッシュラインまでたどり着くことが出来ました。

残りのレースも内容重視で真剣に取り組みたいと思いますし、必ず全てのレースで序盤からアタックを掛けることをここで宣言ておきます。

学生最後のシーズンを悔いなく走り抜くことと併行して、卒業後の進路を決めなくてはいけない時期でもあります。もちろん大好きなロードレースを続けていく覚悟ですが、正直言って進路はまだ何も決まっていません。

沖縄の大先輩である新城幸也選手や、鹿屋体育大学の先輩らのようにヨーロッパへ積極的に出たい気持ちと不安が交錯していますが、いずれにしても自分の意志で厳しい環境を求めて進みたいと漠然と考えている段階です。

まだまだ日本人にも超えなくてはならない目標の先輩達が沢山いますが、いずれ私も後輩達の目標にされるような、そして日本のロードレース界を変えていけるような選手になりますので、ぜひ応援を頂けますようによろしくお願いいたします。

プロフィール
内間 康平 うちま こうへい
1988年生 21歳
沖縄県立北中城高校出身
国立鹿屋体育大学体育学部スポーツ総合課程4年在籍中

大学で自転車競技部強化部長としてトラックも含めたチーム全体の強化の指揮を取る。逃げて勝つことを信条とし、そのための心身鍛錬を怠らない根性を持つ日本男児。

主な戦歴:
1年次
アゼルバイジャンツアー(イラン) 第7ステージ(159km)2位
ツアー・オブ・タイランド ポイント総合2位 第6ステージ(164km)4位
ジャパンカップ(151km) 完走《ナショナルチーム》
全日本学生選手権チームロードレース(90km)優勝
全日本実業団ロードin丸岡BR1(139km)4位

2年次
ジョルジャ・マレーシア 第1ステージ(180km)3位 第4ステージ(179km)2位
プレジデントツアー・オブ・イラン 第4ステージ(93km)5位
全日本アマ・ロード選手権U23(160km)2位
全日本学生選手権クリテリウム(42km)優勝
明治神宮外苑学生クリテリウム(30km)優勝
※2008年JCFポイントランキングU23ロード1位
3年次
ツアー・オブ・タイランド 第1ステージ(188km)4位 第3ステージ(185km)2位
ツール・ド・北海道 U23総合優勝
ツール・ド・インドネシア 第6ステージ(175km)4位 第7ステージ(162km)4位
4年次
ツアー・オブ・タイランド 第5ステージ(186m)優勝
ツール・ド・コリア 第10ステージ(49km)4位
ツール・ド・熊野 山岳賞2位
全日本学生選手権ロードレース(164kmkm)優勝

Panaracer 「RACE」シリーズ
Race type DRace type D 写真クリックで拡大 Race type ARace type A 写真クリックで拡大 Race type LRace type L 写真クリックで拡大

パナレーサーのロードレーシングトップモデルが「RACE」シリーズとしてリニューアル。

オールラウンドタイプのtypeA(All-around)、耐パンク強化タイプのtypeD(Duro)、そして軽量タイプのtypeL(Light)がラインナップされており、用途や目的に合わせてチョイスできる。全タイプとも従来のEVO3シリーズと同じく高いグリップ力を誇る。

typeAでは従来のバリアントEVO3PTに比べて20gを軽量化。typeDはシリーズ最強の耐パンク性能を誇り、typeLは耐パンクベルトを内蔵しながら、20Cで175g、23Cで185gの軽さを実現している。

参考価格  type D:6,480 円(税込)/type A:5,680 円(税込)/type L:5,680 円(税込)
Panaracerサポート選手の注目リザルト
■ツアー・オブ・ジャパン 2010
第2ステージ 奈良 4位 佐野淳哉選手(チームNIPPO)
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第3ステージ 美濃 3位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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第4ステージ 南信州 3位 佐野淳哉選手(チームNIPPO)
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第7ステージ 東京 4位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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個人総合時間賞 6位 ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(チームNIPPO)
団体総合時間賞 3位 チームNIPPO
FBD Ras(UCI2.2) 第1ステージ 3位 菊池誠晃選手(チームNIPPO)
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■ツール・ド・熊野 2010
プロローグ 優勝 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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第1ステージ 赤木川清流 優勝 辻善光選手(宇都宮ブリッツェン)、2位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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第2ステージ 熊野山岳 優勝 佐野淳哉選手(チームNIPPO)
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第3ステージ 太地半島周回 4位 辻善光選手(宇都宮ブリッツェン)
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個人総合時間賞 2位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)、6位 向川尚樹選手(マトリックスパワータグ)
個人総合ポイント賞 1位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)、3位 辻善光選手(宇都宮ブリッツェン)
個人総合山岳賞 2位 内間康平選手(鹿屋体大BlueSky)、3位 長沼隆行選手(宇都宮ブリッツェン)
団体総合時間賞 2位 チームNIPPO
Jサイクルツアー第6戦 富士山ヒルクライム 3位 ヴィンツェンツォ・ガロッファロ選手(チームNIPPO)
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全日本学生選手権個人ロードレース
優勝 内間康平選手(鹿屋体育大学)、2位 野口正則選手(鹿屋体育大学)

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全日本選手権タイムトライアル2010 U23 2位 高宮正嗣選手(鹿屋体育大学)
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Jサイクルツアー第7戦 個人タイムトライアル選手権
総合4位(決勝1位:コースレコード) 長沼隆行選手(宇都宮ブリッツェン)

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Jサイクルツアー第8戦 西日本サイクルロードレース 4位 中村誠選手(宇都宮ブリッツェン)
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トライアスロンITUコンチネンタルカップ天草大会 優勝 細田雄一選手(グリーンタワー・稲毛インター)

提供:パナソニック ポリテクノロジー株式会社